いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

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口腔がん・舌がんの症状や転移、治療法について

このページでは、口腔がん・舌がんの基礎知識や症状、治療法などについて詳しく解説しています。

口腔がん・舌がんとは

口腔がんとは口の中にできる癌のことを指し、その代表的なものが舌にできる舌がんです。症状が口内炎に似ているため見過ごしやすく、本人が視認しにくい口内にできるため、気付いたら癌が進行しているというケースが多くあります。

原因は明確になってはいませんが、口内を不衛生にしたり、傷つけたりすることで発症リスクが高まると言われています。具体的には、喫煙やアルコールの過剰摂取、雑菌の繁殖、尖った歯や挿入具(入れ歯や差し歯)による口内の損傷など、様々な要因が複合し発症することが考えられます。

いち早く治療を開始するためには早期発見が求められます。歯科医による定期的な検診を受けることが有効です。

口内は粘膜でおおわれている箇所が多く、外に露出している皮膚に比べて、痛みや刺激に敏感な箇所です。発声や食事など活動する回数も非常に多く、痛みや違和感があっても刺激を抑えるのが難しい部位です。

主に40代以降の発症率が高く、喫煙の関連性から男性の罹患比率が高いがんですが、2015年以降、では男女ともに罹患数が増加傾向にあり、特に60歳以上の高齢者に多く見られます

男性 女性 合計
2004年 7,139 2,980 10,119
2014年 13,272 5,741 19,013

参考:国立がん研究センターがん情報サービス『がん登録・統計 年次推移』

国立がん研究センターの年次推移を見てみると、2004年と2014年で罹患者数はほぼ倍増しており、それ以降も毎年増加傾向にあります。

口腔がん・舌がんの症状

病変部位の腫れや腫瘍による痛みが生じます。ただ、この症状は口内炎と酷似しており、病状が悪化して病院を受診した際には、すでに進行がんとなり転移をはじめているケースも多くあります。

腫瘍以外には以下のような症状が見られるので、口内に複数の違和感を感じた場合は、医療機関を受診するようにしてください。

口腔がん・舌がんの治療法

治療方法は他の癌治療と同じく、大きく3種類。外科治療(手術)・放射線治療・化学療法(抗がん剤)になります。

外科治療(手術)の場合は、病変箇所を周辺部位と一緒に切除する必要があり、そのままだと術後生活に支障をきたすので、再建手術も同時に行われます。舌や頬の場合は体内の別の組織を移植するケースが多く、骨の場合はプレートや骨移植をして再建を行います。

放射線治療と化学療法(抗がん剤)は併用されるケースが一般的です。体外から患部に向けて放射線を照射し、癌細胞を破壊します。抗がん剤は服薬や注射で摂取し、癌を縮小させたり転移を抑える役目があります。個人差はありますがともに副作用が生じ、皮膚炎や食欲不振、吐き気、抜け毛などが見られます。

口腔癌のステージ分類

病期 説明
ステージ0 上皮内にがんがとどまっている場合
ステージⅠ がんの最大径が2cm未満かつ深さが5mm以下でリンパ節への転移がない場合
ステージⅡ がんの最大径が4cm未満かつ深さが10mm以下でリンパ節への転移がない場合
ステージⅢ リンパ節への転移がなく、がんの最大径が4cmを未満だが深さが10mmを超えているもの、または最大径が4cm以上だが深さが10mm未満のもの。リンパ節への転移があるものの、がんの最大径が4cm未満、かつ10mm以下である場合
ステージⅣA がんの広がりについては、最大径が4cmを超え、深さが10mm以上ある、もしくはがんが下あごや上あごの骨を貫通するか上顎洞にまで広がっている、またはがんが顔の皮膚にまで広がっている場合。リンパ節への転移については、転移したがんの数や大きさ、広がり方により判断。
ステージⅣB がんの広がりについては、噛むことに関連する筋肉と下あごの骨、それらに関連する神経や血管が存在する領域・あごを動かす筋肉と頭蓋底がつながっている部分・頭蓋底のいずれかにまで広がっている。リンパ節への転移については、転移したがんの数や大きさ、広がり方により判断。
ステージⅣC がん細胞の大きさや広がりなどに関係なく、遠くの臓器に転移がある場合

ステージの分類方法

舌がんの病期は、「TNM分類」によって決められるのが一般的です。TNM分類とは、「Tカテゴリー(がんの広がり)」、「Nカテゴリー(リンパ節への転移の有無・大きさ・個数)」、「Mカテゴリー(遠くの臓器への転移の有無)」の3つのカテゴリーの略称のこと。それぞれの分類について詳しく見ていきましょう。

Tカテゴリー

まずTカテゴリーについてですが、全部で6つに分類されます。「Tis」は、上皮内がん、「T1」は、がんの最大径が2cm以下かつ深さが5mm以下。「T2」は、がんの最大径が2cm以下で深さが5mmを超えるもしくはがんの最大径が2cmを超えるが4cm以下で深さが10mmの場合です。「T3」は、がんの最大径が2cmを超えるが4cm以下で深さが10mmを超えている、またはがんの最大径が4cmを超え深さが10mm以下の場合となります。「T4a」は、がんの最大径が4cmを超えて深さも10mmを超えている、またはがんが下あごもしくは上あごの骨を貫通するか上顎洞まで広がっている、またはがんが顔の皮膚にまで広がっているケースです。「T4b」は、がんが噛むことに関連した筋肉と下あごの骨とそれらに関連する神経や血管が存在する領域・あごを動かす筋肉と頭蓋底がつながっている部分・頭蓋底のいずれかにまで広がっている、またはがんが内頚動脈の周りを囲んでいる場合となります。

Nカテゴリー

Nカテゴリーは7つに分類されます。「N0」はリンパ節への転移がない場合です。「N1」は、がんと同じ側のリンパ節に3cm以下の転移が1個でリンパ節の外にはがんが広がっていないケースとなります。「N2a」は、がんと同じ側のリンパ節に3cmを超えるが6cm以下の転移が1個でリンパ節の外にがんが広がっていない場合です。「N2b」は、がんと同じ側のリンパ節に6cm以下の転移が2個以上でリンパ節の外にがんが広がっていない状態。「N2c」は、両側またはがんがある側とは反対側のリンパ節に6cm以下の転移があり、リンパ節の外にがんが広がっていない浸潤度です。「N3a」は、リンパ節に6cmを超える転移があり、リンパ節の外にはがんが広がっていない場合。「N3b」は、リンパ節に1個以上の転移があり、リンパ節の外の組織にがんが広がっている場合となります。

Mカテゴリー

最後のMカテゴリーは、遠くの臓器に転移があるかないかの2つで、転移がなければ「M0」、転移があれば「M1」となります。

ステージで異なる治療方針

舌がんの治療は、他のがん治療と同様に外科治療(手術)、放射線治療、化学療法(抗がん剤)の3つの中からステージや患者の健康状態を総合的に判断して最適なものが採用されます。外科治療(手術)の場合は、病変箇所を周辺部位と一緒に切除する必要があるため、そのままだと術後生活に支障をきたしてしまうことも。そのため、再建手術も同時に行われるのが一般的です。放射線治療と化学療法(抗がん剤)は併用されるケースが多く見られます。

口腔がん・舌がんの予防やスクリーニングに関する情報

舌がんを含めて口腔がんの発生原因やリスク因子として、まず考えるべきは喫煙と飲酒です。特に日本人における口腔がんの大半が喫煙に由来するとも考えられており、さらに喫煙と飲酒を組み合わせることで癌のリスクが増大する点は無視できません。

一方、喫煙や飲酒の習慣があっても口腔がんや舌がんを発症しない人がいたり、逆に禁煙や禁酒を頑張っていても発症したりする人もいるため、基本的に癌予防を考える際には全身の癌を意識した対策を心がけることが大切です。また、どれだけ予防に取り組んでも癌リスクをゼロにすることは困難です。適切な癌検診やスクリーニングを受けることで、癌の早期発見・早期治療を目指すことも癌対策として欠かせません。

口腔がん・舌がんの予防について

上述したように口腔がんや舌がんの原因として、まず注意すべきは喫煙と飲酒です。また、その他にも癌の発生リスクや健康不良の原因になり得る生活習慣は複数報告されています。まずは医学的根拠や科学的根拠にもとづいた癌リスクを把握しておくことで、口腔がんや舌がんを含めたあらゆる癌の予防につながるのだと理解しておきましょう。

ここでは、科学的根拠に基づくがん予防ガイドライン「日本人のためのがん予防法(5+1)」を基本として、特に日本人が気をつけるべき癌の予防法や対策についてまとめていますので参考にしてください。

日本人の口腔がんや舌がんにおけるリスク因子としては、喫煙や飲酒を含めた全癌的な6つの内容に加えて、特に口内環境の問題などが考えられています。

※参照元:がん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html#anchor3

たばこを控える(禁煙する)

口腔がんや舌がんを含めて、日本人の癌の原因として最重要なものの1つが「たばこ(喫煙)」です。特に、日本人の男性患者において喫煙は癌原因の第1位になっており、女性患者に関しても「感染」に次いで「喫煙」は第2位のリスク要因となっています。

日常的に喫煙をしている人は、たばこを吸わない人に比べて癌のリスクが1.5倍に高まると認められており、禁煙は即時的に行える癌予防・癌対策として最重要の方法の1つと言えるでしょう。また、喫煙は患者本人がたばこを吸わなくとも、身近にいる人などが吸っているたばこの煙(受動喫煙)によって癌リスクが上昇します。基本的には自分のためだけでなく家族のためにも禁煙に取り組むことが大切です。

なお、禁煙に取り組んでもなかなか上手く行かない人などについては、一定の要件を満たすことで禁煙外来の受診や禁煙治療が保険適用となります。一人で頑張るのではなく必要に応じて医療機関を受診して医師のサポートを受けることも考えましょう。

※参照元:がん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html#anchor3 ※参照元:厚生労働省|がん予防 (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490_00004.html

お酒を控える(禁酒する)

口腔がんや舌がんのリスク因子として、喫煙と並んで重視されているものが「飲酒」です。

お酒に関しては嗜好品やストレス解消の手段としても知られており、特にお酒好きの人にとっては晩酌など日常的な飲酒が楽しみになっていることもあるでしょう。また、日本には古来「酒は百薬の長」といった言葉もあり、少量もしくは適量の飲酒であれば健康に良いと考えている人は少なくありません。

しかし日本人を対象とした癌リスクについて考えた場合、飲酒量を「ゼロ」にすることが、癌予防において最も有効であると医学的に認められています。そのため、全身のあらゆる癌の予防を目指すのであれば、日常的にお酒を飲まないよう禁酒に取り組むことがベストとなります。

加えて、特に口腔がんや舌がんの予防として考えた場合、喫煙と飲酒を組み合わせることが最も発がんリスクを高めるとされています。例えば即座に禁煙することが難しい人であれば、まずは禁酒に取り組むことも大切です。

※参照元:がん情報サービス|舌がん 予防・検診(https://ganjoho.jp/public/cancer/tongue/prevention_screening.html

食生活を改善する

食生活の改善は癌予防を考える上で重要です。塩分量を控えた減塩メニューの採用や、野菜・果物を積極的に摂取する食事メニューの採用は、口腔がんや舌がんを含めた全身のあらゆる癌のリスク軽減に役立つことが判明しています。

また、口腔がんや食道がんといった癌に関しては、熱すぎる食べ物や飲み物を日常的に摂ることもリスクとして考えられている点も知っておきましょう。

温度の高すぎる食料や飲料を日常的に摂取すると、熱によるダメージが粘膜の細胞を傷つけて、発がんリスクを高めるという報告があるのです。そのため、メニューの内容を改善するだけでなく、熱すぎるものは適度に冷ましてから口に入れるといった食べ方の工夫も考えていきましょう。

運動する習慣を持つ

適度な運動習慣や身体活動を生活に取り入れることで、癌や心疾患など様々な健康悪化のリスクを軽減できることが知られています。また、適切な身体活動によって足腰の筋力などを維持することは、老後の生活において健康寿命を延ばすことにつながることもポイントです。

厚生労働省によれば、「健康づくりのための身体活動基準2013」の中で日本人に推奨される身体活動の量や頻度が定められており、例えば18歳~64歳の人であれば「毎日60分以上の歩行やそれと同等程度の強度の身体活動」に加えて、「息が弾み汗をかく程度の運動量を毎週60分程度」取り入れることが推奨されています。

一方、65歳以上の高齢者の場合、過度な運動によるケガなどのリスクも考慮しながら、可能な範囲で「毎日40分の身体活動(強度問わず)」を取り入れることが推奨されます。

なお、現在あまり運動したり体を動かしたりする習慣のない人であれば、運動時間や強度に関係なく、今より少しでも体を動かすことが大切であるという点も重要です。

※参照元:がん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html#anchor3

肥満を改善する

医学的に体重や肥満度と病気との関連について考えた場合、指標として「BMI値」が採用されます。

BMI値とは、身長に対する体重の値から、肥満度を数値的に算出したものであり、男性であれば「21.0~26.9」、女性であれば「21.0~24.9」の範囲にBMI値を維持することで癌リスクを最も抑えられることがポイントです。

BMI値を求める方法としては以下の計算式が使用されます。

例えば身長172cmで体重70kgの人の場合、BMI値は以下の通りです。

なお、BMI値は喫煙習慣とも相関があり、たばこを吸わない人の場合、BMI値が低くても癌の死亡リスクを抑えやすいといった特徴もあります。

※参照元:がん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html#anchor3

感染・病気に気を付ける

細菌やウイルスへの感染及びそれによる感染症は、特定の癌の発生リスクを高めることが知られており、具体例としては以下のような「感染」に注意が必要です。

特に日本人女性における癌リスクの第1位は感染となっており、男女関係なく感染状況の把握や適切な治療及び感染予防への取り組みは、癌予防としても大切です。

※引用元:がん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html#anchor3 ※参照元:厚生労働省|がん予防 (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490_00004.html

口腔内の環境改善・オーラルケア

上記の一般的な癌リスクや癌予防に関するポイントの他に、特に口腔がんや舌がんにおけるリスク因子として「不衛生な口腔内環境」が挙げられている点も見逃せません。

国立がん研究センター希少がんセンターによれば、口腔がんの発生原因として日常的な喫煙や飲酒の他に、虫歯や不適合な入れ歯による慢性的な刺激、また不衛生な口腔内環境といった要因が挙げられています。

例えば虫歯や歯周病といった口内の病気で口内環境が悪化。合わない入れ歯やインプラント、矯正器具によって口の中の粘膜が傷つけられた場合、口腔がんや舌がんの発生リスクが上昇する点に要注意です。そのため、日常的にオーラルケアに取り組んで口腔内の環境を清潔に保つことはもちろん、入れ歯やインプラント、矯正器具などを使用している人は、定期的に歯科医師の診察を受けて口内のトラブルを予防することにも取り組みましょう。

※参照元:国立がん研究センター希少がんセンター|口腔がん(含 舌がん)(こうくうがん(ふくむ ぜつがん))(https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/Oral_cancer/index.html

口腔がん・舌がんのスクリーニング・検査について

口腔がんや舌がんの早期発見に関しては、普段から自分でオーラルケアの際に口の中を鏡でチェックしたり、気になる部分を触ったりするだけでなく、医療機関で適切な検査・スクリーニングを受けることが重要です。

なお、口腔がんや舌がんの確定診断には、視診や触診、細胞診といったスクリーニングの結果を踏まえて、腫瘍組織の一部を切除し、専門の医師が顕微鏡で組織片や細胞の状態を観察する病理検査(生検)が必要となります。また、組織診によって口腔がんや舌がんの確定診断が出された場合でも、さらにリンパ節への転移の有無などを調べるために各種画像診断などが行われることも特徴です。

一般的に口腔がんや舌がんスクリーニングのために利用される検査方法としては以下のようなものがあります。

視診・触診

医師による口内の視診や触診は、口腔がんや舌がんスクリーニングとして最も重要な方法の1つです。なお、口腔がんや舌がんに関する視診や触診については、耳鼻咽喉科や歯科口腔外科、頭頸部外科といった診療科を受診した上で専門的なスキルを備えた医師による診断を受けることも大切です。

視診のポイントとしては、口腔内の粘膜や舌を見て、赤くなっている部分や白板がないかをチェックします。また触診では口内だけでなく、首のリンパ節への転移がないかどうか指で触れるといったことも行われます。

細胞診

口腔がんや舌がんスクリーニングとして行われる病理検査には、組織片を切除して行う「組織診(生検)」だけでなく、病変を綿棒などでこすって細胞を採取し、それを顕微鏡で検査して行う「細胞診」も重要です。

なお、顕微鏡による細胞診は病理医が担当します。

組織診(生検)

細胞診だけでは状況を把握できない場合、癌が疑われる部分の組織や病変組織の一部を麻酔下で切除して、その組織片を顕微鏡によって病理医がチェックし、悪性・良性や癌の種類などを診断します。組織診は肉体的にダメージが生じる反面、細胞診よりも診断率を高めやすいため、口腔がんや舌がんの確定診断にも組織診が採用されやすいことはポイントです。

超音波検査(エコー検査)

超音波検査(エコー検査)は、超音波を発する装置を患者の体表に当てて体内へ超音波を伝え、反響してきた音波を視覚化することで体内の状態を画像や映像として取得する画像診断の方法です。

口腔がんや舌がんの患者において、超音波による検査は癌の範囲やリンパ節への転移の有無を調べるために用いられており、放射線を使用しないため被曝リスクの恐れがないことも特徴となります。

CT検査(頚部~骨盤)

CT検査とは、放射線を使った画像診断の1種であり、人体の内部を断面的に撮影することができる検査です。CT検査は全身の状態を詳しく調べられる画像診断であり、口腔がんや舌がんの患者において全身への転移の有無などを調べる上でも有用となります。

CT検査は被検者の体内を3次元的に撮影できるため、癌のサイズや位置、範囲など様々な情報を得られやすい反面、放射線による被曝リスクがあり、妊娠中の女性など条件によっては検査を受けられないこともあります。

MRI検査

MRI検査も被検者の体内を立体的に再現する画像診断の方法であり、CT検査と異なって放射線の代わりに強力な磁気(磁力)を使用することが特徴です。

MRI検査では歯や骨以外の軟組織についても詳細に診断することが可能であり、放射線を使用しないため被曝リスクもありません。ただし、MRI検査では鮮明な画像を取得するために造影剤を投与する場合があり、あらかじめ造影剤に対する薬物アレルギーの有無についてチェックしなければなりません。

PET検査

PET検査は放射線を利用した画像診断の1種です。あらかじめ被検者の体内へ放射性物質を含んだブドウ糖を投与し、改めて患者の対外から放射性物質をターゲットとして撮影することで、患者の体内におけるブドウ糖の広がりや集積状況を調べます。

PET検査の仕組みとしては、癌細胞は通常の細胞よりも多くのブドウ糖を取り込みやすい性質がベースとなっており、放射性物質によって処理されたブドウ糖が異常に集中している部分に、癌細胞や腫瘍組織が存在していると判断できます。

なお、PET検査では骨への転移も調べられる上、PET検査にCT検査を組み合わせて精度を高めたPET-CT検査も有効です。

X線撮影

X線検査は放射線の1種である「X線」を使って、被検者の体内を透過して撮影する画像診断の方法です。口腔がんや舌がんの患者に対しては歯科用X線検査を使って、歯肉がんなどが骨へ浸潤していないかどうかをチェックします。

アイソトープ検査

アイソトープとは「放射性同位元素」のことであり、アイソトープ検査ではあらかじめ被検者へアイソトープ薬剤を静脈投与した上で、その集積状況を撮影して調べます。

アイソトープは骨の再生が活発化している部位へ集積しやすい特性を有しており、口腔がんや舌がんによって頭部やあごの骨などへ癌が転移している可能性について、アイソトープ検査で調べることが可能です。

血液検査(腫瘍マーカー)

癌の中には特定の物質(腫瘍マーカー)を産生するものがあり、血液を採取してそれらの物質の有無を調べることで、それぞれの癌のリスクを診断することが可能となります。

腫瘍マーカーは様々なものが同定されており、血液検査だけで癌リスクを簡易的に調べられることが特徴です。一方、口腔がんに関しては確定診断に用いられる腫瘍マーカーが同定されておらず、また癌細胞以外の原因で腫瘍マーカーの数値が上昇することもあるため、血液検査はあくまでも補助的な検査にとどまることも重要です。

口腔がん・舌がんのスクリーニングのリスク

口腔がんや舌がんスクリーニングは決して100%の精度で癌の有無や状態を診断できるものではありません。そのため、各種スクリーニングは単体で用いるのではなく、多角的なアプローチで癌の診断や転移の有無について調べることが大切です。

ここでは口腔がんや舌がんのスクリーニングで懸念されるリスクやデメリットについて把握しておきましょう。

検査結果が偽陰性の可能性がある

偽陰性とは、本来は「陽性」と診断されるべき検査において、誤って「陰性」の結果が出てしまうことです。偽陰性となった場合、速やかに癌治療へ進むべき患者が、そのまま見過ごされてしまう恐れが高まります。

あらゆる検査やスクリーニングにおいて偽陰性のリスクをゼロにすることはできないため、癌リスクが高いと思われる人については、1つの方法で陰性となった場合でも他の方法で多重チェックをすることが肝要です。

検査結果が偽陽性の可能性がある

偽陽性は、偽陰性の反対であり、本来は「陰性」と診断されるべき検査で誤って「陽性」と診断されることです。

偽陽性になった場合、癌治療や組織生検などの必要のない患者にも治療や検査が行われるため、患者の負担が増大し、合併症や副作用のリスクも高まります。また自分が癌でないにもかかわらず癌患者だと思い込み、精神的に大きな負担を背負ってしまうことも問題です。

過剰診断の可能性がある

現代医療によって検査精度が高まった結果、本来であれば経過観察で済むような癌細胞などについても検査で発見され「要治療」と診断されてしまうことがあります。

過剰診断は治療を必要としない人に対して、様々な検査や治療を強いてしまう恐れがあり、肉体的・精神的負担だけでなく、治療費や入院・通院といった経済的・時間的負担を発生させかねない点で問題です。

がんを発見した場合でも健康状態の改善が難しい場合がある

患者によっては癌を発見された時点ですでに転移や浸潤が進んでおり、標準治療による対処だけで根治を目指せない場合もあるでしょう。

セルフチェック

口腔がん・舌がんの早期発見・早期治療を叶えるために、普段から予防意識を高めることは大切であり、その一環として口腔がん・舌がんのセルフチェックがあります。

一般的に癌の発見や診断には医学的知見や専門知識が必要ですが、例えば口腔がんは様々な癌の中でも比較的発見しやすいとされており、患者自身が違和感や気になる症状としてチェックしやすいこともポイントです。

口腔がんのセルフチェックの方法としては、鏡を使って口の中を観察したり、気になる部分を指で触ってみたりといった方法があります。

※参照元:国立がん研究センター希少がんセンター|口腔がん(https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/Oral_cancer/index.html

セルフチェックの流れ

口腔がんや舌がんのセルフチェックを行う場合、基本的には以下のような流れで行います。

  1. 入れ歯などを使用している場合、それらを外す。
  2. 歯磨きなどを行って口の中を清潔にする。
  3. 明るい場所で、口内を十分に見られるサイズの鏡を用意する。
  4. 唇の内側の違和感をチェックする。
  5. 歯茎・歯肉の外側をチェックする。
  6. 頬の内側をチェックする。
  7. 歯茎・歯肉の内側をチェックする。
  8. 上顎の状態をチェックする。
  9. 舌の表面や側面、裏面などをチェックする。
  10. 舌を持ち上げて口腔底をチェックする。

腫れやしこり、異物感、また長期間(2週間以上)続く口内炎などが存在する場合、速やかに地域の医療機関や口腔外科専門医などへ相談して診察を受けることが肝要です。

セルフチェック時の注意点

セルフチェックの際に注意すべきポイントとして、まず口内を触る指などを清潔にしておくことが大切です。また爪などで粘膜を傷つけないよう、できればガーゼや柔らかいティッシュペーパーなどを指に巻いておきましょう。

加えて、セルフチェックは定期的に行うことが重要です。そのため毎月1回程度はしっかりとセルフチェックを行うようにしてください。特に飲酒や喫煙といったハイリスク習慣のある人は日頃から意識して口腔内の様子をチェックする習慣を身につけることが大切です。

患者のQOL(生活の質)に関する情報

口腔がんや舌がんは食事や会話など日常生活において不可欠な動作を司る口や舌に癌が発生するため、癌治療による影響や術後の変化によって日々のQOLが著しく低下するといったケースも珍しくありません。そのため、口腔がん・舌がん患者にとっては癌治療を開始した時点から多角的な緩和ケアやサポートによってQOLの低下を防ぎつつ、また治療後の生活に関してもそれぞれの患者の状態に合わせて適切な工夫を意識することが大切です

ここでは口腔がん・舌がん患者のQOL改善に役立つ具体的なポイントをまとめていますので、患者や家族の暮らし方を考える際の情報としてご活用ください。

食事を楽しむための「嚥下リハビリ」と「食事の工夫」

口腔がん患者や舌がん患者のQOLを考える上で、最重要になるポイントの1つが「食事」です。口腔がん・舌がん患者はそもそも治療を開始する前から食べにくさや食欲不振といった影響を自覚することがありますが、治療によって舌の腫瘍の切除などを行った場合、術後の食事は術前と根本的な変化が生じることになります。

舌を失ったり、舌の機能が低下したりした場合、口に入れた食べ物を上手くまとめられなくなったり、咀嚼したものを上手く飲み込めなくなったりといった影響が生じやすくなります。そのため、口腔がん・舌がん患者は術後早期から嚥下リハビリを行ったり、食べやすく飲み込みやすい刻み食やとろみ食を主にしたりといった工夫が大切です。

スムーズな会話を助ける「発声リハビリ」と「補助具(PAP)」

舌の機能として食事と並んで重要なものが「発声・発音」です。人は言葉を発する際、無意識に舌の動きで音の調整を行っており、舌の機能が低下したり一部を喪失したりすれば、術前の感覚では発声や発話が難しくなってしまう可能性も高まります。

そのため口腔がん・舌がん患者では食事に関するリハビリや工夫と同時に、発声や会話といったコミュニケーションに関するリハビリも進めていくことが不可欠です。

口腔がん・舌がん患者の会話コミュニケーションに関するリハビリは、専門家である言語聴覚士によるサポートが重要となっており、医師の指導下や言語聴覚士の管理下で適切な順序の訓練を行うことが欠かせません。

なお、リハビリだけでは上手に言葉を話せない場合、舌の動きをサポートする「PAP(舌接触補助床)」といった補助装置を装着することも有用です。

合併症を防ぎ快適さを保つ「口腔ケア」

唾液は「耳下腺・顎下腺・舌下腺」などの唾液腺で作られ、口の中に分泌されて食べ物の消化を助けたり、口内を清潔な状態に保ったりといった作用を発揮します。しかし口腔がん・舌がん患者が舌や口腔内組織の切除などを行った場合、口の中へ分泌される唾液量が減少し、口の中の雑菌を殺すための成分が減少して口内環境が悪化しやすくなるといった問題が起こり得ます。

唾液量が減少することで口内の衛生環境が悪化すれば、虫歯や歯周病などの病気になるリスクが高まり、また嚥下機能の低下と合わさって誤嚥性肺炎のリスクが高まるといった問題につながりかねません。そのため口腔がん・舌がん患者にとって日常的なオーラルケアは重要であり、QOL向上だけでなく再発予防にもつながることも覚えておきましょう。

一人で抱え込まない!患者会やカウンセリングの活用

口腔がん・舌がん患者にとって、食事の悩みや会話の負担は重大であり、その喪失感や不安感はなかなか健康な人では想像しにくいものです。そのため口腔がん・舌がん患者の中にはそれらの感情を一人で抱え込んだり、家族に心配させないように隠したりする人も少なくありません。

しかしネガティブな感情や精神的ストレスが増大すると、日々のQOLが低下するだけでなく、治療意欲が低下したり肉体的にも悪い影響を及ぼしたりする恐れが高まります。

口腔がん・舌がん患者のメンタルケアに関しては専門家によるカウンセリングなどのサポートに加えて、「患者会(ピアサポート)」へ参加して同じ苦労を抱える人と悩みを共有したり、困難を克服した患者の体験談を聞いたりといったことも有効です。

生活を守るための公的制度(障害者手帳など)

癌治療や再発予防には様々な医療費やコストが発生するため、患者の中には経済的負担が精神的ストレスに直結するケースも多々あります。そのため癌患者のQOL改善には民間の医療保険(がん保険)や高額療養費制度といった公的支援を活用し、お金の心配を軽減できるよう取り組むことが大切です。

また、口腔がん・舌がんの治療によって咀嚼や言語機能などに障害が残った場合、身体障害者手帳を申請できることもあります。障害の程度によっては障害年金を受給できる可能性もあるため、ソーシャルワーカーなど専門家へ相談してみましょう。

なお、障害厚生年金の受給は3級の障害認定が必要となりますが、口腔がん・舌がんの患者において、障害厚生年金を受給するほどの障害でないものの、何らからの軽度の障害が残った場合、一時金として「障害手当金」を受け取れる可能性があります。そのため障害年金を継続的に受け取ることができなくとも、障害手当金を受け取れるかどうか、まずはソーシャルワーカーや地域の相談センターなどへ相談して確認することが大切です。

口腔がん・舌がん患者の声・体験談

通院治療に切り換えて前向きになれた

(前略)次もまた退院しても抗がん剤やってくれって言われたんですけど入院か通院かわからなくて…最初は入院って言われたんですよ。でもなんか入院しなくていいって言われて通院でってなってそれもあるんで、ポジティブに。(後略)

引用元:がんノート|再発・敗血症・余命宣告…それでも「生きたい」——舌がん体験者・西村さんの物語

家族や友人の支えで癌を乗り越えた

(前略)家族の支えがなければ、がんを乗り越えることもできなかったと思います。スノーボードでまた活躍できたのも仲間の支えがあったからですし、選挙で当選できたのも、仲間の力があったからこそだと思っています。それまで、家族や仲間、友人という存在は「いて当たり前」だと思っていました。でも、それが実はどれだけありがたいことなのか。病気になって、初めて気付くことができました。(後略)

引用元:がんノート|諦めなければ必ず夢はかなう

早めに検査をしておけば良かったと思う

(前略)6月とか、それぐらいのときから、妻が「精密検査に行け」みたいなことを、しつこく言ってた時期があって、適当に流してたんですけど、たまには人の言うことを聞いて、その段階で行ってれば、もうちょっと違う方向もあったのかなっていうのは思いますね。(後略)

引用元:がんノート|絶望の中から光を探して

食事のリハビリを朝晩がんばっています

(前略)構音(発音) 第三者には 聞き取れます。といわれます。
嚥下は 少々 難有ります。唾液が少ないせいも有りますが、飲み込む量が健常時に比べると半分。飲み込む力も落ちているせいで、時間は倍掛かる状態です。喉に引っ掛かる感じがあり、3度程飲み込む動作を行わないと、食べた物が落ちていきません。
言語聴覚士から 飲み込む力を付けるため 3種類の 喉の体操を 教えて頂き 朝晩 実践しています。(後略)

引用元:Caloo|口内炎と思い、10年放って置いた舌癌。腫瘍を取り除いた後に 舌の再建でした。 (写真あり)

念のための検査で癌を発見

(前略)舌の裏を耳鼻科の先生が見てから、ナイロン手袋を付けて舌を触って、考えこむような表情をしました。そして、いつから症状があるのか詳しく聞かれて、もしかすると癌かもしれないので、細胞診をしてくるようにと、紹介状をもらい、総合病院にいきました。
総合病院の耳鼻科の先生は、患部を見た途端に、細胞診の予約を入れましょうと言うので、最短の一週間後の空いている日に細胞診の予約を入れて、帰宅しました。そして、細胞診当日、先生が前回より大きくなっていますねと言って、しばらく考えてから、まだ腫瘍小さいから全部取ってしまいましょうと提案しました。(後略)

引用元:Caloo|口内炎だと思っていたら、舌癌でした。日帰り、部分麻酔で腫瘍を摘出。

術後QOLがマウスピースで劇的に改善

(前略)医師から告げられた病名は「舌根がん」。聞いたこともない病名でした。まず「放射線治療」で経過を診ようということになり、6月に入院、8月までに20回放射線治療を受けました。(中略)あるとき、歯科医師から口腔外科を紹介され、そこで初めて口腔リハビリの存在を知り、飲み込みや滑舌を補助するマウスピースを作りました。マウスピースのおかげで、食べ物を喉の奥に送りやすくなったり、話すとき、 空気が漏れにくくなりました。このような情報を入手できるか否かで、術後のQOLが大きく変わってくることを身をもって感じたのです。(後略)

引用元:頭頸部がん患者友の会|体験談 佐野敏夫の場合(舌根がん)

自分の体験が誰かの助けになることを願って

(前略)舌がんの自覚症状を感じはじめたのは、2014年10月中旬です。もともと口内炎ができやすい体質だったので普段はあまり気にしないのですが、なぜ時期まで覚えているかというと、赴任先の伊万里市のお祭りの期間中だったからです。(中略)同じがんで苦しむ人が一人でも少なくなるように、私も微力ながら患者会や団体の活動などを通じて貢献していきたいと考えております。
最後になりますが、私のこの経験が、いま悩みを抱えている方、これから治療に向き合っていく方、その方を支えるご家族をはじめ、普段あまりがんに接することのない皆さまにとって、少しでも参考になれば幸いです。

引用元:オンコロ|舌がん体験者 實原 和希さん

夢があったから治療も乗り切れた

2015年7月末、趣味のサーフィンで耳に水が溜まったことから耳鼻咽喉科のクリニックを受診し、舌の異常が見つかりました。自覚症状は全くありませんでした。(中略)私のこれからの夢は、全日本の大会で優勝することです。なぜなら、がんじゃない人の中で活躍することは、がんの啓発になると同時に、がんサバイバーの励みにもなると思うからです。そして病気や障害があっても、誰もが夢を持てる社会の実現に貢献していきたいと思っています。

引用元:オンコロ|【舌がん体験談】すべては夢のために~幾度の手術を乗り越えて~

事実を受け止めて前向きになる道を考える

最初の異変は、なかなか治らない口内炎でした。市販薬を試しても改善せず、かかりつけクリニックの耳鼻科を受診したところ、口内炎という診断でした。しかし、処方された薬を使っても症状は一向に良くならず、より詳しい検査を勧められました。(中略)受け入れた上で、次にどう行動するかを考え続けることが、道を開きます。情報を集め、人に相談し、自分にとって最善の選択を探し続けてください。(後略)

引用元:オンコロ|舌がんの闘病生活を通じてたどり着いた「がんに感謝する」という境地

癌になったことで気づけたものに感謝

あれは2019年の夏ごろだったと思います。口の中がなんとなく痛い、という違和感がありました。ただ、その頃ちょうど激辛料理に夢中になっていて、「辛いものの食べ過ぎで口内炎がたくさんできたのかな」くらいにしか思っていませんでした。(中略)つらい治療や現実と向き合う中で、ぜひ「がんになっても良かったと思える面」を探してみてください。もちろん、悪いことばかりに目が行きがちですが、必ずしもそうではありません。私にとっては、がんになったことで、周りの人の温かさに改めて気づかされました。友人たちとの関係も、以前よりずっと深まったと感じています。

引用元:オンコロ|治らない口腔内の痛みで判明した舌がん、幼い息子と夫のサポートで日常を取り戻すまで

口腔がん・舌がんや治療法に対する研究・論文

多くの米国人が飲酒による癌リスクを認識していない

2025年5月、アメリカのテキサス大学MDアンダーソンがんセンターが新たに発表した癌リスクと飲酒(アルコール)との関連についての研究として、2022年健康情報国家動向調査のデータの結果から、アメリカ人の成人のおよそ40%しかアルコールと癌リスクの因果関係を認知していないというデータが示されました。

この研究結果はJAMA Oncology誌で発表されており、米国成人として回答した5,937人のうち39%はアルコールと癌リスクに関して認識しておらず、20%はアルコールと癌の因果関係について読んだり聞いたりした経験すら不明で、また30%あまりはそもそも癌の予防は不可能と考えていたそうです。

しかし、アルコールは明確に発癌リスクと関連しており、特に口腔がんや喉頭がん、咽頭がん・食道がん・大腸がん・肝臓がん・乳がんなどの癌は、低量のアルコールであっても癌の発生率を上昇させることが知られています。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|飲酒によるがんリスクを、ほとんどの米国人が認識していない

頭頸部がんに対する陽子線治療の症例について

2025年8月22日、国立がん研究センター希少がんセンターのオンラインセミナーとして「頭頸部がんと陽子線治療―どの場面で重要?陽子線治療の話―」をテーマにとする講演が開催され、国立がん研究センター東病院放射線治療科長の全田貞幹氏が「頭頸部がんと陽子線治療」について講演しました。

陽子線は水素イオンを用いる粒子線で、腫瘍部でエネルギーを放出して止まるため、正常組織への影響を抑えられると解説しました。陽子線とX線は、間接作用でがん細胞のDNAを破壊するもので、効果発現には数カ月を要します。手術で顔の変形や機能障害のリスクが高い鼻・副鼻腔がんや、脳に近い脊索腫などでは、治療成績の向上と合併症の軽減に有効性が報告されており、今後の研究が進められています。

一方、広範囲照射が必要な中咽頭・下咽頭・喉頭の扁平上皮がんはIMRTが推奨されます。全田氏は、治療施設は頭頸部外科医のいる専門機関を選ぶこと、手術を勧められた場合でも、後悔しないために手術前に陽子線治療医のセカンドオピニオンを受けるよう呼びかけました。

参照元:がんナビ|国立がん研究センター・希少がんセミナー2025(13)頭頸部がんの陽子線治療、治療の流れや適応は?

口腔がんを含む頭頸部がんのサバイバーシップとサポート

2025年5月9日、国立がん研究希少がんセンターと日本対がん協会は共同で「頭頸部がんにおけるサバイバーシップ」をテーマにしたオンライン希少がんセミナーを開催しました。

頭頸部がんには、口腔がん・咽頭がん・喉頭がん・鼻副鼻腔がんなど、頭部から頸部にかけて発生する癌が含まれており、特に顔の外見の変化や味覚・聴覚・嗅覚の変化といった日常生活にも大きな影響を及ぼすことが知られています。頭頸部がんの患者では肉体的な負担だけでなく心の負担や変化が生じるケースも少なくなく、癌の治療を終えてからも多角的なサポートや対策が重要です。

頭頸部がんでは治療後も慢性的な痛みが持続する人も多く、明確な要因が不明なままとなることもあり、中には心理社会的な要因が考えられることもあります。そのため痛み止めだけで対処するのでなく、心理療法やリハビリテーションなど色々なアプローチで考えることが大切です。

参照元:がんナビ|国立がん研究センター希少がんセミナー2025(6)頭頸部がんにおけるサバイバーシップと相談支援

中性子捕捉療法(BNCT)の有効性

中性子捕捉療法(BNCT)とは、あらかじめ癌細胞へホウ素という元素を取り込ませた上で、中性子を照射することで、ホウ素と中性子の核反応を引き起こし、その際に発生するエネルギーで癌細胞のDNAを攻撃して治療しようとするものです。

中性子捕捉療法(BNCT)は古くから理論提唱がされていましたが、2012年に日本の京都大学と住友重機械工業がBNCT用加速器の開発に成功し、南東北BNCT研究センターが2016年から加速器BNCT施設として運用されました。

南東北BNCT研究センターでは2016年から2018年にかけてBNCTの第2相臨床試験を行い、頭頸部がんについて薬事承認を得る土台を構築しました。

参照元:がんナビ|コロナ時代の最先端がん放射線治療(2)中性子捕捉療法(BNCT)1回の治療で再発頭頸部がんの多くが完全寛解

アメリカでHPV関連口腔がんの罹患率が上昇している

2025年9月、アメリカの「米国癌学会(AACR)」は年次報告書として「Cancer Progress Report第15版」を発表しました。報告書には米国内における癌患者の罹患率や死亡率、サバイバーシップに関する情報や統計データが包括的にまとめられています。また、同学会は米国社会へ癌情報についての最新情報をアナウンスするとともに、連邦政府による癌の研究や分析といった癌関連投資が国民の健康増進や医学的進歩に大きく影響しているという点を強調しています。

報告書では様々な癌の種類や米国における癌患者の状況が記載されていますが、例えば米国においてがん予防や早期発見の手段、最新の治療法などが続々と研究・開発されている一方、一部の癌患者の罹患率について上昇傾向にあるといった事実が報告されている点も見逃せません。

具体的な癌の種類として、米国内の全癌罹患率が比較的安定傾向にある中、HPV関連口腔がんや子宮がん、膵臓がん、肝臓がんといった特定の癌の罹患率が上昇していることが挙げられております。喫煙習慣のない人の肺がんや50歳以下の成人の癌患者が増加している点が課題としてまとめられました。

報告書では過去の数十年間における各分野のがん研究は、様々な研究者の献身的努力によって成し遂げられたものであり、その進歩や成功については米国国立衛生研究所(NIH)の支援や関与が不可欠であったことも指摘されています。そのため、同学会は今後もNIHなど連邦政府や政府機関による支援やがん研究へのバックアップが安定的に継続されることを求めました。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|米国癌学会(AACR)年次報告書2025、がん研究への連邦投資の救命効果を強調

頭頸部がんにおいて「陽子線治療」が保険適用となる場合

2025年8月22日、国立がん研究センター希少がんセンターの主催により「頭頸部がんと陽子線治療―どの場面で重要? 陽子線治療の話―」をテーマとするオンラインセミナーが開催されました。同セミナーにおいて、国立がん研究センター東病院放射線治療科長である全田貞幹氏らが講演を行い、口腔がんや咽頭がん、鼻腔がんなどの「頭頸部がん」に対する陽子線治療の有効性や実情などを語っています。

頭頸部がんは、口腔がんや咽頭がんの中でも扁平上皮がんを除いて、首から上に発生するがんの総称であり、扁平上皮がん以外の頭頸部がんについては陽子線治療が保険適用として承認されていることがポイントです。一方、口腔がんでも扁平上皮がんについては保険適用となっておらず、そのような癌に対しては通常の放射線を使った強度変調放射線治療などが推奨されています。

保険適用の陽子線治療を行う場合、最初から陽子線治療を行うことや、手術を行った後に術後補助療法として陽子線治療を行うことなど、複数の選択肢があります。どちらの治療法が適しているかは癌のサイズや手術の難易度によっても異なるため、まずは主治医としっかり相談したうえで頭頸部外科・耳鼻咽喉科の専門医のいる医療施設で陽子線治療を受けられるように調べることが重要です。

参照元:がんナビ|国立がん研究センター・希少がんセミナー2025(13)頭頸部がんの陽子線治療、治療の流れや適応は?

局所進行中下咽頭がん・口腔がんに「RADPLAT」は不向き?

2025年5月29日から5月31日にかけて東京の虎ノ門で開催された日本インターベンショナルラジオロジー(IVR)学会の「第54回学会総会」において、日本頭頸部癌学会・日本IVR学会合同シンポジウムが企画され、「上顎洞がんのRADPLAT(ラドプラット/放射線併用超選択的動注化学療法)の普及」を題材とした様々な報告が行われました。

RADPLATは「シスプラチン(cisplatin)」と放射線療法(radiation)を組み合わせた造語。腫瘍細胞へ栄養を送っている血管へ抗がん剤「シスプラチン」を直接注入する「超選択的シスプラチン動注療法」に、放射線療法を併用することで、局所進行上顎洞がんなどを治療する方法です。日本国内では局所進行上顎洞がんを対象としたRADPLATが普及しつつあり、今後の展開が期待されています。

一方、欧米諸国において局所進行上顎洞がんなどの治癒を目的としたRADPLATはあまり行われていない点は無視できません。その理由として、手術困難な局所進行中下咽頭がん・口腔がんに対する治療では、動注シスプラチンを併用した化学放射線療法と、静注化学放射線療法との間で全生存率に有意な差が認められなかったというオランダの報告(2010年)があると考えられています。

ただし、当時のオランダの報告には問題点もあると指摘されており、神戸大学医学部附属病院の四宮弘隆氏はRADPLATの効果について好意的な評価が考えられると語りました。

参照元:がんナビ|日本頭頸部癌学会・日本IVR学会合同シンポジウム(1)眼球や頬の温存と治癒が期待できる局所進行上顎洞がんのRADPLAT

局所進行頭頸部扁平上皮がんに「周術期キイトルーダ」が有用の可能性

2025年4月24日から30日の期間にアメリカのシカゴで開催された「米国癌学会(AACR)2025」において、局所進行頭頸部扁平上皮がんに対する「周術期キイトルーダ」の有効性や安全性の検討を目的として行われた第3相KEYNOTE-689試験の結果が発表されました。

ランダム化非盲検第3相試験として行われた同試験は、III/IVA期の口腔がんなどを含んだ局所進行頭頸部扁平上皮がんの患者を対象として、標準治療である「術後放射線治療±化学療法」を行ったグループ(標準治療群)と、標準治療へ術前・術後のキイトルーダを加えたグループ(キイトルーダ併用群)について、それぞれの治療効果を比較検証したものです。

試験の結果、無イベント生存率(EFS)や病理学的大奏効(mPR)率などに関して、キイトルーダ併用群の方に有意な改善が認められました。これにより、今後は局所進行頭頸部扁平上皮がんの標準治療として、周術期キイトルーダ治療を追加することの価値が期待されるということです。

参照元:オンコロ|局所進行頭頸部扁平上皮がんの標準療法に対する周術期キイトルーダの追加、無イベント生存率を有意に改善

口腔がんなど頭頸部がんの治療として期待される「光免疫療法」

2025年2月18日、楽天メディカル株式会社が主催するセミナー「頭頸部がん治療の最新状況 ~頭頸部アルミノックス治療の最新リアルワールドデータ~」が開催され、愛知がんセンター副院長の花井信広医師による講演などが行われました。

頭頸部がんは口腔がんなど様々な部位を含んだ癌の総称であり、全体的には世界でも多い癌である一方、各部位の癌そのものは希少がんに分類され、臨床研究についてもまだまだ発展が期待されている癌です。

そのような状況において、頭頸部がんの治療は主として手術や放射線治療であったものの、近年は分子標的薬など様々な抗がん剤が使われるようになり、さらに「光免疫療法」も実用化された点は見逃せません。

光免疫療法は、腫瘍細胞の表面に特定の抗体-光感受性物質複合体を結合させてからレーザーを照射することで腫瘍細胞を攻撃する治療法です。日本国内における光免疫療法の臨床研究としては2つのリアルデータが報告されており、例えば2021年1月~2022年9月に実施されたアルミノックス療法の臨床研究では、対象患者の38.2%において原発巣が口唇・口腔がんでした。

参照元:オンコロ|2つのリアルワールドデータからみる光免疫療法による頭頸部がん治療の現状

造血幹細胞移植後に口腔咽頭がんの発症リスクが増加する可能性

2022年11月19日から同月20日に開催された、NPO法人キャンサーネットジャパン主催の「血液がんフォーラム2022」において、国立がん研究センター中央病院造血幹細胞移植科病棟医長の稲本賢弘氏から造血幹細胞移植後の二次がんリスクについての発表が行われました。

血液がんの治療法としては化学療法や放射線療法の他に、家族や他人から骨髄などに含まれる造血幹細胞を採取して移植する「造血幹細胞移植」も行われています。しかし他人からの骨髄移植などの造血幹細胞移植を受けた場合、移植後に患者の体内で免疫反応(拒絶反応)が発生し、それが残存する癌細胞や臓器などを攻撃することで治療効果を高める「GVL効果(移植片対白血病効果)」が起こります。これは癌治療として重要である一方、患者に大きなダメージを与える諸刃の剣となっており、さらにGVL効果や免疫抑制剤の長期的な使用が新たな癌の発生リスクを高めることも問題です。

日本人における移植治療後の二次がんリスクとしては、口腔咽頭がんが特に多いものとなっており、その他にも食道がんや大腸がんなど消化器系の癌が多くなるようです。

参照元:がんナビ|血液がんフォーラム2022より(4)造血細胞移植後の二次がんのリスクを知って備えよう

口腔がん由来の頭頸部扁平上皮癌に「ドセタキセル+ペムブロリズマブ」が有用

2025年10月17日~21日の期間にベルリン(ドイツ)で開催された「欧州臨床腫瘍学会2025(ESMO 2025)」において、日本の北海道大学大学院医学研究院内科系部門内科学分野腫瘍内科学教室の清水康氏が研究報告を行い、その中で再発/転移性の頭頸部扁平上皮癌に対して、「ドセタキセル+ペムブロリズマブ」併用療法が全奏効率(ORR)や病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)など様々な点で持続的な抗腫瘍効果をもたらしたという結果が発表されました。

研究結果は、国内6施設が参加する多施設共同単群フェーズ2試験POPLARの解析にもとづいており、治験対象となった条件は20歳以上で、中咽頭がん、口腔がん、下咽頭または咽頭がんを原発とした再発/転移性の頭頸部扁平上皮癌(R/M HNSCC)の患者となっています。

研究の結果、口腔がんを含めた癌を原発とする頭頸部扁平上皮への再発及び転移癌患者に対して、有効な治療の選択肢につながる可能性が示唆されました。

参照元:がんナビ|再発/転移性の頭頸部扁平上皮癌でドセタキセル+ペムブロリズマブは持続的で有望な抗腫瘍効果を示す【ESMO 2025】

術後呼吸器合併症に影響する「舌圧」には舌の形状が関連

関西医科大学の研究グループが「日本がん・リンパ浮腫理学療法学会誌 第3巻特別号」において発表した研究報告によれば、頭頸部がんの患者の術後呼吸器合併症に関与する「舌圧」に関して、「舌の形状」が影響を与えているということが示唆されました。

舌圧は舌が上あごに接触する際の力(圧力)であり、舌の筋肉によって動かされる舌が上あごへ押し当てられることで舌圧が発生します。そして呼吸や食事といった機能と舌圧は関連しており、頭頸部がんの患者において術後リハビリとして舌の訓練などが重要になる理由の1つです。

一方、舌圧には舌の筋肉の出力だけでなく、個々の患者が持っている舌の形状(個人差)が影響しており、舌のボリュームよりも形状の方が舌圧に関連している可能性が指摘されました。なお、同研究によって今後は内舌筋の形状を指標として、術後呼吸器合併症の予防やその他の癌治療などにおける有効な治療戦略開発につなげられる可能性が期待されています。

参照元:J-Stage|「食道がん患者の舌圧には舌のボリュームではなく舌形状が関連する(日本がん・リンパ浮腫理学療法学会誌)」【PDF】

口腔がん患者の移動機能回復にロコモ度テストが有用

地方独立行政法人埼玉県立病院機構埼玉県立がんセンターの吉原氏や小栁氏らによる研究チームは、「日本がん・リンパ浮腫理学療法学会誌 第3巻特別号」において、口腔がん患者の移動機能回復に関する評価法として、「ロコモ度テスト」の有用性を示唆する研究結果を発表しました。

口腔がん患者は術後の影響により、体重が減少したり運動機能が低下したり、筋肉量や筋力が減少する二次性サルコペニアが発生するといった確率が高まります。そのため、研究チームは患者の運動機能や身体機能について評価する指標として「ロコモ度テスト」を採用し、患者の移動能力や身体機能の回復状況について検証しました。

ロコモ度テストは下肢の筋力や歩幅、身体能力などを総合的に評価することで、移動機能が低下した状態「ロコモ」であるかどうかを診断するテストです。

研究の結果、口腔がん患者の術後および退院時点における移動能力や運動機能を評価し、退院時指導の内容を検証するために、ロコモ度テストが有用であることが確認されました。

参照元:J-Stage|「口腔癌患者の移動機能回復に向けた評価法:ロコモ度テストの有用性検証(日本がん・リンパ浮腫理学療法学会誌)」【PDF】

口腔がん患者の異常の自覚から受診まで1ヶ月程度を要する

口腔がん患者の治療を考える上で、癌の早期発見・早期治療は重要なファクターであり、予後の改善にはまず早期発見を確実に進めることが重要とされています。そこで東京歯科大学の研究チームは、口腔がん患者が異常や症状を自覚してから、実際に医療機関を受診するまでの期間について、その長さや、また初診時の状態などを総合的に分析しました。

対象となったサンプルは、2018年1月1日から同年12月31日までの1年間に東京歯科大学口腔がんセンターを受診し、口腔がんと診断された一次症例です。

研究の結果、初診患者112例(平均年齢67.5歳)において、症状の自覚から医療機関の受診までおよそ1ヶ月の期間を要していた患者が多いことが分かりました。また初診時に無症状もしくは違和感のみを訴えている患者が全体の3分の1程度になっており、このような軽微な自覚症状も早期受診や発見を遅らせてしまう一因であるとも指摘されています。

なお、進行性の癌においては受診までの期間が比較的短くなる点も指摘されました。

参照元:「№3:口腔癌患者の病悩期間に関する後方視的検討(歯科学報 Vol.125. No.4(2026))」【PDF】

特定年齢層の女性で舌がんが増加している可能性

2026年1月18日付の「Cancer Medicine」において、稲毛病院整形外科の城戸優充氏や京都府立医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室の辻川敬裕氏らによる発表として、全国レセプトデータを解析した舌がんの動向に関する研究結果が掲載されました。

そもそも舌がんの罹患率は国際的に増加傾向であり、特に若年層や女性の患者の増加が懸念されています。一方、日本国内では舌がん患者の動向に関して明確な研究や分析が十分に行われていなかった現状がありました。

今回の研究では、研究チームは国民皆保険制度にもとづいて、95%以上の保険請求を網羅するレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用し、全国的な舌がんの罹患状況や年次推移、また患者の年齢・性別といった特徴の分析を行いました。

結果として、2016年から2022年までの医科・歯科レセプトデータを解析したところ、全体的な手術の男女比は男性がやや優勢であったものの、手術率は女性全体で有意に増加しており、さらに40~44歳と60~64歳の女性において特に有意な増加が認められたというものです。

以上のデータから、中高年の女性において舌がんが増加している可能性が指摘され、今後は女性に対する予防対策や早期発見に向けた取り組みの検討が重視されています。

なお、本研究はあくまでも既存のレセプトデータを使った解析であり、再発・再手術や疾患分類の差といった細かな患者背景についての分類が行われていないことも事実です。

参照元:ケアネット|全国データで見えた舌がんの実像―年代・性別で異なる手術動向

中程度リスクの口腔がんの再発リスク低減に追加治療が有効

2025年11月27日付の学術誌「Head & Neck(Q1)」において、広島大学病院の小泉浩一講師らの研究チームによる研究論文として、中程度リスクの口腔がん患者に対する追加治療が、再発リスクの低減に有用であるという可能性が発表されました。

口腔がんの手術を行った患者に対する術後補助療法は、再発リスクが高いと診断された患者に対して追加の切除や化学放射線療法などが実施されています。しかし中程度の再発リスクとして診断された口腔がんの患者に対して、術後補助療法がどれほど有効であるのか示すガイドラインや専門家の合意は確立されていませんでした。

そこで研究チームは、2010年1月から2023年12月までに広島大学病院で一次治療として手術を実施した進行口腔扁平上皮癌の患者130例を対象として、術後の再発リスクや追加治療の有用性に関する調査を実施しました。

結果として、中等度リスク因子を有する口腔がん患者に術後補助療法を実施した場合、リンパ管浸潤を有する症例において有意な関連性が示されました。これにより、一部の中程度リスク口腔がん患者に対して、適切な追加治療を行うことで再発リスクを低減できる可能性が示唆されています。

今後は、再発中等度リスク因子が認められる進行口腔がんの患者に対する術後補助療法は、それぞれの患者の背景や状況を踏まえた個別化治療の一環として発展していくことが予想されています。

参照元:広島大学|【研究成果】口腔癌の「中程度リスク」に対し、 追加治療が有効であることがわかりました

光干渉断層撮影を用いた口腔がん細胞の非侵襲的観察

2026年2月24日、新潟大学医歯学総合病院口腔再建外科の羽賀健太歯科医師らによる研究グループと、株式会社SCREENホールディングス(本社・京都市上京区)による合同研究の成果として、口腔がん3次元モデル(3Dモデル)を使った光干渉断層撮影(OCT)によって、口腔がん細胞の浸潤動態の可視化とデータ解析に成功したという内容が発表されました。

同研究では、対象として、がん関連線維芽細胞を組み込むことにより腫瘍微小環境を再現された口腔がん3Dモデルが用意された上で、OCTによる画像撮影が実施されました。また撮影によって得られた画像をディープラーニング(深層学習)により解析することで、口腔がんの経時的浸潤動態を数値的に評価することに成功しています。

この結果、インビトロの口腔がん3Dモデルに対して、OCTと深層学習を併用した分析評価の有用性が示唆されており、高解像度の撮像によって、がん細胞領域と浸潤がん細胞領域、そして間質層の明確な区分け(可視化)が可能となりました。また撮像を比較評価することで細胞浸潤のモニタリングも可能となれば、3Dモデルにおける定量的評価を非侵襲に行える解析ツールやシステムの発展につながることも期待されています。

参照元:新潟大学|光干渉断層撮影による口腔がんのがん細胞浸潤を可視化-口腔がん3Dモデルにおけるがん細胞浸潤の非侵襲的・定量的評価の解析ツールとして期待-

口腔扁平上皮がん検出におけるmiRNAバイオマーカーについての分析評価

2016年1月16日、医学誌「Journal of Personalized Medicine(MDPI)」において、東北大学大学院歯学研究科顎顔面口腔腫瘍外科学分野の研究者らによる研究成果として、口腔扁平上皮がん検出におけるmiRNAバイオマーカーの診断性能などに関する評価や関連データが発表されました。

研究背景として、口腔扁平上皮がんは早期発見・早期治療が重要とされる癌である一方、現状のガイドラインにもとづいた診断法は組織生検を含んだ侵襲的方法に依存しており、どうしても患者の肉体にダメージを与えることが避けられません。そのため、患者の負担を軽減できる非侵襲的バイオマーカーの確立が期待されています。

そこで研究チームは、口腔扁平上皮がんの非侵襲的バイオマーカーとして、患者の体液から採取したmicroRNA(miRNA)を解析し、結果として血清由来miRNAが最も優れた統合診断性能を示したと同時に、体液の種類は診断精度の全体評価に影響しないということを確認しました。

これにより、患者の体液の種類を問わず安定的に検出できるmiRNAを、口腔扁平上皮がんのバイオマーカーとして活用できる可能性が示唆されています。

参照元:東北大学病院|歯科顎口腔外科 疾患制御グループ 科長の杉浦 剛教授らの論文がJournal of Personalized Medicine (MDPI)に掲載されました