細胞の自然死のこと。生体には個体を健康な状態に保つために異常のある細胞や不要になった細胞を自然死へと導く機能が備わっており、たとえばオタマジャクシがカエルになる際に自然と尻尾がなくなるのは、その代表的な例と言えます。一説によると健康な人の身体にも1日5,000個もの癌細胞が発生すると言われていますが、その癌細胞を自然死へと誘導しているのも人に備わったアポトーシス機能のおかげなのです。近年では、がん細胞がアポトーシスを回避する仕組みも研究されており、それを標的とした新しい治療法の開発も進んでいます。
AYA(アヤ)世代とは「Adolescent & Young Adult(思春期・若年成人)」の頭文字を取った造語。一般的に15歳から39歳までの人を指す言葉です。この世代のがんは、小児がんと成人に好発するがんのいずれも発症する可能性があります。AYA世代は進学や就職、結婚、出産といった人生を左右するライフイベントが集中するタイミングです。AYA世代の治療においては、大切な時期にがんという病気に見舞われたことによる心身の揺れ動きをサポートしつつ、一人ひとりの社会背景やニーズに合わせて支援するのが重要になってきます。AYA世代特有の課題として、妊孕性(妊娠する力)の温存や、治療後の社会復帰支援などが挙げられます。
癌細胞が正常細胞とどれだけ異なった様相を呈しているかを示す程度のことです。正常な細胞は異型度が低い、つまり皆同じような形をしていて整然と並んでいるのですが、癌細胞は形が歪んでいたり細胞内の核が大きくなっていたりと、異型度が高いわけです。診断の際に、この細胞の異形度を病理医が顕微鏡で観察し、2~5段階に分類する「異型度分類」が用いられることも少なくありません。一般に異型度が高いほど悪性度が高い、つまり癌の進行速度がはやく、予後も悪いとされています。ただし、がんの種類によっては異型度と悪性度が必ずしも一致しない場合もあります。
治療が功を奏して症状が治まった場合、病気の再発を予防するために治療を一定期間継続するのが維持療法です。がんにおける維持療法とは、再発防止や進行予防のための薬物療法(抗がん剤、分子標的薬、ホルモン療法など)を指します。最初の治療で使用した薬剤の中でも効果が大きく副作用が少なかった薬剤を、休薬期間を置かずに可能な限り使用し続けることで、がんの再発や悪化を目指します。近年では、がんの種類によっては、より長期の維持療法や、複数の薬剤を組み合わせた維持療法も検討されています。
インフォームド・コンセントの意味は「説明を受け、納得した上で同意する」ということです。つまり、医師から病気や症状、検査結果、治療内容などについて十分な説明を受け、患者さんはその内容をよく理解し、納得した上で同意して治療を受けることを指します。単に同意を得るだけでなく、患者さんが主体的に治療選択に関われるよう、十分な情報提供と対話が重要視されています。
各病院において、院内で治療したすべての癌患者の情報を集めて1つのデータとして登録することです。これにはその患者が受けた診断や治療、また退院後の生活や亡くなるまでの記録が含まれており、これを基にその病院のがん診療を客観的に評価することができます。またこの登録を複数の病院が同じ方法で行うことにより、情報を比較することができ、病院ごとの特徴や改善点も浮き彫りになるのです。全国の院内がん登録の情報は、国立がん研究センターがん情報サービスによって集計・分析され、日本の地域別、年齢別、がんの種類別の罹患状況や治療状況などが公開されています。
細胞同士の情報伝達物質である微量生理活性タンパク質・サイトカインのうち、免疫機能のためにはたらくタンパク質。リンパ球の1つであるヘルパーT細胞は、異物を見つけるとこのインターロイキン2を送ってキラーT細胞を増やし、異物を総攻撃させます。このインターロイキン2を利用した抗がん剤も開発されており、主にかつては腎臓がんや血管肉腫に使用されていましたが、近年ではより効果的な免疫チェックポイント阻害薬などの登場により、その使用頻度は減少傾向にあります。
採血などの方法で採取した患者の遺伝子を調べ、遺伝子による癌のリスクを予測したり癌の有無を診断したりする方法です。もともと癌とは細胞の遺伝子異常が原因で発生するため、この検査により癌に特徴的な遺伝子が見つかれば、早期発見となり完治の見込みも高くなります。近年では、がん細胞の遺伝子変異を調べて、その変異に応じた分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を選択する「がんゲノム医療」が発展しています。
肝臓がんの病巣にエタノールを注入し、がん細胞を死滅させる治療法です。経皮的エタノール注入療法(PEIT)は超音波やCTでがんの位置を正確に把握し、腹部に専用の長い針を刺して純度100%のエタノールを病巣に直接注入します。この治療はがん細胞そのものを死滅させる作用と、がん細胞に栄養を供給している血管を止める作用の両方が期待できます。患者さんの身体的な負担も少なく安全性も高いため、比較的早期の肝臓がんに対する代表的な治療法として広く行なわれています。ただし、腫瘍の大きさや数によっては、他の治療法が推奨される場合もあります。
癌細胞が最初に発生した器官から増え広がって近くの血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパの流れに乗って別の器官まで移動すると、その移動先でさらに増殖していきます。この「癌細胞の移動」が遠隔転移。通常、血液の流れが豊富な肝臓や骨、肺、またリンパの流れが集まるリンパ節に遠隔転移が多く見られます。近年では、遠隔転移のメカニズムに関する研究が進んでおり、転移を抑制する治療法の開発も期待されています。
医師、看護師、薬剤師、栄養管理士、歯科医師など多職種の医療従事者で構成される、患者の栄養管理チームのこと。体重や食事量のコントロールは癌患者のQOLに欠かせない要因であるため、栄養管理の専門的知識を持った医療関係者が連携して患者の栄養状態を把握し、適切な状態になるようサポートします。具体的には、摂取しやすい調理法を考案したり、経口摂取から点滴や経管栄養に変えたりするなど、栄養の摂り方を調整することがあります。近年では、早期からの栄養介入や、患者さんの状態に合わせた個別化された栄養管理が重視されています。
「Human T-cell Leukemia Virus Type 1」の略で、日本語にすると「ヒトT細胞白血病ウイルス-Ⅰ型」。血液中の白血球を構成する成分の1つ、リンパ球・T細胞がこのウィルスに感染すると成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)を引き起こします。主な感染経路は母子感染と性行為感染で、一度感染すると一生涯ウィルスを持ち続けることになります。ただし感染しても症状が出ない場合が多く、日本でも主に九州や沖縄地方に感染者が多いとのことですが、実際にATLを発症する人は数少ないと言われています。ATLの発症には数十年かかることもあります。
日本語では「電気穿孔法」。電気パルスを送って細胞の膜組織に一時的に穴を開け、がん細胞に直接抗がん剤や遺伝子を注入、吸収させる投薬方法です。これにより少量の抗がん剤で高い癌細胞殺傷効果が望めるため、副作用の影響を最小限に抑えることができます。皮膚がんなどの局所療法として用いられることがあります。遺伝子治療への応用も研究されています。
日本語では「腫瘍学」と言い、その名の通り腫瘍について研究する学問のことを言います。とくに日本においては癌や肉腫といった悪性腫瘍全般についての研究であり、その検査や診断、治療、緩和ケアや精神的なケアまでを包含します。癌細胞についてはまだまだ不明な点が多く種類も個人差もあるため、オンコロジーが取り組むべき課題は非常に多いと言えます。近年、オンコロジーの分野では、がんゲノム医療、免疫療法、分子標的薬の開発などが急速に進展しており、個別化された治療法が注目されています。
かつては細菌やウイルス感染症に対し抗生物質や抗ウイルス薬を用いる治療を指していましたが、現在では主に悪性腫瘍(がん)に対する抗がん剤を用いた薬物療法を意味するようになりました。抗がん剤は、がん細胞の増殖に関わる特定の分子や経路を標的としたり、細胞分裂そのものを阻害したりすることで、がんの進行を抑える効果が期待されます。しかし、多くの場合、正常な細胞にも影響を与えるため、様々な副作用を伴うことがあります。近年では、従来の細胞障害性抗がん剤に加え、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、より副作用の少ない、がん細胞に特異的な作用を持つ薬剤も開発・実用化されています。投与方法も、内服薬、点滴だけでなく、皮下注射や筋肉内注射など多様化しており、がんの種類や進行度、患者さんの状態に合わせて選択されます。全身に効果が期待できるため、血液がんや、目に見えない微小な転移があると考えられるがんに対して重要な治療法となります。
がん悪液質は、進行したがん患者さんによく見られる症候群であり、十分な栄養摂取を行っているにもかかわらず、体重減少、特に筋肉量の減少(サルコペニア)、脂肪組織の減少が進行し、全身倦怠感や食欲不振などを伴います。従来の考え方では、胃がん術後の消化吸収能力低下による体重減少が例として挙げられていましたが、がん悪液質は、がん細胞や免疫細胞から分泌される炎症性サイトカインなどの物質が、筋肉タンパク質の分解を促進したり、エネルギー代謝を異常にしたりすることで引き起こされます。そのため、単純な栄養補給だけでは改善が難しいとされています。近年では、がん悪液質に対する薬物療法や栄養療法、運動療法など、集学的アプローチによる治療法の研究が進められています。
肝移植は、重症の肝疾患により機能不全に陥った患者さんの肝臓をすべて摘出し、健康な第三者または患者さんの親族から提供された正常な肝臓の一部または全部を移植する治療法です。生体部分肝移植は、健康な方から一部の肝臓を提供していただく移植手術であり、脳死ドナーからの臓器提供とは異なります。がん治療における肝移植の適応は、肝細胞がんの場合、一般的にChild-Pugh分類でBまたはC、そして腫瘍の個数や大きさ(例えば、単発で5cm以下、または3個以内でそれぞれ3cm以下など、施設によって基準が異なります)などの厳しい条件があります。肝臓を入れ替えることで、肝がんと肝硬変の根治が期待できますが、術後の拒絶反応や感染症などの合併症のリスクがあり、移植後は免疫抑制剤を生涯にわたり服用する必要があります。近年では、ドナー不足を背景に、脳死肝移植も重要な選択肢となっています。
肝動脈化学塞栓療法は、肝細胞がんの栄養血管である肝動脈に、抗がん剤と塞栓物質を直接注入することで、がん細胞を兵糧攻めにし、死滅させる局所療法の一つです。治療は、通常、足の付け根の血管(大腿動脈)からカテーテルを挿入し、X線透視下で肝動脈まで誘導し、抗がん剤を注入した後、塞栓物質(リピオドール、塞栓用粒子など)を用いて血管を塞ぎます。この治療法は、抗がん剤を腫瘍局所に高濃度に投与できるため、内服や点滴による全身投与と比較して副作用が比較的少ないとされています。主に手術が困難な非切除肝細胞がんに対して行われますが、腫瘍を完全に根治させることは難しく、腫瘍の再発や残存に対して、数ヶ月ごとに繰り返し実施されることがあります。近年では、塞栓物質に抗がん剤を徐放する機能を持たせた薬剤溶出性マイクロビーズ(DEB-TACE)なども用いられています。
がんセンターは、がんの診療、研究、教育、情報提供を専門的に行う医療機関です。国立がん研究センターをはじめとするナショナルセンターと、各都道府県や政令指定都市などが設置する公立・公的がんセンターがあります。地域におけるがん診療の中核施設として、高度な医療の提供、地域の医療機関との連携、患者さんや地域住民への相談支援や情報発信、そしてがん専門の医師や医療従事者の育成など、多岐にわたる重要な役割を担っています。
がん診療連携拠点病院は、がん対策基本法に基づき厚生労働大臣が指定する医療機関です。「都道府県がん診療連携拠点病院」と「地域がん診療連携拠点病院」があり、全国どこでも質の高いがん医療を提供することを目指しています。これらの病院は、手術、放射線療法、薬物療法などの標準的な治療法に加え、緩和ケアやがん相談支援を提供し、地域の医療機関との連携体制を構築する役割を担っています。また、がんゲノム医療連携拠点病院など、より専門的な機能を持つ拠点病院も整備されています。
がんゲノム医療は、患者さん一人ひとりのがん組織や血液などを用いて、多数の遺伝子を同時に解析し、遺伝子変異を明らかにすることで、その患者さんのがんの特性や治療効果、薬剤感受性などを予測し、個別化された治療法を提供する医療です。すでに、一部のがん種においては、特定の遺伝子変異に対する分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の選択に活用されています。近年、がんゲノム医療を提供する体制が整備され、がんゲノム医療中核拠点病院やがんゲノム医療連携拠点病院を中心に、全国でゲノム情報に基づいた治療が行われるようになっています。
人間の体は、常に新しい細胞と入れ替わっています。その過程で、ごくまれに遺伝子の複製ミスや外部からの要因(放射線、化学物質など)により遺伝子に突然変異が起こることがあります。通常、このような異常な細胞は、免疫機能などによって排除されますが、特定の遺伝子に複数の変異が蓄積すると、細胞はアポトーシス(細胞死)を回避し、無秩序に増殖するようになります。これが「がん細胞」です。がん細胞は、周囲の正常な組織を浸潤・破壊したり、血管やリンパ管を通じて体の離れた場所に転移したりする能力を持つようになります。
がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院や地域がん診療連携拠点病院などに設置されている、がんに関する総合的な相談窓口です。がん患者さんご本人やご家族だけでなく、地域住民も無料で利用できます。がんの治療法や療養生活に関する不安や疑問、利用できる医療機関や制度、心理的なサポートなど、様々な相談に対応しています。ソーシャルワーカー、看護師、薬剤師などの専門職が、それぞれの専門性を活かして相談を支援します。
がん抑制遺伝子は、細胞の増殖を制御したり、DNAの修復に関わったりするタンパク質をコードする遺伝子です。これらの遺伝子に異常(変異や欠失など)が生じると、細胞の増殖制御が失われ、がん化が促進されると考えられています。「p53遺伝子」や「RB遺伝子」はその代表的な例です。近年、様々ながん抑制遺伝子が発見されており、がんの発生や進行における役割が研究されています。
完全寛解とは、がんの治療効果を示す指標の一つで、画像検査や血液検査などでがんが完全に消失したと判断される状態を指します。特に血液がん(白血病、悪性リンパ腫など)の治療においてよく用いられる言葉で、骨髄中の腫瘍細胞の割合が一定の基準値以下になり、血液検査の数値が正常化し、自覚症状がない状態などを指します。しかし、「完全寛解」はがん細胞が完全に根絶されたわけではない可能性があり、「治癒」とは異なる概念です。そのため、完全寛解後も再発のリスクに注意し、定期的な経過観察が必要となります。
緩和ケアは、がんと診断された時から、がんによる身体的な痛みや息苦しさ、吐き気などの身体症状だけでなく、不安や抑うつ、不眠などの精神心理的な苦痛、さらに社会的な問題やスピリチュアルな苦悩など、患者さんとそのご家族が抱える様々なつらさを和らげるための包括的なケアです。がんそのものへの治療と並行して行われ、患者さんのQOL(生活の質)の維持・向上を目指し、その人らしく生きることを支援します。医師、看護師だけでなく、薬剤師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、ソーシャルワーカー、臨床心理士など、多職種の専門家からなるチームで提供されることが一般的です。
発生頻度が低く、人口10万人あたり6例未満とされる悪性腫瘍の一群のこと。症例数が少ないため、診断や治療法の確立、臨床試験の実施などが難しいという課題があります。代表的な希少がんには、肉腫(骨軟部肉腫など)、脳腫瘍(悪性神経膠腫など)、消化管間質腫瘍(GIST)、悪性黒色腫(メラノーマ、粘膜メラノーマなど)、胚細胞腫瘍などが挙げられます。患者数が少ないため、診断や治療の経験豊富な医師や医療機関を見つけることが困難な場合が多く、確定診断までに時間を要することも少なくありません。このような課題に対し、国立がん研究センター希少がんセンターを中心に、診療支援体制の構築、情報提供、臨床研究・治験の推進、患者・家族支援など、様々な取り組みが進められています。また、全国の希少がん診療連携拠点病院が整備され、地域における診療体制の強化も図られています。
日本語では「生活の質」や「生命の質」と訳されますが、包括的な概念であるため、そのまま「QOL」という言葉が一般的に用いられます。どのような状態が「質が高い」かは個人の価値観によって異なりますが、一般的には身体的、精神的、社会的な側面が良好な状態であり、自分らしく充実した生活を送れている状態を指します。がんやその治療は、患者さんの身体的苦痛、精神的な不安や抑うつ、社会的な活動の制限など、QOLを著しく低下させる可能性があります。そのため、がん治療においては、がんそのものへの治療と並行して、QOLの維持・向上を目指したケアが重要視されています。緩和ケアはその代表的な取り組みの一つです。
別名「サルベージ療法」。標準的な初回治療(一次治療)が無効であった場合や、再発した場合に行われる治療法です。特に血液がん(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など)の治療において用いられることが多い言葉ですが、固形がんにおいても用いられることがあります。多くの場合、初回治療とは異なる複数の抗がん剤を組み合わせた化学療法(救援化学療法)、造血幹細胞移植、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などが選択肢となります。近年では、CAR-T細胞療法など、新たな救援療法も登場しています。
がん細胞とその存在する場所に直接作用する治療法で、外科療法(手術)、放射線療法、体幹部定位放射線治療(SBRT)、ラジオ波焼灼療法(RFA)、マイクロ波凝固療法(MWA)、光線力学的療法(PDT)、凍結療法などが該当します。がんが原発巣に限局している場合や、転移があってもその数が少なく、限られた部位にのみ見られる場合に有効な治療法です。全身への影響が比較的少ないという特徴があります。
コンピューター制御により、照射する放射線の強さを部位ごとに細かく変化させながら、腫瘍の形状に合わせてより正確に放射線を照射する放射線治療法です。これにより、複雑な形状の腫瘍に対しても、周囲の正常組織への線量を低減し、副作用を抑えながら、腫瘍への線量を集中させることが可能となり、治療効果の向上が期待できます。
肺がんの化学療法など、複数回の治療サイクルを必要とする治療において、各サイクルごとに一定期間入院し、抗がん剤の投与や副作用の管理を行った後、比較的状態が安定していれば一時退院し、次回の治療サイクルに合わせて再び入院することを指します。患者さんにとっては、自宅で療養する時間を持つことができ、QOLの維持や医療費の抑制につながる可能性があります。ただし、治療内容や患者さんの状態によっては、通院での化学療法が可能な場合もあります。
前立腺がんの悪性度(異型度)を評価する際に用いられる分類法です。組織診(生検)で採取されたがん細胞の形態を顕微鏡で観察し、最も多く見られるがん細胞のパターンと、次に多く見られるがん細胞のパターンにそれぞれ1~5点のスコアをつけ、その合計(2~10点)で評価します。スコアが高いほど、がんの悪性度が高いと判断されます。病気の広がりを示す病期(ステージ)とは異なる概念です。近年では、より詳細な分類法であるグレードグループも用いられるようになってきています。
がん治療における推奨度を示す指標の一つで、治療ガイドラインにおいて、有効性を示すエビデンスが不十分である、あるいは有害性が利益を上回る可能性があるため、原則として推奨されない治療法を指します。グレードはA(強く推奨)、B(推奨)、C1(行うことを考慮してもよい)、C2(行わないことを考慮してもよい)、D(推奨しない)の5段階で示されることが一般的です。そのため、グレードDの治療法は、臨床試験などの限られた状況を除き、日常診療においてはほとんど選択されません。がん治療は、エビデンスに基づいたグレードの高い推奨に従って行われることが重要です。
ここではがん治療ガイドラインの詳細や、グレードD治療についての考え方、がん治療の進め方などを解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
血液細胞、リンパ組織、骨髄などに発生するがんの総称です。造血器腫瘍とも呼ばれ、血液細胞ががん化し、無制限に増殖することで、正常な血液細胞の産生を妨げ、様々な症状を引き起こします。血液細胞の種類(白血球、赤血球、血小板)や、がん化した細胞の成熟段階によって、多様な種類に分類されます。代表的な血液がんとして、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫が挙げられ、これらは三大血液がんとも呼ばれますが、その他にも骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍など、多くの種類が存在します。近年、遺伝子解析の進歩により、より詳細な分類や病態の理解が進み、個別化された治療法の開発につながっています。
がん組織は、増殖や転移に必要な栄養や酸素を供給するために、新たな血管を形成します。この現象を血管新生と呼びます。血管新生阻害薬は、がん組織からの血管新生を促す因子(VEGFなど)の働きを阻害したり、血管内皮細胞の増殖を抑えたりすることで、がんへの栄養供給を断ち、がんの成長や転移を抑制する効果が期待される薬剤です。がん細胞を直接死滅させる細胞障害性抗がん剤とは作用機序が異なるため、腫瘍縮小効果は比較的緩やかですが、がんの進行を遅らせ、延命効果や他の治療との併用による効果増強が期待されています。様々な種類のがんに対して開発・使用されています。
最初にがんが発生した臓器や組織における病巣のことです。例えば、最初に胃に発生したがんは胃がん、大腸に発生したがんは大腸がんと呼ばれ、原発巣の臓器名ががんの診断名となります。治療計画は、この原発巣の種類や進行度に基づいて立てられます。たとえがん細胞が他の臓器に転移した場合でも、そのがん細胞は原発巣と同じ性質を持っているため、原発巣を特定することは治療方針を決定する上で非常に重要です。しかし、転移したがんは見つかったものの、原発巣が特定できない場合があり、そのようながんは「原発不明がん」と呼ばれます。原発不明がんの治療は、がんの種類を特定することが難しいため、経験的な治療や広範囲に効果が期待できる化学療法などが選択されることがあります。近年では、遺伝子解析などを用いて原発巣の推定を試みる研究も進んでいます。
光感受性物質(光増感剤)と特定の波長のレーザー光を組み合わせて、がん細胞を破壊する治療法です。まず、光増感剤を静脈注射などで投与します。この光増感剤は、正常な細胞からは比較的速やかに排出されますが、がん細胞には選択的に長く留まる性質があります。適切なタイミングで、がん組織に特定の波長のレーザー光を照射すると、光増感剤が光エネルギーを受け取り、活性酸素を発生させます。この活性酸素は、がん細胞を直接的に酸化させて破壊すると同時に、がん組織周辺の血管を損傷させ、栄養供給を遮断する効果も期待できます。正常な細胞へのダメージが比較的少ないため、低侵襲な治療法として、皮膚がん、食道がん、肺がん、子宮頸がんなど、体表に近い部位や内視鏡で照射可能な部位のがんに対して用いられています。
抗がん剤、放射線療法などの影響により、骨髄の造血機能が低下し、正常な血液細胞(白血球、赤血球、血小板)の産生が減少する副作用です。抗がん剤は、細胞分裂が盛んながん細胞を攻撃する作用がありますが、同様に細胞分裂が活発な骨髄細胞も影響を受けてしまいます。白血球減少は免疫力低下を引き起こし、感染症のリスクを高めます。赤血球減少は貧血を引き起こし、倦怠感や息切れなどの症状が現れます。血小板減少は出血傾向を高め、鼻血、歯茎からの出血、皮下出血などが起こりやすくなります。骨髄抑制の程度は、使用する薬剤や放射線照射部位、範囲などによって異なり、支持療法(輸血、感染症予防薬、G-CSF製剤など)が行われます。
骨へのがん転移や骨疾患の有無を調べるために行われる画像検査です。テクネチウム(Tc-99m)などの放射性同位元素(ラジオアイソトープ:RI)で標識された薬剤を静脈注射すると、骨の代謝が活発な部位に集積する性質があります。がんが骨に転移すると、その部位の骨代謝が亢進するため、薬剤が異常に集積します。ガンマカメラという特殊な装置でこの放射線を検出し、画像化することで、転移の有無や範囲、骨折、炎症などを評価することができます。全身の骨の状態を一度に調べることができるため、多発性骨転移の診断にも有用です。
病気、外傷、またはその治療によって失われた、または変形した器官や組織の形態や機能を回復させるための手術です。例えば、胃がんなどで胃の一部または全部を切除した後に、残った消化管をつなぎ合わせて食物の通過経路を再構築する手術や、乳がんの手術で乳房を切除した後に、患者さん自身の組織(自家組織)や人工乳房(インプラント)を用いて乳房の形を整える手術などが挙げられます。前者は消化機能の維持といった生活に必要な機能を回復させる機能再建、後者は外見の変化によって生じる精神的な苦痛を軽減するための形態再建と捉えることができます。近年では、マイクロサージャリー(顕微鏡下手術)の進歩により、より複雑で繊細な再建手術が可能になっています。
細胞から分泌されるタンパク質で、細胞間の情報伝達を担う生理活性物質の総称です。サイトカインが細胞表面の受容体に結合することで、その細胞に特定の分子応答を引き起こします。免疫応答の調節、細胞の成長・分化・生存、炎症反応など、生体の様々な機能に関与しており、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF)などが代表的です。かつてインターフェロンは、一部の血液がん(慢性骨髄性白血病など)や腎細胞がんなどの治療に用いられていましたが、近年では他の薬剤や治療法の進歩により、その役割は変化しています。しかし、サイトカイン研究は進んでおり、新たな免疫療法の開発などにつながっています。
高精度な放射線照射を行うための定位放射線治療システムの一つです。ロボットアームの先端に取り付けられた小型のリニアック(小型の放射線発生装置)が、患者さんの体を取り囲むように多方向から高線量の放射線を、ミリメートル単位の精度でがん病巣に集中して照射します。外科手術のようにメスを使わないため、低侵襲であり、周囲の正常組織への放射線被ばくを最小限に抑えることができ、副作用の軽減が期待できます。主に、脳腫瘍、頭頸部がん、肺がん、肝臓がん、前立腺がん、脊椎腫瘍など、様々な部位のがんに対して用いられています。治療計画には、CTやMRIなどの画像診断に基づいて、緻密な線量分布が設計されます。
血液細胞や組織細胞の表面に発現しているタンパク質(抗原)を解析することで、細胞の種類、成熟度、機能、異常の有無などを評価する検査です。がん細胞は、正常な細胞とは異なる特有の細胞表面マーカーを持つことがあり、この検査によってがん細胞の存在や種類(組織型、亜型)、悪性度などを診断することができます。主にフローサイトメトリーという機器を用いて行われ、蛍光色素で標識した抗体を用いて特定の細胞表面マーカーに結合させ、その蛍光強度を測定します。血液がん(白血病、悪性リンパ腫など)の診断、分類、治療効果判定、微小残存病変(MRD)の検出などに重要な役割を果たします。近年では、固形がんにおいても、免疫チェックポイント分子などの細胞表面マーカーを解析し、免疫療法の適応を判断する際に利用されることがあります。
がん患者さんが、がんそのものやがん治療に伴う様々な症状や副作用によって生じる苦痛を軽減し、QOL(生活の質)を維持・向上させるために行われる治療やケアの総称です。「緩和ケア」とほぼ同義に用いられることもありますが、支持療法はより具体的な症状緩和に焦点を当てたアプローチを指すことが多いです。例えば、抗がん剤による吐き気に対する制吐剤の投与、貧血に対する輸血、感染症に対する抗菌薬の投与、痛みに対する鎮痛薬や神経ブロックなどが含まれます。近年では、栄養サポート、精神的なケア、リハビリテーションなども重要な支持療法として認識されています。
あらゆる原因による死亡を考慮して算出された生存率です。がん患者さん全体の生存状況を示す指標となりますが、がん以外の病気や事故などによる死亡も含まれるため、がんそのものの影響を正確に評価するには限界があります。特に、高齢の患者さんや合併症を持つ患者さんの場合、がん以外の原因で亡くなる可能性も考慮する必要があります。がんによる死亡のみを評価する指標としては、相対生存率が用いられます。相対生存率は、がん患者さんの生存率を、年齢や性別などが一致する一般集団の生存率で補正して算出されます。
がん治療において、手術療法、薬物療法(抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など)、放射線療法といった複数の治療法を、それぞれの専門家が連携して組み合わせ、患者さん一人ひとりの病状や特性に合わせて行う治療戦略です。がんの種類や進行度、患者さんの全身状態などを総合的に評価し、高い治療効果とQOLの維持・向上を目指します。治療のタイミングや順序、組み合わせは、多職種によるチーム(腫瘍内科医、外科医、放射線腫瘍医、病理医、看護師、薬剤師、リハビリテーション専門職、ソーシャルワーカーなど)で慎重に検討されます。近年、遺伝子情報に基づいた個別化治療や、免疫療法の登場により、集学的治療の選択肢はさらに広がっています。
同一の患者さんに、異なる原発部位に複数のがんが発生した状態を指します。一つの臓器に発生したがんが他の臓器に転移した「転移がん」や、同じ臓器内に複数の病巣が同時に発生した「多発がん(多発性肝細胞がんなど)」とは区別されます。重複がんは、それぞれのがんが異なる性質を持つ場合があるため、個々の病巣に対して適切な診断と治療を行う必要があります。がん登録においては、重複がんはそれぞれ別個の罹患として数えられます。
内科の一専門分野であり、薬物療法(化学療法、分子標的療法、免疫療法、内分泌療法など)を中心として、全てのがん種の診断、治療、緩和ケアなどを包括的に行う診療科です。特定の臓器別ではなく、がんという疾患全体を対象とし、薬物療法の専門知識に基づいて、患者さんの全身状態やがんの特性に合わせた適切な薬物療法を提供します。また、他の診療科(外科、放射線腫瘍科など)と連携し、集学的治療における中心的な役割を担います。近年、がん薬物療法の進歩は目覚ましく、腫瘍内科医は常に新しい知識を習得し、チーム医療を推進しています。
がん細胞やがん組織によって特異的に、または過剰に産生される物質で、血液、尿、体液などを測定することで、がんの存在、種類、進行度、治療効果、再発の有無などの補助的な情報を得るための指標です。しかし、腫瘍マーカーは全てのがんに存在するわけではなく、偽陽性(がんがないのに高値を示す)や偽陰性(がんがあっても正常値を示す)の場合もあるため、単独でがんの診断を確定することはできません。画像検査や病理検査などの結果と合わせて総合的に判断されます。代表的な腫瘍マーカーには、CEA(大腸がん、胃がんなど)、CA19-9(膵臓がん、胆道がんなど)、PSA(前立腺がん)、AFP(肝細胞がん、胚細胞腫瘍など)、CA125(卵巣がん)などがあります。
患者さん自身の免疫細胞である樹状細胞を活性化させ、がん細胞を攻撃させる細胞免疫療法の一種です。患者さんの血液から単球を取り出し、体外で培養・加工して樹状細胞に分化させ、さらにがん抗原(がん細胞の目印となる物質)を認識できるように教育します。このがん抗原を提示するように活性化された樹状細胞を体内に戻すことで、キラーT細胞などの免疫細胞にがん細胞の目印を伝え、がん細胞を特異的に攻撃するよう誘導します。近年、他の免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬など)との併用療法や、より効果的ながん抗原の探索など、治療効果を高めるための研究が進められています。
手術によって目に見えるがん病巣を切除した後に、再発のリスクを低減するために行われる薬物療法(主に抗がん剤)です。手術時に微小ながん細胞が体内に残存している可能性があり、それらが後に増殖して再発を引き起こすことがあります。術後補助化学療法は、これらの目に見えない微小ながん細胞を死滅させることを目的として、手術後比較的早期に開始され、一定期間継続されます。がんの種類や進行度、患者さんの状態などに基づいて、使用する薬剤や投与期間などが決定されます。近年では、分子標的薬や内分泌療法などが術後補助療法として用いられるがん種もあります。
臓器の表面を覆う上皮組織内にとどまっている初期のがんです。基底膜という上皮組織とそれより深い組織との境界線を超えて浸潤(進行)していない状態であり、転移する可能性は極めて低いと考えられています。「0期のがん」と表現されることもあります。しかし、上皮内がんは放置すると浸潤がんへと進行する可能性があるため、適切な治療(手術、内視鏡的切除、放射線療法など)が必要です。子宮頸がん、大腸がん、乳がん、皮膚がんなどで見られることがあります。
がんによる痛み(癌性疼痛)を緩和するために行われる局所麻酔などの薬物を、末梢神経、神経叢、脊髄神経などの神経やその周辺に注射する治療法です。痛みの種類や部位に応じて、痛みを伝える神経(知覚神経)を遮断したり、自律神経を遮断して血流を改善したり、筋肉の緊張を和らげたりすることで、痛みを軽減します。薬の種類や注射部位、方法は様々であり、患者さんの痛みの状態に合わせて選択されます。オピオイドなどの鎮痛薬と併用されることも多く、緩和ケアにおいて重要な役割を果たします。
ある特定の時点または期間において、診断または治療を受けた集団のうち、生存している人の割合を示す指標です。がん医療においては、治療効果を評価する上で重要な客観的指標の一つであり、がんの種類、進行度(病期)、治療法などによって大きく異なります。一般的に、5年生存率や10年生存率が、がんの治療成績を比較するために広く用いられます。ただし、生存率は対象となる患者さんの集団(年齢、性別、合併症の有無、診断時からの期間など)によって大きく変動するため、生存率を比較する際には、これらの背景因子を考慮する必要があります。近年では、個々の患者さんの特性に基づいたより詳細な生存予測も試みられています。
患者さんが、現在受けている治療方針について、主治医以外の専門医に意見を求めることです。より納得のいく治療選択をするための重要な手段であり、主治医との信頼関係を損なうものではありません。セカンドオピニオンの結果は、患者さんを通じて主治医に伝えられ、今後の治療方針を検討する上で参考にされます。セカンドオピニオンを受けることで、異なる視点からの情報や新たな治療法などを知ることができ、患者さん自身が積極的に治療に参加する上で役立ちます。多くの医療機関にセカンドオピニオン外来が設置されています。
国内の医学関連学会や専門医機構などが、それぞれの診療科や分野において、一定以上の知識、技能、経験を持つ医師に対して認定する資格です。医学の高度化・専門化に伴い、患者さんに質の高い医療を提供するために、専門医制度が整備されています。専門医は、その分野における基本的な診療能力を有すると認められた医師、認定医は学会や機構によって定められた研修や試験を経て専門的な知識や技能を持つと認定された医師、指導医は、専門医や認定医の育成を指導する立場にある医師を指します。これらの資格は、患者さんが医療機関や医師を選ぶ際の目安の一つとなります。
がんが全身に広がっている(転移している)と考えられる場合や、血液がんなど全身性の病気に対して行われる治療法で、薬物療法(抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、ホルモン療法など)が主体となります。これらの薬剤は、血液の流れに乗って全身に運ばれ、全身に存在するがん細胞に作用することを目的としています。近年、がん細胞に特異的な分子を標的とした薬剤や、患者さん自身の免疫力を利用した治療法が登場し、従来の抗がん剤と比較して副作用の軽減や治療効果の向上が期待されています。しかし、正常な細胞への影響を完全に避けることは難しく、副作用への対策も重要です。
がん細胞が最初にリンパの流れに乗って到達する可能性が高いリンパ節のことです。「見張りリンパ節」とも呼ばれます。原発巣に近いリンパ節であることが多いですが、リンパの流れ方によっては異なる場合もあります。センチネルリンパ節にがんの転移がなければ、それより先のリンパ節にも転移がない可能性が高いと考えられています。この考えに基づいて行われるのが「センチネルリンパ節生検」で、手術中にセンチネルリンパ節を特定し、病理検査を行うことで、リンパ節転移の有無をより正確に診断することができます。これにより、不必要なリンパ節郭清(切除)を避けることができ、手術後の合併症(リンパ浮腫など)のリスクを低減できます。乳がんや悪性黒色腫などの治療で広く用いられています。
血液細胞(白血球、赤血球、血小板)を作り出すもととなる細胞(造血幹細胞)を、大量の化学療法や放射線療法などによって機能が低下した患者さんの骨髄に移植し、造血機能と免疫機能を回復させる治療法です。移植される造血幹細胞には、患者さん自身の細胞を事前に採取・保存しておき移植する自家造血幹細胞移植と、HLA型(白血球の型)などが適合する他人(ドナー)から提供された造血幹細胞を移植する同種造血幹細胞移植があります。同種移植の場合、移植片対宿主病(GVHD)という合併症のリスクがありますが、移植片対腫瘍効果(GVL効果)により、がん細胞を攻撃する免疫反応が期待できるという利点もあります。主に、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、再生不良性貧血などの血液疾患の治療に用いられます。
がん患者さんの生存率を評価する際に、年齢、性別、居住地域などが同じ一般集団の期待生存率を用いて、がん以外の死亡要因の影響を補正した生存率です。具体的には、実測生存率を期待生存率で割ることで算出されます。相対生存率を用いることで、がんそのものによる死亡のリスクをより正確に評価することができます。国立がん研究センターがん情報サービスなどで、がんの種類や病期別の相対生存率が公開されています。正確な死因のデータがない場合でも、がんの影響を評価する上で重要な指標となります。
手術、放射線療法、薬物療法(抗がん剤、分子標的薬、免疫療法、ホルモン療法など)といった科学的根拠に基づいて有効性が確立されている標準治療の代替として、またはその補完として行われる様々な治療法や健康法を指します。代表的なものには、食事療法、サプリメント、健康食品、ハーブ療法、アロマセラピー、鍼灸、マッサージ、気功、ヨガ、瞑想などが挙げられます。現時点では、ほとんどの代替療法において、がんの治療効果が科学的に証明されていません。しかし、症状の緩和、QOL(生活の質)の向上、精神的なサポートといった側面で、一部の代替療法が補助的な役割を果たす可能性は否定できません。重要なことは、代替療法に頼ることによって、有効性が確立された標準治療を受ける機会を失わないことです。代替療法を検討する際には、必ず主治医に相談し、標準治療との関係や安全性について十分な情報を得る必要があります。
同じ患者さんの同じ臓器に、時間的または空間的に独立して複数のがんが発生することです。一つの原発巣から広がった転移や、同じ臓器内で連続して発生した複数の病巣とは区別され、それぞれが独立した起源を持つと考えられます。多発がんは、単一のがんと比較して、診断や治療が複雑になる場合があります。
患者さん一人ひとりの状態に合わせて、様々な専門分野の医療従事者が連携し、それぞれの専門知識や技術を活かして、診断、治療、ケアを提供する医療体制です。医師(外科医、内科医、放射線腫瘍医、腫瘍内科医、緩和ケア医、病理医、画像診断医など)、看護師(がん専門看護師、緩和ケア認定看護師など)、薬剤師(がん薬物療法認定薬剤師など)、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカー、臨床心理士など、多職種が情報を共有し、患者さんとそのご家族を中心とした包括的なサポートを提供します。チーム医療は、より質の高い、患者中心の医療を目指す上で不可欠であり、がん治療においては特に重要性が認識されています。
国際対がん連合(UICC)や米国がん合同委員会(AJCC)などが定める、がんの進行度(病期、ステージング)を評価するための国際的な共通規約です。T(Tumor:原発腫瘍の大きさや局所への広がり)、N(Nodes:所属リンパ節への転移の有無と程度)、M(Metastasis:遠隔転移の有無)の3つの要素を評価し、それぞれ数値や記号で分類します。これらのT、N、Mの評価に基づいて、Ⅰ期(早期)からⅣ期(進行期)までの病期(ステージ)が決定されます。TNM分類は、がんの進行度を正確に把握し、治療方針の決定、予後の予測、臨床研究などにおいて重要な役割を果たします。定期的に改訂され、新たな知見が反映されています。
特定の抗がん剤(特に分子標的薬や一部の細胞障害性抗がん剤)の副作用として、手や足の皮膚に現れる様々な症状の総称です。初期には、しびれ、ピリピリ感、かゆみ、感覚過敏などが現れることが多く、進行すると発赤、腫れ、痛みが生じ、さらに重症化すると水ぶくれ、皮膚剥離、潰瘍などが現れ、日常生活に支障をきたすことがあります。症状の程度は患者さんや使用する薬剤によって異なります。予防や症状緩和のためには、保湿、冷却、安静などが推奨され、症状に応じてステロイド外用薬や鎮痛薬などが用いられます。
主に男性の精巣で産生される男性ホルモンです。前立腺がんにおいては、テストステロンから変換されるジヒドロテストステロン(DHT)が、前立腺細胞にあるアンドロゲン受容体と結合し、がん細胞の増殖を促進することが知られています。そのため、前立腺がんの治療においては、テストステロンの産生を抑制したり、アンドロゲン受容体の働きを阻害するホルモン療法(内分泌療法)が重要な治療選択肢となります。一方、テストステロン値の低下が、悪性度の高い前立腺がんのリスクを高める可能性も一部で報告されていますが、一般的な治療においては、がんの進行抑制を優先します。
がん細胞が、最初に発生した原発巣から血管やリンパ管を通じて離れた臓器や組織に移動し、そこで増殖することです。血流の豊富な肺、肝臓、脳や、リンパが集まるリンパ節への転移が多く見られます。がんの種類や進行度、治療の経過などによって、転移しやすい部位や時期が異なる場合があります。転移したがんの治療は、進行を抑え、症状を緩和することが主な目標となることが多いですが、近年では、分子標的薬や免疫療法などの進歩により、根治を目指せるケースも出てきています。集学的治療により、転移したがんに対しても積極的に治療を行う医療機関も増えています。
腫瘍に複数本の専用のクライオプローブ(極低温用針)を刺し込み、液体窒素やアルゴンガスなどの極低温の冷媒を流すことで、腫瘍組織をマイナス数十℃の超低温に急速に冷却し、凍結させます。凍結した癌細胞は、細胞内の水分が凍結して結晶化することによる物理的な破壊、細胞膜の損傷、血管の閉塞などにより死滅します。その後、自然解凍またはヘリウムガスなどを用いた加温(融解)を繰り返すことで、より確実に腫瘍組織を壊死させます。局所麻酔や鎮静下での施術が可能であり、高齢者や合併症を持つなど、外科手術の侵襲に耐えられない患者さん、あるいは手術が困難な部位にある腫瘍に対する低侵襲な治療法として選択されます。肝がん、腎がん、肺がん、骨腫瘍など、様々な種類のがんに対して臨床応用されています。近年では、画像誘導技術(CTやMRIなど)の進歩により、より正確な腫瘍の凍結範囲の制御が可能になっています。
手術や放射線療法といった根治的な局所療法に先立って行われる全身療法(薬物療法:抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、ホルモン療法など)のことです。主な目的は、原発巣の腫瘍を縮小させることで、その後の手術の切除範囲を小さくしたり、手術をより安全に行えるようにしたり、あるいは手術で完全に切除不可能であった腫瘍を切除可能にしたりすることです。また、導入療法による治療効果を評価することで、術後の補助療法(アジュバント療法)の選択や効果予測に役立てることもできます。さらに、全身に存在する可能性のある微小な転移(潜在性微小転移)を早期に治療することも期待されます。導入療法の効果によっては、手術をせずに放射線療法などの局所療法だけで根治を目指せる場合や、より効果の高い薬物療法に切り替えることも検討されます。
乳がんの組織型の一つで、がん細胞の表面にエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、HER2タンパク質の3つの受容体がいずれもほとんど、または全く発現していないタイプの乳がんです。従来の乳がん治療では、ER陽性であればホルモン療法、HER2陽性であればHER2標的薬という有効な治療法がありましたが、トリプルネガティブ乳がんはこれらの治療が効きにくいため、薬物療法(抗がん剤治療)が治療の中心となります。近年、トリプルネガティブ乳がんに対する研究が進み、免疫チェックポイント阻害薬やPARP阻害薬など、新たな分子標的薬の臨床応用が進んでいます。また、術前・術後化学療法の重要性も認識されており、より効果的な治療法の開発が活発に行われています。トリプルネガティブ乳がんは、比較的再発しやすく、進行が速い傾向があるため、早期発見と適切な治療が重要です。
がん、前立腺がん、子宮体がんなど、特定のがん細胞の増殖が女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)や男性ホルモン(アンドロゲン)などのホルモンによって促進される場合に用いられる治療法です。その作用機序は、ホルモンの産生を抑制する薬剤を投与したり、ホルモン受容体を阻害する薬剤を投与したり、ホルモンを分泌する臓器(卵巣や精巣など)を外科的に切除したりすることで、がん細胞へのホルモン供給を遮断し、がんの増殖を抑えます。近年では、より選択的なホルモン受容体モジュレーターやアロマターゼ阻害薬など、多様な内分泌療法薬が開発され、患者さんの状態やがんの特性に合わせて選択されています。
骨、脂肪、筋肉、血管、神経、線維組織など、非上皮組織(間葉系組織)から発生する悪性腫瘍の総称です。一方、「がん(癌腫、carcinoma)」は、臓器の表面や内腔を覆う上皮組織から発生するため、発生する組織の違いによって分類されます。肉腫は非常に稀な悪性腫瘍であり、小児から高齢者まで、全身の様々な部位に発生する可能性があります。そのため、症状、診断、治療法は多岐にわたります。肉腫の約50%は筋肉や脂肪などの軟部組織肉腫、約35%が骨に発生する骨肉腫と言われています(国立がん研究センター希少がんセンターHPより、2024年情報に基づく)。治療は、手術、放射線療法、薬物療法(抗がん剤、分子標的薬)などを組み合わせた集学的治療が基本となります。
がん治療(化学療法、放射線療法、造血幹細胞移植など)を受けたことが原因で、治療後数ヶ月から数十年経過して、元の Primary cancer(原発がん)とは異なる種類のがんを発症することです。代表的なものとして、白血病は、アルキル化剤やトポイソメラーゼ阻害薬などの抗がん剤治療後、数年以内に発症することがあります。また、放射線治療、特に胸部照射後の乳がん、頭蓋照射後の髄膜腫や悪性神経膠腫などのリスクが知られています。二次がんのリスクは、治療の種類、線量、期間、患者さんの年齢などによって異なります。治療後の長期的な経過観察が重要であり、二次がんの早期発見・早期治療が重要となります。
乳がんの手術方法の一つで、乳房の大部分を残し、がん組織とその周囲の正常な乳腺組織を部分的に切除する手術です。乳房の変形を最小限に抑えることができ、手術後の整容性に優れています。適応となるのは、がんの大きさや広がりが限局している場合などです。がんが大きい場合でも、術前薬物療法(化学療法や内分泌療法など)によってがんを縮小させることができれば、乳房温存手術が可能になることがあります。乳房温存手術後には、原則として放射線療法が追加され、乳房内に残存する可能性のある微小ながん細胞を死滅させ、再発リスクを低減します。
現在抱えている具体的な問題に焦点を当て、その問題に対する考え方(認知)や行動パターンを意識的に見直し、修正していくことで、心理的な苦痛やストレスを軽減し、問題解決を促す心理療法の一つです。精神疾患の治療として広く知られていますが、がん診療においても、がん告知後の不安や抑うつ、治療に伴うストレス、再発への恐怖など、患者さんが抱える様々な心理的な問題への対処法として重要な役割を果たしています。認知行動療法を通して、患者さんは自身の思考の偏りに気づき、より現実的で柔軟な考え方を身につけ、主体的に問題解決に取り組むことができるようになります。
生まれつき備わっている免疫細胞であるナチュラルキラー(NK)細胞の活性を高め、がん細胞やウイルス感染細胞などの異常な細胞を直接攻撃・排除する能力を利用した免疫療法です。患者さんの血液からNK細胞を採取し、体外で培養して活性化・増殖させた後、点滴によって患者さんの体内に戻します。NK細胞は、がん細胞特有の目印(腫瘍抗原)を認識する必要がなく、異常な細胞を幅広く攻撃する能力を持つため、樹状細胞ワクチン療法のように特定の標的を必要としないという特徴があります。樹状細胞ががん細胞の情報をT細胞に伝えるのに対し、NK細胞は自律的にがん細胞を攻撃するため、T細胞の攻撃を逃れたがん細胞に対しても有効であると考えられています。そのため、樹状細胞ワクチン療法などの他の免疫療法と併用されることもあります。近年では、NK細胞の活性化・増殖技術の進歩や、他の免疫細胞との併用など、治療効果を高めるための研究開発が進められています。
がん細胞が、原発巣から離れて、体腔内(腹腔、胸腔など)や髄腔内に散らばり、複数の小さな転移巣を形成した状態を指します。例えば、胃がんや大腸がんが臓器の壁を突き破り、がん細胞が腹腔内に散らばると「腹膜播種」となります。播種された初期の転移巣は微小であることが多く、CT検査や超音波検査などの画像検査で発見することが難しい場合があります。また、広範囲に散らばっているため、外科的な切除などの局所療法も困難となることが多いです。播種の状態に対しては、全身療法(薬物療法)が主な治療の中心となります。近年では、腹膜播種に対して、腹腔内化学療法や温熱療法などを組み合わせた集学的治療も試みられています。
乳がんの組織型の一つで、がん細胞の表面にHER2(ヒト上皮成長因子受容体2型)タンパク質が過剰に発現しているタイプの乳がんです。HER2は、正常な細胞にもわずかに存在し、細胞の成長や分裂に関わるタンパク質ですが、HER2遺伝子の増幅などによりHER2タンパク質が過剰になると、がん細胞の増殖が促進されます。HER2陽性乳がんは、かつては進行が早く、予後不良なタイプとされていましたが、HER2タンパク質を特異的に標的とする分子標的薬(トラスツズマブ、ペルツズマブ、エンタクトニブなど)の登場により、治療成績は著しく向上しました。現在では、手術、薬物療法(抗がん剤、分子標的薬)、放射線療法などを組み合わせた集学的治療が行われます。
がんの進行の程度を示す分類で、一般的に「ステージ」とも呼ばれます。病期は、がんの種類によって分類方法が異なりますが、多くは0期(早期)からⅣ期(進行期、遠隔転移あり)までのローマ数字で表されます。広く用いられているのは、国際対がん連合(UICC)や米国がん合同委員会(AJCC)によって定められたTNM分類に基づいた病期分類です。T因子(原発腫瘍の大きさや局所への広がり)、N因子(所属リンパ節への転移の有無と程度)、M因子(遠隔転移の有無)の評価を組み合わせることで、病期が決定されます。病期分類は、患者さんの予後を予測し、適切な治療方針を決定する上で非常に重要な指標となります。近年では、TNM分類に加えて、組織学的悪性度(グレード)や遺伝子情報などが予後予測や治療選択に考慮されることもあります。
従来の抗がん剤が、活発に分裂するがん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与え、様々な副作用を引き起こすのに対し、分子標的薬は、がん細胞の特定の分子(がん細胞の増殖、生存、血管新生などに関わるタンパク質や遺伝子など)を標的とし、その働きを阻害することでがん細胞の増殖や転移を抑制する薬剤です。そのため、従来の抗がん剤と比較して副作用が少ないと考えられており、近年、多くのがん種において研究開発が進み、臨床応用されています。分子標的薬は、がんの種類や遺伝子変異などに応じて選択される、個別化医療の重要な要素となっています。
細胞の成熟の程度を示す指標です。正常な細胞は、受精卵から細胞分裂を繰り返し、特定の機能や形態を持つ成熟した細胞(高分化)へと分化し、それぞれの役割を果たします。一方、がん細胞は、正常な分化の過程を阻害されたり、未熟な状態(低分化)のまま増殖したりすることが多く、中には分化の方向性が異常な細胞も見られます。一般的に、分化度が低い(未分化に近い)ほど、がん細胞の悪性度が高いと考えられています。病理検査において、がん細胞の形態や構造を観察し、正常細胞との類似性に基づいて分化度が評価され、がんの診断や治療方針の決定、予後予測などに用いられます。
公益財団法人日本医療機能評価機構が、患者さんが安全で質の高い医療を受けられるよう、病院の機能を第三者の立場から評価し、一定の水準を満たした病院を認定する制度に基づいた病院です。認定病院は、地域医療への貢献、患者中心の医療、安全管理体制、質の向上への継続的な取り組みなど、様々な側面において努力していると評価されます。認定期間があり、定期的な更新審査を受ける必要があります。
現時点で、ある特定のがんに対して、科学的根拠(臨床試験の結果など)に基づいて有効性と安全性が確立され、推奨される治療法のことです。多くの臨床試験の結果を分析し、専門家によるガイドラインなどで示されています。がんの種類や進行度(病期)、患者さんの状態などによって、手術、薬物療法(抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、ホルモン療法など)、放射線療法などが単独または組み合わせて行われます。標準治療は、新たな医学的知見に基づいて常に更新されており、患者さんがより良いの治療を受けるための基本となります。
がん治療において、作用機序や標的が異なる複数の抗がん剤や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを、同時または последовательно(逐次的)に用いる治療法です。異なる薬剤を組み合わせることで、より広範ながん細胞に作用したり、異なる増殖経路を阻害したりすることで、治療効果の向上が期待できます。また、薬剤耐性の出現を抑制したり、単剤で使用する場合よりも低い用量で効果が得られる可能性もあります。しかし、複数の薬剤を使用するため、副作用が増強するリスクや、治療費の増加、投与スケジュールや副作用管理の複雑化などがデメリットとして挙げられます。投与量や投与順序、休薬期間などは、患者さんの状態やがんの種類、進行度などを考慮して慎重に決定されます。
がん細胞が正常細胞よりも活発にブドウ糖を取り込む性質を利用した画像検査です。放射性同位元素(陽電子放出核種)で標識されたブドウ糖類似物質(FDG:フルオロデオキシグルコースなど)を体内に投与し、PETカメラでその分布を画像化します。がん細胞が多く集まっている部位では、FDGの集積が高く 나타나(現れ)、がんの存在、広がり、悪性度などを診断するのに役立ちます。全身のがんを一度に調べることが可能であり、転移の検索や治療効果の判定、再発の診断などに用いられます。近年では、CT検査とPET検査を同時に行うPET-CT検査が主流となっています。
扁平上皮という、皮膚の表面や食道、気管支、子宮頸部、頭頸部などの臓器の内側を覆う粘膜を構成する扁平な細胞から発生するがんです。皮膚に発生する扁平上皮癌は、特に「有棘細胞がん」と呼ばれることもあります。食道がん、子宮頸がん、肺がん(特に肺門部)などの多くは扁平上皮癌であり、その他、頭頸部がん(口腔がん、咽頭がん、喉頭がんなど)、肛門がんなどにも多く見られます。発生部位や進行度によって治療法は異なりますが、手術、放射線療法、薬物療法などが選択されます。
終末期の患者さんやそのご家族に対し、身体的苦痛や精神的な苦悩を緩和し、その人らしい最期を迎えることができるよう支援する医療・ケアの総称です。かつては、末期がん患者さんを対象とした療養病棟を指すことが多かったですが、現在では、緩和ケア病棟とほぼ同義に用いられることが増えています。ホスピス・緩和ケア病棟では、医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、ボランティアなど、多職種の専門家が連携し、症状緩和、心理的なサポート、社会的な支援などを包括的に行います。また、自宅で同様のケアを受ける「在宅ホスピス・在宅緩和ケア」も広がっています。ホスピスは、単に終末期を迎える場所ではなく、患者さんとご家族が尊厳を持って過ごせるようサポートする理念に基づいたケアを提供します。
従来の最大耐用量(MTD)を間隔を空けて投与する化学療法とは異なり、低用量の抗がん剤をより頻繁に、継続的または短い休薬期間で投与する治療法です。この治療法は、腫瘍血管新生の抑制、免疫調節作用、がん細胞の増殖抑制などの効果が期待されています。従来の化学療法と比較して副作用が比較的軽いとされていますが、腫瘍縮小効果は一般的に穏やかであり、進行がんや他の治療法との併用、あるいは維持療法として選択されることが多いです。近年、様々な種類のがんに対する臨床試験が行われており、その役割が再評価されています。
がん細胞が持つ、免疫細胞(主にT細胞)による攻撃から逃れるための仕組みである免疫チェックポイントの働きを阻害する薬剤です。T細胞の表面には、免疫反応を活性化または抑制する様々な受容体(免疫チェックポイント分子)が存在します。がん細胞は、これらの免疫チェックポイント分子に結合するリガンドを発現することで、T細胞に抑制性のシグナルを送り、T細胞の抗腫瘍免疫応答を回避します。免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞側の受容体またはがん細胞側のリガンドのいずれかに結合し、これらの抑制性のシグナル伝達を遮断することで、T細胞が再びがん細胞を攻撃できるようにします。様々ながん種に対して有効性が示されており、単剤または他の免疫チェックポイント阻害薬や従来の細胞障害性抗がん剤、分子標的薬などと組み合わせて使用されることがあります。
患者さん自身の免疫システムを利用して、がん細胞を認識し、攻撃・排除する治療法の総称です。免疫細胞や免疫に関わる分子を活性化したり、がん細胞に対する特異的な免疫応答を誘導したりする様々な方法が含まれます。例として、患者さん自身の免疫細胞を採取・培養・活性化して体内に戻す細胞療法(CAR-T細胞療法、NK細胞療法など)、がん細胞の目印となる抗原(ペプチドなど)を用いて免疫応答を誘導するワクチン療法(樹状細胞ワクチン療法、ペプチドワクチン療法など)、免疫チェックポイント阻害薬のように免疫のブレーキを外す薬剤を用いる治療法などがあります。免疫療法は、従来の外科療法、化学療法、放射線療法と比較して副作用が少ない場合があり、他のがん治療法との併用も可能です。近年、がん治療における重要な選択肢の一つとして注目されており、研究開発が盛んに行われています。
「Union for International Cancer Control」の略称で、日本語では「国際対がん連合」と訳されます。1933年に設立された、がん対策における世界的な非政府組織(NGO)です。がん研究の推進、がんに関する知識の普及、がん登録や国際的ながん統計の作成、がん対策政策の提言など、世界的ながんの克服を目指して多岐にわたる活動を行っています。特に、がんの進行度分類である「TNM分類」を策定・改訂していることで広く知られています。本部をスイスのジュネーブに置き、170か国以上の1,200を超える団体(がん研究機関、患者団体、政府機関など)が加盟しています。
病気(特にがん)の診断後の経過や治療効果、生存期間などを予測するための判断材料となる様々な要因のことです。がんにおいては、がんの発生部位、組織型、悪性度(グレード)、病期(リンパ節転移や遠隔転移の有無と程度、腫瘍の大きさや広がり)、患者さんの全身状態(年齢、合併症の有無、Performance Statusなど)、治療への反応性などが重要な予後因子となります。これらの因子を総合的に評価することで、個々の患者さんの将来の見通しをある程度予測し、治療方針の決定や情報提供に役立てられます。近年では、遺伝子変異などの分子生物学的因子も予後予測に重要な役割を果たすことがわかってきています。
がん治療に用いられる放射線治療装置の一種で、高エネルギーのX線(光子線)や電子線を体外からがん病巣に照射し、がん細胞のDNAを損傷させて死滅させます。「直線加速器」という名の通り、電磁波を用いて電子を直線的に加速させ、その電子をターゲットに衝突させることで高エネルギーのX線を発生させます。電子線治療では、加速させた電子を直接照射します。リニアックから照射される放射線は、レントゲンやCT検査で使用されるX線よりもはるかに高いエネルギーを持ち、深部にあるがんに対しても効果的な治療が可能です。近年では、強度変調放射線治療(IMRT)や画像誘導放射線治療(IGRT)など、より精密な放射線照射を可能にする機能が搭載されたリニアックが普及しています。
がん細胞が、原発巣から周囲のリンパ管に侵入し、リンパ液の流れに乗って所属リンパ節に運ばれ、そこで増殖して転移巣を形成する経路です。がん細胞は、まず原発巣に最も近い一次リンパ節に転移し、さらに進行すると、より遠隔のリンパ節へと段階的に広がっていくことがあります。リンパ行性転移は、多くのがんで見られる主要な転移経路の一つであり、病期分類(N因子)において重要な要素となります。
がんの外科手術において、原発巣とともに、その周囲やがん細胞が転移している可能性のあるリンパ節を予防的に、または治療的に切除することです。リンパ行性転移は、がんの主要な転移経路の一つであり、リンパ節に転移したがん細胞は、さらに全身へと広がる可能性があります。リンパ節郭清を行うことで、局所制御の向上、正確な病期診断(病理学的リンパ節転移の有無の確認)、そして再発リスクの低減を目指します。切除するリンパ節の範囲は、がんの種類や進行度、転移のリスクなどを考慮して決定されます。しかし、リンパ節郭清はリンパ浮腫などの合併症を引き起こす可能性もあるため、センチネルリンパ節生検など、より侵襲の少ない方法でリンパ節転移の有無を診断し、不要な郭清を避ける試みも進んでいます。
新しい医薬品や医療技術の有効性と安全性を評価し、実用化を目指して、人を対象に行われる研究です。まだ患者さんに使用されたことのない薬剤や、既に使用されている薬剤でも異なる病気や用法・用量での効果を調べる場合などがあります。臨床試験は、厳格な科学的計画に基づいて実施され、参加される患者さんの人権と安全が最優先に考慮されます。厚生労働省の承認を得ることを目的とした臨床試験は、特に「治験」と呼ばれます。臨床試験は、新しい治療法の開発に不可欠なプロセスであり、患者さんにとって新たな治療を受ける機会となる場合もあります。
がんの進行度を示す病期分類の一つで、手術前に、画像検査(CT、MRI、PETなど)、内視鏡検査、生検(組織診、細胞診)などによって得られた情報に基づいて総合的に判断されるものです。これに対し、「病理病期」は、手術によって切除された病変を病理学的に詳しく調べて決定されるものであり、手術で得られたより詳細な情報に基づいており、臨床病期と異なる場合があります。また、手術前に放射線療法や化学療法などの治療が行われた後に切除された検体に基づいて決定される病期は、「治療後病理病期」と呼ばれ、通常の病理病期とは区別されます。臨床病期は、治療方針の決定や予後の予測に用いられます。
がん薬物療法(化学療法、分子標的療法、免疫療法、ホルモン療法など)を行う際の、薬剤の種類、投与量、投与方法、投与スケジュール(投与期間、投与間隔)、投与順序などを詳細に規定した治療計画書のことです。レジメンには、それぞれの薬剤の特性に合わせて、溶解方法、投与速度、投与経路などが具体的に記載され、副作用対策(制吐剤、アレルギー予防薬など)や、副作用発現時の対応、休薬期間なども含まれます。レジメンに基づいて薬物療法を行うことで、医療従事者間の情報共有が円滑になり、過量投与や投与ミスなどの医療過誤を防止し、標準化された質の高い薬物療法を提供することができます。各医療機関や学会、研究グループなどが、エビデンスに基づいてレジメンを作成・改訂しています。