いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

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乳癌の転移

乳癌が他の箇所から転移する事例は稀であり、乳癌から他の箇所へ転移することが多いようです。このページでは乳癌の特徴や治療方法などをまとめました。

乳癌が転移するケースとは

癌治療において最も難しいとされているのが「転移」を防げない点です。

もともと患っている原発癌の進行により、血管やリンパを通して癌細胞がいろんな箇所に転移してしまいます(遠隔転移)。乳癌から転移しやすいのは、リンパ節、肺、骨、脳、肝臓など。その中で最も多いとされているのが、乳房から近いリンパ節です。その次に多いのが血液循環の中心となっている肺、そして骨の部位となっています。

乳がんは、しこりとして見つかる前に、乳房の周りのリンパ節や、遠くの臓器(骨、肺、胸膜、肝臓、脳など)に転移して見つかることがあります。乳がんの種類や性質によって、広がりやすさ、転移しやすさは、大きく異なります。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス_乳がん 基礎知識
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/index.html

このように、乳がんは乳がんとしての発見よりも先に、転移先の癌として発見されることも少なくありません。それほどまでに転移しやすいとされている癌であるため、乳がんが発見された場合は治療の確実性を求める必要があります。

乳癌の症状

リンパ節転移の症状

乳癌の転移率が最も高いと言われているのがリンパ節で、乳房から近いため転移しやすいことが分かっています。症状でみられるのがリンパ節の腫れ、ワキ下部分のしこり、しびれやむくみ、腕のだるさなど。リンパ節に転移した方は腕の感覚がおかしいと感じる場合が多いので、症状があらわれていないかこまめにセルフチェックを行いましょう。

肺移転の症状

肺は毛細血管やリンパ管が多いため乳癌から転移しやすい部位であると言えます。

主な症状は咳で、肺に水がたまることが原因。さらに、呼吸困難な症状におかされることもあります。風邪をひいているわけでもないのにこのような症状がみられる場合は、肺転移している可能性があります。

骨転移の症状

骨の部位にも乳癌からの転移が多いのです。骨の中でも骨盤骨、肋骨、腰椎、胸骨、頚椎、胸椎、頭蓋骨、手足などに影響があり、軽度な衝撃でも折れてしまい、強い痛みにおかされることがあります。

骨転移には骨折や麻痺、しびれを感じる「溶骨型」と腫瘍による骨の痛みを感じる「造骨型」の2種類があります。

乳癌の治療方法

癌が遠隔に転移してしまった場合、癌が進行していることがほとんどです。転移部分の除去手術も難しいことが多いでしょう。そこで、この場合の治療法としては薬物療法を行うのが一般的です。転移箇所によってそれぞれ治療法が異なります。

また、乳がん自体の治療方法としてよく用いられるものは、手術、放射線治療の他に、ホルモン療法や化学療法などの薬物療法が挙げられます。これらの治療の選択は、患者の希望を汲むことはもちろん、患者の体の状態や年齢、合併症の有無によって決定されます。[1]
乳がんの転移は局所再発か遠隔転移かでも適切な治療法、選択肢は変わっていきます。局所再発の場合、手術による乳房切除術と再発防止のため放射線療法を行うことが一般的です。全身の臓器に転移する遠隔転移の場合には手術による治療は困難になり、多くの場合は薬物療法が中心となり、放射線療法と薬物療法の組み合わせ、手術と抗がん剤治療など、集学的治療をおすすめする病院が多く、患者ひとり一人に違った治療法があります。
副作用が強く出るもの、QOLを優先する治療法などそれぞれの違いを理解した上で選択することをおすすめします。手術、放射線療法、薬物療法、それぞれでセカンドオピニオンを受けるのにおすすめのクリニック、病院を紹介いたしますので、何が適しているのか一度セカンドオピニオンを受けてみてください。

リンパ節転移の治療法

わき下のリンパ節を切り取る「腋窩リンパ節郭清」を行い、全身の血液やリンパを介して全身へ癌細胞が転移することを防ぎます。

腋窩リンパ節郭清

腋窩リンパ節郭清は、以前は乳がんの患者すべてに行われていた治療法でしたが、最近ではリンパ節に転移が認められる場合にのみ行われる治療法となっています。

その理由は、乳がんはリンパ節から全身へと転移すると考えられていましたが、必ずしも腋窩リンパ節から進行するわけではないということがわかってきて、転移していないリンパ節を取り除くことに意味はないとされているからです。

そのため、リンパ節への転移が発見されていない場合、「センチネルリンパ節生検」という検査を術中に行い、リンパ節に転移が見られない際には腋窩リンパ節郭清は行われません。[3]

肺転移の治療法

抗がん剤やホルモン剤を投与して全身療法を行います。肺に転移しているとなると他の臓器への転移も進んでいると考えられるので、転移している部分を除去しても再発する可能性が高いでしょう。

抗がん剤治療

肺転移した癌への抗がん剤治療で用いられる治療薬は「アントラサイクリン系抗がん剤」が代表的です。アントラサイクリン系抗がん剤には腫瘍を小さくする働きがあるため、肺転移では頻繁に用いられます。もしも、アントラサイクリン系抗がん剤で効果を得られなかった場合は、「タキサン系抗がん剤」が使用されます。

抗がん剤治療では、内服薬や注射、点滴など様々な方法が用いられますが、複数の治療薬を組み合わせる場合もあります。さらに、抗がん剤治療と他の治療方法が併用される可能性もあり、例としては、手術や放射線治療などが考えられるでしょう。[4]

ホルモン治療

ホルモン治療は、乳がんのタイプが「エストロゲン受容体陽性 ER(+)」であった場合に選択されます。がん細胞には、女性ホルモンであるエストロゲンに感受性があるタイプとないタイプが存在するため、感受性のあるがん細胞だった場合にホルモン治療が有効です。

閉経前の女性には、「LHRHアナログ」という薬剤が使用され、閉経後の女性には「アロマターゼ阻害薬」「フルベストラント」「トレミフェン」「酢酸メドロキシプロゲステロン」が用いられます。また、「タモキシフェン」という薬剤は、月経状況に関わらず利用できます。[5]

骨転移の治療法

放射線療法、抗がん剤治療、ホルモン治療が主な治療法です。放射線治療を行うことにより痛みの和らぎや骨折予防に効き、6か月後には骨の修復にまで至る人もいます。

また、大腿骨や頚部、大腿骨の中央部への転移がみられる場合は髄内釘の打ち込み、人口骨頭置換術を行います。腰髄や胸髄の転移には人工セメントを流し込む場合もあります。

「ビスホスホネート製剤」を抗がん剤やホルモン剤と一緒に投与することで、骨の痛みの緩和や骨の強化に繋がります。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線や電子線などを照射することで、がん細胞の増殖を防ぎ、がん細胞を小さくする効果が期待できます。骨転移の痛みを和らげるための治療としても用いられますが、乳がん再発予防にも頻繁に用いられ、乳がん患者のほとんどが受ける治療法です。

放射線療法では、寡分割照射を3週間程度で行う短期照射が有効とされており、乳がん診療ガイドラインによると、50歳以上、pT1-2、全身化学療法を受けておらず線量均一性が維持できる患者においては、寡分割照射と通常分割法が同程度で適切とされています。[6]

ビスホスホネート製剤

ビスホスホネート製剤は、骨を破壊する破骨細胞の働きを抑制する働きを持ち、骨転移における骨折や脊髄圧迫を予防します。乳がんの骨転移だけではなく、骨転移全般の治療に用いられる薬剤です。女性ホルモンであるエストロゲンが低い状態で治療を行うと、良好な結果が期待できると言われています。

ビスホスホネート製剤の中でも、骨折などの骨関連の問題を軽減させる効果が特に高いとされているのが、「ゾレドロン酸」です。その他、「デノスマブ」は破骨細胞の体内生存を阻止する働きを持ち、ゾレドロン酸と比較して骨関連の問題発生を阻止できるとされています。

乳がん転移の治療におすすめのクリニック、病院

手術療法

乳がんは進行とともに腋(わき)の下のリンパ節に転移することが知られています。術前の検査でがん細胞の転移が認められた方は、病巣の切除とともに腋の下のリンパ節をまわりの脂肪組織ごと切除します。遠隔転移の場合は手術だけでの治癒は困難になります。

放射線療法

乳がんの放射線治療では、一般的に乳房の手術後、再発を防ぐために用いられます。

乳がんの転移の場合は転移巣による症状があるときに症状を緩和する目的に放射線治療は有効です。特に疼痛が生じやすく骨転移や神経症状が生じやすい脳転移に対して放射線治療はしばしば行われます※1。

再発や転移癌などは脳転移など例外はありますが、原則として一度照射した場所には再び照射しません。放射線量、範囲のコントロールにより可能な場合もありますが放射線の副作用と効果を熟知した乳がん専門の医師による細心の注意が必要です※2。

※1情報参照元:県立広島病院「乳がんの放射線治療について」(http://www.hph.pref.hiroshima.jp/bumon/shinryo/naika/hoshasen-chiryo_sec08.html

※2情報参照元:日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版」(https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g4/q32/

抗がん剤

全身的な再発とともに胸壁再発が起こった場合は全身療法として薬物療法を優先します。全身療法により胸壁の病巣に対して十分な効果が見られた場合は継続し、不十分である場合には、切除することもあります。また遠隔転移が見られるリンパ節再発等の場合も抗がん剤治療、ホルモン療法などの薬物療法が選択されることが多いです。再発している部分が初回の手術後に放射線療法を受けていない場合は放射線療法を併用することも選択肢になります※3。

※3日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版」(https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g6/q43/

ここでは、当サイトで治療医師として掲載している日本乳癌学会乳腺指導医かつ日本外科学会外科専門医の所属する病院をご紹介します。(2021年11月時点)

昭和大学病院

日本における乳がん死ゼロを目標とし、乳がんが疑われた場合の鑑別診断や初期治療、再発乳がんの治療に取り組んでいる昭和大学乳腺外科。腫瘍センターや緩和ケアセンターなどとの連携を行い、患者本位の医療を提供します。

同科では、早期および進行再発乳がんの診断や治療を行っていますが、遺伝性の乳がん・卵巣症候群に関する遺伝カウンセリングを含む専門外来なども開設しています。また、治療中の患者や家族に向けた情報提供、カウンセリングによる心のケアも行っている点も特徴。さらに、毎週区の乳がん検診も実施しています。

電話番号:03-3784-8000

乳がんの症例

手術件数:2019年666件(悪性608件、良性58件)、2020年度526件(悪性484件、良性42件)

昭和大学病院のHPキャプチャ
引用元:昭和大学病院公式HP
(https://www.showa-u.ac.jp/SUH/)
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昭和大学病院の医師

中村 清吾昭和大学病院 教授

主任教授/診療科長を務める中村医師。専門分野は乳腺外科であり、患者中心の理念に基づいた診療の提供を目指し、それぞれの科に在籍する医師や看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、遺伝カウンセラーなどさまざまな職種と連携したチーム医療を提供しています。日本外科学会専門医・指導医、日本乳癌学会乳腺専門医・指導医、検診マンモグラフィ読影認定医師、遺伝性腫瘍専門医、厚生労働省臨床研修指導医。

明石 定子昭和大学病院 教授

教授を務める明石先生の専門は乳腺外科。日本外科学会専門医・指導医、日本乳癌学会乳腺専門医・指導医検診マンモグラフィ読影認定医師の資格を持つドクターです。

杏林大学医学部付属病院

杏林大学医学部付属病院の乳腺外科は、多摩地区を中心として質にこだわった乳がんの診断・治療を手がけています。乳がんが疑われる場合には、マンモグラフィや超音波、MRIなどの画像診断を実施。さらに病理組織診断を基にして、治療方法を選択していきます。また、進行再発乳がんにおいては、それぞれの病状に合わせた治療を提供するとともに、対症療法による症状緩和と精神的なケアを行い、質の高い生活を保てるようにサポートすることを重要としています。

電話番号:0422-47-5511

乳がんの症例

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杏林大学医学部付属病院のHPキャプチャ
引用元:杏林大学医学部付属病院公式HP
(https://www.kyorin-u.ac.jp/hospital/)
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杏林大学医学部付属病院の医師

井本 滋杏林大学医学部付属病院 教授

1985年慶應義塾大学医学部卒業。慶応義塾大学病院、日本鋼管病院、日本大蔵病院、足利赤十字病院、国立がんセンター東病院乳腺科などを経て、2007年より現職。専門分野は腫瘍外科学や主要免疫学。日本外科学会専門医、日本乳癌学会専門医、日本がん治療認定医の資格を持つドクター。乳がんに関する著書も多く手がけています。

がん研有明病院

乳がんをはじめ、乳腺に関する様々な病気の診断・治療に取り組んでいるがん研有明病院。2015年よりマンモグラフィでは断層撮影も可能な装置を導入、さらに高い読影技術を持つ医師による診断を行っています。また治療では外科治療、薬物治療、さらに放射線科医が加わる放射線治療などを実施します。加えて、形成外科と連携した乳房再建手術も積極的に行っています。

電話番号:03-3520-0111(大代表)

乳がんの症例

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がん研有明病院のHPキャプチャ
引用元:がん研有明病院公式HP
(https://www.jfcr.or.jp/hospital/)
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がん研有明病院の医師

大野 真司がん研有明病院 副院長

乳腺センター長を務める大野医師は、同院副院長、感染症科部長、患者・家族支援センター長、医療クオリティマネジメントセンター長といった様々な役割を担っているドクターです。日本乳癌学会乳腺専門医、日本外科学会指導医、日本乳癌学会乳腺指導医の資格を持つとともに、日本乳癌学会理事、日本がん・生殖医療学会理事や日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会理事なども務めています。

新潟県立がんセンター新潟病院

新潟県内の乳がん診療の中心的な役割を担っている新潟県立がんセンター新潟病院の乳腺外科。がん検診により精密検査が必要な方や他の医療機関から紹介された方を対象とし、乳がんの精密検査や診断、手術に加えて、術前・術後の補助薬物療法や経過観察、再発治療まで対応。治療などを行っていく上では、放射線科や内科、整形外科、緩和ケア科などの医師と密に連携しながら進めていきます。また、地域連携診療計画書(地域連携パス)を用いることにより、地域の病院や診療所とともに質の高い共同診療を行います。

電話番号:025-266-5111

乳がんの症例

2017年:年間乳がん手術数316件(うち114例で乳房温存療法を実施)

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引用元:新潟県立がんセンター新潟病院公式HP
(https://www.niigata-cc.jp/)
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新潟県立がんセンター新潟病院の医師

佐藤 信昭新潟県立がんセンター新潟病院 院長

1979年新潟大学卒業。新潟県立がんセンター新潟病院の院長を務める佐藤医師は、乳がんを専門とするドクターです。日本外科学会専門医、日本乳癌学会乳腺指導医・専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医の資格を持つドクター。

黒須病院

地域に根ざした医療や福祉を提供している黒須病院の乳腺科では、乳腺の良性腫瘍や乳がんなどを対象としています。同科にはがん治療に関する臨床経験を豊富に持つ乳腺専門医が在籍しており診療や治療を提供。乳がんを早期発見するためにも、気になる症状がある場合にはすぐ受診することを推奨しています。

電話番号:028-682-8811

乳がんの症例

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引用元:黒須病院公式HP
(http://www.kurosu-hospital.jp/index.html)
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黒須病院の医師

田中 浩一黒須病院 先生

東京医科大学卒業後、北海道厚生連札幌厚生病院、東京都立豊島病院、国立がんセンター東病院を経て現職。乳腺・呼吸器外科・がん薬物療法を専門としており、日本外科学会専門医指導医、日本呼吸器外科学会呼吸器外科専門医指導医、日本乳癌学会乳腺専門医指導医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医指導医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医指導医、検診マンモグラフィ読影医、インフェクションコントロールドクター、日本医師会認定産業医の資格を持ち、患者の気持ちに寄り添った医療を提供しているドクター。

亀田総合病院

乳がんをきちんと治し、いかにきれいに治すかを外科受診時から考え、治療を行っていく亀田総合病院乳腺科。内視鏡手術のほか、乳房再建やオンコプラスティックサージェリーにも積極的に取り組みます。また、小乳がんの治療において切らない治療である冷凍凝固法を早くから開始した点も同科の特徴。非切除凍結療法は局所麻酔で行うため、ケースによっては日帰り手術による対応が可能です。

電話番号:04-7092-2211(代表)

乳がんの症例

乳癌手術651件(全摘290件・温存295件・凍結療法66件)
乳房再建術(一期再建・二期再建)170件
※2017年度実績

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引用元:亀田総合病院公式HP
(http://www.kameda.com/ja/general/index.html)
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亀田総合病院の医師

福間 英祐亀田総合病院 先生

1979年岩手医科大学卒業後、聖路加国際病院やメルボルン大学、横浜総合病院などを経て2011年より現職。専門分野は乳腺治療、乳腺内視鏡下手術、乳腺画像診断、凍結療法。また、日本外科学会認定医・専門医・指導医、日本乳癌学会認定医・専門医・指導医などの資格を持つ医師。内視鏡を用いた手術や冷凍凝固療法、オンコプラスティックサージェリーに取り組んでいます。

ここでは、当サイトで治療医師として掲載している日本医学放射線学会放射線治療専門医が所属する癌放射線治療専門クリニックをご紹介します。(2021年11月時点)

クリニックC4

クリニックC4では、正常な細胞への影響を抑えながらもがん病巣に対して放射線照射を行えるトモセラピーによって治療を行っています。トモセラピーは再発がんや転移がん(特に多発転移)にも対処が可能であり、手術などによる体への大きな負担もなく、治療期間も比較的短という特徴があります。

「放射線治療専門医(※2)」が「トモセラピー(※1)の治療をする」「放射線治療専門クリニック」は、関東で唯一クリニックC4のみとなっています。
(※1)参照元:Radixact 公式サイト(https://radixact.com/treatment centers/
(※2)参照元:公益社団法人日本医学放射線学会 公式サイト(http://www.radiology.jp/specialist/list_t.html

電話番号:03-6407-9407

乳がんの症例

右乳がん リンパ節転移(36歳女性)

クリニックC4のHPキャプチャ
引用元:クリニックC4公式HP
(https://cccc-sc.jp/)
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クリニックC4の医師

青木 幸昌クリニックC4 院長

クリニックC4の院長を務める青木医師は、がん治療に30年以上取り組んできた医師。東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部附属病院や放射線医学総合研究所特別研究員、総理府技官、国際医療福祉大学保健学部放射線・情報科学科教授などを経て、2008年にクリニックC4を設立。

第一種放射線取扱主任者、公益社団法人日本医学放射線学会学会員、公益社団法人日本放射線腫瘍学会学会員、国際個別化医療学会評議員。

苑田会放射線クリニック

苑田会放射線クリニックでは、放射線治療を必要とする方に対し、きめ細やかな診療を行った上で治療を提供。30年以上の豊富な経験を持つ常勤放射線治療専門医が、それぞれの症状に応じた治療を提案します。同クリニックでは、特殊な装置ではなく「リニアック」と呼ばれる汎用機を導入することによって、高精度放射線治療から緩和治療まで幅広く対応できます。

電話番号:03-5851-5751

乳がんの症例

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苑田会放射線クリニックのHPキャプチャ
引用元:苑田会放射線クリニック公式HP
(http://linac.sonodakai.or.jp/)
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苑田会放射線クリニックの医師

齋藤 勉苑田放射線クリニック 院長

1976年に日本大学医学部卒業。その後国立病院医療センターや日本大学医学部、苑田診療所などを経て、2013年に苑田会放射線クリニック院長に就任しています。斎藤医師は日本医学放射線学会放射線治療専門医や日本がん治療認定医機構暫定教育医の資格を持つドクターであり、それぞれの患者に対してよりよい治療を提供します。

東京ベイ先端医療・幕張クリニック

東京ベイ先端医療・幕張クリニックは、PET-CTを中心としたがんの画像診断から、高精度放射線治療までの提供を目的として開設されたクリニックです。同クリニックではがん専門病院で経験を積んできたスタッフによる放射線治療を提供している点が特徴。特に2名の日本医学放射線学会放射線治療専門医が在籍している点が同クリニックの大きなポイントといえるでしょう。

電話番号:043-299-2000

乳がんの症例

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東京ベイ先端医療・幕張クリニックのHPキャプチャ
引用元:東京ベイ先端医療・幕張クリニック公式HP
(https://www.aoikai.jp/tokyobay/)
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東京ベイ先端医療・幕張クリニックの医師

幡野 和男東京ベイ先端医療・幕張クリニック 院長

院長の幡野医師は日本大学医学部卒業。その後国立病院医療センター(現:国立国際医療研究センター病院厚生技官)や千葉大学医学部放射線医学教室や米国ペンシルバニア・ハーネマン医科大学、千葉県がんセンター 放射線治療部部長などでの活躍を経て東京ベイ先端医療・幕張クリニック院長に就任しています。日本医学放射線学会 放射線治療専門医、日本核医学会PET核医学認定医。

ここでは、当サイトで治療医師として掲載している日本血液学会血液専門医かつ日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医の所属する病院をご紹介します。(2021年11月時点)

虎の門病院

虎ノ門病院臨床腫瘍科では、「Human-based Medicine(人を中心とした医療)」をスローガンとし、日々さまざまながんの治療に当たっています。同科では抗がん剤や分子標的薬、免疫治療などを提供していますが、そのほかにも外科治療や放射線治療、緩和治療の専門家と連携して治療を実施。同院では、この専門家同士のつながりを活用し、より良い治療を提供することを目指しています。

電話番号:03-3588-1111(代表)

乳がんの症例

2020年12月時点では乳がんに関する治験を2件実施

虎の門病院のHPキャプチャ
引用元:虎の門病院公式HP
(https://toranomon.kkr.or.jp/)
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虎の門病院の医師

三浦 裕司虎の門病院 先生

腫瘍内科医として、泌尿器や消化器のがんを中心に診療を行っています。幅広い固形腫瘍の診療を行う中で、特に腎がんや膀胱がん、前立腺がんなど泌尿器腫瘍への薬物療法を専門としているドクターであり、標準治療から新薬の治験まで対応。日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医・指導医、日本血液学会血液専門医、日本内科学会認定内科医、日本泌尿器腫瘍学会代議員、腎癌研究会世話人。

乳癌転移について

「転移した癌」が分かったときはステージが進行している場合が多く、治療が難しいとされています。そこで重要となるのが病院または医師の選択。病院選びはただ規模が大きければよいという訳ではありません。大事なのはがん治療の専門性や技術の高さ。症例実績の多い病院や医師を選びましょう。転移癌でも自分に合った治療法を見出した患者さんが寛解したという例は多数あるのです。どのような治療法があるのかもう一度よく調べ直して、可能性のありそうな治療法を行なっているクリニックがあればセカンドオピニオンを受けてみることをおすすめします。医療機関や医師を変えて新しい治療法に出会える可能性が広がるでしょう。転移してしまったからといって諦めずに行動を起こしてみることが大切です。

セカンドオピニオンは、主治医から提案された治療以外の方法を知れるだけでなく、診断の確認、提案された治療方法の選択に迷っているとき、処方薬の種類を確認したいときなどにも利用できます。[2]

予防やスクリーニングに関する情報

がんはどのように予防していけばいいのか、スクリーニングについて知りたいと思っている方もいることでしょう。

日本人を対象に行われた研究では、がん全般の予防には禁煙・節度ある飲酒・バランスのとれた食事・身体活動・適正な体形の維持・感染予防が有効であると言われています。

乳がんを予防するためには、飲酒を控えながら、閉経後の肥満を予防するために体重管理・適度な運動を意識することが大切です。この章では、予防やスクリーニングに関する情報を解説しますので、チェックしてみてください。

予防について

乳癌の発生には女性ホルモンであるエストロゲンが深く関与すると考えられており、例えばエストロゲンを含有する経口避妊薬などの医薬品を使用したり、長期間のホルモン補充療法などを行っていたりすると、それらが乳癌の発生原因になるということが指摘されています。加えて、そのような外部からの影響による原因の他にも、初経年齢の低さや閉経年齢の高さ、出産経験がない、初産の年齢が高いなど様々な体内要因が乳癌のリスク要因になるということも重要です。

その他、乳癌の発生原因として飲酒や閉経後の体重増加(肥満)、運動不足といった生活習慣に関連するものも挙げられており、経口避妊薬やホルモン補充療法などを行っていない人や、妊娠や出産に関連したリスク要因がない人であっても、日常的な予防対策として生活習慣の改善などを心がけていくことは大切といえるでしょう。

乳がんの発生には、女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られています。エストロゲンを含む経口避妊薬の使用、閉経後の長期のホルモン補充療法は、乳がんを発生するリスクを高めることが分かっています。
また、体内のエストロゲンに関連する要因として、初経年齢が低い、閉経年齢が高い、出産経験がない、初産年齢が高い、授乳経験がないなどが、乳がんを発生するリスクを高めると考えられています

引用元:国立がん研究センターがん情報サービス|乳がん 予防・検診
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/prevention_screening.html

生活習慣の改善による予防

乳癌の発生リスクを高める要因として、まず注意すべきは飲酒や肥満、運動不足といった生活習慣です。

そもそも国立がん研究センターでは日本人の癌リスクを増やす要因として生活習慣の乱れを指摘しており、具体的には以下のようなポイントが癌リスクを下げて癌の予防へつながると考えられています。

中でも飲酒の習慣は乳癌リスクにつながる要因であり、日常的に飲酒習慣のある人であれば飲酒量を制限したり、あるいは禁酒したりといったことも効果的です。また上述したように閉経後の肥満などは乳癌のリスクにつながるため、食事メニューや食事の摂り方を見直して暴飲暴食を控える他にも、適度な運動習慣を生活に取り入れたり、適正体重を維持したりといったことも考えていきましょう。

なお若い女性であっても過度なダイエットなどで体重が激減したり、ホルモンバランスが崩れたりすると、乳癌だけでなく様々な身体症状や疾患を引き起こす可能性が高まるため注意しなければなりません。

特に乳癌は血縁者に乳癌患者がいる場合、その発生リスクが高いことも判明しており、家族や近親者に乳癌の患者がいる人については日頃から予防対策を意識しておくことも大切です。

感染回避による予防

日本人における癌の発生原因として、生活習慣だけでなく感染症による影響も無視することはできません。

そもそも日本人女性の癌の原因として最も多いものが感染症とされており、例えば乳癌そのものは感染症によって影響しなかったとしても、他の癌が発生して転移することで結果的に乳癌を発生させるといった恐れもあります。そのため生活習慣の見直しだけでなく感染症予防にも配慮することが癌予防としては重要です。

感染症には細菌性のものやウイルス性のものがあり、例えば女性であれは「ヒトパピローマウイルス(HPV)」に感染したことで子宮頸癌のリスクが高まることも知られています。

その他にも感染症と癌の相関については以下のようなケースがあります。

これらの感染症が必ずしも癌を引き起こすとは限りませんが、少なくとも感染症予防も踏まえて癌予防を考えていく意識が大切です。

スクリーニングについて

スクリーニングは未発見の癌や症状を発見するために行われる診察や検査の総称であり、乳癌のリスクを確認して、乳癌の早期発見・早期治療へつなげるためにも適切なスクリーニングを実施することはとても重要です。

乳癌に関連したスクリーニングには様々な方法があり、ここでは一般的に乳癌検診などで行われているスクリーニングの方法と概要を解説していますので参考にしてください。

問診・視診・触診

乳癌のスクリーニングとして真っ先に考えるべきは医師による診察です。なお診察では主に医師から患者に対して問診・視診・触診が行われますが、乳癌のセルフチェックを行う上でも実際に自分で乳房や乳腺を触ってみて、しこりなどの異変を感じられるかチェックすることは欠かせません。

視診や触診は医師が患者の胸などを見たり触ったりすることで、癌病巣の有無やその他の異常の有無などを調べる診療行為です。視診や触診だけではごく初期の乳癌を発見することは難しいものの、乳癌はある程度の段階まで無自覚に進行する病気でもあり、視診や触診は最初の乳癌スクリーニングや乳癌発見のきっかけとして重視されている項目です。

なお、患者本人だけでなく、パートナーなども日頃から乳癌について学んでおくことで、患者の体へ触れた際などに違和感へ気づける可能性が高まります。

乳腺X線撮影(マンモグラフィ)

厚生労働省の指針において、明らかに乳癌のスクリーニングとして死亡率減少効果があり、患者への健康被害などのデメリットも少ない方法であると推奨されているものが乳腺X線撮影(マンモグラフィ)です。

厚生労働省の指針では、がん検診の死亡率減少効果が確実で、検診の不利益(偶発症、過剰診断、偽陰性・偽陽性)が少ない検診だけが推奨されています。現時点で乳がん検診では、マンモグラフィが推奨されています。

引用元:国立がん研究センターがん情報サービス|乳がん 予防・検診
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/prevention_screening.html

マンモグラフィはX線を利用して患者の体内を撮影する画像診断技術の1つであり、特に乳房専用に設計されたX線撮影機を使用して行われます。

マンモグラフィは乳房全体を正確に撮影するため、乳房へ物理的な圧力をかけて、乳房を薄くのばした状態で撮影を行うことが特徴です。そのため乳房を圧迫する際に痛みを伴うこともありますが、マンモグラフィによって深刻な健康被害を生じさせるリスクは少ないと考えられていることもポイントです。

マンモグラフィとは、乳房専用のX線撮影のことです。乳房を板で圧迫し、薄く伸ばした状態で撮影します。 乳房全体をくまなく写し出すために、片方の乳房に対して複数の方向(MLO:内外斜位方向とCC:頭尾方向)から圧迫し撮影を行います。

引用元:国立がん研究センター中央病院|乳房X線検査 (マンモグラフィ)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/radiological_technology/radiological_diagnosis/xsenkensa/020/020.html#:~:text=マンモグラフィとは,し撮影を行います。

マンモグラフィは触診によって発見することが困難なタイプの乳癌であってもチェックすることが可能なスクリーニングとなっており、乳癌の検診においては有益な方法であると考えられます。

超音波(エコー)検査

超音波検査(エコー検査)は、患者の体の表面に超音波発生装置を当てて患者の体内へ超音波を照射し、その内部で反響・反射してきた超音波を収集して画像化することで、体内の様子を確認する検査方法です。

超音波検査は乳癌に限らず様々な癌のスクリーニングとして利用されますが、乳癌のスクリーニングとして実施される超音波検査は特に「乳房超音波」と呼んで区別されることもあります。

乳房超音波検査はマンモグラフィと同様に患者の体内を視覚化する画像診断技術の1つであり、マンモグラフィに比べて放射線被曝によるリスクが存在せず、妊娠中の女性であっても検査を受けられることがメリットです。また乳腺が発達している人や若年者でも痛みを感じることなく検査することができます。

反面、乳房超音波検査はマンモグラフィと比較して石灰化の評価や撮影が困難であり、良性腫瘍と悪性腫瘍の区別を付けにくく、再検査になる可能性が高いといったデメリットもあります。さらに検査を実施する医師の技量によって診断品質が左右されることも課題です。

MRI検査

MRI検査は画像診断技術の1つであり、強力な磁気を発生させて体内へ照射し、その時期の影響によって体内の水素原子が発生させた電磁波を集めて、画像データを得るといった仕組みです。

MRI検査は患者の体内を全方向から細かく画像化して診断できることが利点であり、さらに放射線被曝のリスクがなく乳癌を含めて様々な癌のスクリーニングに利用されます。ただし強力な磁場の影響で胎児に何らかのデメリットを与える恐れもゼロでないため、特に妊娠初期では検査できないこともあります。

一方、欧米諸国の一部地域によっては乳癌スクリーニングとして有効性を認められる方法としてMRI検査を推奨していることもあるように、MRI検査は乳癌の早期発見に活用したい技術といえるでしょう。

MRI検査は乳房内でどのように組織や癌細胞が存在しているのか、位置やサイズなども含めて詳細に診断できるため、乳癌の経過や手術前の確定診断などを行う際にも利用されています。

CT検査

CT検査もまた画像診断として行われている方法であり、放射線を照射して患者の体内の断面図を撮影することが可能です。

CT検査は乳癌が乳房内でどのように広がっているのか撮影して画像化できるだけでなく、リンパ節転移の有無や周辺の臓器への転移の有無といったポイントまでまとめてチェックできることが強みです。そのため乳癌のスクリーニングとしてCT検査も有用性のある方法といえますが、一方で放射線を使って撮影するために被曝リスクがあり、妊娠中の女性などではCT検査を行うことができないこともあります。

骨シンチグラフィ

骨シンチグラフィは全身の骨の状態を撮影することで、骨造成の状態をチェックしたり、骨への癌転移の有無を診察したりできる検査です。

骨シンチグラフィを行う場合、最初に専用の薬剤を患者へ注射して、その後、薬剤が患者の全身へ浸透した頃を見計らっておよそ30分程度の放射線撮影を行います。

骨に癌病巣が転移している場合、対象部位は黒く染まるような状態で画像化されるため、骨転移の有無を診断することが可能です。

また乳癌に関連するエストロゲンは骨の新陳代謝にも関与することが知られており、女性ホルモンの分泌が減ってエストロゲン量が低下することで、骨の造成も正常に行われなくなり骨密度が低下するといった状態が引き起こされます。そのため骨シンチグラフィによってエストロゲンの分泌状況などを診断できることもポイントです。

PET検査

PET検査とは通常のCT検査とは異なり、放射線の1種である陽電子を放出する放射性薬剤を投与し、それが患者の体内でどのように分布しているのかを改めて放射線画像診断によってチェックするスクリーニング方法です。

そもそも癌細胞は正常な細胞と比較して多くのブドウ糖を取り組むことが知られており、ブドウ糖に類似した構造を持つ放射性薬剤を投与することで、癌細胞が存在した場合にそこへ放射性薬剤が集中的に取り込まれるといった現象が発生します。そしてPET検査ではその放射性薬剤の分布状況を撮影し、癌の有無を調べるといった仕組みです。

腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカーは癌マーカーとも呼ばれ、特定の癌が存在することで体内に産生され血中に増加する物質の総称です。

つまり乳癌に関連した物質を腫瘍マーカーとして同定し、患者の血液を採取して血中に含まれている腫瘍マーカーの量を測定することで、乳癌が発生しているか否かを診断することができます。

腫瘍マーカーの検査は血液検査によって実施され、放射線被曝のリスクがないことも特徴です。

サーモグラフィ

サーモグラフィとは、対象物の温度に応じてその表面から放出される赤外線の量を「赤外線放射線温度カメラ」で感知し、温度の変化を識別して画像化する技術です。癌のスクリーニングだけでなく様々な場所でサーモグラフィは利用されています。

乳癌検診におけるサーモグラフィは、癌細胞のような異常細胞や組織は健常な組織よりも温度が高くなるといった性質に着目し、乳房をサーモグラフィでチェックすることで癌や異常の有無を診断することが特徴です。

マンモグラフィや超音波検査といった方法とは異なるアプローチでスクリーニングを行えるため、多角的な検診に役立ちます。

病理検査(細胞診・組織診)

病理検査とは、癌の疑いのある組織から細胞を採取してサンプルを作成し、それを病理医と呼ばれる医師が顕微鏡で確認して細胞の異常や癌の有無を診断する検査です。

病理検査は癌の確定診断において不可欠な検査であり、乳癌のリスクが認められる患者に対して、それが乳癌であるのか良性腫瘍であるのかを判別するために実施されます。

ただし病理検査では患者の体の一部を切除してサンプル化しなければならないため、患者の肉体へ負担をかける上、病理医の技量やサンプル作成の技術などによって診断の品質が左右されるといった課題もあります。

スクリーニングのリスク

スクリーニングを行う場合、まず病理検査や放射線画像診断のように検査方法によっては物理的なダメージや被曝リスクといったデメリットがあることに加えて、そもそもどのような検査法であっても100%の確定診断は困難であるという現実を考慮しなければなりません。

スクリーニングにおけるリスクやデメリットは大きく分けて、スクリーニングを行う上で発生する合併症や副作用と、スクリーニングの結果が必ずしも信頼できるとは限らないという課題があります。

偽陰性の検査結果が出る可能性がある

偽陰性とは文字通り「偽物の陰性」であり、本来であれば陽性として検出されなければならない患者に対して、癌が存在しないといった「陰性」の結果が誤って出されるという状態です。

あらゆるスクリーニングにおいて偽陰性の確率をゼロにすることは困難です。そのため仮に1つの検査方法によって陰性の結果がでたとしても、同時にそれが偽陰性であることも考慮して、他の検査方法を重ねて確実性を高めていくことが求められます。

偽陰性は治療が必要な患者を見落として放置してしまい、癌が進行してしまうリスクを高めます。また検査の方法や手順が誤っていたり、検査を行う医師や技師の技量が未熟であったりすると、偽陰性の発生リスクも高まってしまうことは問題です。

偽陽性の検査結果が出る可能性がある

偽陽性は偽陰性の反対に当たる言葉であり、本来であれば「陰性」として診断されるべき人が「陽性」だと誤って診断される状態です。

偽陽性になると、癌が存在せず健康体の人でも癌リスクがあるとして、さらに検査が行われたり、病理検査のために細胞や組織の一部を切除したりといった流れに進みます。

偽陽性は癌を見落とすリスクを抑えられるという点で偽陰性よりもいいと考えられがちですが、乳癌スクリーニングでは患者に対して色々な負担やリスクを強いるものもあり、不必要なリスクを患者に与えるという点では決して軽んじられない問題です。

偽陽性もまた偽陰性と同様に、検査の品質や状況によって発生率が高まってしまうことも課題といえるでしょう。

発見した場合でも健康状態の改善が難しい場合がある

乳癌のスクリーニングによって癌の存在を発見できたとしても、状況によってはすでに治療が困難であるといったケースは少なくありません。

また、乳癌は初期段階で自覚症状に乏しいことも知られており、改めてスクリーニングなどで発見された時点ではもう根治が困難であったり、仮に治療ができたとしても乳房を切除しなければならなかったりという場合も考えられます。

乳房切除は女性にとって大きな問題であり、人によってはその後の人生の質(QOL)に影響する要因でもあります。そのため乳房を全て切除せず、必要最小限の部分だけを切除して残部については放射線療法などでアプローチしていく「乳房温存療法」を希望する人も少なくありません。

スクリーニング検査そのものによる副作用の可能性

スクリーニングは方法によって患者に様々な負担やリスクを与えます

例えば病理検査のために組織採取を行う場合、患者の体を傷つけるため出血や感染症のリスクが高まったり、マンモグラフィやCT検査、PET検査などでは放射線被曝のリスクを考えたりしなければなりません。

MRI検査や骨シンチグラフィなどで使用する薬剤がアレルギー反応のリスクを高める恐れもあり、端的にマンモグラフィによる乳房圧迫で痛みを感じ、検査そのものがストレスになることもあるでしょう。

そのためスクリーニングはその効果や目的をきちんと考慮した上で、患者の体に対するリスクや不安にも配慮して医師にプランニングしてもらうことが肝要です。

患者のQOL(生活の質)に関する情報

古今東西の社会において乳房は女性の体の象徴として考えられることも多く、乳房を切除することで女性としての尊厳が損なわれるような喪失感を抱く人も少なくありません。また乳房切除後に体の見た目が変わってしまうことで、例えば温泉やプールといった肌を露出する場所へ行けなくなったり、普段の服装にも制限があるように感じてしまったりする人もいるでしょう。

一方、美容面や感情的な理由で乳房を温存した場合、癌のリスクが残存してしまい、治療後も改めて転移や再発の可能性に不安を抱き続ける恐れもあります。その他、癌治療の方法として抗がん剤治療などの化学療法や放射線治療を選択すれば、その影響で日頃の生活に支障を来すこともあるでしょう。

乳癌の治療は患者のQOLを無視して計画できるものでなく、主治医や専門医と納得できるまで相談して、自分の将来や要望を含めて検討してもらうことが大切です。

乳房切除という治療選択

乳癌の治療として再発・転移のリスクを軽減するには、やはり乳房を切除してしまうといったことが考えられます。しかし乳房を切除することで女性としての尊厳や自尊心が損なわれてしまうように感じる人も多く、治療時点では納得していても、将来的に不安や不満が強まってしまう可能性は無視できません。

また子供を母乳で育てたいと考えている人や妊娠を計画している人の場合、妊孕性機能を温存したいと考えることもあるでしょう。

乳房の切除は全てを取り去ってしまうだけでなく、癌が存在する部位のみを切除して、その他の部位については放射線治療などでケアしていくといった方法もあります。

術後の乳房・バストラインの補整

乳房切除という治療を選択するとしても、可能な限り術後の状態を美しく保てるように治療法や切除範囲を詳細にプランニングすることが肝要です。

なお、乳房切除による手術痕が残ってしまうことで自分の体に嫌悪感や拒否感を抱いてしまうこともあり、そのようなケースに備えて周囲がメンタルケアをサポートしていくことも不可欠です。

乳房再建など外見の変化に対するサポート

乳房切除によって失われた乳房を、シリコンなどの人工物によって再建したり、患者のお腹や背中から採取した組織を使って再建したりという乳房再建術も選択肢の1つになります。

乳房再建では乳癌手術と同じタイミングで行う一次再建と、ある程度まで状態が落ち着いてから行う二次再建があり、どのような方法を選択するにしても主治医としっかり相談しておきましょう。

なお乳房再建では自家組織の壊死や人工物に起因した合併症などのリスクもあり、そもそも再建を受けるべきかどうかも合わせて相談することが大切です。

術後の下着の選び方

乳癌治療後は治療の方法や再建の有無などによって下着の選び方に配慮することも重要となります。下着の選び方や補整下着の種類については看護師やがん専門相談員などに相談したり、先輩患者の経験を参考にしたりして考えることもできます。また自治体によっては乳癌手術後の人を対象にして、補整下着の購入費用を一部助成するといった制度もあるようです。

下着の選び方やパッドの調整に悩んだとき、補整下着の種類や購入場所について知りたいときは、看護師などの医療者やがん相談支援センターのがん専門相談員に相談することができます。患者会やピアサポートなどでは、同じ経験をした人の工夫や、実際のつけ心地について話を聞くことができるかもしれません。また、自治体によっては補整下着の購入に対して助成制度があります。患者会の情報や自治体の助成制度についても、がん相談支援センターで確認することができます。

引用元:国立がん研究センターがん情報サービス|乳がん 療養
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/follow_up.html#underwear

患者の声・体験談

ここでは実際に乳癌の患者として治療を受けた方々の体験談や声を集めてみました。これから乳癌の治療へのぞもうとしている人や、乳癌患者の治療経験などを知りたいと考えている人は、ぜひ患者さんの体験談を参考にしてみてください。

働きながら放射線治療を受けられた

(前略)医師・看護師・技師の方々はとても穏やかで、治療内容も解り易く説明してくださり、聞いた事もとても詳しく教えてくださるので安心して治療を受けることができました。治療の際、大きな機械をまじまじと見ていたら、それに気付いた技師の方が機械の説明をしてくれました。機械的な対応にならず、私の意図をくみ取っていただいたので嬉しかったです。ありがとうございました。また、治療の時間を生活に合わせて自由に選べることは、仕事をしながら通った私にとってはとてもありがたかったです。(後略)

引用元:大船中央病院放射線治療センター

家族や患者同士の支えがあったからこそ治療を乗り切れた

しかし、抗がん剤治療は毛髪が抜けると分かっていましたが、実際にその副作用はやはりショックで辛かったです。また、家族の支えもあり自分の気持ちも切りかえて頑張ったことは良かったと思います。放射線治療は33回もあり、猛暑の中通院はきつかったですが、同じ患者さん同士で励まし合ったり、愚痴を言い合うことで私自身大きく助けられたと感じます。

引用元:大船中央病院放射線治療センター

患者同士でお友達になり励まし合った

健診でみつかりました。最初は、「え~、まさか」と本当に信じられない気持ちでした。ですがすぐに、早期にみつかったことに感謝し、家族と話し合い、手術を受けようと気持ちは変わりました。放射線治療のことは全く知りませんでした。病院のセンターご案内を見て、「こんな機械なんだ」と写真を見て初めて知り、不安になりました。(中略)毎日大体同じ時間に治療に行くと、同じ顔の方が治療に来られていて、「何回目ですか?」などお友達になり、そのうち体の症状など話し合い、とても安心できてうれしかったです。病院の方はみなさん親切に話して頂きました。ありがとうございました。

引用元:大船中央病院放射線治療センター

病院で顔を合わせる人達と互いに助け合えた

病気の告知を受けて一人深刻に思い悩む日もありましたが、放射線科での治療が始まってからは毎日同じ時間帯に顔を合わせる人達と挨拶を交わし、会話をすることで気持ちがだんだんリラックスできるようになったと思います。病気についての情報交換もできて有意義な時間でした。スタッフの方々は皆さん親切で言葉かけも優しく安心して治療を受けることができました。先生方はとても話しやすく、どんな質問にも丁寧に答えていただきました。治療が終わったときは、やり終えたという達成感でした。これからもひとつひとつ乗り越えていかねばと思っています。ありがとうございました。

引用元:大船中央病院放射線治療センター

「再建は自然なこと」という医師の言葉で決意

母が乳がんになって3年後、42歳のときに私も乳がんが見つかりました。腫瘍は2か所あり、担当医からは乳房全切除術を勧められました。乳房再建の説明もありましたが、全摘した母の姿を見ていたので胸はなくなるものだと思い込んでいたし、再建はごく一部の特別な人がやるものだという思いがありました。

だけど夫が、「まだ人生は長いのだから話だけでも聞いてみたら」と背中を押してくれて、形成外科を受診しました。そこで出会った先生が、「本来あるべきものがなくなるということは、体のバランスも心のバランスも崩れるもの。再建はごく自然なこととして検討していいんですよ」と。結局、腹直筋皮弁法で一次再建しました。術後の喪失感がなくて、それが本当に救いでした。今は再建してよかったと心から思っています。

引用元:Patient’s Voice ~乳がん患者さんの声~

担当医は出産を希望する私の気持ちを大事にしてくれた

31歳のとき、告知を受けました。その後、すぐに結婚しましたが、子どもがすごくほしかったので、一番気になったのが「赤ちゃんを産めるのか」ということでした。担当医からは治療が終わる5年後なら可能だが、抗がん剤やホルモン療法の副作用で閉経し、妊娠できない可能性もあると聞きました。5年後が果てしなく遠く感じたし、描いていた未来が崩れた気がしました。

担当医は出産を希望する私の気持ちを大事にしてくれ、抗がん剤の治療を受けるべきかを調べるオンコタイプDX検査と受精卵凍結の話をしてくれました。迷いましたが、「絶対にママになりたい」と強く思ったので両方受けることにしました。抗がん剤は検査の結果、省くことができ、現在ホルモン療法中です。「子どもは5年後にね」と言ってくれた夫と、2人の生活を楽しみながら治療が終わる日を心待ちにしています。

引用元:Patient’s Voice ~乳がん患者さんの声~

ピンクリボンアドバイザーの資格を取得

乳がん手術、乳房再建、結婚、出産、育児、そして仕事復帰…と、まるで生き急ぐかのように過ごしてきましたが、昨年、乳がん手術から10年の節目を迎えました。遺伝性ということもあり、これまで「あまり長く生きられないのでは」という不安を抱えて生きてきましたが、10年を経て、“生かされている自分”を強く意識するようになりました。

「こうして毎日元気に過ごせていることに、何か意味があるのでは」と考え、ピンクリボンアドバイザーの資格を取得。今年から、がん教育認定講師として中学校や高等学校で講義を行っています。数々のライフイベントを経た今、自分の使命は「子どもたちやその家族に、健康の大切さや、がんの正しい知識を伝えていくこと」だと思っています。学生達はみんな真剣に話を聞いてくれますし、前向きな感想も届き、とてもやりがいを感じています。

引用元:E-Bec

通院治療ができるというだけで「病気と共存していける」という希望を感じた

抗がん剤は2週間に1回で4クール、これを2種類で計8クールです。がんになったら抗がん剤をしながら長く入院するものだと思っていましたが、通院治療ができるというだけで「病気と共存していける」という希望を感じましたね。

私の体が強靭なのか、抗がん剤の副作用による体の不調(吐気で寝込むなど)は殆どなかったのですが、2種類目の抗がん剤による〝腰から足にかけての痛み〟は本当に辛かったです。

また手足のしびれは、ピーク時は正座後の状態のように歩くのもままならず、爪も少し剥がれかけ、新しく靴を購入しなければいけないほど影響しました。手足のしびれは今も残っています。それでも随分和らいでいます。

引用元:オンコロ

勤務先と病院が近くだったので会社を休むことなく周りに協力してもらえた

「がんのステージはかなり進行していますが、幸いなことに顔つきがよかったので放射線治療が効くと思われます。」などとお話されます。

そんな顔つきを検査しているあいだが手術後約1ヵ月半あり、また待ち期間を悶々と過ごします。私の場合、幸い顔つきがよかったので抗がん剤治療はしないで放射線治療を月~金の毎日休むことなく5週間おこない、その後化学治療(ホルモン療法)が最低5年~10年間に決まりました。

放射線治療は手術から2ヶ月後にスタートしました。照射時間は数分ですが、待ち時間、会計時間、病院までの往復時間を含めると毎日数時間の拘束を強いられます。幸い勤務先と病院が近くだったので会社を休むことなく周りに協力頂いて、通院治療しながら勤務しています。治療は仕事の一つ、と思ってひとつひとつこなしている感じですね。

引用元:日立保険サービス

治療選択の基準について

乳がんの治療法は大きく分けて、手術・放射線治療・薬物治療の3つあります。

世界的な薬物治療の選択基準には、腫瘍の大きさ・腋(わき)のリンパ節へのがんの転移の程度・がんの悪性の程度・ホルモンレセプターの有無・がん細胞の増殖の強さの程度・血管やリンパ管などへの浸潤の程度を考慮していくと言われています。

これに基づき、ホルモン作用薬(女性ホルモンを抑える作用)・抗がん剤・分子標的薬をさまざま組み合わせて投与していくのが特徴です。

最近の乳がん治療では、遺伝子の分野の研究が進んでおり、乳がんを分子のレベルで(molecular)分類(subtype)を行い、治療法を決めていくのです。

上記分類には4つのタイプがあります。

  1. エストロゲンレセプター陽性(+)&HER2抗原陰性(−)
  2. エストロゲンレセプター陽性(+)&HER2抗原陽性(+)
  3. エストロゲンレセプター陰性(−)&HER2抗原陽性(+)
  4. エストロゲンレセプター陰性(−)&HER2抗原陰性(−)(triple negative type)

この4つに乳がんを分類し、それぞれに合った薬物を選択していきます。実際に使用する薬剤については、主治医の先生にしっかりと相談していくことが重要です。

乳癌に対する研究と論文

ラジオ波熱焼灼術(RFA)による早期乳癌治療の有望性

東京医療センターの木下貴之氏は早期乳癌の治療法について、「ラジオ波熱焼灼術」が従来の手術の代替治療として有望であると米国臨床腫瘍学会(ASCO 2024)において発表しました。

ラジオ波熱焼灼術(RFA)は腫瘍径1.5cm以下でリンパ節転移や遠隔転移のない早期の乳癌を治療対象としており、ラジオ波(高周波電流)を腫瘍細胞へ照射することで癌細胞を焼灼する治療です。同研究では20~79歳の女性の早期乳癌患者が対象となっており、全員に対してラジオ波熱焼灼術を行った後に放射線療法が実施されました。そして3ヶ月後に針生検を実施し、さらに治療6ヶ月後~60ヶ月後まで5年間で画像評価を行ったところ、全生存率は99.2%(95%信頼区間:97.4-99.7)で、無転移生存率は99.1%(95%信頼区間:97.3-99.7)となりました。

上記の結果により、ラジオ波熱焼灼術は乳房部分切除術などの手術の代替治療として将来的に有望である可能性が示唆されています。

※参照元:がんナビ|腫瘍径1.5cm以下の早期乳癌にラジオ波熱焼灼術は手術に代わる有望な治療法【ASCO 2024】
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202406/584536.html

トリプルネガティブ乳癌の進展機構の一端を解明

東京薬科大学や国立がん研究センター中央病院などの共同研究グループは、トリプルネガティブと分類される悪性度の高い乳癌に関して、浸潤や転移といった進展を増進させる機構の一端を解明しました。

同研究は2024年2月14日の米国科学誌「Journal of Cell Biology」に掲載され、トリプルネガティブ乳癌では微小管-アクチン結合タンパク質「MAP1B(Microtubule-Associated Protein 1B)」が高度に発現しており、これが予後の憎悪に深く関与していると明らかにされています。

MAP1Bは癌細胞が持っている特殊な構造「浸潤突起」の形成に関与する、タンパク質「Tks5」を患者の免疫システムから守ることにより、癌細胞の生存を助け、結果として癌細胞の浸潤や転移リスクを高めていることが発見されました。また、MAP1Bを抑制することでTks5が免疫システムによって分解されることも解明し、今後の乳癌治療や新薬の開発に役立てると期待されています。

※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター|トリプルネガティブ乳がんの浸潤・転移機構の一端を解明
https://www.ncc.go.jp/jp/information/researchtopics/2024/0215/index.html

アベマシクリブ+フルベストラントが進行乳癌の生存期間を改善

米国「Winship Cancer Institute of Emory University」のKevin Kalinsky氏らの研究グループは、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2024)において、癌治療薬として「アベマシクリブ」と「フルベストラント」を利用した治療により、進行乳癌の患者の無増悪生存期間(PFS)がフルベストラント単剤治療と比較して有意に改善されたことを発表しました。

治療対象となった乳癌患者は、CDK4/6阻害薬+内分泌療法で進行したホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳癌の患者や、早期乳癌治療でCDK4/6阻害薬+内分泌療法を受けたものの再発した患者となっています。

同研究では、フルベストラントにアベマシクリブを合わせた投与群(アベマシクリブ群)と、フルベストラントにプラセボを合わせた投与群(プラセボ群)を比較し、その結果としてアベマシクリブ群でPFSなどが改善されました。

※参照元:がんナビ|CDK4/6阻害薬+内分泌療法で進行したHR陽性進行乳癌にアベマシクリブ+フルベストラントは有意にPFSを改善【ASCO 2024】
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202406/584535.html

臨床試験や治療法のトレンド

この章では、比較的新しい臨床試験や治療法について解説していきます。アストラゼネカ株式会社で開催されたセミナーや、パルボシクリブとタモキシフェン併用など、比較的新しい治療などについて解説しています。新しい治療法を探している方は、チェックしてください。

「進行再発乳がんへの有効性を示した世界初のAKT阻害薬」というメディアセミナーを開催

トルカプ・PIK3CA・AKT1・PTEN遺伝子変異が見られるHR陽性HER2陰性の手術切除が不可能・再発乳がんの二次治療薬として発売された薬剤。アストラゼネカ株式会社では、2024年6月21日に「進行再発乳がんへの有効性を示した世界初のAKT阻害薬」といったメディアセミナーを開催しました。

同社のAKT阻害薬カピバセルチブは、「内分泌療法後に増悪したPIK3CA・AKT1またはPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術切除不能または再発乳がん」の効能・効果で、フルベストラントとの併用療法が2024年3月26日に国内で承認、同5月22日に発売されました。

参照元:がんプラス

乳がんに関するがん特異的抗体開発に成功 〜副作用のない抗体医薬品開発に期待〜

細胞の増殖に関与するとされるタンパクHER2に対する抗体医薬であるトラスツズマブは、世界各国で使用されており、乳がん・胃がんの患者で高い効果が期待されています。

しかし、正常細胞にも高い反応性を示すといわれており、とりわけ心臓に対する副作用が報告されています。したがって、HER2に対するがん細胞を特異的に攻撃する抗体医薬の開発が臨床現場において求められていました。

東北大学大学院医学系研究科分子薬理学分野の加藤教授らの研究グループは、がん細胞を特異的に攻撃する抗体医薬の開発にあたってきました。本研究では、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)を標的とするHER2-CasMabを作製。

今回開発したHER2-CasMabは、がん細胞のみに反応し、正常の上皮細胞にはまったく反応しませんでした。また、HER2-CasMabは乳がんに対して、トラスツズマブと同等の抗腫瘍効果がみられたことから、乳がんの治療で副作用のない治療法の開発が期待されます。

参照元:東北大学

パルボシクリブとタモキシフェン併用の新たな治療選択肢を乳がん患者に提供

国立がん研究センター中央病院主導のもと、アジア地域で行われた国際共同医師主導の治験結果により、新たな治療選択肢をホルモン受容体陽性・HER2陰性進行乳がん患者に提供できるようになったとされています。

これにより、閉経後乳がん患者の治療はもちろん、治療選択肢が少ない閉経前乳がん患者に対する治療選択が拡大しました。我が国のアカデミアが、国を超えたアジア地域で国際共同治験を主導することによって、アンメット・メディカルニーズを満たした成功事例です。

国立がん研究センター中央病院は、この試験で培ってきた国際共同医師主導治験のノウハウを活かし、国内外の医療現場でより多くの新しい治療薬・治療法を提供できるように取り組んでいます。

参照元:国立がん研究センター

【参考URL】

参考[1]:国立がん研究センター がん情報サービス『乳がん 治療の選択』(2018年8月12日確認)

参考[2]:乳がん治療と乳房再建の情報ファイル『No.3 治療前に医師に聞いておきたいこととセカンドオピニオン』(2018年8月12日確認)

参考[3]:アストラゼネカ 乳がん.jp『腋窩リンパ節郭清とセンチネルリンパ節生検』(2018年8月12日確認)

参考[4]:国立研究開発法人 国立がん研究センターがん対策情報センター『薬物療法(抗がん剤治療)のことを知る』(2018年8月12日確認)

参考[5]:北海道がんセンター 乳腺外科のサイト『乳癌の薬物療法について』(2018年8月12日確認)

参考[6]:東京女子医科大学 放射線腫瘍学講座『乳がんの放射線治療』(2018年8月12日確認)