乳癌に他の部位から転移することは稀であり、乳癌から他の箇所へ転移することが多いようです。このページでは乳癌の特徴や治療方法などをまとめました。
癌治療において最も難しいとされているのが「転移」を防げない点です。
もともと患っている原発癌の進行により、血管やリンパを通して癌細胞がいろんな箇所に転移してしまいます(遠隔転移)。乳癌から転移しやすいのは、リンパ節、肺、骨、脳、肝臓など。その中で最も多いとされているのが、乳房から近いリンパ節です。その次に多いのが血液循環の中心となっている肺、そして骨の部位となっています。
乳がんは、しこりとして見つかる前に、乳房の周りのリンパ節や、遠くの臓器(骨、肺、胸膜、肝臓、脳など)に転移して見つかることがあります。乳がんの種類や性質によって、広がりやすさ、転移しやすさは、大きく異なります。引用元:国立がん研究センター がん情報サービス_乳がん 基礎知識
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/index.html
このように、乳がんは乳がんとしての発見よりも先に、転移先の癌として発見されることも少なくありません。それほどまでに転移しやすいとされている癌であるため、乳がんが発見された場合は治療の確実性を求める必要があります。
乳癌の転移率が最も高いと言われているのがリンパ節で、乳房から近いため転移しやすいことが分かっています。症状でみられるのがリンパ節の腫れ、ワキ下部分のしこり、しびれやむくみ、腕のだるさなど。リンパ節に転移した方は腕の感覚がおかしいと感じる場合が多いので、症状があらわれていないかこまめにセルフチェックを行いましょう。
肺は毛細血管やリンパ管が多いため乳癌から転移しやすい部位であると言えます。
主な症状は咳で、肺に水がたまることが原因。さらに、呼吸困難な症状におかされることもあります。風邪をひいているわけでもないのにこのような症状がみられる場合は、肺転移している可能性があります。
骨にも乳癌からの転移が多く見られます。骨の中でも骨盤骨、肋骨、腰椎、胸骨、頚椎、胸椎、頭蓋骨、手足などに影響があり、軽度な衝撃でも折れてしまい、強い痛みにおかされることがあります。
骨転移には骨折や麻痺、しびれを感じる「溶骨型」と腫瘍による骨の痛みを感じる「造骨型」の2種類があります。
乳癌に関連した癌転移として注意すべきリスクの1つが脳転移です。脳へ癌が転移した場合、癌の位置やサイズなどによって様々な症状や機能障害が発生し、癌の治療が困難なだけでなく日常生活を送ることが困難になり、QOLが低下してしまう恐れが高まります。
脳転移の症状は、腫瘍組織によって脳の領域が圧迫されたり神経細胞が死滅したりすることで引き起こされ、例えば頭痛や吐き気といった症状の他にも、視覚障害や味覚障害といった感覚障害、手足のマヒや平衡感覚の喪失といった運動機能障害、発語の異常や失語といった言語機能障害など多種多様な状態が懸念されます。
癌が遠隔に転移してしまった場合、癌が進行していることがほとんどです。転移部分の除去手術も難しいことが多いでしょう。そこで、この場合の治療法としては薬物療法を行うのが一般的です。転移箇所によってそれぞれ治療法が異なります。
また、乳がん自体の治療方法としてよく用いられるものは、手術、放射線治療の他に、ホルモン療法や化学療法などの薬物療法が挙げられます。これらの治療の選択は、患者の希望を汲むことはもちろん、患者の体の状態や年齢、合併症の有無によって決定されます。[1]
乳がんの転移は局所再発か遠隔転移かでも適切な治療法、選択肢は変わっていきます。局所再発の場合、手術による乳房切除術と再発防止のため放射線療法を行うことが一般的です。全身の臓器に転移する遠隔転移の場合には手術による治療は困難になり、多くの場合は薬物療法が中心となり、放射線療法と薬物療法の組み合わせ、手術と抗がん剤治療など、集学的治療をおすすめする病院が多く、患者ひとり一人に違った治療法があります。
副作用が強く出るもの、QOLを優先する治療法などそれぞれの違いを理解した上で選択することをおすすめします。手術、放射線療法、薬物療法、それぞれでセカンドオピニオンを受けるのにおすすめのクリニック、病院を紹介いたしますので、何が適しているのか一度セカンドオピニオンを受けてみてください。
わき下のリンパ節を切り取る「腋窩リンパ節郭清」を行い、全身の血液やリンパを介して全身へ癌細胞が転移することを防ぎます。
腋窩リンパ節郭清は、以前は乳がんの患者すべてに行われていた治療法でしたが、最近ではリンパ節に転移が認められる場合にのみ行われる治療法となっています。
その理由は、乳がんはリンパ節から全身へと転移すると考えられていましたが、必ずしも腋窩リンパ節から進行するわけではないということがわかってきて、転移していないリンパ節を取り除くことに意味はないとされているからです。
そのため、リンパ節への転移が発見されていない場合、「センチネルリンパ節生検」という検査を術中に行い、リンパ節に転移が見られない際には腋窩リンパ節郭清は行われません。[3]
抗がん剤やホルモン剤を投与して全身療法を行います。肺に転移しているとなると他の臓器への転移も進んでいると考えられるので、転移している部分を除去しても再発する可能性が高いでしょう。
肺転移した癌への抗がん剤治療で用いられる治療薬は「アントラサイクリン系抗がん剤」が代表的です。アントラサイクリン系抗がん剤には腫瘍を小さくする働きがあるため、肺転移では頻繁に用いられます。もしも、アントラサイクリン系抗がん剤で効果を得られなかった場合は、「タキサン系抗がん剤」が使用されます。
抗がん剤治療では、内服薬や注射、点滴など様々な方法が用いられますが、複数の治療薬を組み合わせる場合もあります。さらに、抗がん剤治療と他の治療方法が併用される可能性もあり、例としては、手術や放射線治療などが考えられるでしょう。[4]
ホルモン治療は、乳がんのタイプが「エストロゲン受容体陽性 ER(+)」であった場合に選択されます。がん細胞には、女性ホルモンであるエストロゲンに感受性があるタイプとないタイプが存在するため、感受性のあるがん細胞だった場合にホルモン治療が有効です。
閉経前の女性には、「LHRHアナログ」という薬剤が使用され、閉経後の女性には「アロマターゼ阻害薬」「フルベストラント」「トレミフェン」「酢酸メドロキシプロゲステロン」が用いられます。また、「タモキシフェン」という薬剤は、月経状況に関わらず利用できます。[5]
放射線療法、抗がん剤治療、ホルモン治療が主な治療法です。放射線治療を行うことにより痛みの和らぎや骨折予防に効き、6か月後には骨の修復にまで至る人もいます。
また、大腿骨や頚部、大腿骨の中央部への転移がみられる場合は髄内釘の打ち込み、人工骨頭置換術を行います。腰髄や胸髄の転移には人工セメントを流し込む場合もあります。
「ビスホスホネート製剤」を抗がん剤やホルモン剤と一緒に投与することで、骨の痛みの緩和や骨の強化に繋がります。
放射線療法は、高エネルギーX線や電子線などを照射することで、がん細胞の増殖を防ぎ、がん細胞を小さくする効果が期待できます。骨転移の痛みを和らげるための治療としても用いられますが、乳がん再発予防にも頻繁に用いられ、乳がん患者のほとんどが受ける治療法です。
放射線療法では、寡分割照射を3週間程度で行う短期照射が有効とされており、乳がん診療ガイドラインによると、50歳以上、pT1-2、全身化学療法を受けておらず線量均一性が維持できる患者においては、寡分割照射と通常分割法が同程度で適切とされています。[6]
ビスホスホネート製剤は、骨を破壊する破骨細胞の働きを抑制する働きを持ち、骨転移における骨折や脊髄圧迫を予防します。乳がんの骨転移だけではなく、骨転移全般の治療に用いられる薬剤です。女性ホルモンであるエストロゲンが低い状態で治療を行うと、良好な結果が期待できると言われています。
ビスホスホネート製剤の中でも、骨折などの骨関連の問題を軽減させる効果が特に高いとされているのが、「ゾレドロン酸」です。その他、「デノスマブ」は破骨細胞の体内生存を阻止する働きを持ち、ゾレドロン酸と比較して骨関連の問題発生を阻止できるとされています。
乳癌からの脳転移では重篤な症状を引き起こすリスクが高く、治療に関しても癌の位置やサイズ、患者の状態など多角的な視点から条件を考慮して選択しなければなりません。加えて脳転移は進行が速いことも特徴であり、速やかに対処しなければさらに予後が悪化する恐れがあります。
脳転移の治療としてはまず手術が可能か否かで対応が異なる上、脳転移へ特化した局所的治療と、患者の全身を対象とした全身治療を併用することも重要です。
脳へ転移している腫瘍の状態が直ちに手術で除去できるものでない場合、局所的治療として放射線治療が選択されます。
脳転移における放射線治療では、健常な脳細胞への被曝ダメージを少しでも軽減できるよう基本的に高精度放射線治療が重要となっており、定位放射線療法や全脳放射線療法といった放射線治療によって腫瘍細胞の増殖を抑えることが目指されます。なお、放射線治療の結果によってはさらに手術が行われることもありますが、具体的な治療計画は患者ごとに主治医と相談して決めることが原則です。
脳内に存在する腫瘍の転移巣が1つ(単発)で、かつ手術によって物理的に腫瘍を除去することが可能と思われる位置に癌が存在している場合、外科的アプローチによって癌の切除を行うことが検討されます。
また、手術可能な位置にあるもののサイズ的な条件で直ちに手術が困難とされるような場合、術前薬物療法や放射線治療などを併用した集学的治療によって患者の癌を手術可能な状態へ導くといったケースもあるでしょう。
手術によって転移巣を全て除去できれば治療効果は高い反面、脳内の手術は難易度が高く、腫瘍細胞を取り残したリスクに備えて術後の集学的治療が実施されることも想定されます。
全身療法として抗がん剤治療を基盤とした薬物療法が行われます。乳癌や乳癌の脳転移に関しては、遺伝子型など様々な条件から抗がん剤の種類や治療法に対する有用性の比較研究が進められており、例えばHER2陽性乳癌の場合、トラスツズマブやその他の分子標的薬の使用が検討されることもあるでしょう。
そのため効果的な全身療法のプランニングには事前の検査が重要です。
乳がんは進行とともに腋(わき)の下のリンパ節に転移することが知られています。術前の検査でがん細胞の転移が認められた方は、病巣の切除とともに腋の下のリンパ節をまわりの脂肪組織ごと切除します。遠隔転移の場合は手術だけでの治癒は困難になります。
乳がんの放射線治療では、一般的に乳房の手術後、再発を防ぐために用いられます。
乳がんの転移の場合は転移巣による症状があるときに症状を緩和する目的に放射線治療は有効です。特に疼痛が生じやすく骨転移や神経症状が生じやすい脳転移に対して放射線治療はしばしば行われます※1。
再発や転移癌などは脳転移など例外はありますが、原則として一度照射した場所には再び照射しません。放射線量、範囲のコントロールにより可能な場合もありますが放射線の副作用と効果を熟知した乳がん専門の医師による細心の注意が必要です※2。
※1情報参照元:県立広島病院「乳がんの放射線治療について」(http://www.hph.pref.hiroshima.jp/bumon/shinryo/naika/hoshasen-chiryo_sec08.html)
※2情報参照元:日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版」(https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g4/q32/)
全身的な再発とともに胸壁再発が起こった場合は全身療法として薬物療法を優先します。全身療法により胸壁の病巣に対して十分な効果が見られた場合は継続し、不十分である場合には、切除することもあります。また遠隔転移が見られるリンパ節再発等の場合も抗がん剤治療、ホルモン療法などの薬物療法が選択されることが多いです。再発している部分が初回の手術後に放射線療法を受けていない場合は放射線療法を併用することも選択肢になります※3。
※3日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版」(https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g6/q43/)
ここでは、当サイトで治療医師として掲載している日本乳癌学会乳腺指導医かつ日本外科学会外科専門医の所属する病院をご紹介します。(2021年11月時点)
日本における乳がん死ゼロを目標とし、乳がんが疑われた場合の鑑別診断や初期治療、再発乳がんの治療に取り組んでいる昭和大学乳腺外科。腫瘍センターや緩和ケアセンターなどとの連携を行い、患者本位の医療を提供します。
同科では、早期および進行再発乳がんの診断や治療を行っていますが、遺伝性の乳がん・卵巣症候群に関する遺伝カウンセリングを含む専門外来なども開設しています。また、治療中の患者や家族に向けた情報提供、カウンセリングによる心のケアも行っている点も特徴。さらに、毎週区の乳がん検診も実施しています。
電話番号:03-3784-8000
乳がんの症例
手術件数:2019年666件(悪性608件、良性58件)、2020年度526件(悪性484件、良性42件)
中村 清吾昭和大学病院 教授
主任教授/診療科長を務める中村医師。専門分野は乳腺外科であり、患者中心の理念に基づいた診療の提供を目指し、それぞれの科に在籍する医師や看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、遺伝カウンセラーなどさまざまな職種と連携したチーム医療を提供しています。日本外科学会専門医・指導医、日本乳癌学会乳腺専門医・指導医、検診マンモグラフィ読影認定医師、遺伝性腫瘍専門医、厚生労働省臨床研修指導医。
明石 定子昭和大学病院 教授
教授を務める明石先生の専門は乳腺外科。日本外科学会専門医・指導医、日本乳癌学会乳腺専門医・指導医検診マンモグラフィ読影認定医師の資格を持つドクターです。
杏林大学医学部付属病院の乳腺外科は、多摩地区を中心として質にこだわった乳がんの診断・治療を手がけています。乳がんが疑われる場合には、マンモグラフィや超音波、MRIなどの画像診断を実施。さらに病理組織診断を基にして、治療方法を選択していきます。また、進行再発乳がんにおいては、それぞれの病状に合わせた治療を提供するとともに、対症療法による症状緩和と精神的なケアを行い、質の高い生活を保てるようにサポートすることを重要としています。
電話番号:0422-47-5511
乳がんの症例
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井本 滋杏林大学医学部付属病院 教授
1985年慶應義塾大学医学部卒業。慶応義塾大学病院、日本鋼管病院、日本大蔵病院、足利赤十字病院、国立がんセンター東病院乳腺科などを経て、2007年より現職。専門分野は腫瘍外科学や主要免疫学。日本外科学会専門医、日本乳癌学会専門医、日本がん治療認定医の資格を持つドクター。乳がんに関する著書も多く手がけています。
乳がんをはじめ、乳腺に関する様々な病気の診断・治療に取り組んでいるがん研有明病院。2015年よりマンモグラフィでは断層撮影も可能な装置を導入、さらに高い読影技術を持つ医師による診断を行っています。また治療では外科治療、薬物治療、さらに放射線科医が加わる放射線治療などを実施します。加えて、形成外科と連携した乳房再建手術も積極的に行っています。
電話番号:03-3520-0111(大代表)
乳がんの症例
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大野 真司がん研有明病院 副院長
乳腺センター長を務める大野医師は、同院副院長、感染症科部長、患者・家族支援センター長、医療クオリティマネジメントセンター長といった様々な役割を担っているドクターです。日本乳癌学会乳腺専門医、日本外科学会指導医、日本乳癌学会乳腺指導医の資格を持つとともに、日本乳癌学会理事、日本がん・生殖医療学会理事や日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会理事なども務めています。
新潟県内の乳がん診療の中心的な役割を担っている新潟県立がんセンター新潟病院の乳腺外科。がん検診により精密検査が必要な方や他の医療機関から紹介された方を対象とし、乳がんの精密検査や診断、手術に加えて、術前・術後の補助薬物療法や経過観察、再発治療まで対応。治療などを行っていく上では、放射線科や内科、整形外科、緩和ケア科などの医師と密に連携しながら進めていきます。また、地域連携診療計画書(地域連携パス)を用いることにより、地域の病院や診療所とともに質の高い共同診療を行います。
電話番号:025-266-5111
乳がんの症例
2017年:年間乳がん手術数316件(うち114例で乳房温存療法を実施)
佐藤 信昭新潟県立がんセンター新潟病院 院長
1979年新潟大学卒業。新潟県立がんセンター新潟病院の院長を務める佐藤医師は、乳がんを専門とするドクターです。日本外科学会専門医、日本乳癌学会乳腺指導医・専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医の資格を持つドクター。
地域に根ざした医療や福祉を提供している黒須病院の乳腺科では、乳腺の良性腫瘍や乳がんなどを対象としています。同科にはがん治療に関する臨床経験を豊富に持つ乳腺専門医が在籍しており診療や治療を提供。乳がんを早期発見するためにも、気になる症状がある場合にはすぐ受診することを推奨しています。
電話番号:028-682-8811
乳がんの症例
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田中 浩一黒須病院 先生
東京医科大学卒業後、北海道厚生連札幌厚生病院、東京都立豊島病院、国立がんセンター東病院を経て現職。乳腺・呼吸器外科・がん薬物療法を専門としており、日本外科学会専門医指導医、日本呼吸器外科学会呼吸器外科専門医指導医、日本乳癌学会乳腺専門医指導医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医指導医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医指導医、検診マンモグラフィ読影医、インフェクションコントロールドクター、日本医師会認定産業医の資格を持ち、患者の気持ちに寄り添った医療を提供しているドクター。
乳がんをきちんと治し、いかにきれいに治すかを外科受診時から考え、治療を行っていく亀田総合病院乳腺科。内視鏡手術のほか、乳房再建やオンコプラスティックサージェリーにも積極的に取り組みます。また、小乳がんの治療において切らない治療である冷凍凝固法を早くから開始した点も同科の特徴。非切除凍結療法は局所麻酔で行うため、ケースによっては日帰り手術による対応が可能です。
電話番号:04-7092-2211(代表)
乳がんの症例
乳癌手術651件(全摘290件・温存295件・凍結療法66件)
乳房再建術(一期再建・二期再建)170件
※2017年度実績
福間 英祐亀田総合病院 先生
1979年岩手医科大学卒業後、聖路加国際病院やメルボルン大学、横浜総合病院などを経て2011年より現職。専門分野は乳腺治療、乳腺内視鏡下手術、乳腺画像診断、凍結療法。また、日本外科学会認定医・専門医・指導医、日本乳癌学会認定医・専門医・指導医などの資格を持つ医師。内視鏡を用いた手術や冷凍凝固療法、オンコプラスティックサージェリーに取り組んでいます。
ここでは、当サイトで治療医師として掲載している日本医学放射線学会放射線治療専門医が所属する癌放射線治療専門クリニックをご紹介します。(2021年11月時点)
クリニックC4では、正常な細胞への影響を抑えながらもがん病巣に対して放射線照射を行えるトモセラピーによって治療を行っています。トモセラピーは再発がんや転移がん(特に多発転移)にも対処が可能であり、手術などによる体への大きな負担もなく、治療期間も比較的短いという特徴があります。
「放射線治療専門医(※2)」が「トモセラピー(※1)の治療をする」「放射線治療専門クリニック」は、関東で唯一クリニックC4のみとなっています。
(※1)参照元:Radixact 公式サイト(https://radixact.com/treatment centers/)
(※2)参照元:公益社団法人日本医学放射線学会 公式サイト(http://www.radiology.jp/specialist/list_t.html)
電話番号:03-6407-9407
乳がんの症例
右乳がん リンパ節転移(36歳女性)
青木 幸昌クリニックC4 院長
クリニックC4の院長を務める青木医師は、がん治療に30年以上取り組んできた医師。東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部附属病院や放射線医学総合研究所特別研究員、総理府技官、国際医療福祉大学保健学部放射線・情報科学科教授などを経て、2008年にクリニックC4を設立。
第一種放射線取扱主任者、公益社団法人日本医学放射線学会学会員、公益社団法人日本放射線腫瘍学会学会員、国際個別化医療学会評議員。
苑田会放射線クリニックでは、放射線治療を必要とする方に対し、きめ細やかな診療を行った上で治療を提供。30年以上の豊富な経験を持つ常勤放射線治療専門医が、それぞれの症状に応じた治療を提案します。同クリニックでは、特殊な装置ではなく「リニアック」と呼ばれる汎用機を導入することによって、高精度放射線治療から緩和治療まで幅広く対応できます。
電話番号:03-5851-5751
乳がんの症例
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齋藤 勉苑田放射線クリニック 院長
1976年に日本大学医学部卒業。その後国立病院医療センターや日本大学医学部、苑田診療所などを経て、2013年に苑田会放射線クリニック院長に就任しています。斎藤医師は日本医学放射線学会放射線治療専門医や日本がん治療認定医機構暫定教育医の資格を持つドクターであり、それぞれの患者に対してよりよい治療を提供します。
東京ベイ先端医療・幕張クリニックは、PET-CTを中心としたがんの画像診断から、高精度放射線治療までの提供を目的として開設されたクリニックです。同クリニックではがん専門病院で経験を積んできたスタッフによる放射線治療を提供している点が特徴。特に2名の日本医学放射線学会放射線治療専門医が在籍している点が同クリニックの大きなポイントといえるでしょう。
電話番号:043-299-2000
乳がんの症例
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幡野 和男東京ベイ先端医療・幕張クリニック 院長
院長の幡野医師は日本大学医学部卒業。その後国立病院医療センター(現:国立国際医療研究センター病院厚生技官)や千葉大学医学部放射線医学教室や米国ペンシルバニア・ハーネマン医科大学、千葉県がんセンター 放射線治療部部長などでの活躍を経て東京ベイ先端医療・幕張クリニック院長に就任しています。日本医学放射線学会 放射線治療専門医、日本核医学会PET核医学認定医。
ここでは、当サイトで治療医師として掲載している日本血液学会血液専門医かつ日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医の所属する病院をご紹介します。(2021年11月時点)
虎ノ門病院臨床腫瘍科では、「Human-based Medicine(人を中心とした医療)」をスローガンとし、日々さまざまながんの治療に当たっています。同科では抗がん剤や分子標的薬、免疫治療などを提供していますが、そのほかにも外科治療や放射線治療、緩和治療の専門家と連携して治療を実施。同院では、この専門家同士のつながりを活用し、より良い治療を提供することを目指しています。
電話番号:03-3588-1111(代表)
乳がんの症例
2020年12月時点では乳がんに関する治験を2件実施
三浦 裕司虎の門病院 先生
腫瘍内科医として、泌尿器や消化器のがんを中心に診療を行っています。幅広い固形腫瘍の診療を行う中で、特に腎がんや膀胱がん、前立腺がんなど泌尿器腫瘍への薬物療法を専門としているドクターであり、標準治療から新薬の治験まで対応。日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医・指導医、日本血液学会血液専門医、日本内科学会認定内科医、日本泌尿器腫瘍学会代議員、腎癌研究会世話人。
「転移した癌」が分かったときはステージが進行している場合が多く、治療が難しいとされています。そこで重要となるのが病院または医師の選択。病院選びはただ規模が大きければよいという訳ではありません。大事なのはがん治療の専門性や技術の高さ。症例実績の多い病院や医師を選びましょう。転移癌でも自分に合った治療法を見出した患者さんが寛解したという例は多数あるのです。どのような治療法があるのかもう一度よく調べ直して、可能性のありそうな治療法を行なっているクリニックがあればセカンドオピニオンを受けてみることをおすすめします。医療機関や医師を変えて新しい治療法に出会える可能性が広がるでしょう。転移してしまったからといって諦めずに行動を起こしてみることが大切です。
セカンドオピニオンは、主治医から提案された治療以外の方法を知れるだけでなく、診断の確認、提案された治療方法の選択に迷っているとき、処方薬の種類を確認したいときなどにも利用できます。[2]
がんはどのように予防していけばいいのか、スクリーニングについて知りたいと思っている方もいることでしょう。
日本人を対象に行われた研究では、がん全般の予防には禁煙・節度ある飲酒・バランスのとれた食事・身体活動・適正な体形の維持・感染予防が有効であると言われています。
乳がんを予防するためには、飲酒を控えながら、閉経後の肥満を予防するために体重管理・適度な運動を意識することが大切です。この章では、予防やスクリーニングに関する情報を解説しますので、チェックしてみてください。
乳癌の発生には女性ホルモンであるエストロゲンが深く関与すると考えられており、例えばエストロゲンを含有する経口避妊薬などの医薬品を使用したり、長期間のホルモン補充療法などを行っていたりすると、それらが乳癌の発生原因になるということが指摘されています。加えて、そのような外部からの影響による原因の他にも、初経年齢の低さや閉経年齢の高さ、出産経験がない、初産の年齢が高いなど様々な体内要因が乳癌のリスク要因になるということも重要です。
その他、乳癌の発生原因として飲酒や閉経後の体重増加(肥満)、運動不足といった生活習慣に関連するものも挙げられており、経口避妊薬やホルモン補充療法などを行っていない人や、妊娠や出産に関連したリスク要因がない人であっても、日常的な予防対策として生活習慣の改善などを心がけていくことは大切といえるでしょう。
乳がんの発生には、女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られています。エストロゲンを含む経口避妊薬の使用、閉経後の長期のホルモン補充療法は、乳がんが発生するリスクを高めることが分かっています。
また、体内のエストロゲンに関連する要因として、初経年齢が低い、閉経年齢が高い、出産経験がない、初産年齢が高い、授乳経験がないなどが、乳がんを発生するリスクを高めると考えられています引用元:国立がん研究センターがん情報サービス|乳がん 予防・検診
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/prevention_screening.html
乳癌の発生リスクを高める要因として、まず注意すべきは飲酒や肥満、運動不足といった生活習慣です。
そもそも国立がん研究センターでは日本人の癌リスクを増やす要因として生活習慣の乱れを指摘しており、具体的には以下のようなポイントが癌リスクを下げて癌の予防へつながると考えられています。
中でも飲酒の習慣は乳癌リスクにつながる要因であり、日常的に飲酒習慣のある人であれば飲酒量を制限したり、あるいは禁酒したりといったことも効果的です。また上述したように閉経後の肥満などは乳癌のリスクにつながるため、食事メニューや食事の摂り方を見直して暴飲暴食を控える他にも、適度な運動習慣を生活に取り入れたり、適正体重を維持したりといったことも考えていきましょう。
なお若い女性であっても過度なダイエットなどで体重が激減したり、ホルモンバランスが崩れたりすると、乳癌だけでなく様々な身体症状や疾患を引き起こす可能性が高まるため注意しなければなりません。
特に乳癌は血縁者に乳癌患者がいる場合、その発生リスクが高いことも判明しており、家族や近親者に乳癌の患者がいる人については日頃から予防対策を意識しておくことも大切です。
日本人における癌の発生原因として、生活習慣だけでなく感染症による影響も無視することはできません。
そもそも日本人女性の癌の原因として最も多いものが感染症とされており、例えば乳癌そのものは感染症によって影響しなかったとしても、他の癌が発生して転移することで結果的に乳癌を発生させるといった恐れもあります。そのため生活習慣の見直しだけでなく感染症予防にも配慮することが癌予防としては重要です。
感染症には細菌性のものやウイルス性のものがあり、例えば女性であれは「ヒトパピローマウイルス(HPV)」に感染したことで子宮頸癌のリスクが高まることも知られています。
その他にも感染症と癌の相関については以下のようなケースがあります。
これらの感染症が必ずしも癌を引き起こすとは限りませんが、少なくとも感染症予防も踏まえて癌予防を考えていく意識が大切です。
スクリーニングは未発見の癌や症状を発見するために行われる診察や検査の総称であり、乳癌のリスクを確認して、乳癌の早期発見・早期治療へつなげるためにも適切なスクリーニングを実施することはとても重要です。
乳癌に関連したスクリーニングには様々な方法があり、ここでは一般的に乳癌検診などで行われているスクリーニングの方法と概要を解説していますので参考にしてください。
乳癌のスクリーニングとして真っ先に考えるべきは医師による診察です。なお診察では主に医師から患者に対して問診・視診・触診が行われますが、乳癌のセルフチェックを行う上でも実際に自分で乳房や乳腺を触ってみて、しこりなどの異変を感じられるかチェックすることは欠かせません。
視診や触診は医師が患者の胸などを見たり触ったりすることで、癌病巣の有無やその他の異常の有無などを調べる診療行為です。視診や触診だけではごく初期の乳癌を発見することは難しいものの、乳癌はある程度の段階まで無自覚に進行する病気でもあり、視診や触診は最初の乳癌スクリーニングや乳癌発見のきっかけとして重視されている項目です。
なお、患者本人だけでなく、パートナーなども日頃から乳癌について学んでおくことで、患者の体へ触れた際などに違和感へ気づける可能性が高まります。
厚生労働省の指針において、明らかに乳癌のスクリーニングとして死亡率減少効果があり、患者への健康被害などのデメリットも少ない方法であると推奨されているものが乳腺X線撮影(マンモグラフィ)です。
厚生労働省の指針では、がん検診の死亡率減少効果が確実で、検診の不利益(偶発症、過剰診断、偽陰性・偽陽性)が少ない検診だけが推奨されています。現時点で乳がん検診では、マンモグラフィが推奨されています。
引用元:国立がん研究センターがん情報サービス|乳がん 予防・検診
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/prevention_screening.html
マンモグラフィはX線を利用して患者の体内を撮影する画像診断技術の1つであり、特に乳房専用に設計されたX線撮影機を使用して行われます。
マンモグラフィは乳房全体を正確に撮影するため、乳房へ物理的な圧力をかけて、乳房を薄くのばした状態で撮影を行うことが特徴です。そのため乳房を圧迫する際に痛みを伴うこともありますが、マンモグラフィによって深刻な健康被害を生じさせるリスクは少ないと考えられていることもポイントです。
マンモグラフィとは、乳房専用のX線撮影のことです。乳房を板で圧迫し、薄く伸ばした状態で撮影します。 乳房全体をくまなく写し出すために、片方の乳房に対して複数の方向(MLO:内外斜位方向とCC:頭尾方向)から圧迫し撮影を行います。
引用元:国立がん研究センター中央病院|乳房X線検査 (マンモグラフィ)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/radiological_technology/radiological_diagnosis/xsenkensa/020/020.html#:~:text=マンモグラフィとは,し撮影を行います。
マンモグラフィは触診によって発見することが困難なタイプの乳癌であってもチェックすることが可能なスクリーニングとなっており、乳癌の検診においては有益な方法であると考えられます。
超音波検査(エコー検査)は、患者の体の表面に超音波発生装置を当てて患者の体内へ超音波を照射し、その内部で反響・反射してきた超音波を収集して画像化することで、体内の様子を確認する検査方法です。
超音波検査は乳癌に限らず様々な癌のスクリーニングとして利用されますが、乳癌のスクリーニングとして実施される超音波検査は特に「乳房超音波」と呼んで区別されることもあります。
乳房超音波検査はマンモグラフィと同様に患者の体内を視覚化する画像診断技術の1つであり、マンモグラフィに比べて放射線被曝によるリスクが存在せず、妊娠中の女性であっても検査を受けられることがメリットです。また乳腺が発達している人や若年者でも痛みを感じることなく検査することができます。
反面、乳房超音波検査はマンモグラフィと比較して石灰化の評価や撮影が困難であり、良性腫瘍と悪性腫瘍の区別を付けにくく、再検査になる可能性が高いといったデメリットもあります。さらに検査を実施する医師の技量によって診断品質が左右されることも課題です。
MRI検査は画像診断技術の1つであり、強力な磁気を発生させて体内へ照射し、その時期の影響によって体内の水素原子が発生させた電磁波を集めて、画像データを得るといった仕組みです。
MRI検査は患者の体内を全方向から細かく画像化して診断できることが利点であり、さらに放射線被曝のリスクがなく乳癌を含めて様々な癌のスクリーニングに利用されます。ただし強力な磁場の影響で胎児に何らかのデメリットを与える恐れもゼロでないため、特に妊娠初期では検査できないこともあります。
一方、欧米諸国の一部地域によっては乳癌スクリーニングとして有効性を認められる方法としてMRI検査を推奨していることもあるように、MRI検査は乳癌の早期発見に活用したい技術といえるでしょう。
MRI検査は乳房内でどのように組織や癌細胞が存在しているのか、位置やサイズなども含めて詳細に診断できるため、乳癌の経過や手術前の確定診断などを行う際にも利用されています。
CT検査もまた画像診断として行われている方法であり、放射線を照射して患者の体内の断面図を撮影することが可能です。
CT検査は乳癌が乳房内でどのように広がっているのか撮影して画像化できるだけでなく、リンパ節転移の有無や周辺の臓器への転移の有無といったポイントまでまとめてチェックできることが強みです。そのため乳癌のスクリーニングとしてCT検査も有用性のある方法といえますが、一方で放射線を使って撮影するために被曝リスクがあり、妊娠中の女性などではCT検査を行うことができないこともあります。
骨シンチグラフィは全身の骨の状態を撮影することで、骨造成の状態をチェックしたり、骨への癌転移の有無を診察したりできる検査です。
骨シンチグラフィを行う場合、最初に専用の薬剤を患者へ注射して、その後、薬剤が患者の全身へ浸透した頃を見計らっておよそ30分程度の放射線撮影を行います。
骨に癌病巣が転移している場合、対象部位は黒く染まるような状態で画像化されるため、骨転移の有無を診断することが可能です。
また乳癌に関連するエストロゲンは骨の新陳代謝にも関与することが知られており、女性ホルモンの分泌が減ってエストロゲン量が低下することで、骨の造成も正常に行われなくなり骨密度が低下するといった状態が引き起こされます。そのため骨シンチグラフィによってエストロゲンの分泌状況などを診断できることもポイントです。
PET検査とは通常のCT検査とは異なり、放射線の1種である陽電子を放出する放射性薬剤を投与し、それが患者の体内でどのように分布しているのかを改めて放射線画像診断によってチェックするスクリーニング方法です。
そもそも癌細胞は正常な細胞と比較して多くのブドウ糖を取り組むことが知られており、ブドウ糖に類似した構造を持つ放射性薬剤を投与することで、癌細胞が存在した場合にそこへ放射性薬剤が集中的に取り込まれるといった現象が発生します。そしてPET検査ではその放射性薬剤の分布状況を撮影し、癌の有無を調べるといった仕組みです。
腫瘍マーカーは癌マーカーとも呼ばれ、特定の癌が存在することで体内に産生され血中に増加する物質の総称です。
つまり乳癌に関連した物質を腫瘍マーカーとして同定し、患者の血液を採取して血中に含まれている腫瘍マーカーの量を測定することで、乳癌が発生しているか否かを診断することができます。
腫瘍マーカーの検査は血液検査によって実施され、放射線被曝のリスクがないことも特徴です。
サーモグラフィとは、対象物の温度に応じてその表面から放出される赤外線の量を「赤外線放射線温度カメラ」で感知し、温度の変化を識別して画像化する技術です。癌のスクリーニングだけでなく様々な場所でサーモグラフィは利用されています。
乳癌検診におけるサーモグラフィは、癌細胞のような異常細胞や組織は健常な組織よりも温度が高くなるといった性質に着目し、乳房をサーモグラフィでチェックすることで癌や異常の有無を診断することが特徴です。
マンモグラフィや超音波検査といった方法とは異なるアプローチでスクリーニングを行えるため、多角的な検診に役立ちます。
病理検査とは、癌の疑いのある組織から細胞を採取してサンプルを作成し、それを病理医と呼ばれる医師が顕微鏡で確認して細胞の異常や癌の有無を診断する検査です。
病理検査は癌の確定診断において不可欠な検査であり、乳癌のリスクが認められる患者に対して、それが乳がんであるのか、良性腫瘍であるのかを判別するために実施されます。
ただし病理検査では患者の体の一部を切除してサンプル化しなければならないため、患者の肉体へ負担をかける上、病理医の技量やサンプル作成の技術などによって診断の品質が左右されるといった課題もあります。
スクリーニングを行う場合、まず病理検査や放射線画像診断のように検査方法によっては物理的なダメージや被曝リスクといったデメリットがあることに加えて、そもそもどのような検査法であっても100%の確定診断は困難であるという現実を考慮しなければなりません。
スクリーニングにおけるリスクやデメリットは大きく分けて、スクリーニングを行う上で発生する合併症や副作用と、スクリーニングの結果が必ずしも信頼できるとは限らないという課題があります。
偽陰性とは文字通り「偽物の陰性」であり、本来であれば陽性として検出されなければならない患者に対して、癌が存在しないといった「陰性」の結果が誤って出されるという状態です。
あらゆるスクリーニングにおいて偽陰性の可能性をゼロにすることは困難です。そのため仮に1つの検査方法によって陰性の結果がでたとしても、同時にそれが偽陰性であることも考慮して、他の検査方法を重ねて確実性を高めていくことが求められます。
偽陰性は治療が必要な患者を見落として放置してしまい、癌が進行してしまうリスクを高めます。また検査の方法や手順が誤っていたり、検査を行う医師や技師の技量が未熟であったりすると、偽陰性の発生リスクも高まってしまうことは問題です。
偽陽性は偽陰性の反対に当たる言葉であり、本来であれば「陰性」として診断されるべき人が「陽性」だと誤って診断される状態です。
偽陽性になると、癌が存在せず健康体の人でも癌リスクがあるとして、さらに検査が行われたり、病理検査のために細胞や組織の一部を切除したりといった流れに進みます。
偽陽性は癌を見落とすリスクを抑えられるという点で偽陰性よりもいいと考えられがちですが、乳癌スクリーニングでは患者に対して色々な負担やリスクを強いるものもあり、不必要なリスクを患者に与えるという点では決して軽んじられない問題です。
偽陽性もまた偽陰性と同様に、検査の品質や状況によって発生率が高まってしまうことも課題といえるでしょう。
乳癌のスクリーニングによって癌の存在を発見できたとしても、状況によってはすでに治療が困難であるといったケースは少なくありません。
また、乳癌は初期段階で自覚症状に乏しいことも知られており、改めてスクリーニングなどで発見された時点ではもう根治が困難であったり、仮に治療ができたとしても乳房を切除しなければならなかったりという場合も考えられます。
乳房切除は女性にとって大きな問題であり、人によってはその後の人生の質(QOL)に影響する要因でもあります。そのため乳房を全て切除せず、必要最小限の部分だけを切除して残部については放射線療法などでアプローチしていく「乳房温存療法」を希望する人も少なくありません。
スクリーニングは方法によって患者に様々な負担やリスクを与えます。
例えば病理検査のために組織採取を行う場合、患者の体を傷つけるため出血や感染症のリスクが高まったり、マンモグラフィやCT検査、PET検査などでは放射線被曝のリスクを考えたりしなければなりません。
MRI検査や骨シンチグラフィなどで使用する薬剤がアレルギー反応のリスクを高める恐れもあり、端的にマンモグラフィによる乳房圧迫で痛みを感じ、検査そのものがストレスになることもあるでしょう。
そのためスクリーニングはその効果や目的をきちんと考慮した上で、患者の体に対するリスクや不安にも配慮して医師にプランニングしてもらうことが肝要です。
乳癌の早期発見や早期治療について考える際、それぞれの患者が日常的に行える「セルフチェック」はとても大切です。
乳癌のセルフチェックを日々の生活習慣へ取り入れることで、癌の早期発見につながる可能性を高められるだけでなく、「癌」というリスクや自分の肉体に対する意識を高めて自身や家族の生活習慣や健康習慣にも好影響を与えられるといった複数のメリットがあります。
ただし、乳癌のセルフチェックには正しい方法や注意すべきポイントがあり、適切な流れや注意点を理解しておかなければセルフチェックのメリットを追求することも難しくなります。ここでは一般的な乳癌のセルフチェックの流れや注意すべきポイントをまとめていますので参考にしてください。
まずは胸や周囲を見やすい状態になり、鏡の前に立って自分の体を目で見てチェックします。なお、その際は両手を頭の後ろで組んで、胸などの色や形に違和感がないか確かめましょう。
凹凸や変色、ひきつれなどがあれば要注意です。また乳房だけでなく脇の下なども確認してください。
乳房を触る時は4本の指を使って「の」の字をなぞるように、優しく指先で触れてください。その際、しこりの有無を感じられるよう、ゆっくりと丁寧に触ることが肝要です。
乳頭の根元の辺りを指でつまんで分泌物が出ないかどうかチェックします。また分泌物が出る場合、血液が混じっていないか確かめましょう。
立った状態でのチェックが終われば改めて仰向けに寝転がり、乳房を触ってしこりの有無を確認してください。
セルフチェックは定期的かつ継続的に行うことが重要です。そのためセルフチェックを行う際は、まず定期的にチェックを行うタイミングを考えることが大切です。例えば月経を終えて4~7日後、あるいは閉経している人であれば誕生日や記念日、祝日など意識しやすい時期を自分なりに決めておきましょう。
乳癌のサインは乳房や乳頭だけでなく、脇の下などに現れることもあります。そのため脇の下に何かしらの異常を発見した際には速やかに医師へ相談してください。
乳癌の中にはしこりが生じないタイプもあります。またサイズが小さくてしこりとして感じられないこともあるでしょう。
そのためセルフチェックだけで安心するのでなく、定期的に乳癌検診など医師の診断を受けることが早期発見・早期治療に大切です。
乳癌や大腸癌、肺癌といった癌の一部においては、癌の発生リスクに関与する遺伝子について検査を行い、医師の診断を受けたり遺伝子検査の結果に合わせて治療薬や治療法を検討したりといったことも行われます。
医師が必要と判断した場合、遺伝子検査は標準治療の一環として受けられるため、まずは主治医へ相談して遺伝子検査の内容や有効性についてきちんと確認しておきましょう。
遺伝子とは人の肉体を作ったり、生体機能をコントロールしたりするために働いている人体の設計図のようなものです。そして遺伝子には機能に応じて多種多様な種類があり、一部の癌においては遺伝子の異常やタイプが癌の発生リスクに関与していることが知られています。
遺伝子検査では、患者の体から採取した組織や細胞を活用して、患者の遺伝子のタイプを調べて癌になりやすいかどうかを確認したり、患者の遺伝子の種類に適した治療薬や治療法を検討するヒントを得られたりします。
なお、癌遺伝子検査には保険診療として認められているものの他にも、様々なクリニックなどで自由診療として行われているものもありますが、保険適用の「がん遺伝子検査」は標準治療の一環として全国の病院で一般的に実施されている点も重要です。
まず注意すべき点として、例えば乳癌リスクを高めやすい遺伝子が発見されたとしても、直ちにそれが現在すでに乳癌であることを決定するものではないということを覚えておきましょう。
例えば癌のスクリーニングの一環として遺伝子検査を用いた場合、遺伝子検査の結果によって乳癌である可能性をチェックできることは重要です。しかし遺伝子検査の結果は常に癌の確定診断を保障するものでなく、実際には医師による多角的な診断や検査の結果を複合的に検証することが欠かせません。
乳癌といっても様々なタイプが存在しており、患者の遺伝子型にも複数のパターン(変異型)があります。そして乳癌の治療薬として使われている薬剤には、癌の遺伝子型に応じて有効性が異なるものも存在しています。
つまり、遺伝子検査を行うことでどのような治療薬に効果が期待できるのか、あるいは現在の治療薬から別の治療薬へ変更した方が良いのか、といった薬の有効性について検証することが可能となる点が重要です。
薬の有効性に関する遺伝子としてはHER2遺伝子やBRAF遺伝子、BRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子など色々なものがあります。特定の遺伝子や複数の遺伝子の変異が認められた場合、その変異のパターンや組み合わせに応じて使用する治療薬や治療法を検証し、有効性に関する再検証を進めていくことも肝要です。
治療薬や治療法の有効性を考える際には、同時に治療薬による副作用など健康に関するリスクについても合わせて考えなければなりません。
具体的には細胞障害性抗がん薬の「イリノテカン」に関して、体質による副作用リスクを遺伝子検査で確認できます。
細胞障害性抗がん薬の一つであるイリノテカンを使う前に血液検査を行い、体質によって重い副作用が出る可能性がないか遺伝子検査で調べます。検査の結果によって、副作用が出やすい人は、薬の量を調節して治療を行うことがあります。
引用元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|がん医療における遺伝子検査 もっと詳しく
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/genomic_medicine/gentest02.html
前述したように、遺伝子検査は医師が必要であると認めた場合に保険診療で受けることが可能です。また保険診療による遺伝子検査は、がんゲノム中核拠点病院やがんゲノム医療拠点病院といった医療機関の他にも、全国の病院で受けることができます。
一方、自身の判断で将来の癌リスクを調べたいと思って遺伝子検査を受ける場合、保険適用でなく自由診療になるため注意してください。
その他にも、遺伝子検査の結果はあくまでもリスクや治療の方向性の検討に関する参考材料の1つであり、遺伝子変異が直ちに乳癌の発生を示す証拠にならないことも覚えておきましょう。
乳癌が再発・転移する時期としては、一般的に乳癌の手術を行った後2年から3年、もしくは5年前後を目安として注意されることが考えられます。しかし乳癌からの転移癌の中には5年以内に異常が見つからずとも、術後10年や20年が経過してから認められる場合もあり、原発巣の状態や治療の内容などによって乳癌の転移時期やリスクにも影響が及ぶことは無視できません。
そのため乳癌の転移リスクの軽減については手術後の集学的治療が重要になりますが、それでも明確にいつ頃に転移すると事前に確定診断を下すことはできないため、日常的なセルフチェックや定期的な癌検診といったリスクマネジメントが必要となります。
ただし、過剰な頻度で検診や検査を受けても医学的にあまりリスク軽減につながらず費用的にも負担が大きいため、検診の受け方などは主治医としっかり相談しましょう。
古今東西の社会において乳房は女性の体の象徴として考えられることも多く、乳房を切除することで女性としての尊厳が損なわれるような喪失感を抱く人も少なくありません。また乳房切除後に体の見た目が変わってしまうことで、例えば温泉やプールといった肌を露出する場所へ行けなくなったり、普段の服装にも制限があるように感じてしまったりする人もいるでしょう。
一方、美容面や感情的な理由で乳房を温存した場合、癌のリスクが残存してしまい、治療後も改めて転移や再発の可能性に不安を抱き続ける恐れもあります。その他、癌治療の方法として抗がん剤治療などの化学療法や放射線治療を選択すれば、その影響で日頃の生活に支障を来すこともあるでしょう。
乳癌の治療は患者のQOLを無視して計画できるものでなく、主治医や専門医と納得できるまで相談して、自分の将来や要望を含めて検討してもらうことが大切です。
乳癌の治療として再発・転移のリスクを軽減するには、やはり乳房を切除してしまうといったことが考えられます。しかし乳房を切除することで女性としての尊厳や自尊心が損なわれてしまうように感じる人も多く、治療時点では納得していても、将来的に不安や不満が強まってしまう可能性は無視できません。
また子供を母乳で育てたいと考えている人や妊娠を計画している人の場合、妊孕性機能を温存したいと考えることもあるでしょう。
乳房の切除は全てを取り去ってしまうだけでなく、癌が存在する部位のみを切除して、その他の部位については放射線治療などでケアしていくといった方法もあります。
乳房切除という治療を選択するとしても、可能な限り術後の状態を美しく保てるように治療法や切除範囲を詳細にプランニングすることが肝要です。
なお、乳房切除による手術痕が残ってしまうことで自分の体に嫌悪感や拒否感を抱いてしまうこともあり、そのようなケースに備えて周囲がメンタルケアをサポートしていくことも不可欠です。
乳房切除によって失われた乳房を、シリコンなどの人工物によって再建したり、患者のお腹や背中から採取した組織を使って再建したりという乳房再建術も選択肢の1つになります。
乳房再建では乳癌手術と同じタイミングで行う一次再建と、ある程度まで状態が落ち着いてから行う二次再建があり、どのような方法を選択するにしても主治医としっかり相談しておきましょう。
なお乳房再建では自家組織の壊死や人工物に起因した合併症などのリスクもあり、そもそも再建を受けるべきかどうかも合わせて相談することが大切です。
乳癌治療後は治療の方法や再建の有無などによって下着の選び方に配慮することも重要となります。下着の選び方や補整下着の種類については看護師やがん専門相談員などに相談したり、先輩患者の経験を参考にしたりして考えることもできます。また自治体によっては乳癌手術後の人を対象にして、補整下着の購入費用を一部助成するといった制度もあるようです。
下着の選び方やパッドの調整に悩んだとき、補整下着の種類や購入場所について知りたいときは、看護師などの医療者やがん相談支援センターのがん専門相談員に相談することができます。患者会やピアサポートなどでは、同じ経験をした人の工夫や、実際のつけ心地について話を聞くことができるかもしれません。また、自治体によっては補整下着の購入に対して助成制度があります。患者会の情報や自治体の助成制度についても、がん相談支援センターで確認することができます。
引用元:国立がん研究センターがん情報サービス|乳がん 療養
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/follow_up.html#underwear
乳癌治療として手術を受けた場合、術後の日常生活をスムーズに送るためにリハビリテーション(機能回復訓練)を適切に実施することが必要です。
乳癌の術後のリハビリについては医師や理学療法士、作業療法士といった専門家によるサポートも大切であり、患者と医療スタッフが連携して適切にリハビリを継続していかなければなりません。
乳癌の手術後はリンパ浮腫によって腕や肩がこわばって動きにくくなったり、細菌感染による炎症で痛みなどが発生しやすくなったりします。そのため適切なリハビリ動作でリンパ液の流れを適正化して、リンパ浮腫のリスクを軽減することが重要です。
乳癌の術後リハビリは、基本的に手術の翌日からスタートします。またリハビリ内容は手術の翌日~1週間後、1週間~10日後、さらにそれ以降と術後の経過日数によって変化することも通常です。
手術直後から1週間は傷口の痛みや状態に合わせて無理のない範囲で、手のひらの開閉や手首・肘の回転といった簡単な動作を行います。
傷口の状態などが落ち着けば、腕を伸ばしてぐるぐると回したり肩の高さまで水平に持ち上げたり、また状態に合わせてストレッチや筋力トレーニングなども徐々に取り入れていきます。
日常的に腕を動かしたり、入浴前の筋トレや入浴後のストレッチといった動作を生活習慣に取り入れたりしましょう。普段の生活の動作も意識的に行うことでそれ自体がリハビリとしての効果を持つこともあります。
乳癌の術後リハビリは、体の状態に合わせながら継続的に行うことが大切です。そのため決して無理をせず、むしろ普段の暮らしに当たり前の動作や習慣として取り入れられることを意識してください。
また特に手術から間もない場合、リハビリによって傷口が開いたり痛みが悪化したりすれば、すぐにリハビリスタッフや医師へ相談することも大切です。
リハビリとして腕の動作や運動を行った後で、筋肉や関節に痛みや違和感が残ってしまうことがあります。
このような場合、リハビリによる運動負荷が強すぎて筋肉にダメージを負わせていたり、関節に負担をかけすぎていたりする恐れがあります。誤った運動や過度なリハビリは術後の健康管理として不適切であり、またリハビリを続けるモチベーションを低下させてしまうため、あくまでも自分にとって続けやすくて適したリハビリの方法を医師などの専門家への相談が大切です。
乳癌の再発リスクや転移リスクへの対処法として、継続的かつ定期的な検診は重要です。しかし乳癌検診は患者にとって相応の肉体的負担だけでなく経済的負担も強いるため、どうしても費用面の理由から検診を受けなくなったり、検診頻度を極端に減らしてしまったりという人も少なくありません。
そのため現在は高額療養費制度の他にも乳癌検診や術後治療など癌ケアに対する取り組みについて、国や地方自治体から助成金や補助金といった公的支援も行われており、要件を満たせば検診費用を一部負担してもらったり家計の負担を軽減したりすることも可能です。
また一時的に働けない状況に対する公的支援制度や、入院・通院などに対して保険金が支払われる保険もあるため、自分の生活や家族の状況を踏まえて適切なプランを専門家へ相談しましょう。
ここでは実際に乳癌の患者として治療を受けた方々の体験談や声を集めてみました。これから乳癌の治療へのぞもうとしている人や、乳癌患者の治療経験などを知りたいと考えている人は、ぜひ患者さんの体験談を参考にしてみてください。
(前略)医師・看護師・技師の方々はとても穏やかで、治療内容も解り易く説明してくださり、聞いた事もとても詳しく教えてくださるので安心して治療を受けることができました。治療の際、大きな機械をまじまじと見ていたら、それに気付いた技師の方が機械の説明をしてくれました。機械的な対応にならず、私の意図をくみ取っていただいたので嬉しかったです。ありがとうございました。また、治療の時間を生活に合わせて自由に選べることは、仕事をしながら通った私にとってはとてもありがたかったです。(後略)
引用元:大船中央病院放射線治療センター
しかし、抗がん剤治療は毛髪が抜けると分かっていましたが、実際にその副作用はやはりショックで辛かったです。また、家族の支えもあり自分の気持ちも切りかえて頑張ったことは良かったと思います。放射線治療は33回もあり、猛暑の中通院はきつかったですが、同じ患者さん同士で励まし合ったり、愚痴を言い合うことで私自身大きく助けられたと感じます。
引用元:大船中央病院放射線治療センター
健診でみつかりました。最初は、「え~、まさか」と本当に信じられない気持ちでした。ですがすぐに、早期にみつかったことに感謝し、家族と話し合い、手術を受けようと気持ちは変わりました。放射線治療のことは全く知りませんでした。病院のセンターご案内を見て、「こんな機械なんだ」と写真を見て初めて知り、不安になりました。(中略)毎日大体同じ時間に治療に行くと、同じ顔の方が治療に来られていて、「何回目ですか?」などお友達になり、そのうち体の症状など話し合い、とても安心できてうれしかったです。病院の方はみなさん親切に話して頂きました。ありがとうございました。
引用元:大船中央病院放射線治療センター
病気の告知を受けて一人深刻に思い悩む日もありましたが、放射線科での治療が始まってからは毎日同じ時間帯に顔を合わせる人達と挨拶を交わし、会話をすることで気持ちがだんだんリラックスできるようになったと思います。病気についての情報交換もできて有意義な時間でした。スタッフの方々は皆さん親切で言葉かけも優しく安心して治療を受けることができました。先生方はとても話しやすく、どんな質問にも丁寧に答えていただきました。治療が終わったときは、やり終えたという達成感でした。これからもひとつひとつ乗り越えていかねばと思っています。ありがとうございました。
引用元:大船中央病院放射線治療センター
母が乳がんになって3年後、42歳のときに私も乳がんが見つかりました。腫瘍は2か所あり、担当医からは乳房全切除術を勧められました。乳房再建の説明もありましたが、全摘した母の姿を見ていたので胸はなくなるものだと思い込んでいたし、再建はごく一部の特別な人がやるものだという思いがありました。
だけど夫が、「まだ人生は長いのだから話だけでも聞いてみたら」と背中を押してくれて、形成外科を受診しました。そこで出会った先生が、「本来あるべきものがなくなるということは、体のバランスも心のバランスも崩れるもの。再建はごく自然なこととして検討していいんですよ」と。結局、腹直筋皮弁法で一次再建しました。術後の喪失感がなくて、それが本当に救いでした。今は再建してよかったと心から思っています。
引用元:Patient’s Voice ~乳がん患者さんの声~
31歳のとき、告知を受けました。その後、すぐに結婚しましたが、子どもがすごくほしかったので、一番気になったのが「赤ちゃんを産めるのか」ということでした。担当医からは治療が終わる5年後なら可能だが、抗がん剤やホルモン療法の副作用で閉経し、妊娠できない可能性もあると聞きました。5年後が果てしなく遠く感じたし、描いていた未来が崩れた気がしました。
担当医は出産を希望する私の気持ちを大事にしてくれ、抗がん剤の治療を受けるべきかを調べるオンコタイプDX検査と受精卵凍結の話をしてくれました。迷いましたが、「絶対にママになりたい」と強く思ったので両方受けることにしました。抗がん剤は検査の結果、省くことができ、現在ホルモン療法中です。「子どもは5年後にね」と言ってくれた夫と、2人の生活を楽しみながら治療が終わる日を心待ちにしています。
引用元:Patient’s Voice ~乳がん患者さんの声~
乳がん手術、乳房再建、結婚、出産、育児、そして仕事復帰…と、まるで生き急ぐかのように過ごしてきましたが、昨年、乳がん手術から10年の節目を迎えました。遺伝性ということもあり、これまで「あまり長く生きられないのでは」という不安を抱えて生きてきましたが、10年を経て、“生かされている自分”を強く意識するようになりました。
「こうして毎日元気に過ごせていることに、何か意味があるのでは」と考え、ピンクリボンアドバイザーの資格を取得。今年から、がん教育認定講師として中学校や高等学校で講義を行っています。数々のライフイベントを経た今、自分の使命は「子どもたちやその家族に、健康の大切さや、がんの正しい知識を伝えていくこと」だと思っています。学生達はみんな真剣に話を聞いてくれますし、前向きな感想も届き、とてもやりがいを感じています。
引用元:E-Bec
抗がん剤は2週間に1回で4クール、これを2種類で計8クールです。がんになったら抗がん剤をしながら長く入院するものだと思っていましたが、通院治療ができるというだけで「病気と共存していける」という希望を感じましたね。
私の体が強靭なのか、抗がん剤の副作用による体の不調(吐気で寝込むなど)は殆どなかったのですが、2種類目の抗がん剤による〝腰から足にかけての痛み〟は本当に辛かったです。
また手足のしびれは、ピーク時は正座後の状態のように歩くのもままならず、爪も少し剥がれかけ、新しく靴を購入しなければいけないほど影響しました。手足のしびれは今も残っています。それでも随分和らいでいます。
引用元:オンコロ
「がんのステージはかなり進行していますが、幸いなことに顔つきがよかったので放射線治療が効くと思われます。」などとお話されます。
そんな顔つきを検査しているあいだが手術後約1ヵ月半あり、また待ち期間を悶々と過ごします。私の場合、幸い顔つきがよかったので抗がん剤治療はしないで放射線治療を月~金の毎日休むことなく5週間おこない、その後化学治療(ホルモン療法)が最低5年~10年間に決まりました。
放射線治療は手術から2ヶ月後にスタートしました。照射時間は数分ですが、待ち時間、会計時間、病院までの往復時間を含めると毎日数時間の拘束を強いられます。幸い勤務先と病院が近くだったので会社を休むことなく周りに協力頂いて、通院治療しながら勤務しています。治療は仕事の一つ、と思ってひとつひとつこなしている感じですね。
引用元:日立保険サービス
(前略)私は今年の初めに受診し、石灰化がありますが様子を見ましょう的な事を告げられました。今年はインフルエンザも流行りそうで寒くなる予感がし、市からのハガキも送られてきており、また病院にいきました。身体には全く無症状で違和感もありませんでした。ところが‥大きい病院で検査しましょうと言われ‥アッと言う間の1ヶ月でした。自分で未だ受け入れる事が出来ずの検査と入院となりオペ迄!怖い!不安!本当に私の事?何をやっても上の空状態でした。初めは4分の1摘出ということでしたが、それでも辛くたまらなかった‥でも結果としては左全摘となりました。(後略)
乳がんと診断。しこりを自分で発見し、近所の医院に乳がん専門の先生が、月1回来ているタイミングで見ていただく。すぐ病院で検査をし、乳がんと診断。手術にて、右乳房全摘。その後1週間で退院。見つかってから手術まで早かった事、女医さんが話をよく聞いてくれたことで、不安なく過ごすことができました。
手術後は、抗がん剤と放射線をおこないました。手術から数年後となりましたが再建手術をおこない、今は年に1回の検査はしていますが、元気に過ごしています。また、手術をしていただいた先生が異動されるときも、引継ぎを丁寧にしていただき、男の先生に変わったのですが15年間変わらず見ていただいています。
手術前は仕事をしており、通院での治療をおこない、3週間で仕事復帰。最初は病気を隠していたため、知られたらどうしよう?と、気にしながら生活していました。しかし、今では自分から体験談を話すようになり、友人も気軽に聞いてきます。(後略)
毎年受けていた検診で、いつもと違う腫瘍が見つかり細胞診の結果右乳がんと判明いたしました。温存手術を受け、とった腫瘍の詳しい検査の結果ステージは0、他転移無しとのことで、25回の放射線治療を追加でおこないました。だるさや頭痛、放射線後は胸が酷く荒れてつらかったです。
来週の受診でホルモン治療をするかの判断です。体調不良に敏感になりました。不安をはねのけ、心穏やかに過ごしたいと思います。(後略)
乳がんで右乳房全摘から10年以上経過していましたが再発しました。全身に骨転移もありました。真面目に通院して、10年経ち次は2年後の通院で良いといわれていました。その後の定期診察時に肋骨の骨折が数カ所におよび整形外科で骨シンチの検査をした方がいいといわれ大学病院へいきました。
その後内科の院長先生に ここまで来ると治療法はありませんと告知され 乳がんの手術をした病院に戻った方が良いと言われました。乳がんの主治医の先生は薬をいろいろ試してくださり、まだ生きています。(後略)
(前略)乳がんにかかりやすいという条件に1つもあてはまらず、運動もしており健康体でした。
ホルモン受容体陽性・HER2陽性のがんで、術前の抗がん剤、術後の抗がん剤・放射線治療・分子標的薬と、完璧な標準治療を受けました。
早期発見でリンパ節への転移もなく、後は再発防止の為にホルモン療法薬を真面目に5年間飲んでいれば、何も心配することはないと確信しておりました。
それが2019年に健康診断のつもりで受けた肺のレントゲンで、肺への転移が見つかったのです。
現在は、分子標的薬で治療を続けております。
(前略)職場で精密検査になったと伝えると『よくある事だよ、私の時は病院から電話がかかってきたけど、郵送だから深刻じゃないんじゃないかな。結果何でも無かったし』と。少し気が楽になりました。(中略)手術中に転移がないことが確認でき、右胸は温存となり入院治療は放射線の放射を行いました。
現在は、仕事に行きながら治療通院しています。早期に発見できたので、腫瘍も小さく身体の負担も少なかったのですが、放射線治療の後はホルモン療法が始まるので、まだまだ闘いは続きます。がん保険に入っていませんでしたが、高額医療費の認定証を申請していたので、医療費を抑えられています。乳がん検査は毎年おこない、かつマンモグラフィ検査だけではなく、超音波も合わせてした方が良いと実感いたしました。(後略)
40歳代の頃に、乳がんになりました。きっかけは、歩いていて、脇に違和感を、感じたのが始まりでした。乳がんの前に耳下腺腫瘍の手術していて、顔面麻痺が、落ち着いても、脇の腫れはなくならず、お風呂入って胸を触ったらしこりがあり、ドキッとして、病院行きました。すぐ生検し、1週間後に乳がんと診断され、その後の事はなにも覚えてないんです。ただ、早く手術をしたくて、検査をした病院で、診断書を書いてもらい、耳下腺腫瘍でお世話になった病院で手術を受けることにしました。それからは、検査、検査の日々の後に手術をおこないました。手術は乳房温存でおこなえました。手術後の検査結果では全ての結果が出てステージ0でした。乳房温存手術後放射線治療は15回で終わりました。結局脇の違和感は、ただの脂肪でした。私は、全然乳がん検診してなかったことに、後悔してます。少しでも、不安なことあったらすぐに病院行く事を、おすすめします。
ふと乳がん検診を受けて見ようと思い、乳腺クリニックへ行きました。マンモグラフィ、エコーをして医師から「両側乳がんです。」と告知を受けて頭の中が真っ白になり、そのあとの医師が話した事は覚えてないです。大きい病院を紹介され、更に詳しい検査をして、両側非浸潤性乳がんステージ0期と宣告されました。(中略)その後、両側乳がん全摘手術をしました。術後の傷は覚悟していましたが、強烈な傷口の痛みと異常な突っ張り感が1カ月以上続きました。両側乳がん全摘の事実を、受け止められない自分がいました。
幸い初期の初期で発見され、術後の検査結果も良かった為、追加の治療はありませんでした。それでも、毎日お風呂に入る度に自分で見えてしまう場所だからつらいです。(後略)
子育てと仕事に目まぐるしい毎日を送っていました。そんな時仕事中に左の乳房内側にかゆみを感じ、ポリポリポリ。何かある…硬い…骨??いや違う…心臓の鼓動が高まり…しこりに気付きました。
仕事に育児に全力で生きていた、とても幸せな毎日が崩れていくように感じました。
詳しい検査結果が出るまでの間、不安で不安で乳がんに関する本やガイドライン、体験談などなど読みあさり知識を増やしていきました。(中略)術前抗がん剤を4クールした後、手術、放射線治療、分子標的薬、ホルモン治療とフルコースの計画でした。現在放射線治療まで終わり、残りは分子標的薬とホルモン治療です。振り返ればあっという間でした。病院のスタッフの方々や家族、友人の支えがあり、ここまでこれたと感謝しています。(後略)
アメリカ在住の主婦です。40歳を迎え、初めて受けたマンモグラフィー検査で乳がんが見つかりました。ステージⅡですが転移の可能性あり。すぐに専門医を探し、抗がん剤治療、両方の全摘、放射線治療、ホルモン治療、胸の再建手術とフルコースでやりました。子供がまだ小さかったので、義理の母や友人にもたくさん手伝ってもらい、夫は仕事を休んで支えてくれました。
周りに乳がんの体験者がいて、体験談を話してくれました。今の時代、がんは不治の病ではないから大丈夫だよ、と励ましてくれました。
乳がんの治療法は大きく分けて、手術・放射線治療・薬物治療の3つあります。
世界的な薬物治療の選択基準には、腫瘍の大きさ・腋(わき)のリンパ節へのがんの転移の程度・がんの悪性の程度・ホルモンレセプターの有無・がん細胞の増殖の強さの程度・血管やリンパ管などへの浸潤の程度を考慮していくと言われています。
これに基づき、ホルモン療法薬(女性ホルモンの働きを抑える薬)・抗がん剤・分子標的薬をさまざま組み合わせて投与していくのが特徴です。
最近の乳がん治療では、遺伝子の分野の研究が進んでおり、乳がんを分子のレベルで(molecular)分類(subtype)を行い、治療法を決めていくのです。
上記分類には4つのタイプがあります。
この4つに乳がんを分類し、それぞれに合った薬物を選択していきます。実際に使用する薬剤については、主治医の先生にしっかりと相談していくことが重要です。
乳癌がどの程度まで進行しているのか、またどのような治療法を選択すべきか、客観的に分類する指標として「ステージ(病期)」が利用されます。なお乳癌のステージの分類は大きく「0~Ⅳ」の5段階で区別され、ステージによってはさらに小分類として「ⅡA期・ⅡB期」といった区別のされ方がされることもポイントです。
乳癌のステージの分類については以下のように設定されており、それぞれのステージによって治療法の選択も変わってくるため、まずは乳癌がどの程度の病期にあるのか検査や診察によって正しく把握することが欠かせません。
加えて、乳癌において各ステージを分類する基準は基本的に以下の3つの要素で考えられることも重要です。
乳癌の実際のステージは上記の基準を総合的に考慮して決定されます。例えば、「非浸潤の癌でリンパ節転移なし」といったケースでは「0期」となり、「浸潤癌でサイズが2cm以下、リンパ節転移なし」といったケースでは「Ⅰ期」となります。
また例えば「ⅡA期」であっても、癌の大きさやリンパ節転移の有無によってさらに細かく分類されるため、実際にどのような状態であるのかはあくまでも個々の患者の状況に合わせて検討・評価された上で、治療法などを考える際に利用されることがポイントです。
なお、癌の大きさやリンパ節への転移の有無といった状態に関係なく、「他の臓器への遠隔転移」が発生している場合は全て「Ⅳ期(ステージ4)」として扱われる点にも注意してください。そのため乳癌のみに注目した場合、Ⅳ期の患者よりⅢC期の患者の方が深刻であるという可能性もあります。
ここでは乳癌の各ステージ(病期)について、ステージを評価するための具体的な指標と、各分類に応じた治療法などをまとめていますので参考にしてください。
乳癌の「0期」とは以下のような状態として考えられます。
通常、非浸潤癌は乳管内や小葉内に癌がとどまっており、適切な治療を選択することで転移癌や再発癌のリスクを抑えやすいことが特徴です。
0期の乳癌の治療としては、癌の範囲に合わせて「乳房部分切除術(乳房温存手術)」や「乳房全切除術」といった外科治療が主となり、さらに必要に応じて「センチネルリンパ節生検」が実施されます。また乳房部分切除術の場合はリスク管理として術後放射線治療も併用されます。
なおホルモン受容体陽性乳癌の場合は術後にホルモン療法による薬物療法が実施されることもあるでしょう。
乳癌におけるⅠ~ⅢA期については、大きく以下のような分類によって区別されます。なお遠隔転移はありません。
| ステージ (病期) |
癌の大きさ | リンパ節転移 |
|---|---|---|
| Ⅰ期 | 2cm以下 | なし |
| ⅡA期 | 2cm以下 | 腋窩リンパ節に転移あり |
| 2~5cm以下 | なし | |
| ⅡB期 | 2~5cm以下 | 腋窩リンパ節に転移あり |
| 5cm以上 | なし | |
| ⅢA期 | 5cm以下 | 腋窩リンパ節に転移があり、リンパ節の固着・癒着あり。 または内胸リンパ節への転移あり。 |
| 5cm以上 | 腋窩リンパ節か内胸リンパ節へ転移あり |
ステージごとの治療法としては、Ⅰ期については0期の治療と基本的に同様です。Ⅱ期~ⅢA期については乳房全切除術もしくは乳房部分切除術となり、癌のサイズが小さい場合や範囲が小規模である場合は後者を選択可能です。また乳房部分切除術では放射線治療が併用され、状況に応じて術前術後の薬物療法も利用されます。
なお、腋窩リンパ節への転移が認められる場合などは、乳房の切除術に加えてリンパ節郭清が行われることも特徴です。
その他、手術の選択について患者の希望も考慮され、例えば通常であれば乳房の全切除が推奨されるケースにおいても、患者の強い希望により部分切除が検討される可能性はゼロでありません。ただし、手術前の薬物療法や放射線治療によって全切除でなく部分切除に適した状態に癌をコントロールできない場合、患者の希望を踏まえつつ医師から全切除が提案されることもあるでしょう。
乳癌の「ⅢB期・ⅢC期・Ⅳ期」については、癌の大きさやリンパ節転移の有無に関係なく、それぞれ以下のような基準に応じて分類されます。
この段階の治療法としては薬物療法が主な選択となり、患者の希望や薬物療法の効果に応じて手術や放射線治療も併用されます。
Ⅳ期の場合、基本的に根治目的の手術は第一選択にならず、薬物療法を主としつつ癌の症状を緩和させる治療として放射線治療が行われることもあるでしょう。その他、手術による治療効果や症状緩和が認められる場合は手術も追加されます。
ここではステージに応じて選択される乳癌の治療法について、それぞれの具体的な方法や特徴、また治療に伴う副作用や合併症などを解説しますので、改めて治療法を検討するための参考としてご活用ください。
手術は、乳癌の病巣や癌細胞を物理的に切除することで癌の治療や再発・転移リスクを解消する外科治療であり、どの程度の範囲を切除するかは癌の大きさなどステージや患者の希望、ライフステージ、術後のリスクなどを総合的に考慮して検討されます。
なお遠隔転移が明らかな場合、手術以外の治療が中心となります。
乳癌手術における代表的な治療の1つであり、乳房の一部を切除する手術です。切除範囲は癌組織だけでなく、癌から1~2cmほど離れた範囲を含めて切除します。また切除後の断面をチェックし、断端に癌があるかないかによって追加切除の必要性などが検討されます。
乳房部分切除術は「乳房温存手術」とも呼ばれ、術後に乳房の機能や美観を保てることを前提として切除範囲が検討されることも特徴です。
なお、乳房部分切除術では目に見えない癌細胞が存在している可能性を考慮して、再発リスクや転移リスクを軽減するために術後の放射線治療が併用されることも重要です。また癌のサイズが乳房部分切除術の適用範囲を超えているような場合、あらかじめ術前薬物療法によって癌のサイズを縮小させた後に、改めて部分切除術を行うこともあります。
適切な範囲の確実な切除と術後治療が実行できた場合、乳房全切除術と治療効果は同等とされています。
乳房全切除術は文字通り「乳房の全て」を切除する外科治療です。乳房部分切除術では癌の再発リスクが残ってしまうと思われる場合や、そもそも癌が乳房の広範囲に存在しているような場合、基本的には乳房全切除術が選択されます。
また患者の希望や遺伝的体質などを考慮して、現時点では乳房部分切除術による治療が可能であるとしても、将来的なリスクを考慮して先んじて乳房全切除術を選択するといったケースもあるでしょう。
いずれにしても、乳房全切除術は肉体だけでなく精神的にも術後のケアやサポートが重要になるため、術前にしっかりと主治医と相談することが大切です。
腋窩リンパ節は脇の下にあるリンパ節であり、乳癌が腋窩リンパ節へ転移していると診断された場合、乳房の切除術に加えて腋窩リンパ節の切除も行われます。なお、具体的にどの程度の範囲で郭清(切除)するかは、リンパ節転移の範囲や患者の状況に応じて個々に検討されることもポイントです。
一方、リンパ節郭清を行うと術後にリンパ浮腫などの症状が現れるようになるため、患者の肉体的・精神的な負担なども考慮して総合的に治療の有無が判断されます。そのため、腋窩リンパ節への転移があったとしても、その影響や範囲が限定的と認められる場合、患者の状態によっては腋窩リンパ節郭清が行われない可能性も考えられるでしょう。
なお、適正な条件でリンパ節郭清が不要だと認められる場合、郭清を行わなくても再発リスクに影響しないとされています。
乳房の切除は女性にとって精神的に大きな負担を強いるリスクがあります。そのため乳房切除後に改めて自家組織やシリコンなどを用いて、乳房を再建する治療(乳房再建術)が実施されるケースも少なくありません。
なお、乳房再建は乳癌手術と同じタイミングで実施する一次再建と、手術を終えて数ヶ月から数年が経過した後に実施する二次再建があります。
乳房再建は、乳癌手術後のストレスやメンタルへの影響を緩和する治療として有効である反面、自家組織を使った再建では移植組織の壊死リスクがあったり、人工物を用いた再建では感染や乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)などのリスクがあったりすることも事実です。そのため手術の方法を含めて、乳房再建についても主治医としっかり相談してください。
乳癌手術における合併症や副作用としては、主として肉体的なものと精神的なものに大別されます。
肉体的な合併症や副作用としては、切除に伴う感染症や出血、またリンパ節郭清を行った際のリンパ浮腫などが挙げられます。また乳房再建に関して、上述したような自家組織の壊死や感染、また乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)といったリスクも無視できません。
一方、精神的な課題として、術後の傷跡が気になったり、乳房が失われた体を鏡で見てショックを受けたりといったものも重要です。
一般的に術後の傷跡や皮膚の色、乳房の形などは手術から徐々に回復・改善していき、時間の経過と共に目立たなくなります。しかし人によっては強い不安や後悔を抱くこともあり、少しでも辛くなれば主治医や看護師へ相談して一緒に考えてもらうことが肝要です。なお、術後の下着の選び方などに悩んだ際も恥ずかしがらずプロへ相談してください。
放射線治療とは、放射線照射装置を用いて患者の体外から高エネルギーの放射線を照射し、体内にある乳癌細胞を攻撃して死滅させる治療です。また放射線治療では癌の根治を目指すだけでなく、現在の癌による諸症状を緩和してQOLを高めるための緩和的照射が行われることもあります。
乳癌治療としての放射線治療では、まず乳房部分切除術と併用する術後照射が考えられます。さらに乳房全切除術に関してもリンパ節転移が認められる場合、放射線照射が併用されることがあるでしょう。
その他にも、薬物療法や外科治療と組み合わせた集学的治療の一環として放射線照射が選択されることもあります。
放射線治療はあらかじめ放射線治療計画が立案され、照射頻度や期間、照射範囲などは全て計画に則って実施されることも重要です。
乳癌の放射線治療では強力なエネルギーを持ったX線などを体外から照射するため、治療方法や治療の頻度・期間などに応じて副作用が生じることも無視できません。
放射線治療の副作用としては、まず放射線を照射した範囲の皮膚が赤くなったり、かゆくなったりすることがあります。また皮膚がむけたり火傷のような症状が生じたりすることもあるでしょう。
さらに乳房部分切除術の術後照射では、照射後の乳房が腫れて硬くなったり、乳房が退縮して小さくなったりといった副作用も起こり得ます。加えて、放射線照射によって乳汁の生産能力が失われることも副作用です。その他にも肺炎や喉の痛み、咳、発熱などが起こることもあります。
基本的に放射線治療の副作用は治療終了後、徐々に回復します。
癌治療における薬物療法では抗がん剤に代表される様々な医薬品を活用し、癌の根治や癌に起因する諸症状の緩和、また手術のための準備や術後の再発リスクの軽減といった治療効果を追求することがポイントです。
乳癌の治療として行われる薬物療法には、主としてホルモン療法薬や分子標的薬、細胞障害性抗がん薬、また免疫チェックポイント阻害薬といった治療薬が活用されており、それぞれの乳癌のステージといった条件に加えて、乳癌の「サブタイプ分類」という指標も含めて総合的に治療法が検討されることも特徴です。
ホルモン療法薬は患者の体内におけるホルモン分泌やホルモンの働きを抑制・阻害します。乳癌治療としてホルモン療法薬を使用する目的は、ホルモンの影響によって増殖する癌を攻撃することであり、対象となる癌は「ホルモン受容体陽性の乳癌」であることが前提です。
ホルモン療法薬の種類には、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量を減らす「LH-RHアゴニスト製剤」や「アロマターゼ阻害薬」といった薬があり、また癌細胞のエストロゲン吸収を阻害する治療薬として抗エストロゲン薬も利用されます。
なお、患者の閉経前と閉経後で体内のホルモンバランスも異なっているため、それぞれに応じて治療薬が選択されることも重要です。
分子標的薬は特定のタンパク質(分子)をターゲットにして攻撃を行う治療薬であり、目標となる分子には癌増殖に関与するタンパク質や、癌細胞へ血液や栄養を運ぶ血管のタンパク質、さらに癌に対する免疫機構に関与するタンパク質などが選択されます。
乳癌の一部ではHER2が癌細胞の増殖に関連しているとされており、病理検査によって「HER2陽性の癌」であると診断された場合、HER2を標的とした分子標的薬(抗HER2抗体薬)を使用することになります。
一般的に乳癌治療における分子標的薬は他の治療薬と併用され、どのような組み合わせによって治療をするかは、個々の患者の状態や癌の特性、遺伝的要素なども含めて複合的に検討されることが肝要です。
免疫チェックポイント阻害薬は、癌細胞が免疫機構を回避しようとする性質に対して働きかける治療薬であり、免疫チェックポイント阻害薬を活用することで免疫による癌細胞への攻撃機能を維持できることが特徴です。なお、免疫チェックポイント阻害薬は分子標的薬として扱われることもあります。
細胞障害性抗がん薬は、細胞増殖の機構に影響して癌細胞の増殖を阻害し、癌の退縮などを目指す治療薬です。細胞障害性抗がん薬は癌細胞の増殖を邪魔できる一方、健常な細胞の増殖にも悪影響を及ぼしてしまうため、使用に際しては副作用などのリスクマネジメントを考える必要があります。
細胞障害性抗がん薬が使用されるのはトリプルネガティブとしてサブタイプ分類される乳癌であり、その他にも様々な要因を総合的に考慮して使用の可否が検討されます。
サブタイプ分類とは、薬物療法に際してどのような治療薬を選択すべきか判断するための指標であり、乳癌の薬物療法ではグレードやステージに加えてサブタイプ分類の状況も踏まえた判断が行われる点も重要です。
ホルモン受容体陽性(エストロゲンレセプター陽性)とは、女性ホルモンの影響によって癌細胞の増殖が促進される状態であり、ホルモン受容体陽性の乳癌では必然的にホルモン療法薬の使用が検討されます。
なお、女性ホルモンによって増殖が促進される乳癌を「ルミナル乳癌」と呼称することもあります。
癌細胞の増殖に関係するタンパク質の中でも、HER2が癌細胞の表面に多く認められる乳癌が「HER2陽性乳がん」となり、この場合は上述したように分子標的薬として抗HER2薬の効果を期待可能です。
トリプルネガティブとは、2つのホルモン受容体として「エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体」、そして「HER2」の、3種類の要素が全て陰性であるというケースです。
トリプルネガティブ乳癌は女性ホルモンによる増殖が行われず、HER2も関与していないという癌であり、ホルモン療法薬や抗HER2薬が主な治療薬になりません。
そのためトリプルネガティブ乳癌の場合は細胞障害性抗がん薬が主に使用され、また状況に応じて免疫チェックポイント阻害薬も使用されます。
薬物療法によって様々な治療薬を使用する場合、それぞれの薬の特性や患者の体質、癌の状態といった条件に応じて副作用のリスクが高まります。副作用の程度や症状は人によって個体差があるものの、場合によっては治療継続が困難になるほど副作用の症状が激しく現れる人もいるため、まず使用する薬によってどのような副作用が予想されるのかあらかじめ正しく理解し、それに対処する準備を行っておくことが不可欠です。
薬物療法における副作用としては、使用する薬剤によって以下のようなものが代表例とされています。
ホルモン療法薬は体内のホルモンバランスへ影響するため、副作用として例えばホットフラッシュ(ほてり)が起こりやすくなります。また、性器からの出血といった症状や骨密度の低下による骨折の上昇、関節痛、その他にも気分の落ち込みやイライラ、不安感といった症状が導かれることもあるでしょう。
ホルモン療法薬の副作用は治療開始から数ヶ月が経つと徐々に減衰するため、適切な経過観察が大切です。
分子標的薬による副作用は使用する薬剤によって様々ですが、一例として悪寒や下痢、発疹といった症状が起こりやすくなります。
細胞障害性抗がん薬は癌細胞だけでなく健常な細胞にも影響して増殖を阻害するため、副作用の影響についても多種多様な症状のリスクが考えられる点が特徴です。
例えば、血液細胞の減少による貧血や感染症に対する抵抗力の減少、肝機能や腎機能の低下、さらに脱毛や口内炎、肌荒れ、吐き気、下痢など色々なものが考えられます。
副作用は癌の薬物療法の治療を進める上で重要な参考材料になるため、少しでも違和感を抱いた場合は主治医や看護師へきちんと説明し、チーム全体で情報共有を怠らないことが重要です。
緩和ケアは癌を直接に治療するものでなく、癌による心身への悪影響や痛み、不安感などを緩和して、日々の生活や治療に対して前向きな気持ちになれるよう包括的なサポートを行う医療サービスです。
特に乳癌は手術による乳房の喪失といった外見的・肉体的な負担が生じやすく、またホルモン療法薬によるホルモンバランスの変化や、それに起因した感情面の影響など色々な問題が起こりやすい点も見逃せません。
そのため乳癌治療における緩和ケアや支持療法は、標準治療による根治を期待できない患者に対して実施されるだけでなく、あらゆる乳癌患者に対してそれぞれに考慮して提供されることがポイントです。
HER2陽性の進行もしくは、転移のある乳がんと診断された方への1次治療として、抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd/DS-8201)とペルツズマブの併用療法に関する報告です。
トラスツズマブ・ペルツズマブ・タキサン系抗がん剤(ドセタキセルもしくはパクリタキセル)の併用療法であるTHP療法と比較して、増悪もしくは死亡のリスクを44%低減可能だと判明しました。
上記結果は、フェーズ3試験における中間解析を行った結果判明しています。
※5月30日~6月3日にシカゴで行われた米国臨床腫瘍学会にて発表された内容です。
上記試験の結果、T-DXdとペルツズマブの併用療法は、THP療法と比べて有意に無増悪生存期間を延長可能な点については、すでに発表されている内容です。今回は、その詳細について明らかになったことが報告されています。
DESTINY-Breast09試験というフェーズ3試験は、HER2陽性の局所進行もしくは転移のある乳がんと診断された方の1次治療として、T-DXdのみ行った群(3週ごと5.4mg/kgを投与)、T-DXdとペルツズマブの併用した群(T-DXd・ペルツズマブ群)、THP療法を実施した群を比べた国際多施設無作為化オープンラベル試験です。
T-DXdのみを投与した群には、プラセボ(ペルツズマブの代わり)を投与しています。
術前・術後療法において、抗HER2薬・化学療法から半年以上経過した方と転移がんと診断された方に対し、内分泌療法(1ラインまで)を行った方も対象とされています。アフリカや欧州、北米、南米、アジアなどの施設より1157名が登録、各群において1対1対1で割り付けられています。
主要評価項目と副次評価項目は以下の通りです。
ホルモン受容体が陽性と診断された患者においては、内分泌療法(アロマターゼ阻害薬またはタモキシフェン)は、T-DXdの6サイクル後もしくはTHP療法のタキサン系抗がん剤を終了後に認められていました。
今回の中間解析では、T-DXd+ペルツズマブを行った群と、THP療法を行った群の結果について発表されました。なお、T-DXdのみ投与した群については、無増悪生存期間の最終解析までの間、主観に基づく偏りを防ぐために、実験群と対照群のどちらに被験者が割り付けられているか、わからないようにされています。
試験では、T-DXd+ペルツズマブ群に383名、THP療法群に387名が割り付けが行われました。(※両者における患者背景は、大体一致いています)
患者の状況については、以下をご覧ください。
HR陽性と診断された患者:54%の割合を占め、PIK3CA変異の認められた方は3割、内臓転移が認められた方は7割、脳転移が認められた方はおよそ6%ほどでした。
データカットオフは、2025年2月26日時点において、観察期間中央値は29.2か月という結果でした。盲検下独立中央審査に基づくPFS中央値は、T-DXd+ペルツズマブを投与した群が40.7カ月、THP療法を実施した群が26.9カ月であり、ハザード比は0.56。
T-DXdとペルツズマブを投与した群においては、増悪もしくは死亡のリスクを44%低減しています。
なお、研究グループの評価によるPFS中央値は、以下の通りです。
ハザード比は0.49という結果でした。
重篤な副作用が見られたのは、T-DXdとペルツズマブを投与した群が27.0%、THP療法を行った群が25.1%。
副作用があらわれ投薬を中断:T-DXdとペルツズマブを投与した群が68.8%・THP療法を実施した群は49.0%。
減量を行った:T-DXdとペルツズマブを投与した群45.9%、THP療法を行った群19.9%。T-DXdとペルツズマブを投与した群の方が多い。
※参照元:がんナビ|HER2陽性の進行乳癌の1次治療でT-DXdとペルツズマブの併用は標準療法であるTHP療法よりも増悪または死亡のリスクを44%低減【ASCO 2025】
大阪大学大学院医学系研究科に所属する島津教授らの研究グループによると、治療薬が十分と言えない「HER2陰性乳がんの転移・再発患者」を対象とした試験を開始することが発表されました。乳がんの間質という、がん細胞を取り囲む組織において分泌される病的ペリオスチンという物質に対し、新規抗体医薬であるPT0101を使用し、臨床試験を実施します。
病的ペリオスチンは、抗がん剤抵抗性を引き起こす要因として、同研究科先端分子治療学共同研究講座の谷山教授より報告がありました。上記の研究に基づいて開発に至った病的ペリオスチンに対するPT0101という特異的中和抗体は、抗がん剤抵抗性を解消することが明らかにされています。
上記により、今まで行われていたがん治療では克服困難であった抗がん剤抵抗性に対し、新しい治療戦略の選択肢が増えます。今後、PT0101について臨床試験を進めていくことにより、難治性がんに対する革新的なな治療法の確立が期待されています。
近年、乳がんにおいてさまざま治療薬が開発されていて、それに伴い治療成績も改善されています。ところが、乳がんの転移や再発が起きると、治療薬が満足になく、とりわけHER2陰性乳がんにおいては予後が厳しいことが報告されています。
乳がん細胞が抗がん剤に抵抗する要因の1つとして、上皮系がん細胞が間葉系がん細胞に変化するとされる「上皮間葉転換」が挙げられますが、この要因は不明でした。
そのような状況の中、研究グループは、多くの臨床検体を用いて間葉系マーカーと最も相関する因子を探し、ペリオスチンを発見しました。ペリオスチンは、さまざまな臓器に存在するタンパク質で、細胞の増殖や組織の修復に関わっています。
近年、さまざまながんにおいて、異常に増えた病的ペリオスチンは、がんの進行や抗がん剤抵抗性に関係していることが報告されています。しかし、詳細なメカニズムは明らかになっておらず、治療の標的としての応用は進んでいませんでした。
一方、ペリオスチンと病的ペリオスチンを区別せずに全て抑制すると、腫瘍が大きくなることが報告されているので、ペリオスチンを標的とする臨床研究が行われることはありませんでしたが、研究グループは病的ペリオスチンの発生過程、抗がん剤の作用、がん細胞の転移や抗がん剤抵抗性への関与を明らかにし、生理的ペリオスチンを抑制せず病的ペリオスチンのみを抑制することで、安全に抗がん剤抵抗性を改善できることを報告しました。
これらの知見に基づき、ペリオセラピア株式会社(大阪大学発ベンチャー企業)と、先端分子治療学共同研究講座との共同研究がスタートし、病的ペリオスチンを特異的に中和する抗体医薬「PT0101」を開発しました。PT0101は、がん細胞とがん間質の両方に対して働き、抗がん剤の効果が現れにくい治療に対し、新しい可能性をもたらします。
この研究の結果により、がん間質をターゲットにした新たながん治療の道が開けることが期待されています。今までの治療法では、がん細胞を攻撃することに重きをおいていました。しかし、がん間質は治療を行っても改善しない性質や、転移を促す要因であることが明確になったことで、より有効な治療戦略の開発につながります。
また、病的ペリオスチンを特異的に阻止する抗体医薬であるPT0101 は、現在行われている治療では対応が困難とされる、がん細胞が抗がん剤抵抗性を示している患者に対して新しい選択肢となる可能性もあります。
とりわけ、難治性の乳がんや、そのほかの固形がんにおいて臨床応用が期待されており、今後の医療現場での活躍が期待されています。
※参照元:ResOU|がん治療のブレイクスルーへ! 転移・再発した乳がんに対する 新規抗体医薬の臨床試験を実施
(https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2025/20250306_1l)
HER2が見られた転移のある乳がんと診断された方に対し、HER2の2つのドメインを標的とする抗HER2二重特異性抗体zanidatamabと化学療法を併用した治療が有効な可能性があると報告されました。
フェーズ1試験の最終解析で、さまざまな治療を行った患者において、忍容性(副作用の程度を示したもの)や抗腫瘍効果が認められたと報告されています。HER2標的療法を行った経験のある方においても、良好な無増悪生存期間を示したことが明らかになりました。
※5月14日~17日ドイツ・ミュンヘンで実施されたESMO Breast Cancer 2025にて発表された内容です。
フェーズ1試験(NCT02892123)のパート3で、HER2陽性で転移のある乳がんと診断された方には、zanidatamabと化学療法(パクリタキセル・ビノレルビン・カペシタビン)もしくは、zanidatamabとカペシタビン、tucatinibの投与が行われました。HER2低発現の転移のある乳がんと診断された患者には、zanidatamabと化学療法(パクリタキセル・ビノレルビン・カペシタビン)を投与。
計46名(HER2陽性:31名・HER2低発現:15名)が投薬を受けた。内訳はzanidatamab+パクリタキセルが5名、zanidatamab+カペシタビンが19名、zanidatamab+ビノレルビンが20名、zanidatamab+カペシタビン+tucatinibが2名でした。12名に脳転移の既往があります。
転移がんに対する前治療レジメン数中央値は3。HER2陽性患者には全員抗HER2療法の投与した経験があり、トラスツズマブ・T-DM1を受けていたのが100%、ペルツズマブが87%、ラパチニブが23%、T-DXd、tucatinib、neratinibが6%ずつという結果でした。
HER2低発現患者で抗HER2療法の投与を受けていたのは80%で、トラスツズマブが80%、T-DM1が73%、ペルツズマブが67%、ラパチニブが27%、T-Dxdが13%、neratinibが7%。
HER2陽性と診断されている患者28名では、確定奏効率が43%、病勢コントロール率が89%、病勢制御割合の中央値は14.8か月という結果でした。HER2低発現した患者15名では、確定奏効率が20%、病勢コントロール率が67%、病勢制御割合の中央値が10.4か月という結果でした。
※参照元:がんナビ|HER2発現乳癌に抗HER2二重特異性抗体zanidatamabと化学療法の併用が有用な可能性【ESMO Breast 2025】
(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202505/588748.html)
広島大学大学院医系科学研究科細胞分子薬理学に在籍する浅野助教・吾郷教授、東京農業大学生命科学部バイオサイエンス学科の中澤教授らの研究グループの研究報告です。
乳がん細胞増殖や遊走に関与する受容体VIPR2は二量体を形成し、この二量体化を阻止することにより、腫瘍の成長・転移を大きく抑制できることを発見したことが報告されています。研究室では、乳がんではVIPR2遺伝子のコピー数やVIPR2mRNAが現れるのが増加していることに注目し、VIPR2の乳がん細胞についての機能解析を進めています。
最近VIPR2は、乳がん細胞遊走や乳がん細胞増殖を抑える分子であることを明らかにしました。今回、研究グループでは、VIPR2は二量体を形成すると明らかにしたほか、同定した二量体化に必要な領域をがん細胞に過剰発現させると、競合的に二量体化を阻止できることを見出しました。
乳がんは、世界的に見て、女性に多いがんの1つであり、罹患率や死亡率も増加傾向にあります。世界ではおよそ230万人、日本ではおよそ9万人もの方が、毎年新た罹患しているといわれています。原発巣で増殖した非浸潤がん(がんが発生した部位にとどまっている状態)が進行し、やがて浸潤がん(周囲の血管や臓器などに広がった状態)になると、リンパ節・肺などに転移してしまい、致死率が高くなります。
人間の身体には、神経ペプチドと呼ばれるタンパク質が存在しています。神経ペプチドは、身体が特定の刺激を受けることにより放出されて、細胞の表面に見られる神経ペプチド受容体と結合します。すると、痛みを抑制したり、気分を良くしたりするなどさまざまな働きをします。
神経ペプチドやその受容体も、働きによりさまざまな種類が存在していて、その中の1つにVIPR2と呼ばれる神経ペプチド受容体があります。これは特定の神経ペプチドと結合することで、血流を改善したり、消化促進、ストレスのコントロールなどの効果を発揮します。今までの研究において、乳がん細胞内でVIPR2を作り出す設計図とされるVIPR2mRNAやVIPR2遺伝子のコピー数は増えることが報告されています。
その一方、VIPR2はGタンパク質共役型受容体の一種であり、GPCRに属するいくらかの受容体は二量体化(2つの同じ分子が結合して、1つのまとまりになる)することについて報告されていますが、その生理学的な意義は明確になっていません。
この研究では、まずVIPR2が乳がん細胞内で二量体を形成することを検証し、二量体を形成する場合、それが乳がんではどのような役割を果たすのかを明らかにすることを目的として検討をおこないました。
今回の研究において、乳がん細胞の中で、神経ペプチド受容体VIPR2が二量体化することが明確になり、これが乳がんの増殖・転移の要因だと明らかになりました。今後、VIPR2の二量体化を予防することで、乳がんの進行を抑える新薬の開発が期待されています。
※参照元:広島大学|【研究成果】乳がん増悪化の新規メカニズムを発見!-神経ペプチド受容体VIPR2 二量体化の分子機構の解明から創薬へも期待-
(https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/89919)
東京医療センターの木下貴之氏は早期乳癌の治療法について、「ラジオ波熱焼灼術」が従来の手術の代替治療として有望であると米国臨床腫瘍学会(ASCO 2024)において発表しました。
ラジオ波熱焼灼術(RFA)は腫瘍径1.5cm以下でリンパ節転移や遠隔転移のない早期の乳癌を治療対象としており、ラジオ波(高周波電流)を腫瘍細胞へ照射することで癌細胞を焼灼する治療です。同研究では20~79歳の女性の早期乳癌患者が対象となっており、全員に対してラジオ波熱焼灼術を行った後に放射線療法が実施されました。そして3ヶ月後に針生検を実施し、さらに治療6ヶ月後~60ヶ月後まで5年間で画像評価を行ったところ、全生存率は99.2%(95%信頼区間:97.4-99.7)で、無転移生存率は99.1%(95%信頼区間:97.3-99.7)となりました。
上記の結果により、ラジオ波熱焼灼術は乳房部分切除術などの手術の代替治療として将来的に有望である可能性が示唆されています。
※参照元:がんナビ|腫瘍径1.5cm以下の早期乳癌にラジオ波熱焼灼術は手術に代わる有望な治療法【ASCO 2024】
(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202406/584536.html)
東京薬科大学や国立がん研究センター中央病院などの共同研究グループは、トリプルネガティブと分類される悪性度の高い乳癌に関して、浸潤や転移といった進展を増進させる機構の一端を解明しました。
同研究は2024年2月14日の米国科学誌「Journal of Cell Biology」に掲載され、トリプルネガティブ乳癌では微小管-アクチン結合タンパク質「MAP1B(Microtubule-Associated Protein 1B)」が高度に発現しており、これが予後の憎悪に深く関与していると明らかにされています。
MAP1Bは癌細胞が持っている特殊な構造「浸潤突起」の形成に関与する、タンパク質「Tks5」を患者の免疫システムから守ることにより、癌細胞の生存を助け、結果として癌細胞の浸潤や転移リスクを高めていることが発見されました。また、MAP1Bを抑制することでTks5が免疫システムによって分解されることも解明し、今後の乳癌治療や新薬の開発に役立てると期待されています。
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター|トリプルネガティブ乳がんの浸潤・転移機構の一端を解明
(https://www.ncc.go.jp/jp/information/researchtopics/2024/0215/index.html)
米国「Winship Cancer Institute of Emory University」のKevin Kalinsky氏らの研究グループは、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2024)において、癌治療薬として「アベマシクリブ」と「フルベストラント」を利用した治療により、進行乳癌の患者の無増悪生存期間(PFS)がフルベストラント単剤治療と比較して有意に改善されたことを発表しました。
治療対象となった乳癌患者は、CDK4/6阻害薬+内分泌療法で進行したホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳癌の患者や、早期乳癌治療でCDK4/6阻害薬+内分泌療法を受けたものの再発した患者となっています。
同研究では、フルベストラントにアベマシクリブを合わせた投与群(アベマシクリブ群)と、フルベストラントにプラセボを合わせた投与群(プラセボ群)を比較し、その結果としてアベマシクリブ群でPFSなどが改善されました。
※参照元:がんナビ|CDK4/6阻害薬+内分泌療法で進行したHR陽性進行乳癌にアベマシクリブ+フルベストラントは有意にPFSを改善【ASCO 2024】
(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202406/584535.html)
この章では、比較的新しい臨床試験や治療法について解説していきます。アストラゼネカ株式会社で開催されたセミナーや、パルボシクリブとタモキシフェン併用など、比較的新しい治療などについて解説しています。新しい治療法を探している方は、チェックしてください。
2024年11月抗悪性腫瘍薬サシツズマブゴビテカンが薬価収載されるのと同時に発売されました。適応や用法容量は、以下の通りです。
投与時間は3時間となっており、初回投与の忍容性が良好の場合は、2回目以降は1~2時間に短縮可能です。(患者の状態によって適宜減量します)
日本において、乳がんは女性のがん罹患率が第1位となっています。治療には、ドキソルビシン塩酸塩をはじめとする、アントラサイクリン系や、パクリタキセルといったタキサン系の細胞障害性抗がん剤を用いることがあります。
転移乳がんや再発乳がんでは、治療効果を高めるために、さまざまな癌化学療法レジメンが使用されているものの、満足のいく治療成績が得られない症例もあるのが現状です。
乳がんの予後や予測因子には、エストロゲン受容体やプロゲステロン受容体といったホルモン受容体、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)の発現が知られています。近年、HR陽性もしくはHER2陽性の転移または再発乳がんの治療には、化学療法や内分泌療法、抗HER2療法といった治療法があり、治療効果の向上が見られます。
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、早期に再発しやすいとされ、肺や肝臓などの臓器に転移が見られやすい進行性の乳がんです。転移や再発までの平均期間や全生存期間は、他のサブタイプの乳がんと比べて短い傾向があります。
転移・再発トリプルネガティブ乳がんに対する標準的な治療は化学療法です。プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)陽性の場合、アテゾリズマブやペムブロリズマブといった免疫チェックポイント阻害薬も使用するものの、現状として治療選択肢が限られている状況でした。
サシツズマブゴビテカンは抗体薬物複合体(ADC)とされていますが、HRやHER2をターゲットにしている、これまでの治療薬と異なり、乳がんなどのがん細胞で高く発現する細胞表面抗原TROP-2をターゲットとしているのが特徴です。
同薬は、TROP-2を発現している標的細胞に結びつき、SN-38が細胞内に遊離し、トポイソメラーゼIを妨げることによって抗腫瘍作用を発揮します。
※参照元:日経メディカル|治療歴があるトリプルネガティブ乳癌に抗体薬物複合体
(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/202412/586742.html)
トリプルネガティブ乳がんは、悪性度が高いがんとして知られており、ほかのタイプと比べてみると、予後不良であるのが特徴です。そのようなトリプルネガティブ乳がんに対し、最近では比較的新しい治療薬が増えてきており、その代表的なものに免疫チェックポイント阻害薬が挙げられます。
乳がんに使用できる免疫チェックポイント阻害薬としては、ペムブロリズマブや、アテゾリズマブといった薬剤が登場してきたことから、トリプルネガティブ乳がんの予後改善が期待されつつあります。
サシツズマブゴビテカンという薬剤は、あらたな機序のTROPタンパクを標的としている抗体薬物複合体であり、2024年9月に承認されました。基本的には、2つ以上の化学療法を使用したことがある、手術不能もしくは再発したトリプルネガティブ乳がん患者が対象となっています。
乳がんが再発し、治療薬の選択肢が少なくなってきている方の新たな希望になることが期待されています。
※参照元:くみこ乳腺クリニック|トリプルネガティブ乳がんに新たな治療薬が登場!
(https://kumiko-breast.com/blog/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%97%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%82%AC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E4%B9%B3%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%AB%E6%96%B0%E3%81%9F%E3%81%AA%E6%B2%BB%E7%99%82%E8%96%AC%E3%81%8C%E7%99%BB%E5%A0%B4)
2022年9月抗悪性腫瘍薬・抗PD-1抗体薬であるキイトルーダについて、ホルモン受容体陰性かつHER2陰性であり、再発高リスクの乳がんにおける術前・術後薬物療法として国内で適応拡大承認を取得しました。
乳がんの好発年齢は40歳後半~60歳後半となっており、女性のがんでも多く見られる疾患です。乳がんの中で、ホルモン受容体やHER2の過剰発現の見られないトリプルネガティブ乳がんは40歳未満の女性に多く、乳がん全体の約10~15%を占めています。
一般的に、トリプルネガティブ乳がんは、ほかのタイプの乳がんと比べ、増殖能が非常に高く、生存期間が短いと報告されているがんです。
今回の承認は、国際的な臨床試験である「KEYNOTE-522試験結果」に基づいているものです。同試験では、ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクと判定された、周術期の乳がん患者を対象としています。
術前薬物療法として、キイトルーダ+化学療法(パクリタキセル+カルボプラチン投与後にシクロホスファミド+ドキソルビシン/エビルビシン)を3週ごとに投与。
術後薬物療法として、3週ごとにキイトルーダ単剤療法を行った際の有効性と安全性について、術前薬物療法としてのプラセボ・化学療法かつ術後薬物療法としての偽薬投与と比較検討されたものです。
その結果、術前薬物療法としてのキイトルーダ+化学療法と術後薬物療法としてのキイトルーダ単剤療法は、術前薬物療法としてのプラセボ+化学療法と術後薬物療法としてのプラセボと比較して無イベント生存期間を統計学的有意に延長したと発表されました。
※参照元:大阪ブレストクリニック院長ブログ|トリプルネガティブ乳癌に対するキイトルーダの適応拡大
(https://www.osaka-breast-clinic.com/blog/?p=324)
公益財団法人がん研究会がん研究所がん生物部斉藤典子部長、渡邉健司博士研究員、がん化学療法センター分子薬理部旦慎吾部長、熊本大学発生医学研究所細胞医学分野中尾光善教授および日野信次朗准教授らの共同研究グループは、乳がんにおけるミトコンドリアを標的とする低分子化合物は、がん特異的にBRCA1/2を失わせて、PARP阻害剤が効くようになる点についてはじめて解明しました。
がんは、エネルギー代謝に異常が見られるほか、傷ついたDNAが増加することで知られています。BRCA1/2は相同組み換えと呼ばれる方法にて損傷DNAを修復するタンパク質のことであり、PARP(ポリADPリボシル化酵素)と補い合うように働きます。
したがって、PARP阻害薬は、BRCA1/2遺伝子に変異が認められる乳がんの増殖を抑制します。しかし、BRCA1/2変異がんの割合は少ないことから、大部分のがんに対してPARP阻害薬の機能を発揮させる方法の開発が期待されている状況でした。
この研究では、発芽大豆由来の低分子化合物グリセオリンIが、ミトコンドリアを妨げます。それによって乳がん細胞は、がん代謝物とされる乳酸が過剰につくられ、BRCA1/2遺伝子の発現が抑えられることを発見しました。
BRCA1/2変異がないにも関わらず、相同組み換え能が低い状態「BRCAness」を引き起こしますが、この変化は、正常細胞では見られません。この研究は、ミトコンドリアを標的とする低分子化合物が、がん特異的にBRCA1/2を失わせて、PARP阻害剤が効果を発揮することを見つけ出しました。
ミトコンドリア標的薬とPARP阻害剤を併用すると、がんを治療できる新しい可能性を提案できると言われています。
この研究結果は、2024年11月13日にScience Signaling誌で公開されました。
※参照元:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構|トリプルネガティブ乳がん治療に新たな可能性を発見~乳がんのミトコンドリア阻害は相同組換えを抑制しPARP阻害剤への感受性を高める~
(https://www.qst.go.jp/site/press/20241114.html)
ランダム化多施設二重盲検プラセボ対照第3相試験が行われ、アントラサクリン並びにタキサンによる術前化学療法にニボルマブを追加することによって、早期の高リスク・高悪性度・エストロゲン受容体(ER)陽性・HER2陰性乳がんとあらたに診断された方において、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に上昇するかどうか調査が行われました。
その結果、ニボルマブ群のpCR率がプラセボ群のpCR率と比べて、有意に上昇する主要評価項目を達成したと発表しました。この解析では、追跡期間中央値が不十分なため、無イベント生存期間(EFS)について結論を出せないと言われています。この研究結果は、Peter MacCallum Cancer Centreおよびメルボルン大学Sherene Loi博士らにより、2025年1月21日にNature Medicine誌に掲載されているものです。
ランダム化多施設二重盲検プラセボ対照第3相試験では、治療歴がなく高リスクのER陽性HER2陰性で早期乳がんと診断された患者を対象にしており、ペムブロリズマブと化学療法による、術前療法後にペムブロリズマブ+内分泌治療による術後療法を実施した場合と、プラセボと化学療法による術前療法後にプラセボ+内分泌治療による術後療法を実施した場合の有効性と安全性について評価しました。
術前化学療法にペムブロリズマブをプラスすることによって、病理学的完全奏効率が有意に上昇したことが判明しました。無イベント生存期間評価については、現在進行中とされています。
上記内容については、シャンパリモー臨床センター/シャンパリモー財団乳腺科のFatima Cardoso博士らによって報告された内容であり、2025年1月21日にNature Medicine誌に掲載されています。
※参照元:がん医療情報リファレンス|術前化学療法にPD1阻害薬追加で高リスク早期ER+HER2-乳がんの完全奏効率が有意に上昇
(https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/nyuugann/post-32174.html)
ゲノム検査を行うことによって、リンパ節転移陰性・HR陽性・HER2陰性の乳がんのある方のうち、化学療法レジメンの方へアントラサイクリンをプラスすることが効果的な患者を見定めたと言われています。
オンコタイプDXゲノム検査で、再発リスクが高いと診断されたリンパ節転移陰性・ホルモン受容体(HR)陽性・HER2陰性の早期乳がんにかかっている方で、アントラサイクリン+タキサンベースの補助化学療法レジメンを実施している場合、タキサンベース補助化学療法レジメンだけを実施した方と比べると、転帰は良好という結果が出ています。
上記は、サンアントニオ乳がんシンポジウム( 2024年12月10日~13日に開催)にて発表されている内容です。
この研究の代表者であるシカゴ大学医学部の内科助教を務めるNan Chen医師は、「HR陽性HER2陰性は、アメリカでよくみられるタイプの乳がんであり、補助化学療法が有効かどうか、有効であればどの化学療法がそうなのか判断しなければならないことが頻繁にある」と言われています。
さらに、「このタイプの乳がん患者は、一般的にタキサンベース補助レジメン、もしくはタキサン+アントラサイクリンベース補助レジメンのどちらかを受けるが、アントラサイクリンをプラスする、加えて強力な化学療法の使用を裏付けるデータには限りがある」とも言われています。
Chen医師らは、TAILORx試験のデータの解析にあたり、ステージ I/II・リンパ節転移陰性・HR陽性・HER2陰性の乳がんに対し、術後にタキサン+アントラサイクリン/シクロホスファミド並びに、類似レジメン (T-AC) を受けた患者と、タキサン+シクロホスファミド (TC)化学療法を受けた患者の転帰について比較しました。
試験では、化学療法が効果を発揮する見込みのある患者の予測のため、OncotypeDX検査を実施。
広く用いられている、このような遺伝子検査は、再発スコア (RS) を0から100で示し、スコアが低値であればあるほど再発するリスクが低い(副作用と比較して、補助化学療法にはメリットが少ない)ことを示しています。
再発スコア11~25の患者は、ホルモン療法だけを受ける群、医師が選定する化学療法レジメンとホルモン療法を受ける群のどちらかに無作為に割りあてられました。再発スコア26以上と判定された方は、医師が選定する化学療法レジメンとホルモン療法を受けています。
試験対象患者2,639人のうち、タキサン+シクロホスファミド (TC)が2,197人、タキサン+アントラサイクリン/シクロホスファミドおよび類似レジメン (T-AC)による治療を442人が受けています。
T-ACとしては、アントラサイクリンとシクロホスファミドの後にタキサン投与し、アントラサイクリンとシクロホスファミド、ドセタキセルを同時に投与します。もしくはそれ以外のアントラサイクリンとタキサン併用の3つのレジメンのいくつかのうちの一つを投与。
年齢やグレード、腫瘍サイズのほかに、エストロゲン/プロゲステロン受容体の状態で調整を行った後、再発スコア31以上かつ腫瘍が2cm以上のがん患者において、T-ACの使用は、5年後の生存転帰の改善と関連が見られたとされています。
※参照元:がん医療情報リファレンス|【SABCS24】タキサン系化学療法へのアントラサイクリン追加が再発リスクの高いHR+/HER2-乳がんに有効な可能
(https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/nyuugann/post-30750.html)
BIG 2-04 MRC SUPREMO臨床試験によると、以下のことが判明しました。
上記は、サンアントニオ乳がんシンポジウム(2024年12月10日~13日まで開催)で発表されました。エジンバラ大学教授であり、この研究の発表者であるIan Kunkler氏は、以下のように述べています。
「乳房切除後の胸壁照射は、腋窩リンパ節転移陽性が4個以上見られる早期乳がんの方にとって標準治療です。しかし、リンパ節転移が少ない方やリンパ節転移陰性の方には、依然として議論の余地がある」。
また、一般的に胸壁照射(CWI)は、以下のような中リスク乳がんにかかっている方の治療に用いられると言われています。
Kunkler氏らは、中リスク乳がん患者において、乳房切除後の胸壁照射(CWI)の影響を評価するため、第3相臨床試験を実施しました。この国際共同試験は、数カ国から以下の方が登録されています。
不適格並びに離脱による除外を経過して解析対象になった患者1,607人のうち、
患者はガイドラインに準拠している腋窩リンパ節郭清かつ全身治療も受けています。
CWIを受けている群と受けなかった群においては、全生存率に有意差は見られませんでした。CWIを受けている群では81.4%、受けなかった群では82.0%の患者は、追跡期間中央値9.6年後に生存していたという結果でした。
CWIは、胸壁再発のリスクを半分以上減らせましたが、胸壁再発の絶対率の減少は2%未満のみだったため、Kunkler氏は「臨床的に有意な差ではない」と説明しています。
参照元:がん治療・癌の最新情報リファレンス|【SABCS24】中リスク乳がん患者のほとんどは乳房切除後の胸壁照射を安全に回避できる可能性
循環腫瘍DNA(ctDNA)のある患者において、乳がん再発予防を目的とするニラパリブの評価として設計されたZEST臨床試験で、ctDNA陽性となった患者は十分な人数にはならなかったとされています。
2024年12月10日~13日まで開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウムで、「乳がんctDNAによるニラパリブの再発予測」について発表されました。試験の目的は、検出可能なctDNAを有しているため、再発リスクが高いステージ1〜3の乳がんの方に対して、新たな治療戦略を開発することだと言われています。
ニラパリブの有効性については、登録数が少なかったことと、試験の早期終了により結論は出ませんでした。しかし、この試験が直面した課題は、今後、臨床試験を設計していくにあたり、参考になるものだとされています。
今後、術前投与後に病理学的完全奏効が見られなかったステージ2Bもしくは3のがんの方など、ctDNA陽性となる可能性が高い高再発リスク患者にも焦点を当てていく必要があるとされています。
参照元:がん治療・癌の最新情報リファレンス|【SABCS24】乳がんctDNAによるニラパリブの再発予測:ZEST試験結果
2025年1月17日、米国食品医薬品局(FDA)は、切除不能もしくは転移性疾患に対するホルモン療法並びに、化学療法を受けたことのある切除不能または転移、ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性(IHC 0、IHC1+またはIHC2+/ISH-)乳がんの成人患者に対して、Trop-2を標的とした抗体およびトポイソメラーゼ阻害剤複合体であるダトポタマブ デルクステカンについて承認しました。
有効性は、非盲検ランダム化試験で評価されています。なお、条件に該当していて、対象となっている患者については、以下をご覧ください。
※ステロイドが必要なILD/肺炎の病歴や、進行中のILD/肺炎、臨床的に活動性の脳転移のある方は除外。
※ECOGパフォーマンスステータスが1以上の患者も除外。
ランダム化は、以前の化学療法や、以前のCDK4/6阻害薬治療並びに、地理的地域によって層別化。
合計732人の患者が、ダトポタマブ デルクステカン(n=365)または研究者の選択による化学療法(n=367)(エリブリン[60%]、カペシタビン[21%]、ビノレルビン[10%]、またはゲムシタビン[9%])にランダム化(1:1)された。
主な有効性評価項目は、以下の通りです。
追加の有効性評価項目として、BICRで確認された客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)が含まれています。PFSの中央値は、ダトポタマブデルクステカン群で6.9カ月、化学療法群で4.9カ月でした。
OS中央値は、ダトポタマブデルクステカン群で18.6カ月 、化学療法群で18.3カ月となっています。確認されたORRはダトポタマブデルクテカン群と化学療法群でそれぞれ36%と23%、DOR中央値はそれぞれ6.7カ月と5.7カ月です。
参照元:がん治療・癌の最新情報リファレンス|米FDAが切除不能/転移ホルモン陽性HER2陰性乳がんにダトポタマブ デルクステカンを承認
トルカプ(PIK3CA・AKT1・PTEN遺伝子変異)が見られるHR陽性HER2陰性の手術切除が不可能・再発乳がんの二次治療薬として発売された薬剤。アストラゼネカ株式会社では、2024年6月21日に「進行再発乳がんへの有効性を示した世界初のAKT阻害薬」といったメディアセミナーを開催しました。
同社のAKT阻害薬カピバセルチブは、「内分泌療法後に増悪した、PIK3CA・AKT1・PTENいずれかの遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の、手術切除不能または再発乳がん」の効能・効果で、フルベストラントとの併用療法が2024年3月26日に国内で承認、同5月22日に発売されました。
参照元:がんプラス
細胞の増殖に関与するとされるタンパクHER2に対する抗体医薬であるトラスツズマブは、世界各国で使用されており、乳がん・胃がんの患者で高い効果が期待されています。
しかし、正常細胞にも高い反応性を示すといわれており、とりわけ心臓に対する副作用が報告されています。したがって、HER2に特異的に結合し、がん細胞を攻撃する抗体医薬の開発が臨床現場において求められていました。
東北大学大学院医学系研究科分子薬理学分野の加藤教授らの研究グループは、がん細胞を特異的に攻撃する抗体医薬の開発にあたってきました。本研究では、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)を標的とするHER2-CasMabを作製。
今回開発したHER2-CasMabは、がん細胞のみに反応し、正常の上皮細胞にはまったく反応しませんでした。また、HER2-CasMabは乳がんに対して、トラスツズマブと同等の抗腫瘍効果がみられたことから、乳がんの治療で副作用のない治療法の開発が期待されます。
参照元:東北大学
国立がん研究センター中央病院主導のもと、アジア地域で行われた国際共同医師主導の治験結果により、新たな治療選択肢をホルモン受容体陽性・HER2陰性進行乳がん患者に提供できるようになったとされています。
これにより、閉経後乳がん患者の治療はもちろん、治療選択肢が少ない閉経前乳がん患者に対する治療選択が拡大しました。我が国のアカデミアが、国を超えたアジア地域で国際共同治験を主導することによって、アンメット・メディカルニーズを満たした成功事例です。
国立がん研究センター中央病院は、この試験で培ってきた国際共同医師主導治験のノウハウを活かし、国内外の医療現場でより多くの新しい治療薬・治療法を提供できるように取り組んでいます。
参照元:国立がん研究センター
東邦大学医療センター大橋病院の外科准教授である長田拓哉氏らの研究グループによって、植物由来のエッセンシャルオイルに含まれる揮発成分「シトラール」に、乳癌細胞の増殖を抑制する効果が確認されました。
シトラールはレモンマートルやレモングラス、リツェア、レモンバームといった植物に含まれる植物由来の成分であり、ストレス緩和やウイルス対策など様々な目的で使用されるエッセンシャルオイルの揮発成分として含有されている物質です。
同研究グループはこれらの4種類のエッセンシャルオイルに含まれているシトラールが、乳癌細胞の増殖を抑制する作用があるとして、将来的な癌治療や再発リスクの低減などへの活用を示唆しました。
※参照元:MEDICAL TRIBUNE|シトラールに強力な乳がん細胞増殖抑制効果
ベネズエラの研究グループは、乳癌患者の中でも特に70歳以上の高齢者を対象に、手術前補助療法としての化学療法の有用性を研究しました。
研究では、70歳以上でHER2陽性・エストロゲン受容体陽性の未治療乳癌患者12例に対して、抗HER2抗体トラスツズマブとペルツズマブ、そして抗エストロゲン薬フルベストラントを含む3剤を術前補助療法として併用したところ、細胞増殖の指標となるKi67発現が手術時に有意に低下しており、患者の67%で病理学的完全奏効(pCR)が達成されたそうです。また重篤な有害事象も認められませんでした。
これにより、高齢乳癌患者に対する術前補助療法として、3剤併用の治療が有用であると示唆されています。
※参照元:MEDICAL TRIBUNE|高齢乳がんの術前療法、3剤併用が有効
2024年8月29日付けの医学誌「JAMA Oncology」において、早期乳癌の術前補助療法として、化学療法と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を併用した治療の有効性と安全性に関する報告が公表されました。
報告によれば、2023年10月時点で登録されていた早期乳癌の患者に対して、手術前の補助療法として化学療法とICIを併用したところ、トリプルネガティブ乳癌とホルモン受容体陽性/HER2陰性の乳癌患者の生存率が、化学療法だけの場合よりもICIを追加した場合で優位に改善することが確認されたそうです。
また、同治療における安全性に対する懸念についても問題ないと報告されています。
※参照元:オンコロ|早期乳がんに対する術前療法としての化学療法+免疫チェックポイント阻害剤のメタ解析
2024年9月5日付けの医学誌「Journal of Clinical Oncology」において、「PIK3CA変異陽性ホルモン受容体陽性/HER2陰性の進行乳癌」に対する有効かつ安全な治療として、「PI3K阻害薬イナボリシブ+CDK4/6阻害薬イブランス(一般名:パルボシクリブ)+ホルモン療法」の併用療法の第1/2相試験に関する検証結果が公表されました。
検証対象となった患者は、PIK3CA変異陽性ホルモン受容体陽性/HER2陰性の進行乳癌の患者53人となっており、そこから複数のグループに分類して、イナボリシブ+イブランス+レトロゾール併用療法の有用性や安全性について客観的な検証が行われています。
試験の結果、併用療法を行った患者において良好な奏効率と管理可能な安全性が報告されています。
※参照元:オンコロ|PIK3CA変異陽性ホルモン受容体陽性/HER2陰性の進行乳がんに対するイナボリシブ+イブランス+内分泌療法、有効性・安全性ともに有望
2020年3月、国立研究開発法人国立がん研究センターと慶應義塾大学医学部による研究グループは国内54施設との共同研究により、世界初となる前向き無作為化比較試験によって、乳癌タモキシフェン療法における癌患者の遺伝子型にもとづいた個別化治療の有効性の研究結果を発表しました。
そして研究の結果として、タモキシフェンを患者の体内で活性化する酵素「CYP2D6」の低活性遺伝子型を有している患者において、タモキシフェン療法による治療効果の有意な向上は認められず、遺伝子型にもとづいた用量個別化は不要であるという結論が導かれています。また本研究は国際的に続けられていたタモキシフェン療法に関する論争へ医学的根拠にもとづいた結論を与えた点でも評価されており、同時に日本国内の癌患者の治療についても前向きな知見を与えました。
そもそもCYP2D6低活性遺伝子保有者の割合は民族によって差があり、日本人の場合はおよそ7割がそれに該当しています。そして低活性の人に関するタモキシフェンの内服量について様々な意見が存在していました。
しかし今回の研究によって、低活性の人へタモキシフェンを標準治療より多く投与しても治療効果の変化が生じることはなく、現在の標準治療のタモキシフェン療法が低活性の乳癌患者に対して特に劣っているといった事実はないという成果が認められました。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター|乳がんタモキシフェン療法の遺伝子型に基づく個別化治療は必要か?-世界初の前向き臨床試験で長年の論争に決着-
乳癌に関する専門誌「Breast Cancer誌2024年3月号」において、川崎医科大学の岩本高行氏らによる研究チームが、日本における乳癌患者の特性や治療、生存などの動向に関するデータを報告しました。これは2004年から2016年までの間、乳癌患者として日本国内で登録された45万7,878例(追跡期間中央値5.6年)を活用したデータの集合体であり、日本乳癌学会による予後レポートとなっています。また、2004年から2008年までの症例のデータと、2013年から2016年までの症例のデータを比較検討することで、時期によって乳癌患者の治療や割合などの変化を数値で確認できたことも重要です。
両期間のデータを比較すると、2004~2008年では治療開始年齢の中央値が57歳となっていたのに対して、2013~2016年では60歳まで上昇しており、またエストロゲン受容体陽性の割合を見ると74.8%から77.9%へ、プロゲステロン受容体陽性の割合では60.5%から68.1%への増加が認められました。加えてHER2療法についてはトラスツズマブの使用率が4.6%から10.5%まで2倍以上に増加し、HER2陽性乳癌患者では特に無病生存期間と全生存期間の改善も認められています。
参照元:ケアネット|日本の乳がんの特性・治療・予後の変化~NCD乳がん登録46万例のデータ
2015年4月、熊本大学発生医学研究所の研究グループは、乳癌の治療後に難治性の再発乳癌が発生する仕組みや機序について解明し、難治性再発性乳癌に対する効果的な治療法の開発に向けて可能性を提示しました。
そもそもの課題として、乳癌症例の多くにおいて女性ホルモンのエストロゲンを阻害するホルモン療法が有効であると知られていますが、ホルモン療法によって治療を行った後に、改めて治療耐性や治療抵抗性を有する難治性の乳癌の再発が生じるという事実がありました。また難治性の乳癌再発に関して、エストロゲン受容体の産生に関与するESR1遺伝子の活性化が原因であると分かっていたものの、その具体的な機序などは解明されていませんでした。
しかし熊本大学の研究グループはESR1遺伝子の活性化に関与する新規の非コードRNA「エレノア」を発見し、さらにエストロゲン受容体を持つ乳癌細胞へ「レスベラトロール」を投与することで、エレノアやESR1遺伝子の働きを抑制して癌細胞の増殖を停められるということを明らかにしています。
これにより、それまで治療が困難とされていた難治性再発乳癌に対しても、効果的な治療法を確立できる期待が持たれました。
参照元:科学技術振興機構|乳がんの治療抵抗性の仕組みを解明~難治性・再発性乳がんの新しい診断・治療法に向けて~
2021年1月、東京医科大学と国立研究開発法人国立がん研究センター、国立研究開発法人日本医療研究開発機構などの研究者が集まる共同研究グループによって、乳癌の悪性化に「温度」が関与しているという事実が報告されました。なお、本研究はアメリカのオンライン雑誌「Journal of Extracellular Vesicles」にも2020年12月31日付けで掲載されています。
乳癌患者に関する研究として、癌の悪性化に影響する酸素や栄養条件といったテーマの研究は世界各国で行われてきたものの、温度・体温の変化に関して集中的に研究されたデータは少数であり、一般的に皮膚温の上昇が腫瘍の発見に用いられるといった報告がある程度でした。そこで研究グループは改めて乳癌と温度の関係に着目し、結果として乳癌の転移を促進するエクソソームやエクソソームに存在するタンパク質が、温度に依存して増加するメカニズムを解明しました。
これにより、乳癌の腫瘍組織の周辺温度が高くなることでエクソソームの分泌やタンパク質活性が増大し、癌の悪性化を進めていく可能性が示唆されており、これらの発見は今後の乳癌治療やバイオマーカーの同定にも貢献すると期待されています。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター|乳がんの悪性化に「温度」が寄与することを発見
金沢大学がん進展制御研究所/新学術創成研究機構と東京大学医科学研究所先端医療研究センター、東京大学医学部附属病院、そして国立がん研究センター研究所が集まって結成した共同研究グループは、2018年12月、乳癌幹細胞様細胞が分裂し増殖していく仕組みを解明したと発表しました。
本研究の前提として、腫瘍組織は様々な種類の癌細胞によって構成されており、その中には体内で色々な細胞や組織へ分化する「肝細胞」に近しい性質を有する「癌幹細胞様細胞」も存在しています。また、癌幹細胞様細胞は腫瘍組織内にある全ての癌細胞へ分化していくことも判明しており、癌幹細胞様細胞の分裂・増殖・分化を抑制することで、癌の根治にも特に重要であることが明らかになっていました。しかし癌幹細胞様細胞に特化した分子標的薬は存在しておらず、有効な治療法については研究段階にあることも事実です。
そのような状況において、同研究グループは乳癌の組織由来の癌幹細胞様細胞を培養することに成功し、さらに培養細胞へ癌幹細胞様細胞内の分子「MICAL3」を用いて、モノオキシゲナーゼの活性化を介することで、癌幹細胞様細胞の分裂と倍増の仕組みの解明に成功しました。
今後はMICAL3の機能阻害を導く分子標的薬を開発することで、乳癌の治療へ貢献できると期待されています。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター|乳がん幹細胞様細胞が分裂・増殖する仕組みを解明
Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月9日号において、広島大学の研究チームが、エストロゲン受容体陽性/HER2陰性の乳癌(ER+/HER2-)に対する術後ホルモン療法の有効性や必要性に関する検証結果を発表しました。
現代はマンモグラフィの性能向上やマンモグラフィ検査の普及に伴って、腫瘍サイズが小さな乳癌についても早期発見できる可能性が高まっており、実際に腫瘍径の小さな乳癌の検出数は増加しています。しかし、そのような乳癌患者の中でも特にER+/HER2-乳癌の患者に対して、標準治療として乳房切除などの手術を行った後、改めて術後内分泌療法(ET)を実施することが本質的に有効であるのか必要性を検証したデータは多くありませんでした。
そこで研究チームは2008年1月から2012年12月までの期間において、国内の指定42施設で乳癌手術を受けたER+/HER2-乳癌患者(T1a/bN0M0)のデータを参照し、術後内分ETの効果や遠隔転移の累積発生率の分析を行いました。
結果的に、術後ETは対側乳癌発生率の減少などに効果を持つものの、ER+/HER2-/T1a/bN0M0乳癌患者はそもそも予後が良好であり、特に低悪性度でリンパ管侵襲を伴わない乳癌患者に対しては術後ETの省略を検討できるとまとめています。
参照元:ケアネット|腫瘍径の小さいER+/HER2-乳がんへの術後ホルモン療法は必要か
ベルギーの研究グループが、髄膜腫と診断されている女性の乳癌発生リスクについて、2023年6月16日付けの「JAMA Network Open誌電子版」で報告しています。
まず、アメリカの脳腫瘍登録データを参照すると、髄膜腫の発症率は近年増加傾向にあり、大半が良性腫瘍であるものの特に女性に多く発生する疾患であるとも認められている点が前提です。
そもそも髄膜腫と乳癌の関連性についての疑念はおよそ70年前から存在していましたが、現代に至るまで両者の関係を的確に解明した研究や医学的根拠は報告されていませんでした。そこで同研究グループは改めて系統的レビューとメタアナリシスを実施し、髄膜腫と乳癌の関係性を評価しました。
その結果、髄膜腫と診断されている女性は、そうでない女性に対して、一生涯における乳癌の発生リスクがおよそ「10倍」に上っているということが発見されています。一方、すでに乳癌と診断された女性において、髄膜腫を発症するリスクは特に増加していなかったという点も特徴です。
以上の結果から、髄膜腫は女性の乳癌リスクを考える上で重要な因子の1つである可能性が示唆されました。
参照元:日経メディカル|髄膜腫の女性患者は乳癌リスクが顕著に高い
一般的に乳癌は女性に特有の婦人科系癌と考えられており、男性の乳癌発症はレアケースとされています。しかし乳癌は女性だけに限った腫瘍でなく、男性にも発生する可能性があり、特に近年は男性の乳癌患者が増加傾向にあると指摘されていることもポイントです。
そのような状況において、男性乳癌に対する認知度の低さや発見・診断の遅れなどから適切な治療戦略を立案・実践することが難しく、予後についても不良になっているケースは少なくありません。
そこで韓国の忠北大学校病院のSungmin Park氏らによる研究チームは、改めて韓国の国民健康保険データベースを活用して男性乳癌患者に対する情報収集と後ろ向き解析を行い、その結果をJournal of Breast Cancer誌オンライン版2021年12月24日号で報告しました。
調査対象は2005年から2016年までの間に、新たに男性乳癌と診断された患者838例となっており、追跡期間中央値約5年間(1,769日)の死亡数は268例、5年生存率は73.7%となっていました。また予後不良を導く要因として、所得の低さやタモキシフェンの無投与、外科的治療を行わない、さらに併存疾患2つ以上といった因子が同定されています。
倉敷中央病院消化器内科と京都大学大学院医学研究科消化器内科学の研究チームは、2024年12月10日刊行の医学雑誌「日本消化器病学会雑誌(刊行:一般財団法人日本消化器病学会)」において、ホルモン受容体陽性乳癌の治療薬として重要と考えられている「タモキシフェン」に関するリスクや、タモキシフェン使用時に注意すべきポイントなどを臨床研究のデータにもとづいて発表しました。
そもそもタモキシフェンは選択的エストロゲン受容体モジュレーターの1種として知られており、ホルモン受容体陽性乳癌の患者に対するキードラッグとして化学療法に利用されています。一方、タモキシフェンの長期投与は高確率で患者に脂肪肝を発生させ、さらに患者によっては脂肪肝炎や肝硬変といった症状にまで悪化するといったリスクが指摘されていることも重要です。また、特に日本人のようなアジア人種に関しては、欧米人と比較してタモキシフェン使用時の肝障害の発症リスクや重症化リスクが高い可能性が指摘されていることもポイントです。
そのような背景を踏まえて、研究チームが日本肝臓学会評議員を対象としてアンケート調査を実施した結果、タモキシフェン投与中は定期的な血液検査や腹部エコー検査を行い、また肝胆道系酵素の数値が一定以上に達した場合などは肝臓専門医へ紹介することが望ましいという結論に至っています。
参照元:CiNii Research「タモキシフェンによる薬物性肝障害の診断と治療」
2024年12月26日付けで静岡産科婦人科学会から刊行された「静岡産科婦人科学会雑誌 12 (1), 2-7, 2024-12-26」において、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の患者に対してリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)を実施した後のリスクについて論文が掲載されました。
国際的な情報として、HBOCの患者に対してRRSOを実施した場合、およそ3%の患者に「漿液性卵管上皮内癌(STIC)」が発生し、また約4%の患者において「漿液性卵管上皮内病変(STIL)」が認められるという報告がされています。しかし日本国内の症例に注目した場合、RRSOを実施した後の病理結果において同様の報告は少なくなっており、国際的なデータとは別に日本国内におけるデータの検証が重要であると考えられました。
研究チームは2015年8月から2022年5月までの期間で、BRCA1及びBRCA2の病的変異を有するHBOC患者に対してRRSOを実施した35症例をサンプルとして確認した結果、約8.6%の確率でSTICが認められ、約11.4%の確率でSTILが認められています。なお、STIC症例は全てがBRCA1の病的バリアントを有する患者でした。
両者の発生割合が従来の報告と比べて異なっていた背景には日本の医療制度の問題もあるとされており、さらに全国的なデータ解析が必要とまとめられています。
参照元:CiNii Research「当院におけるリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)を行った症例の検討」
遺伝性の乳癌に関して、BRCA1遺伝子もしくはBRCA2遺伝子に病的変異(バリアント)が認められた場合、それは遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)として診断されます。そして日本国内でもBRCA遺伝学的検査の保険適用によって検査の実施数が増えている一方、その検査結果として「inconclusive」という報告が行われることもあるようです。
これは「現時点で判断できない(結論に至らない)」という結果を意味しており、技術的な問題などで正確な遺伝学的検査が実施できなかったことを意味しています。そしてこの場合、医師はその後の対応について検討材料を失うため、治療方針を考える上でそもそもの指針となるデータや情報が重視されていることも事実です。
そのような中、徳島大学大学院では院内症例として、乳癌や卵巣癌の患者の中からBRCA遺伝学的検査で「inconclusive」となった患者についての比較と分析を実施しました。
結論として、仮に術前のBRCA遺伝学的検査で「inconclusive」の結果が得られた場合であっても、各患者において個々の状況も踏まえながらHBOCのリスクを再検討し、慎重な対応をすることが重要であると考察されています。
参照元:CiNii Research「BRCA遺伝学的検査の結果inconclusiveとなった3例」
乳癌を含めて癌には遺伝的な要因があると考えられており、遺伝性腫瘍の1つである「Li-Fraumeni症候群(LFS)」はがん抑制遺伝子TP53の生殖細胞系列病的変異(バリアント)が原因とされています。また、LFSのコア腫瘍の1つは乳癌となっており、NCCNガイドラインにおいても年1回の乳房MRI検査やマンモグラフィなどによる癌検診が推奨されていることもポイントです。
一方、現時点で乳癌を発症していない患者であっても、TP53の病的バリアントが認められる場合、予防に両側リスク低減乳房切除術を実施すべきか否かは十分かつ慎重な遺伝カウンセリングなどの結果にもとづいて検討すべきとされています。
そのような中、従来のLFSは単一遺伝学的検査によって診断されてきたものの、近年は多遺伝子パネル検査が普及しており、遺伝カウンセリングの品質や在り方について精度が向上してきたとされる点も事実です。
がん研究会有明病院乳腺センターの春山優理恵氏らによる研究グループは、LFS家系の血縁者であり癌未発症者に対して、初回乳房サーベイランスによって両側乳癌の診断を確定させた症例について、一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会刊行の医学雑誌「遺伝性腫瘍 24 (2), 153-160, 2024-10-25」へ掲載しました。
参照元:CiNii Research「多遺伝子パネル検査で診断に至ったLi-Fraumeni症候群の未発症血縁者:初回の乳房ハイリスクサーベイランスで両側乳癌の診断に至った1例」
医学誌「Nature Medicine」において2025年1月17日付けの発表として、The Royal Marsden NHS Foundation TrustのAlicia F. C. Okines氏らによる研究グループが、HER2遺伝子変異陽性乳癌に対する治療として、「HER2チロシンキナーゼ阻害薬ツカチニブ+抗HER2モノクロナール抗体薬ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)」の併用療法が良好な抗腫瘍効果を発揮したという研究結果を掲載しました。なお、本研究は第2相バスケットスタディとして「SGNTUC-019試験(NCT04579380)」により得られた評価にもとづいています。
同試験では、複数の治療歴を有するHER2遺伝子変異陽性でHER2タンパク発現陰性の乳癌患者31人も試験対象となっており、今回の結果はそれらの乳癌患者について、客観的奏効率(ORR)や無増悪生存期間(PFS)、奏効持続期間(DOR)などが評価されたものとなっています。
試験の結果によって、併用療法を行った患者群ではORRが41.9%を示し、PFSの中央値も9.5ヶ月、DORについては中央値12.6ヶ月というデータが示されました。また安全性評価についても有害事象の新発見は認められていません。
参照元:オンコロ|既治療のHER2陽性乳がんに対するツカチニブ+ハーセプチン、良好な抗腫瘍効果を示す
2025年1月9日付の医学誌「Journal of Clinical Oncology」において、HER2陽性進行乳癌および再発乳癌の治療として、「ハーセプチン+パージェタ+タキサン系抗がん剤」併用療法と、「ハーセプチン+パージェタ+ハラヴェン」併用療法の比較検証の結果が発表されました。
本研究は神奈川がんセンターのToshinari Yamashita氏らによる研究チームによって発表され、データは「第3相EMERALD試験(NCT03264547)」の結果に依拠しています。
研究のポイントとしては、「ハーセプチン+パージェタ」のセットに対して「タキサン系抗がん剤」と「ハラヴェン」のどちらを加えた併用療法が優れた抗腫瘍効果を発揮するのか検証しているものですが、結果として、タキサン系抗がん剤群の無増悪生存期間(PFS)は中央値12.9ヶ月、ハラヴェン群では14.0ヶ月となり、両者においておよそ同等の効果が得られています。一方、安全性やQOLについてはハラヴェン群の方が良好な結果を示しており、総合的な結論として、ハーセプチン+パージェタ+ハラヴェン併用療法が第一選択になり得るとまとめられました。
参照元:オンコロ|HER2陽性進行再発乳がんに対するハーセプチン+パージェタへのハラヴェン併用、タキサン系抗がん剤併用と同等の効果を示す
医学誌「The New England Journal of Medicine」へ2025年1月15日に掲載された研究論文によれば、術前療法を行った後に浸潤性残存病変が認められるHER2陽性早期乳癌に対して、抗体薬物複合体「カドサイラ(一般名:トラスツズマブ エムタンシン)」を使用した治療が術後の生存率の向上や再発率の低減に好影響を与えるというデータに関する、長期追跡後の最終解析結果が報告されました。なお本研究は第3相「KATHERINE試験(NCT01772472)」の解析結果として、Charles E Geyer Jr氏らによる研究グループが報告内容をまとめています。
そもそも、1462人のHER2陽性早期乳癌患者を対象とした評価試験において、カドサイラの有用性は認められているものでした。その上で、今回の研究はさらに長期間の追跡調査のデータを総合解析したものとなっており、結論として追跡調査期間中央値8.4年時点における生存率(DFS)は、カドサイラ単剤群でハーセプチン単剤群よりも有意に改善されていたことが分かっています。
以上の結果を踏まえて、研究グループはHER2陽性早期乳癌の治療においてハーセプチン単剤群よりも、カドサイラ単剤療法の方が、浸潤性疾患のない生存率の改善やその維持に貢献するとまとめています。
参照元:オンコロ|術前療法後に浸潤性残存病変を有するHER2陽性早期乳がんに対する術後療法としてのカドサイラ、長期生存率を有意に改善
乳癌の治療として化学療法を行った患者に関して、それぞれの長期的なQOLについて追跡調査を行ったところ、一定の特徴を有する患者集団において長期QOLが顕著に悪化しているということをフランスのGustave RoussyのAntonio Di Meglio氏らの研究チームが報告しました。
そもそも乳癌の化学療法後の長期的なQOLについては個人差が大きい一方、多くの患者において良好な経過が認められていました。しかし日常的な喫煙量が多い、体重が過度に重い、日々の運動習慣がないといった生活習慣を有しているグループにおいては、治療後4年が経過しても治療前のQOLに回復していなかったということが認められたそうです。
またその他にも低所得層や若年層、併存疾患がある患者などにおいて、乳癌化学療法後の長期QOLが悪化しやすいというリスク因子も報告されています。
なお、これらの調査はStageI〜IIIの乳がん患者(4,131例)に対して実施され、研究結果はJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年4月21日に掲載されました。
※参照元:ケアネット|乳がん術後化学療法後、長期QOLが悪化しやすい患者の特徴/JCO(https://www.carenet.com/news/general/carenet/54263)
2025年5月末から6月3日までの期間、アメリカのシカゴで開催された「米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)」において、オーストラリアの研究グループが35歳未満の閉経前ホルモン受容体陽性早期乳癌患者に対する術後療法において、「アロマターゼ阻害薬エキセメスタンと卵巣機能抑制(OFS)」との併用療法や、「タモキシフェンとOFS」の併用療法が、タモキシフェンを単独で使用した場合よりも15年全生存(OS)率を有意に改善するという研究結果を発表しました。
まず、従来のエキセメスタン/タモキシフェン+OFSの併用療法が乳癌無再発期間や遠隔転移抑制といった項目に対して良好な結果を示すことは知られていました。しかし本研究では改めて35歳未満(閉経前)の対象患者において、併用療法がOS改善に有用であることを示唆しており、年齢などを含めた患者の条件に対する治療法選択に関して今後の検証に貢献することが期待されています。
乳癌患者の周術期治療の1つに「パクリタキセルの毎週投与(weeklyパクリタキセル)」がありますが、タキサン系抗癌薬などの副作用として化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)があり、CIPNはweeklyパクリタキセル治療中の乳癌患者についてもQOL低下につながるリスクとして注意されています。
一方、CIPNの予防法として患者の四肢を冷却することで末梢血流を抑制する「四肢冷却療法」が使用されており、その効果や治療法について一層の研究が求められている状態です。
そのような中、がん研有明病院の高野利実氏が米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)において、25℃で四肢冷却療法を行った場合と、より低温の13℃四肢冷却療法を行った場合とで、患者自身からの神経障害の有無などに関する報告内容の比較を行った研究結果を発表しました。
結論として両者の間に統計学的有意差は認められず、四肢冷却療法の方法や実践法について考慮するデータの1つとなっています。
※参照元:がんナビ|周術期weekly PTX療法中の乳癌患者に対する13℃の四肢冷却療法、25℃に比べて末梢神経障害の患者報告アウトカム改善を認めず【ASCO 2025】
シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)において、アメリカのSara Tolaney氏らによる研究グループが、標準治療として使用されている「トラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサン系抗癌薬(ドセタキセルまたはパクリタキセル)」の併用療法(THP療法)に対して、「抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd/DS-8201)+ペルツズマブ」併用療法が患者の死亡リスクを44%低減したという研究結果の詳細を発表しました。
対象となった患者はHER2陽性の進行癌もしくは転移癌を有する乳癌患者であり、1次治療として各治療を実施した場合のデータが比較されています。
対照試験の結果、従来のTHP療法を行った群と、「T-DXd/DS-8201+ペルツズマブ」を行った群では、全てのサブグループを含めて後者の無増悪生存期間(PFS)が優位であったと認められました。また全生存期間(OS)についても後者に良好な傾向が認められたと報告されています。
※参照元:がんナビ|HER2陽性の進行乳癌の1次治療でT-DXdとペルツズマブの併用は標準療法であるTHP療法よりも増悪または死亡のリスクを44%低減【ASCO 2025】
参考[1]:国立がん研究センター がん情報サービス『乳がん 治療の選択』(2018年8月12日確認)
参考[2]:乳がん治療と乳房再建の情報ファイル『No.3 治療前に医師に聞いておきたいこととセカンドオピニオン』(2018年8月12日確認)
参考[3]:アストラゼネカ 乳がん.jp『腋窩リンパ節郭清とセンチネルリンパ節生検』(2018年8月12日確認)
参考[4]:国立研究開発法人 国立がん研究センターがん対策情報センター『薬物療法(抗がん剤治療)のことを知る』(2018年8月12日確認)