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消化管間質腫瘍(GIST)の症状や転移、治療法について

この記事では、消化管粘膜下にできる腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)についてまとめています。内容は病気の概要と特徴、症状の現れ方、診断、治療法です。この病気のことを知りたい人はぜひ読んでみましょう。

消化管間質腫瘍(GIST)とは? 

消化管間質腫瘍(GIST)とは、食道や大腸など消化管の粘膜より下層の壁の中にできる腫瘍のことです。消化器系の癌といえば胃癌や大腸癌がありますが、消化管間質腫瘍はこれらの病気とは発生場所が異なり、症例数も少なくとても稀な腫瘍といわれています。

胃癌や大腸癌の場合、発生場所は粘膜表面ですが、消化管間質腫瘍はこれよりさらに下層領域の筋層に発生し、間葉系腫瘍とも呼ばれています。したがって、消化管間質腫瘍は胃癌や大腸癌とは別の病気であり、診断の仕方や治療方法も異なります。一方、GISTは病理組織診断の前に特定されないことも特徴的です。ではどこで診断されるかというと、手術や生検を行ったときに初めて正確に診断することができます。

またGISTは、発見された腫瘍の全てが悪性として進行するわけではありません。腫瘍によっては悪性に向かうものもありますが、その反対に良性に向かうものもあります。GISTのうち、治療対象は臨床的GISTですが、治療対象だからといって臨床的GISTの全てが悪性でないことも、この病気の特徴です。

臨床的GISTが悪性だった場合は治療が必要になりますが、その際の注意点は、専門医療機関を受診しなければならないことです。前述のように、GISTは症例数が少なく年間でも10万人あたり1人の稀な腫瘍(※2022年8月調査時点)なので、適切な治療を受けるためにはGISTの専門医療機関を受診しなければなりません。

※参照元:国立がん研究センターがん情報サービス/GIST(消化管間質腫瘍)

消化管間質腫瘍の症状  

消化管間質腫瘍(GIST)では次のような症状があらわれます。

下血や吐血は急性、貧血は慢性の消化管出血によるものが多く、同じ急性では消化管閉塞や急性腹症が起こる可能性もあります。また上記の症状に連動する形で、腹部膨満や嚥下困難、疲労を自覚する場合もあります。一方、GISTはそれ特有の症状がないため、症状からGISTと診断するのが難しい病気といえます。

またGISTは発症しても胃癌や大腸癌のように症状が表面化しにくく、仮に現れても軽微であることが多いので、病気の発見が遅れやすいのも特徴です。症状から正確に判断するにはGISTを専門とする識見が必要で、一般医療機関ではなく専門医療機関を受診する必要があります。

ともかくも、GISTの症状は他の病気でも見られるものばかりであり、特有の症状がないことが特徴といえるでしょう。

消化管間質腫瘍の治療法  

GISTの治療法で最も有効なものは、外科手術による腫瘍の切除だとされています。GISTの治療ではこれがまず第一の選択で、症状がなく腫瘍のサイズが小さい場合、すでに他の場所に転移している場合は、経過観察や薬物治療が行われます。

症状があまりでない場合の治療は、腫瘍の大きさが2cm以下で、腫瘍の増殖力がほとんどなく、内視鏡や消化管造影、CT、MRI、病理検査などの結果、GISTと確定診断できないときは、年1~2回の経過観察。一方、症状がなく、現時点では腫瘍の悪性度が低い場合でも、腫瘍の大きさが2~5cmなら手術がすすめられることもあります。

症状が自覚でき、腫瘍の大きさも5cm以上あって増殖力も強いときは、手術を行うべきと判断されます。しかし、症状がかなり進んでいて手術が難しい場合は、グリベックなどを用いた薬物療法です。グリベックは「分子標的薬」とも呼ばれますが、これは普通の抗がん剤とは違い、正常な細胞を避けながら、悪性の癌細胞を集中的に攻撃できる特徴を持っています。そのため副作用を少なく抑えることができ、薬物による長期治療が可能になります。

消化管間質腫瘍のステージ分類

リスクの度合い 腫瘍の大きさ
超低リスク 腫瘍のサイズが2cm未満
低リスク 腫瘍のサイズが2~5cm
中間リスク 腫瘍のサイズが5~10cm
高リスク 腫瘍のサイズが10cm以上

ステージの分類方法

胃がんや大腸がんなどの場合は、切除後に病理組織検査で良性か悪性かを比較的、簡単に診断することができます。しかし、GISTの場合はサイズや腫瘍の形に関係なく再発の可能性があるため、腫瘍サイズだけでなく、腫瘍細胞の分裂の速さなどの増殖力や腫瘍の発生している場所を総合的に判断。再発リスク別に上記の表のように4つに分類するケースがほとんどです。

再発率と腫瘍サイズの関係性についてですが、2cm未満の場合だと再発率は1%未満、2~5cmの場合だと10%以内、5~10cmの場合だと30~40%、10cmを超えると70%以上と、腫瘍サイズに比例して高くなる傾向(※)にあります。再発は3年以内に発生するケースが多い(※)ほか、腹部で再発することがほとんど。そのため、腹膜や肝臓への転移が見られます。

※参照元:GIST研究会/よくある質問

ステージで異なる治療方針

GISTが強く疑われる腫瘍には、手術治療を行うのが一般的です。組織採取が難しい小さい腫瘍や、無症状の場合であれば経過観察となることも稀にありますが、現在の日本のガイドラインでは、GISTと診断された場合、腫瘍の大きさなどに関わらず、手術による治療がすすめられています。GISTが発見された時点で主病巣以外の場所にも転移を起こしているようなケースでは、化学療法などの内科的治療の適応となることもあるようです。化学療法の効果、経過によっては、改めて外科的切除を考慮することも。このような進行したGISTに対する集学的治療は未だ確立した治療とは言えないのが現状です。

外科治療

GISTは胃がんや大腸がんと比べて、周囲の組織に及ぶ「浸潤」が少なく、リンパ節への転移も非常にまれとされているため、多くの場合は腫瘍の切除において切除臓器の機能温存を考慮した部分切除が行われるのが一般的です。さらに大きさが5cm以下の胃や小腸のGISTであれば発生場所や発育形式を考慮して、腹腔鏡下手術を行うこともあります。

内科治療

GISTは、希少な疾患であることもあり、内科治療はエビデンスが少ない中で治療は行われています。従って、「GIST診療ガイドライン」に基づいた標準治療の実施が基本となり、重要なことは、現状の内科治療では再発や転移したGISTを完全に治すこと(根治)は難しく、効果がある薬剤を、副作用をうまくコントロールしながらできるだけ休まず内服。治療を継続することが重要になります。GISTの薬物治療は、イマチニブ、スニチニブ、レゴラフェニブ、新薬治験が標準治療です。