この記事では、消化管粘膜下にできる腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)についてまとめています。内容は病気の概要と特徴、症状の現れ方、診断、治療法です。この病気のことを知りたい人はぜひ読んでみましょう。
消化管間質腫瘍(GIST)とは、食道や大腸など消化管の粘膜より下層の壁の中にできる腫瘍のことです。消化器系の癌といえば胃癌や大腸癌がありますが、消化管間質腫瘍はこれらの病気とは発生場所が異なり、症例数も少なくとても稀な腫瘍といわれています。
胃癌や大腸癌の場合、発生場所は粘膜表面ですが、消化管間質腫瘍はこれよりさらに下層領域の筋層に発生し、間葉系腫瘍とも呼ばれています。したがって、消化管間質腫瘍は胃癌や大腸癌とは別の病気であり、診断の仕方や治療方法も異なります。一方、GISTは病理組織診断の前に特定されないことも特徴的です。ではどこで診断されるかというと、手術や生検を行ったときに初めて正確に診断することができます。
またGISTは、発見された腫瘍の全てが悪性として進行するわけではありません。腫瘍によっては悪性に向かうものもありますが、その反対に良性に向かうものもあります。GISTのうち、治療対象は臨床的GISTですが、治療対象だからといって臨床的GISTの全てが悪性でないことも、この病気の特徴です。
臨床的GISTが悪性だった場合は治療が必要になりますが、その際の注意点は、専門医療機関を受診しなければならないことです。前述のように、GISTは症例数が少なく年間でも10万人あたり1~2人の稀な腫瘍(※2023年10月12日時点)なので、適切な治療を受けるためにはGISTの専門医療機関を受診しなければなりません。
※参照元:国立がん研究センター希少がんセンター https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/GIST/index.html
消化管間質腫瘍(GIST)では次のような症状があらわれます。
下血や吐血は急性、貧血は慢性の消化管出血によるものが多く、同じ急性では消化管閉塞や急性腹症が起こる可能性もあります。また上記の症状に連動する形で、腹部膨満や嚥下困難、疲労を自覚する場合もあります。一方、GISTはそれ特有の症状がないため、症状からGISTと診断するのが難しい病気といえます。
またGISTは発症しても胃癌や大腸癌のように症状が表面化しにくく、仮に現れても軽微であることが多いので、病気の発見が遅れやすいのも特徴です。症状から正確に判断するにはGISTを専門とする識見が必要で、一般医療機関ではなく専門医療機関を受診する必要があります。
ともかくも、GISTの症状は他の病気でも見られるものばかりであり、特有の症状がないことが特徴といえるでしょう。
GISTの治療法で最も有効なものは、外科手術による腫瘍の切除だとされています。GISTの治療ではこれがまず第一の選択で、症状がなく腫瘍のサイズが小さい場合、すでに他の場所に転移している場合は、経過観察や薬物治療が行われます。
症状があまり出ない場合の治療は、腫瘍の大きさが2cm以下で、腫瘍の増殖力がほとんどなく、内視鏡や消化管造影、CT、MRI、病理検査などの結果、GISTと確定診断できないときは、年1~2回の経過観察。一方、症状がなく、現時点では腫瘍の悪性度が低い場合でも、腫瘍の大きさが2~5cmなら手術がすすめられることもあります。
症状が自覚でき、腫瘍の大きさも5cm以上あって増殖力も強いときは、手術を行うべきと判断されます。しかし、症状がかなり進んでいて手術が難しい場合は、グリベックなどを用いた薬物療法です。グリベックは「分子標的薬」とも呼ばれますが、これは普通の抗がん剤とは違い、正常な細胞を避けながら、悪性の癌細胞を集中的に攻撃できる特徴を持っています。そのため従来の抗がん剤よりも副作用を少なく抑えることができ、薬物による長期治療が可能になります。
| リスクの度合い | 腫瘍の大きさ |
|---|---|
| 超低リスク | 腫瘍のサイズが2cm未満 |
| 低リスク | 腫瘍のサイズが2~5cm |
| 中間リスク | 腫瘍のサイズが5~10cm |
| 高リスク | 腫瘍のサイズが10cm以上 |
胃がんや大腸がんなどの場合は、切除後に病理組織検査で良性か悪性かを比較的、簡単に診断することができます。しかし、GISTの場合はサイズや腫瘍の形に関係なく再発の可能性があるため、腫瘍サイズだけでなく、腫瘍細胞の分裂の速さなどの増殖力や腫瘍の発生している場所を総合的に判断。再発リスク別に上記の表のように4つに分類するケースがほとんどです。
再発率と腫瘍サイズの関係性についてですが、2cm未満の場合だと再発率は1%未満、2~5cmの場合だと10%以内、5~10cmの場合だと30~40%、10cmを超えると70%以上と、腫瘍サイズに比例して高くなる傾向(※)にあります。再発は3年以内に発生するケースが多い(※)ほか、腹部で再発することがほとんど。そのため、腹膜や肝臓への転移が見られます。
GISTが強く疑われる腫瘍には、手術治療を行うのが一般的です。組織採取が難しい小さい腫瘍や、無症状の場合であれば経過観察となることも稀にありますが、現在の日本のガイドラインでは、GISTと診断された場合、腫瘍の大きさなどに関わらず、手術による治療がすすめられています。
GISTが発見された時点で主病巣以外の場所にも転移を起こしているようなケースでは、化学療法などの内科的治療の適応となることもあるようです。化学療法の効果、経過によっては、改めて外科的切除を考慮することも。このような進行したGISTに対する集学的治療は未だ確立した治療とは言えないのが現状です。
GISTは胃がんや大腸がんと比べて、周囲の組織に及ぶ「浸潤」が少なく、リンパ節への転移も非常にまれとされているため、多くの場合は腫瘍の切除において切除臓器の機能温存を考慮した部分切除が行われるのが一般的です。さらに大きさが5cm以下の胃や小腸のGISTであれば発生場所や発育形式を考慮して、腹腔鏡下手術を行うこともあります。
GISTは、希少な疾患であることもあり、内科治療はエビデンスが少ない中で治療は行われています。従って、「GIST診療ガイドライン」に基づいた標準治療の実施が基本。現状の内科治療では再発や転移したGISTを完全に治すこと(根治)は難しいため、効果がある薬剤を副作用に配慮しながら継続することが重要になります。GISTの薬物治療は、イマチニブ、スニチニブ、レゴラフェニブ、新薬治験が標準治療です。
消化管間質腫瘍(GIST)は特定の遺伝子の変異によって発生する癌として知られているものの、基本的に家族間での遺伝によって発生する癌ではないとされています。しかし、遺伝子変異に関する具体的な機序や明確な原因などは特定されていません。そのため、GISTの予防や発見について考える場合は、まず一般的な癌リスクの低減に有用とされる対策を試みたり、定期的ながん検診などによって可能な限り早期の発見を目指したりといった取り組みが大切となります。
上述した通り、GISTに関しては現在のところ明確な原因や予防法などは確立されておらず、具体的に特定の対策を行うことで発症リスクを下げられると断定することもできません。しかし、医学的根拠にもとづいた日本人の癌の予防法については様々なポイントが明らかになっており、まずは基本的な癌予防の意識を日々の生活に取り入れていくことが大切です。
一般的に癌予防の方法として有用とされている行動には、主に以下のようなものがあります。
日本人の癌患者において、たばこを吸うことは明確なリスク因子とされており、特に男性患者では癌原因の1位が「喫煙」であるとされています。また女性患者でも「感染」に次いで2位の原因が喫煙です。男女を問わず喫煙習慣の改善や禁煙といった取り組みは、全身のあらゆる癌の予防やリスク低減を考える上で最初に取り組むべき対策と考えられるでしょう。
ただし、長らく喫煙が生活習慣の一部となっており、自分の意思で禁煙をしようと思っても難しいというケースは少なくありません。そのため、そのような場合には禁煙外来を受診するなど、医学的なアプローチによって禁煙対策を試みることも大切です。
なお、たばこによる発がんリスクは自身が喫煙するだけでなく、周囲の喫煙者の煙を吸い込む受動喫煙によっても上昇するため、家族や近しい人に喫煙者がいる場合は健康を考えて一緒に禁煙へ取り組むといった意識も肝要です。
飲酒は発がんリスクの上昇に関係することが明らかとなっており、医学的な観点から飲酒の健康リスクを考えた場合、少なくとも癌予防としては飲酒量をゼロにすることがベストとなります。そのため発がんリスクとアルコールの関係においては「酒は百薬の長」が成立しない点を覚えておきましょう。
また、いきなり飲酒量をゼロにすることが難しくとも、アルコールの摂取量を少なくすればするほど発がんリスクの低減につながるため、意識的に飲酒量を減らしたり、アルコール度数の少ない酒類に変更したりといった対策も有効です。
なお、特に日本人男性の癌患者において飲酒は胃癌のリスクを高めることも分かっており、GISTと胃がんの併発を避けようと考える場合に節酒や禁酒が効果を発揮する可能性はあるかもしれません。
GISTに関して、特定の食事や食生活が発がん性を高めると示すエビデンスはありません。しかし、食生活の乱れや一部の食事メニューが癌を含めて様々な健康リスクにつながることは科学的に明らかとなっています。
塩分の多い食事を続けると、男女ともに胃がんのリスクが高まるとされています。癌予防を意識する上で塩分量を減らしたり減塩メニューを取り入れたりすることは総合的な癌予防として有効です。
野菜や果物といった、食物繊維やビタミンの豊富な食材をきちんと摂取することも癌予防に大切です。特に胃がんや肺がんといった癌のリスクは毎日の野菜や果物の摂取で低減できると報告されています。
その他、高温の飲み物や食べ物を冷まさずに口にすると、粘膜へ熱によるダメージが影響を及ぼし、食道がんなどのリスクを高めるという研究報告もされています。そのため、熱い飲み物や食べ物をとる際には、少し冷まして口内や食道の粘膜を傷つけないように気をつけてください。
適度な身体活動は癌の予防や心疾患の予防に役立つとされているため、仕事や運動などで日常的に体を動かしている人は、全く運動しない人に比べて総合的な癌リスクが低くなるという報告もされています。
具体的な身体活動の程度については、国立がん研究センターの研究報告や厚生労働省の提言などから考えることが可能です。例えば18歳から64歳の人であれば「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行うこと」や「息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分行うこと」が推奨されています。また、65歳以上の人に関しては「強度を問わず、身体活動を毎日40分行うこと」が推奨量となっており、無理のない範囲で日々の生活へ運動習慣を取り入れるようにしてみましょう。
太り過ぎは癌の死亡リスクを高めると知られており、具体的な指標として「BMI(Body Mass Index)」が用いられています。
BMIは肥満度を示す数値であり、それぞれの人の「体重(kg)」と「身長(m)」から算出することが可能です。計算方法としては、以下のようになります。
BMIは体重を身長の2乗で割ることで求められる数値であり、例えば身長170cm(1.7m)で体重65kgの男性であれば、
という結果になります。
死亡リスクを低減できるBMIの範囲は、男性で「21.0~26.9」、女性で「21.0~24.9」とされており、癌予防などを考える際にはこれらの適正範囲内に体重をコントロールすることが大切です。
特定のウイルスや細菌へ感染することで、それに対応する癌の発症リスクが上昇することも知られており、日本人の男性の癌原因として「感染」は第2位、女性においては癌原因の第1位となっています。
GISTに関しては、特定のウイルスや細菌が発生源になると示すエビデンスはありませんが、例えば消化器系の癌であれば「ヘリコバクターピロリ菌」が胃がんの原因になったり、「B型・C型肝炎ウイルス」が肝細胞がんの原因になったりすることが知られています。
ただし、これらの感染が癌のリスクを高めるとされているものの、感染が必ず癌を発生させるとは限らないため、大切なことは適切な健康管理を意識することです。必要に応じて除菌やワクチン接種といった対策に取り組むという点を覚えておきましょう。
GISTであると確定診断を下すためには、癌を疑われる組織を外科的に採取して、顕微鏡下で観察して細胞の種類や状態を確認する病理診断(生検)が不可欠です。しかし、GISTの疑いの有無を調べる検査については複数の方法があり、それらの検査を適切に実施することで、GISTの早期発見・早期治療へつなげられる可能性はあるでしょう。
ここでは一般的に考えられるGISTのスクリーニングや検査方法について紹介しますので、それぞれの特徴や目的を押さえておいてください。
胃X線検査(バリウム検査)はX線を使った画像診断の1つです。あらかじめバリウム(造影剤)や発泡剤を飲み、胃を膨らませた状態で食道や胃に付着したバリウムを撮影することで、胃の内部の状態を観察します。
バリウム検査は胃がんの検査や癌検診などで一般的に行われている検査法です。胃の形状や胃粘膜の凹凸などを視覚的に観察できるため、GISTに限らず様々な癌や病気の発見につながる可能性があります。その反面、バリウム検査ではX線(放射線)を使用するため被曝リスクがある他、腸閉塞の既往歴がある人などは検査を受けられない可能性があるといったデメリットも存在します。
内視鏡検査は胃カメラや大腸カメラなど、消化管へカメラを挿入して、医師が直接に胃や腸内の様子をモニタリングする画像診断です。胃の内部の炎症や凹凸、病変などを医師がそのまま観察できるため、消化器系の疾患に関してしばしば活用される検査であり、癌検診などでも一般的に受けることができます。また、内視鏡の先端に病変部を切除する機能が搭載されており、さらなる精密検査が必要な組織の一部を採取するといったことも可能です。
ただし、胃粘膜に発生する癌であれば内視鏡検査で細胞の採取などを行えますが、粘膜の下層に発生するGISTのような症状では通常の内視鏡で直接に腫瘍細胞を採取することはできません。
そのためGISTでは「超音波内視鏡」という、超音波検査と内視鏡検査を融合させた検査が検討されることもあります。超音波内視鏡検査では、内視鏡から超音波を発生させて、粘膜の下にある腫瘍組織の状態やサイズを画像化することが可能です。また超音波内視鏡に搭載されている針を刺して粘膜の下層にある腫瘍細胞を採取し、病理検査(針生検)に利用することもできます。
X線を活用した画像診断の1つとして、患者の体内を断面的に撮影するCT検査も有効です。
CT検査は全身の様々な癌の位置やサイズ、広がりなどを視覚的に確認できるため、GISTを含めて広くスクリーニングや画像診断に用いられています。放射線治療の治療計画を作成する時などにも活用されていますが、バリウム検査と同様に被曝リスクがあり、患者によってはCT検査を受けられないこともあります。
CT検査と同様に人の体内を撮影する方法ですが、MRI検査ではX線でなく磁気(磁力)の作用によって画像を撮影することがポイントです。
放射線を使用しないため、CT検査を受けられない妊婦などでもMRI検査であれば受けられる可能性があり、腫瘍のサイズや位置、浸潤の程度といった情報を確認するために用いられます。
ただしMRI検査では強力な磁気を利用するため、体内に金属などを埋め込んでいる患者は検査を受けられません。また撮影に際して投与する造影剤にアレルギー反応を示す人も検査を受けられないデメリットもあります。
GISTであると確定するためには、超音波内視鏡などで採取した腫瘍組織の細胞を病理医が顕微鏡を使って確認し、癌の状態や種類を特定する病理検査が不可欠です。
GISTの生検では、GISTに特徴的なタンパク質を染色する免疫組織染色が用いられ、そのタンパク質の発現が認められた場合、GISTであると確定診断を行うことが可能となります。
GISTはそもそも癌としての症状や特徴を発見しにくい病気であり、単発の検査やスクリーニングによってGISTであると診断することは困難です。そのため、GISTのスクリーニングには多角的・多層的な検査が必要になりますが、それぞれの検査には組織採取に伴って患者の肉体を傷つけたり、被曝や薬剤アレルギーのリスクを高めたりといった課題があることも無視できません。
また、そのような直接的なリスクの他にも、スクリーニングには偽陰性や偽陽性、過剰診断といった誤診リスクなどが存在することも重要です。
「偽陰性」とは、本来は陽性(悪性)と診断されるべき状態にもかかわらず、検査によって陰性(良性)と診断されてしまうことです。
偽陰性として診断されてしまうと、実際に治療やさらなる精密検査を必要とする患者の検査や治療がそこで止まってしまい、結果的に癌の進行を見落としてしまうといったリスクが増大します。
偽陰性の可能性はあらゆる検査において常に存在しているため、GISTに限らず癌のスクリーニングでは複数の検査によって精度を高めることが肝要です。
「偽陽性」とは、陰性(良性)の細胞などが陽性(悪性)と誤診されてしまうことであり、偽陽性になると治療や検査が必要ない人まで、さらなる検査が行われたり、不要な治療を受けたりといったリスクが増大します。
偽陰性と同様に偽陽性の可能性も常に存在している上、検査や治療には副作用や合併症のリスクもあり、1つの検査で陽性と診断された場合も過度に不安を抱くのではなく医師と相談して冷静に対応することが大切です。
過剰診断とは、検査精度が高すぎるせいで、本来であれば経過観察や治療不要と診断されるべき腫瘍まで要治療の癌と診断されてしまう状態です。
過剰診断は患者に必要のない治療や検査を行って、それらによるデメリットを増大させるリスクがあり、医療技術が進歩した現代だからこそ改めて注意しなければならないポイントとなっています。
GISTでは全てのステージにおいて外科治療(手術)が検討されますが、例えば手術で胃の大部分を摘出してしまうと、術後の生活やQOLに悪影響を及ぼす可能性が高くなります。そのため、GISTの治療では術後のケアやQOL向上のポイントを考えることが不可欠です。
ダンピング症候群は胃の切除を行った人に見られる胃切除後症候群の1つであり、胃の機能が低下することで食べたものが胃から腸へ一気に流れ込み、それに伴って動悸やめまい、下痢など様々な不快症状が発生します。
ダンピング症候群は術後の時間経過で改善するとされており、また食事療法や生活習慣の改善などで対処することも可能とされています。しかし重症例の場合は薬物治療などによるアプローチも必要です。
ダンピング症候群は胃の消化機能が低下することで生じる病気です。そのためダンピング症候群を予防する食事としては、柔らかくて消化の良いメニューを食生活へ取り入れるといった対策が有効となります。また、腸への流入を穏やかにするため食事中の水分摂取を控えめにして、一度に大量の炭水化物を摂らず、少量の食事で回数を増やすといった工夫も大切です。
また後期ダンピング症候群によって低血糖症状が発生したような場合、ジュースやアメなど糖分の高いものを口にして安静にするといった工夫もあります。
2025年4月18日、国立がん研究センター希少がんセンターがオンラインで開催した希少がんセミナー「胃GISTの手術治療update(アップデート)」において、消化管間質腫瘍(GIST)の手術治療に関する臨床現場の最前線の状況が報告され、手術治療の低侵襲化や手術適応についての考え方などが講演されました。
そもそもGISTは消化管壁の粘膜下の特殊細胞から発生した肉腫であり、日本癌治療学会のGIST診療ガイドライン改訂ワーキンググループ作成の「GIST診療ガイドライン」において標準治療がまとめられています。そして同ガイドラインの第4版(2022年4月改訂)では、積極的な手術適応になる事例と、可能であれば手術が望ましい相対的手術適応の事例が分類されており、基本的には胃の部分切除によって腫瘍組織の完全切除が目指される一方、胃を大きく切除することは術後の様々なリスクを増大させることから、消化器の機能温存を目指されていることもポイントです。
手術法に関しても開腹手術や腹腔鏡手術に加えてロボット支援腹腔鏡手術などが実施されており、低侵襲化によって患者への負担を軽減しながら、治療効果を向上させる術式が研究されています。
2025年1月18日、国立がん研究センター希少がんセンターと四国がんセンター、NPO法人GISTERS、そしてNPO法人愛媛がんサポートおれんじの会などが合同で、「希少がん みんなで語り合おう第2回GIST(消化管間質腫瘍)セミナーin四国」を開催しました。なおセミナーは四国がんセンターでの現地講演とオンライン講演を併用したハイブリッド形式で実施されています。
同セミナーの中で四国がんセンターがんゲノム医療センター部長・消化器内科科長である仁科智裕氏が「GISTの概要」について講演し、国立がん研究センター東病院病院長の土井俊彦氏が「GIST治療UPDATE」をテーマとした講演を行いました。
講演では、生検でGISTだと判明した場合、切除可能なら手術が標準治療であり、原則的に開腹手術とされていますが現在では腹腔鏡手術も行われており、特に従来の腹腔鏡手術の基準である5cm未満の腫瘍に限らず、5cm以上でも腹腔鏡手術が適応になるのではないかといった臨床現場の意見やガイドラインの改定内容などが説明されました。
またその他にも、薬物療法と副作用対策が重要であり、標準治療で効果が認められないケースについては「がん遺伝子パネル検査」で改めて治療薬を検討する方法も説明されています。
参照元:がんナビ|希少がんみんなで語り合おう 第2回GIST(消化管間質腫瘍)セミナーin四国 GISTの最新治療と活用したい患者・家族サポート
2024年10月、アメリカの国立がん研究所(NCI)から、消化管間質腫瘍(GIST)の治療やその検討に関する情報のアップデートが行われました。
この情報はフランスで実施されて2024年8月7日付の「Lancet Oncology誌」で発表された臨床試験にもとづいており、進行性のGIST患者の中でも、イマチニブ治療を1年・3年・5年間の期間で実施している患者が組み込まれていることも重要です。
各患者の病勢などについて最長で20年間の追跡調査が行われた結果、いずれの治療期間を有していた患者においても、治療を終了した時点でイマチニブの投与を中止した患者では病勢が急速に悪化した上、イマチニブへの薬剤耐性が発生するまでの期間が短くなり、治療継続群よりも生存期間が改善しなかったというものです。
これらの結果から、研究グループの代表責任者であるフランスのJean-Yves Blay医師は、多くの進行GIST患者に対してイマチニブの治療を中断すべきでないとまとめています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|一部の消化管間質腫瘍(GIST)ではイマチニブを中断なく使用すべきとの臨床試験結果
米国臨床腫瘍学会(ASCO)において2023年1月、消化器癌専門医であるPamela Kunz 医師の研究チームから、進行性の消化管間質腫瘍(GIST)の患者に対して適切な治療法を検討する上で、血液中に含まれる循環腫瘍DNA(ctDNA)を対象とした検査が有効であるという発表が行われました。
GIST患者はおよそ80%においてKIT(受容体型チロシンキナーゼの1種)の一次変異を有しており、イマチニブが治療薬として有用である一方、最終的には薬剤耐性を獲得されるため、一部のイマチニブ耐性変異に対してはスニチニブが有効とされる報告があります。
イマチニブ耐性を獲得した進行GIST患者に対して、リプレチニブもしくはスニチニブをランダムに投与した上で、ctDNA血液検査を行った所、解析対象の77%で対象ctDNAが検出され、そのうちの76%でKIT変異GISTが認められました。
このような流れから、進行GIST患者の治療や段階の検証にctDNA血液検査が有効である可能性が示唆されています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|ctDNA血液検査は進行GIST患者の最適な治療法の決定に役立つ
2022年1月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズの1月セッションにおいて、ASCO消化器がんエキスパートMuhammad Shaalan Beg医師による研究チームが、消化管間質腫瘍(GIST)の一次治療としてイマチニブを投与した後、病勢の憎悪や薬剤耐性などが認められた進行GIST患者に対して、リプレチニブを投与するケースについての研究結果を発表しています。
同研究では、イマチニブ治療を終えた後の2次治療として、リプレチニブを投与する場合、スニチニブを投与する場合と同等の有効性を得られたというデータが示されました。
そもそもGISTでは多くの患者がイマチニブ耐性を示すようになり、イマチニブから別の治療法を検討しなければなりません。その上で、スニチニブと同等の治療効果をリプレチニブでも得られるという可能性は、患者の治療選択肢が拡大していくことを示唆しています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|イマチニブ治療後GISTに対するリプレチニブはスニチニブと同等の効果で副作用が少ない
GIST患者に対する腹腔鏡を用いた低侵襲治療として、「リフトアンドカット法」が胃の切除によるダメージを軽減すると同時に、良好な手術成績を得られる治療法であるという研究結果が報告されました。関連データは「Asian Journal of Endoscopic Surgery誌(2025年号)」に掲載されています。
同研究は2011年6月から2024年5月までの期間において、リフトアンドカット法を受けたGIST患者80例を対象として、その様子を後方視的に検討したものです。従来のGIST患者の腹腔鏡下局所切除術では一般的に「くさび状切除術」や「腹腔鏡・内視鏡協調手術(LECS)」が採用されていましたが、前者では胃の過剰切除による術後変形のリスクがあり、後者では腹腔内膿腫や腫瘍細胞播種といったリスクがありました。
腹腔鏡を利用したリフトアンドカット法は、胃の切除部位を最小限に抑えつつ、胃内腔への腫瘍細胞の侵入を回避できる低侵襲治療として開発されており、短期的にも長期的にも良好な手術成績を収められたと報告されています。
参照元:Academia|胃GIST治療の「リフトアンドカット法」、短期・長期成績が良好
GISTでは基本的に外科的切除が標準治療となっているものの、術後の患者の負担やQOL低下が課題となっており、低侵襲治療による代替が進められています。それに伴い、GIST患者の外科治療の方法として、「粘膜下トンネル内視鏡的切除術」と「双方向全層切除術(FTR)」を組み合わせた新規の内視鏡治療法を実施したところ、完全切除と安全性を同時に追求できたという研究結果が報告されました(IGIE誌2025年6月号)。
同研究では、63歳(男性)の患者の外向性胃GISTに対して、粘膜下トンネル法や腹腔内アプローチ、そして全周性全層切除術を組み合わせた新しい双方向全層切除術を実施。改めて術後21ヶ月の画像検査を行ったところ、腫瘍の再発が認められず長期成績として良好であることが示されました。
これにより、今後はGISTの標準治療として新たなアプローチが考えられると期待されています。
参照元:Academia|胃消化管間質腫瘍に対する双方向全層切除術、完全切除と安全性を両立
2025年12月1日号の「Cancer誌」において、中国人のGIST患者102例を対象とした臨床研究の結果として、抗悪性腫瘍薬「リプレチニブ」の血中濃度(血漿トラフ濃度)が475ng/mL以上であった場合、無増悪生存期間が有意に延長されたというデータが報告されました。
具体的には、リプレチニブ治療を受けた患者のうち、トラフ濃度が閾値(R-Cmin、475ng/mL)を上回った患者に関して無増悪生存期間(中央値)が12.8か月から22.6か月へ延長したことが認められ、さらに脱毛や疲労、身体的な症状などの有害事象の発生に関してもリプレチニブのトラフ濃度との相関性が認められました。
これらの結果は、患者のリプレチニブ血中濃度をモニタリングすることが、患者の生存期間の延長や治療法の検討などに有用であることを示唆しています。
参照元:Academia|リプレチニブの血中濃度モニタリング、GIST患者の生存期間延長と関連
GISTはKIT遺伝子やPDGFRA遺伝子といった遺伝子の変異によって発生すると考えられている癌ですが、「J Gastrointest Cancer誌(2025年7月15日号)」に掲載された研究成果によれば、GIST患者の全生存期間などが「循環腫瘍DNA(ctDNA)」の変異によって左右されており、ctDNAをモニタリングすることで患者の予後予測に利用できたという報告がされています。
同研究は、一定の適格基準をクリアした7つの研究から組織学的に確認されたGIST患者2,024例を対象として、1,610例をctDNA陽性、414例をctDNA陰性として分類し、それぞれの全生存期間などを比較しました。
解析の結果、陰性群は一貫して陽性群よりも全生存期間が良好な結果を示しており、GIST患者のctDNAモニタリングが予後の予測や個別管理の検討に有用であることが示唆されています。
参照元:Academia|消化管間質腫瘍の予後予測に循環腫瘍DNA変異が有用、メタ解析で明らかに
神奈川県横浜市を中心に活動している特定非営利活動法人GISTERSは、GIST患者を対象として「イマチニブの服用」に関するアンケート調査(2025年6月28日~7月30日)を実施し、その結果を公表しました。なお、アンケート調査はGISTERSが独自に行ったものであり、全体の回答数は183件となっています。
アンケート調査の結果、イマチニブを服用して3年以内の患者が全体の約45%となっており、10年以上の長期服用者は約14%となりました。また、全体の約42%が治療の途中に先発品から後発品といった何らかの治療薬変更を経験しており、制度改正や副作用の状況、担当医の判断など複数の理由が影響したと考えられています。なお、全体の約57%は一貫して同一薬剤を服用しているということも事実です。
何かしらの副作用に関しては全ての薬に関して「あり」となりましたが、生活への影響は薬の変更をした場合もしなかった場合もあまり差異がないという結果になりました。
参照元:特定非営利活動法人GISTERS GIST患者のための情報ページ|イマチニブ(グリベック錠または後発品のイマチニブ錠)服用に関するアンケート調査 結果報告