いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

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乳癌へのトモセラピー(放射線)治療

なぜ放射線治療が必要なのか

「癌の摘出手術を受けたのに、なぜ放射線治療が必要なの?」「もしかしたら手術ミスで全部、癌を取り切れていないのでは?」このように考える方がいるかも知れませんが、そうとは限りません。では、なぜ放射線治療を受けなければならないのでしょうか。

医師は画像検査や病理データを元に腫瘍を切除しますが、肉眼では確認できない微小な病変(微小残存病変)が周囲に残存してしまう可能性があります。こうした病変は現在の医療技術をもってしても完全に把握・切除することが困難です。この微小病変が残存した場合、後に局所再発を引き起こすリスクがあります。

再発リスクが高い部位に放射線治療を行うことで、局所再発の可能性を低下させることができます。そのため、乳がんの手術後に主治医から放射線治療を提案された場合は、科学的根拠に基づいた補助療法であると理解することが重要です。ただし、乳房全摘術を受けていて、かつ再発のリスクが低いと判断された場合には、放射線治療が不要となることもあります。治療の要否については、担当医と十分に相談して治療方針を決めましょう。

乳癌における放射線治療の方法

通常、放射線は斜め前方と後方から、乳房または乳房があった胸壁に向けて照射されます。必要に応じて、リンパ節領域(腋窩・鎖骨上窩など)にも照射範囲を拡大することがあります。各病院やクリニックでは、日本乳癌学会などが発行するガイドラインに基づき、照射範囲を設定しています。また、放射線が患部に均等に照射されるよう、強度変調放射線治療(IMRT)などの技術を用いた治療が導入されている医療機関もあります。

治療スケジュールは、週5日(月曜日から金曜日)で行われ、合計15〜30回の治療が一般的です。2023年時点では、15回照射(約3週間)による短縮スケジュールも有効性と安全性が確認されており、条件を満たせば導入されることがあります。治療期間中に中断すると効果が低下するため、特別な事情がない限り、最後まで継続することが重要です。1回の通院にかかる所要時間は1〜2時間程度ですので、仕事や家事を続けながら治療を受けることも可能です。不明な点は主治医に相談しましょう。

治療開始にあたっては、まず放射線科で初診を受け、診察と治療計画の説明が行われます。その後、放射線治療計画が策定され、具体的な治療が開始されます。

【結論】乳がんはトモセラピーで治療できる?

トモセラピーは脳腫瘍、肺がん、咽頭がん、肝臓がんなど、全身のがん病変に対して適用されており、乳がんの放射線治療にも使用可能です。

トモセラピーとは、高精度のコンピューター制御により、複数方向から放射線をがん組織にピンポイントで照射する放射線治療システムの1つです。患部以外の正常組織に照射される線量を抑え、副作用を軽減できる可能性がある点が大きな特長です。

ガンマナイフやサイバーナイフのような小さな病変へのピンポイント照射に加え、複雑ながんや複数の病変にも対応可能であり、治療の選択肢が広がる装置として位置づけられています。

ちなみに…乳がんはサイバーナイフで治療できる?

サイバーナイフは、肺がんや肝臓がんなど体幹部の病変に対して使用されることが多く、一部の乳がん転移病変に対して使用される可能性はありますが、**乳がんの一次治療(原発病巣への治療)としては一般的に適応されていません**。

サイバーナイフは、コンピューター制御されたロボットアームにX線照射装置を搭載し、がんなどの病変に高精度に放射線を照射する定位放射線治療装置です。頭蓋骨に固定フレームを取り付ける必要がないことや、分割照射による外来治療が可能であることがメリットです。頭部病変だけでなく、頭頸部や体幹部にも応用可能です。

ちなみに…乳がんはガンマナイフで治療できる?

ガンマナイフは、基本的に脳腫瘍や脳動静脈奇形などの**頭蓋内病変の治療専用機器**であり、乳がんの治療に直接用いられることはほとんどありません。

ガンマナイフとは、約200個のコバルト線源からガンマ線を一点に集中させ、腫瘍に対して高精度に照射する定位放射線治療装置です。正常組織への放射線被曝を最小限に抑えることが可能で、脳腫瘍に対する非侵襲的治療法として広く用いられています。

ちなみに…乳がんはトゥルービームで治療できる?

トゥルービームは、乳がんをはじめとして、肺がん、肝臓がん、前立腺がん、転移性腫瘍、骨腫瘍、頭頸部がんなど、さまざまながんに対して適用可能です。

トゥルービームは、強度変調放射線治療(IMRT)と呼吸補正技術を組み合わせた、先進的ながん放射線治療システムです。治療時間が短く、高精度な照射が可能であるため、患者への負担軽減が期待されます。

IMRTとは、コンピューター制御により腫瘍の形状に合わせて放射線を強弱つけて照射する技術であり、副作用の軽減と治療効果の向上が期待されています。また、トゥルービームでは装置を回転させながら照射することで、1回あたり1〜2分という短時間での治療も可能です。

さらに、呼吸によって動く臓器(肺や肝臓など)においては、呼吸補正技術によって照射範囲を最適化し、正常組織への影響を最小限に抑えることができます。