細胞の自然死のこと。生体には個体を健康な状態に保つために異常のある細胞や不要になった細胞を自然死へと導く機能が備わっており、たとえばオタマジャクシがカエルになる際に自然と尻尾がなくなるのは、その代表的な例と言えます。一説によると健康な人の身体にも1日5,000個もの癌細胞が発生すると言われていますが、その癌細胞を自然死へと誘導しているのも人に備わったアポトーシス機能のおかげなのです。
AYA(アヤ)世代とは「Adolescent & Young Adult(思春期・若年成人)」の頭文字を取った造語。15~39歳までの人を指す言葉です。この世代のがんは、小児がんと成人に好発するがんのいずれも発症する可能性があります。AYA世代は進学や就職、結婚、出産といった人生を左右するライフイベントが集中するタイミングです。AYA世代の治療においては、大切な時期にがんという病気に見舞われたことによる心身の揺れ動きをサポートしつつ、一人ひとりの社会背景やニーズに合わせて支援するのが重要になってきます。
癌細胞が正常細胞とどれだけ異なった様相を呈しているかを示す程度のことです。正常な細胞は異型度が低い、つまり皆同じような形をしていて整然と並んでいるのですが、癌細胞は形が歪んでいたり細胞内の核が大きくなっていたりと、異型度が高いわけです。診断の際に、この細胞の異形度を2~5段階に分類する「異型度分類」が用いられることも少なくありません。一般に異型度が高いほど悪性度が高い、つまり癌の進行速度がはやく、予後も悪いとされています。
治療が功を奏して症状が治まった場合、病気の再発を予防するために治療を一定期間継続するのが維持療法です。がんにおける維持療法とは、再発防止や進行予防のための抗がん剤治療を指します。最初の治療で使用した薬剤の中でも効果が大きく副作用が少なかった薬剤を、休薬期間を置かずに可能な限り使用し続けることで、がんの再発や悪化を目指します。
インフォームド・コンセントの意味は「説明を受け、納得した上で同意する」ということです。つまり、医師から病気や症状、検査結果、治療内容などについて十分な説明を受け、患者さんはその内容をよく理解し、納得した上で同意して治療を受けることを指します。
各病院において、院内で治療したすべての癌患者の情報を集めて1つのデータとして登録することです。これにはその患者が受けた診断や治療、また退院後の生活や亡くなるまでの記録が含まれており、これを基にその病院のがん診療を客観的に評価することができます。またこの登録を複数の病院が同じ方法で行うことにより、情報を比較することができ、病院ごとの特徴や改善点も浮き彫りになるのです。
細胞同士の情報伝達物質である微量生理活性タンパク質・サイトカインのうち、免疫機能のためにはたらくタンパク質。リンパ球の1つであるヘルパーT細胞は、異物を見つけるとこのインターロイキン2を送ってキラーT細胞を増やし、異物を総攻撃させます。このインターロイキン2を利用した抗がん剤も開発されており、主に腎臓がんや血管肉腫に使用されます。
採血などの方法で採取した患者の遺伝子を調べ、遺伝子による癌のリスクを予測したり癌の有無を診断したりする方法です。もともと癌とは細胞の遺伝子異常が原因で発生するため、この検査により癌に特徴的な遺伝子が見つかれば、早期発見となり完治の見込みも高くなります。
肝臓がんの病巣にエタノールを注入し、がん細胞を死滅させる治療法です。経皮的エタノール注入療法(PEIT)は超音波でがんの位置を正確に把握し、腹部に専用の長い針を刺して純度100%のエタノールを病巣に直接注入します。この治療はがん細胞そのものを死滅させる作用と、がん細胞に栄養を供給している血管を止める作用の両方が期待できます。患者さんの身体的な負担も少なく安全性も高いため、比較的早期の肝臓がんに対する代表的な治療法として広く行なわれています。
癌細胞が最初に発生した器官から増え広がって近くの血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパの流れに乗って別の器官まで移動すると、その移動先でさらに増殖していきます。この「癌細胞の移動」が遠隔転移。通常、血液の流れが豊富な肝臓や骨、肺、またリンパの流れが集まるリンパ節に遠隔転移が多く見られます。
医師、看護師、薬剤師、栄養管理士、歯科医師など多職種の医療従事者で構成される、患者の栄養管理チームのこと。体重や食事量のコントロールは癌患者のQOLに欠かせない要因であるため、栄養管理の専門的知識を持った医療関係者が連携して患者の栄養状態を把握し、適切な状態になるようサポートします。具体的には、摂取しやすい調理法を考案したり、経口摂取から点滴に変えたりするなど、栄養の摂り方を調整することがあります。
「Human T-cell Leukemia Virus Type 1」の略で、日本語にすると「ヒトT細胞白血病ウイルス-Ⅰ型」。血液中の白血球を構成する成分の1つ、リンパ球・T細胞がこのウィルスに感染すると悪性リンパ腫やリンパ性白血病を引き起こします。主な感染経路は母子感染と性行為感染で、一度感染すると一生涯ウィルスを持ち続けることになります。ただし感染しても症状が出ない場合が多く、日本でも感染があるとのことですが、実際にリンパ性白血病や悪性リンパ腫を発症する人は数少ないと言われています。
日本語では「電気穿孔法」。電気パルスを送って細胞の膜組織に一時的に穴を開け、がん細胞に直接抗がん剤や遺伝子を注入、吸収させる投薬方法です。これにより少量の抗がん剤で高い癌細胞殺傷効果が望めるため、副作用の影響を最小限に抑えることができます。
日本語では「腫瘍学」と言い、その名の通り腫瘍について研究する学問のことを言います。とくに日本においては癌や肉腫といった悪性腫瘍全般についての研究であり、その検査や診断、治療、緩和ケアや精神的なケアまでを包含します。癌細胞についてはまだまだ不明な点が多く種類も個人差もあるため、オンコロジーが取り組むべき課題は非常に多いと言えます。
本来細菌やウイルス感染による疾患に対し抗生物質や抗ウィルス薬を使って治療することを意味していましたが、現在では癌に対する抗がん剤を用いた治療法のことを指す場合がほとんどです。抗がん剤には細胞分裂を抑制する作用があるため、癌の増殖を防ぐ効果が期待できるのですが、同時に正常な細胞までも壊してしまうことから、副作用も大きいことで知られています。現在、抗がん剤には飲み薬と点滴の2種類があり、投与することで血液に乗って体中を巡って癌細胞を攻撃します。そのため、血液の癌や体の至る所に転移していると考えられる癌に対して選択される治療法です。
がん悪液質は癌患者の多くに見られる病態であり、通常の栄養摂取を行っているにもかかわらず、筋肉量が減少して体重が落ちたり運動機能が低下したりする病態です。例えば胃癌治療で胃を摘出した場合、食事からの消化吸収能力が弱まり、体重が減少することがあります。一方、がん悪液質では腫瘍細胞などから分泌される物質によって、筋肉の破壊や代謝異常が引き起こされており、栄養療法を行っても体重減少を止めることができません。
患者さんの肝臓をすべて摘出し、代わりに健康な肝臓の一部を移植する治療法です。正確には生体部分肝移植といい、脳死患者さんからの臓器提供ではなく、健康な人から臓器提供を受けるということがこの移植手術のもっとも特異な部分です。がん治療の肝移植においては、65歳以下で肝障害度分類C、3cm以下の腫瘍が3個以下もしくは5cm以下の腫瘍が1個の患者さんに限られます。いわば肝臓の入れ替えなので、肝臓がんと肝硬変の根治が期待できますが、拒絶反応や感染症などの合併症のリスクもあり、移植後は免疫抑制剤を生涯服用しなければなりません。
肝細胞がんに流入している動脈に抗がん剤を直接注入してから栓をすることで、がん細胞を死滅させる局所的化学療法のひとつです。治療は足の付け根の血管からカテーテルを挿入して肝動脈まで到達させ、薬剤を注入した後に多孔性ゼラチン粒などで塞ぎます。この治療法は抗がん剤を直接局所的に注入するため、内服や点滴よりも副作用が抑えられるとされています。手術が不可能な肝細胞がんに対して行なわれますが根治は難しく、数カ月ごとに繰り返し実施されるケースがほとんどです。
がんセンターとは、がんの治療と研究を専門的に実施している医療施設の名称です。がんセンターは地域におけるがん診療の中核施設として、高度な医療の提供、近隣の医療施設との連携、地域住民への情報発信、そしてがん専門の医師の育成などの重要な役割を担っています。
がん診療連携拠点病院は、がん対策基本法に基づいて厚生労働省の指定を受けた医療施設です。「都道府県がん診療連携拠点病院」と「地域がん診療連携拠点病院」があり、がん診療の地域格差を解消し、全国どこでも一定水準以上の高度ながん治療を提供することを目的とします。
主に患者さん本人のがん組織を用いて多数の遺伝子を同時に調べ、遺伝子変異を明らかにすることで患者さん一人ひとりの体質や症状に合わせた治療を行なうのががんゲノム医療です。一部のがん治療では、遺伝子の変化に対応した薬剤の選択がすでに行なわれています。
人間の体で、日々入れ替わって新しくなっていく細胞。無数の細胞分裂においては、わずかながら遺伝子の突然変異が起こります。中でも特定の遺伝子に突然変異が起こると、その細胞は死ななくなって際限なく分裂を繰り返して増殖。この死なない細胞が「がん細胞」です。突然変異の原因は、さまざまな要因によるDNAの傷だと考えられています。
がん細胞は身体の栄養を奪い取って、どんどん増え続ける細胞です。かたまりとなったがん細胞の組織が、病気としての「がん」になります。
がん相談支援センターは全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている、がんに関する相談の窓口です。患者さん本人や家族のほか、地域住民は誰でも無料で利用することができます。がん治療や療養生活全般に関すること、地域の医療機関などについて相談に乗ってくれます。
体内で癌の元となる異常細胞が発生した際に、その細胞の増殖を抑制したりDNAに付いた傷を改善したりするタンパク質をコードとする遺伝子のこと。これまでに発見されたものとしては、「p53遺伝子」や「RB遺伝子」が有名です。
すべての癌細胞が消失し、4週間以上新たな癌細胞が出現していない状態のことを完全完解と言います。とくに白血病の治療の際によく使われる言葉で、この場合、骨髄中の白血病(癌)細胞が全体の5%以下に減り、癌細胞が悪影響を及ぼせない状態になることを指します。とはいえ、癌細胞が根絶されたわけではないため「完全寛解」と「完治」とは異なる意味を持ちます。
癌そのものではなく、癌にともなう身体的・精神的な苦痛を和らげる治療のことです。この中には物理的な体の痛みだけでなく、落ち込みや死への恐怖、人生に対する問いなどの症状に対するケアも含まれており、患者のQOLを向上させ前向きに、自分らしく生きられるよう患者とその家族をサポートします。緩和ケアには多種多様な側面があるため、通常医師、看護師、栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカーなど多職種の医療従事者がチームとなって行います。
発生頻度が低いため症例が少なく、他のがんと比較して診断や治療法などの課題が多く残されている悪性腫瘍の一群のこと。代表的な希少がんに骨軟部肉腫や悪性脳腫瘍などが挙げられます。患者数が少ないため診断や治療の経験が豊富な医師や病院を探すことが難しく、診断に時間を要することも多くあります。こうした諸々の問題に対して、国立がん研究センターでは希少がんセンターを開設し、情報の集積や治療法の研究開発が進められています。
あえて日本語に訳せば「生活あるいは生命の質」ということになりますが、適訳がないためそのままQuality of Lifeの略である「QOL」という言葉が使われることがほとんどです。どのような生活・人生を「質が高い」と呼ぶのかはそれぞれの考え方によって異なりますが、身体的・精神的・社会的に良好な状態を保つことで充実した生活を送っている状態を「QOLが高い」と表現できるでしょう。癌との闘病生活は患者の身体的・精神的・社会的状態を著しく損なう可能性があるため、がん治療にはこのQOLに対するケアも求められます。
別名「サルベージ療法」。初回の治療では効果が得られなかった難治性の癌や、癌が再発した場合に行われる治療法のことを言います。主に造血器腫瘍(白血病)の治療において用いられる言葉で、多くの場合これまでとは異なる複数の薬を組み合わせた化学療法が選択されるため、「救援化学療法」とも呼ばれます。また分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬、あるいは造血幹細胞移植が選択されることもあります。
癌細胞とその周辺組織にピンポイントで働きかける治療法のことで、外科療法や放射線療法、光線力学的療法がそれにあたります。癌が原発巣に留まっていたり転移していたとしても限られた場所にのみ見られる場合に有効な方法です。
コンピューター制御により放射線の照射範囲を常に変化させ、いびつな形態の癌細胞に対しても集中した放射線投与を可能にする放射線治療です。これにより正常細胞にまで放射線が照射されてしまうことを防ぎ、副作用を防止しながら根治性を高めることができます。
文字通りですが、肺がんの化学療法を受ける際には、点滴で抗がん剤を投与する前後数日間のみ入院し、その後は通院で治療を行なう病院が増えています。患者さんにとっては住み慣れた自宅でストレスなく家族と過ごすことができ、医療費も抑えられます。肺がんの化学療法は何クールか繰り返しますので、それに合わせて繰り返し入院が必要になります。
前立腺がんの悪性度を診断する際の基準となる分類法のこと。癌がどの程度広がっているかを示すのが「ステージ」であるのに対し、グリソンスコアは個々の癌細胞がどのような形態であるかを調べて評価したものです。正常な細胞であれば「分化」のプロセスを経て必要とされる機能や形態を持つ細胞へと成長するのですが、癌細胞は分化が不十分、つまり未熟な細胞で、それ故に本来果たすべき役割を果たすことができません。グリソンスコアはこの癌細胞の分化度を測るものであり、点数が高いものほど悪性度が高いと判断されます。
がん治療は、基本的にガイドラインで推奨されているグレードを基準に実践されています。グレードはA~Dまで定められており、グレードDはエビデンスが不十分かつ不利益を及ぼすかもしれないため治療法として推奨されていない治療法を指します。そのためがん治療においてはほとんどの場合、治療法として提案されません。
ここではがん治療ガイドラインの詳細や、グレードD治療についての考え方、がん治療の進め方などを解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
血液細胞のがんのこと。血液細胞が腫瘍化して増殖する造血器腫瘍を指します。血液細胞の種類によって、もしくは細胞分化のどの段階でがんになったかによって分類されます。血液がんでとくに多いのは白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫で、これらは三大血液がんとも呼ばれます。
がん病巣は、栄養や酸素を取り入れて成長するために新しい血管を形成します。これを血管新生といいます。がんが成長すると周辺組織への浸潤や転移の可能性が高くなりますが、血管新生阻害剤はがん病巣の血管形成を阻害し、がんの増殖にブレーキをかけます。がん細胞を直接死滅させる薬剤ではないので抗がん剤ほどの腫瘍縮小効果は望めませんが、がんの成長を止めて延命効果が期待できると考えられています。
最初に癌が発生した部位にある病巣のこと。たとえば原発巣が胃にあれば胃がん、大腸にあれば大腸がんという風に、原発巣が癌の診断基準となり、治療計画が立てられていくことになります。たとえ他の臓器に転移したとしても依然その癌細胞は原発巣と同じ性質を持っているため、原発部位を特定することは非常に大切です。しかし、転移した癌は見つかったもののその元となっている原発部位が分からないこともあり、このような癌を「原発不明癌」と呼びます。
レーザーを病巣に照射して活性酸素を発生させ、活性酸素の力で癌細胞を破壊する治療法です。まず光に感受性を持つ光増感剤を血管に注入します。この光増感剤は正常な細胞からはすぐに排出され、癌細胞にだけ長時間留まるという性質があるため、癌細胞にのみ留まっている頃合いを見計らってレーザーを照射します。光は光増感剤内の色素と反応してがん組織内で活性酸素を発生させ、癌細胞を攻撃すると同時にがん組織周辺の血管も傷つけることで栄養素が届かないようにします。こうして正常な細胞を傷つけることなく癌細胞のみを壊死させられるのです。
抗がん剤の副作用の1つ。抗がん剤は癌細胞の増殖を抑制する作用がありますが、これが同じく増殖の盛んな骨髄にも影響を及ぼすと、血液細胞を作る機能が低下してさまざまな症状を引き起こします。たとえば白血球が少なくなると免疫力が落ちて感染症にかかりやすくなりますし、赤血球が少なくなると貧血に、また血小板が少なくなると出血しやすくなります。
骨に癌が転移してるかどうかを調べる検査方法。全身の骨に集まる性質を持った放射線同位元素(RI)を使用した薬を投与すると、骨に吸収されたRIは弱い放射線を放ちます。その放射線を用いて骨の画像を撮影することができ、もしRIが異常に集まっている部分があるならそこに癌が転移していると判断できるわけです。
病気や事故あるいはその治療によって失われた器官や臓器を作り直す手術のこと。たとえば胃がんにより胃を切除した後残った胃と十二指腸とをつなぎ合わせる手術や、乳がんにより乳房を切除した後患者本人の脂肪や人工物を用いて乳房を整える手術がそれにあたります。前者は生きて行くために必要な機能の維持のために行われる再建手術、後者は外見的に損なわれてしまった部分を補うための再建手術ということができます。
細胞が生産する微量生理活性タンパク質の総称。このたんぱく質が細胞表面の受容体に結合し、その細胞が分子反応を起こすよう誘導します。免疫反応や細胞の分化、増殖などもすべてサイトカインがその指令を出すためで、細胞同士の情報伝達物質とも言えるでしょう。有名なのは「インターフェロン」というサイトカインで、白血球から作り出されるこのサイトカインにはウイルスに感染した際にそれを排除するようリンパ球内でNK細胞やT細胞を増殖させる働きを持ちます。この働きから、骨髄性白血病や脳腫瘍、腎臓がんなどの抗がん剤の1つにも利用されています。
ロボットアームの先端に取り付けられた放射線照射装置が身体の周辺を自在に移動し、がん病巣に放射線をピンポイントで照射する定位放射線治療装置をサイバーナイフといいます。身体にメスを入れることなくがん病巣に多方面からアプローチすることが可能で、正常な組織へのダメージを極力軽減できるため、副作用も少なくなっています。とくに脳腫瘍を含めた頭頚部がん、肺がん、肝臓がんの放射線治療でその威力を発揮します。
細胞の表面には「抗原」と呼ばれるその細胞の性質や起源を示すさまざまな目印が存在しています。この抗原を解析することで異常細胞(つまり癌)の有無や成熟度を評価するのが、細胞表面マーカー検査。フローサイトメーターという機器を使い、蛍光色素を標識した抗体の発光強度を測定することで検査します。これにより、顕微鏡では判断の付かない癌細胞のタイプを見分けたり、治療後に癌細胞が残っていないかを調べたりできます。
癌のような重篤な疾患を抱える患者のQOL改善のために行われる治療のこと。「緩和ケア」とほぼ同義語なのですが、一般的に緩和ケアが精神的なケアを含むニュアンスが強いのに対し、支持療法は抗がん剤の副作用や痛みを緩和するといった身体的なケアに用いられることが多いのが特徴です。具体的には、抗がん剤の副作用である貧血に対し輸血療法を用いたり、嘔吐に対して制吐剤を処方したりします。
死因にかかわらず、すべての死亡を計算に入れた生存率を実測生存率といいます。つまり、がん以外の理由による死亡も含まれます。性別や年齢など、がん以外の死因に強く影響する可能性がある要因が異なる集団で生存率を比較する場合は、その影響を補正する必要があります。あくまでもがんによる死亡を集計するために、がん以外の要因を考慮して計算する方法が相対生存率です。
日本のがん治療では手術、抗がん剤治療、放射線治療が標準治療とされ、それぞれが以前とは比較にならないほどの進歩を遂げてきました。とはいえ、がんの種類や進行の度合いによっては、まだ十分な治療効果を得られないことも多くあるのが現実です。
集学的治療とは、これらの標準治療を組み合わせて高い治療効果を目指すものです。それぞれの治療の専門家が連携し、患者さん一人ひとりに合った治療法を選択してさまざまながんに向き合っているのです。
同じ患者の異なる臓器に発生する癌のこと。1つの臓器に発生した癌が転移する「転移癌」や同じ臓器に幾つもの癌が発生する「多発性肝細胞癌」は「同じ癌」と見なされますが、重複癌は原発部位を異にしているため、癌罹患数では別々に集計されることになります。
腫瘍内科は内科の専門領域のひとつで、診療範囲はがんの診断や治療のほか、予防から終末期医療まで幅広く対応します。治療は主に化学療法を専門としますが、他の診療科のように臓器別ではなく、ひとつの領域としての抗がん剤治療の専門診療科ともいえます。
癌細胞が作り出す特殊な物質の濃度を、血液や体液などから割り出して指標にしたものです。腫瘍マーカーを調べることで癌の発生や種類、進行度などを判断することができます。
樹状細胞とは白血球中に含まれる単球系の免疫細胞の1つで、弱った異常細胞や病原体を取り込んでその特徴を覚え、T細胞に伝えてその特徴を持つ細胞を攻撃させる司令塔としての役割を果たします。しかしもともと正常な細胞から発生している癌細胞は樹状細胞でも見分けるのが難しく、そうして癌細胞が増えすぎると樹状細胞の仕事が追いつかなくなり、癌が進行します。「樹状細胞ワクチン療法」とは樹状細胞の働きを活性化させる治療で、患者の血液から樹状細胞の元となる単球細胞を取り出し、樹状細胞へ育てながら癌の特徴を目印として覚えさせます。こうして癌を攻撃する司令塔の役割を与えてから体内に戻すことで、T細胞に癌細胞を直接攻撃させることができるという仕組みです。
手術後に抗がん剤による化学療法を行なうこと。がんを根治するには手術でがん細胞を完全に取り除くことが第一ですが、肉眼では見えないような微小ながん細胞が残っている可能性があり、それは再発の原因となります。手術後なるべく早く抗がん剤治療を開始し、十分な効果を得るために一定期間の治療継続が望ましいとされます。
体内の臓器は、体の表面を覆う表皮のような「皮」につつまれており、その「皮」部分を「上皮」と呼びます。上皮内癌はその名の通り臓器の上皮内に留まっている癌のことで、上皮細胞の下、基底膜を破って臓器の深いところまで浸潤していない状態です。
癌の痛みを和らげるため、神経やその周辺に局所麻酔を注射する方法です。痛みを伝える知覚神経をブロックすると痛みを感じなくなりますし、運動神経をブロックすると筋肉の緊張が、また交感神経をブロックすると血管が広がり、血流が良くなることで痛みが緩和されます。
ある一定期間を経過した集団について、その時点で生存している割合を生存率といいます。がん患者さんにおける生存率は、治療の効果を判定する上でもっとも重要かつ客観的な指標とされています。がんの部位別に生存率や治療成績を比較するために、5年生存率が多く用いられます。ただし、どのようながん患者さんを対象にしているかで生存率は大きく変動する可能性があります。
患者さんが治療に際してより良い選択をするために、主治医以外の医師に意見を求めることをセカンドオピニオンといいます。主治医の変更を前提としたものではなく、他の医師だったらどのように考えるのか、その意見を主治医のもとに持ち帰って治療を続けるのが本来のあり方です。
国内の医歯学系学会が、高度な知識や技術、経験を有するとして医師や歯科医師に付与する資格の種類です。医学の進歩と高度化、そして専門化にともない、その診療科や分野に特化した医師や歯科医師が学会認定専門医の資格を有するようになってきています。
全身に癌が転移してしまっている場合に選択される治療法で、抗がん剤治療やホルモン治療、免疫療法などがそれにあたります。血液を介して全身に薬を巡らせ、各所に散っている癌細胞に作用することを目的としていますが、正常な細胞にまで影響を与えてしまう点(副作用)が課題となっています。
原発巣の癌が増殖していく過程で、最初に到達するリンパ節のこと。その原発部位に最も近いリンパ節とも言えます。センチネルリンパ節に転移がなければ他のリンパ節にも転移していないと考えられるため、そこに転移がないかどうかを調べるのが、「センチネルリンパ節生検」です。
「造血幹細胞」とは骨髄の中にある血液細胞の元となる細胞のことで、この造血幹細胞が分化して赤血球や白血球、血小板へと成長していきます。造血幹細胞移植とは、化学療法や放射線治療などを行った後で、患者の造血力や免疫力を回復させる目的で行われる治療で、あらかじめ採取しておいた患者本人の造血幹細胞を移植する方法と、ドナーから提供された造血幹細胞を移植する方法とがあります。
生存率を計算する場合、性別や年齢、地域など同じ特性を持つ集団の生存率の期待値(期待生存率)で実測生存率を割り、がん以外の要因の影響を補正した生存率を相対生存率といいます。相対生存率は、がん以外の死因を補正する方法として広く用いられており、正確な死因の情報がない場合にも使われます。ちなみに、同じ特性を持つ集団の期待生存率は、国立がん研究センターが公表している「コホート生存率表」に示されています。
手術や放射線治療、抗がん剤治療といった標準的ながん治療の補完や、その代わりとして行なう医療を代替療法といいます。代表的なものに食事療法やサプリメント、健康食品、鍼灸やマッサージなどが挙げられます。しかし、がんの治療としての有効性は立証されていません。とはいえ、症状の辛さを和らげたり心の支えになったりする面では、代替療法も意味があるといえるでしょう。あくまでも標準治療の補助的なものだと考えたほうがよさそうです。代替療法を選択することで標準治療を受ける機会を逸することは、絶対に避けなければなりません。
同じ患者の同じ臓器に独立した癌が複数発生することです。独立して発生しているものの同じ臓器であるため、1つの癌としてカウントされます。
従来のがん治療は1人の医師を中心に行なわれることが多くありましたが、近年では個々の患者さんの状態に応じて、さまざまな医療専門職が連携して治療やケアを行なうチーム医療が推進されています。医師であれば外科医や内科医、放射線科医、抗がん剤治療の専門家である腫瘍内科医、緩和ケア医などが挙げられ、それぞれの専門的な知見に基づいて診断や治療方針の決定がなされます。そのほか、専門分野を持つ看護師や薬剤師、管理栄養士、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカーなどが治療面だけではなく精神的な支援も行ないます。
国際対がん連盟によって定められた、癌の病期分類法。それぞれT(tumor)=癌の大きさ・進展度、N(nodes)=所属リンパ節への転移の有無や広がりの程度、M(metastasis)=遠隔転移の有無を表します。これらを指標として病期(ステージ)をⅠ~Ⅳまでに分類します。
抗がん剤の副作用で、手や足の皮膚の細胞がダメージを受けて起こる症状のこと。代表的なものに手足や指先、足の裏のしびれやヒリヒリ感などの知覚過敏症状があります。また、発赤や腫れなどもよくみられますが、重症化すると皮膚潰瘍や水ぶくれ、強い痛みが現れ、手で物をつかむことができない、歩くのが困難など日常生活に支障をきたすほど症状が進行するケースもあります。
主に精巣から作られる男性ホルモン。このうち男性円形脱毛症の原因にもなる「ジヒドロテストステロン」は前立腺にあるアンドロゲン受容体と結合し、癌細胞の発生や増殖を促進することが分かっています。このため、前立腺がんの治療においてはジヒドロテストステロンの分泌を減らしたりその働きを抑制する薬を用いたホルモン療法が選択されます。一方で、他のテストステロンが減少すると抵抗力が落ち悪性度の高い前立腺がんの原因になるとの報告もあります。
がん細胞が最初に発生した部位から血管やリンパ管に入り、血液やリンパの流れに乗って離れた部位にたどり着いて増殖すること。肺や肝臓、脳のように血流が豊富な部位や、リンパが集まるリンパ節への転移が多くみられます。がんのタイプや治療の経過などによって、ある程度は転移の予測を立てられることもあります。転移したがんは進行を抑えたり症状を和らげたりすることが治療の目標になることも少なくありませんが、病院・クリニックによっては転移したがんもあきらめず治療してくれることもあります。
腫瘍に専用のニードル(針)を刺し、そこから高圧ガスを噴出してマイナス185度の超低温にします。凍らされた癌細胞は破壊され、次いでヘリウムガスで加熱することにより壊死します。局所麻酔での施術が可能であるため、高齢者や合併症を患っている患者など外科手術が困難とされる場合に有効な治療法と言えます。
がんを小さくするための初回治療として、もしくは抗がん剤などの反応を評価するために計画される治療のこと。導入療法が終わると、通常は残ったがん細胞をすべて取り除くことを目指した根治療法が選択されます。具体的には、手術や放射線治療に向けて抗がん剤による薬物療法を行なうことが多いようです。その第一の目的は、強力な薬物療法を先行させてがんを縮小させ、その後に行なう手術や放射線治療の効果を高めること。導入療法の効果が顕著であれば、手術しなくても放射線治療だけで根治を目指せるかもしれません。また、すでに体内に散らばっている可能性がある微小ながん細胞を根絶することも期待できるでしょう。
通常の乳がんは女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが発生と増殖因子であり、また細胞増殖と関係のあるタンパク質であるHER2もがん細胞の増殖に関係しているのですが、これら3つ(エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体・HER2)が癌細胞に発現していないタイプの乳がんを「トリプルネガティブ乳がん」と呼びます。女性ホルモンが関係する場合ならホルモン療法が、HER2が関係するなら分子標的薬が有効となるのですが、いずれも持たない新しいタイプの乳がんであるため、抗がん剤治療を採るよりほかありません。
一般に「ホルモン療法」とも呼ばれる治療法。乳がんや前立腺がんなど、癌細胞の増殖に特定のホルモンが関わっている場合、そのホルモンの作用を抑える薬を投与したりホルモンを分泌する器官を取り除いたりすることで癌の進行を抑えることができます。
英語で「Sarcoma(サルコーマ)」とも呼ばれる、骨や脂肪、筋肉、神経などの非上皮組織から発生する悪性腫瘍の総称です。もう1つの悪性腫瘍「癌」は各臓器を覆っている上皮組織から発生するするため、この発生部分の違いによって「肉腫」と「癌」とに呼び分けられているわけです。肉腫は非常に希少な悪性腫瘍で、老若男女問わず全身のさまざまな部位に発生する可能性があるため、症状や治療法も多岐にわたります。肉腫のうち約25%は骨、残りの75%は筋肉や脂肪などの軟部組織に発生するとも言われています。
がん治療目的で抗がん剤や放射線療法を受けたことが原因で、治療後数年~数十年経って発症する元の癌とは別の種類の癌。代表的なのは白血病で、アルキル化剤やトポイソメラーゼ阻害が関係する薬剤による治療を受けた後、1~7年くらい経って急性白血病を発症することがあります。その他、放射線の胸部照射による乳がん、頭蓋照射による髄膜種や悪性神経膠腫などの二次性発癌もあります。
乳がんの手術には乳房切除術と乳房温存手術の2つの方法がありますが、乳房をすべて摘出せずにがん組織を周囲の乳腺と同時に取り除くのが乳房温存手術です。乳房を残し、変形も軽度に抑えることができます。がんのサイズが大きい場合でも、抗がん剤で小さくできると判断されれば手術前に治療を行ない、がんを小さくしてから乳房温存手術を行なう場合もあります。
現在抱えている問題を具体的に整理し、問題に対する考え方や行動を変えていくことでストレスを軽減していく心理療法のひとつが認知行動療法です。精神科領域の治療だと受け止める向きもありますが、がん診療においても重要な役割を果たしています。
がんと診断された患者さん、再発を告げられた患者さんなどが恐怖や不安に陥った場合、そこから回復して現実としっかり向き合うため、認知行動療法による思考バランスの整理は大きな意味を持ちます。
ナチュラルキラー細胞とはその名の通り生まれながらの殺し屋、つまり癌細胞を含めた異常細胞や病原体に感染した細胞を見つけ次第、速やかに攻撃し殺してしまう細胞です。この攻撃力の高い細胞を患者の血液から採取し、そのパワーを強めてから点滴注射によって患者の体内に戻すことで癌細胞に対する免疫力を高めるのが、「NK細胞療法」です。同じく免疫力を高める治療法として「樹状細胞ワクチン療法」がありますが、樹状細胞の働きとはまず癌細胞の特徴を覚えてそれをキラー細胞の1つであるT細胞に伝え、攻撃するよう指令するというもの。ところが癌細胞の中には自身の特徴を隠してしまうものがあり、T細胞の攻撃をすり抜けて増殖してしまいます。しかしNK細胞は樹状細胞の指令を待たずして自ら異常細胞を攻撃する性質があるため、T細胞の攻撃をすり抜けた癌細胞に対しても攻撃、殺傷能力を発揮します。従って、樹状細胞ワクチン療法を補完する治療法として併用されることの多い治療法です。
体内で小さな癌細胞が種をまいたようにパラパラと広がっている状態。たとえば胃がんや大腸がんが臓器の壁を突き破ってお腹の中にこぼれると、腹膜内にパラパラと散らばった種のように転移巣が形成されます。これを「腹膜播種」と言いますが、このような状態になると最初のうちは転移巣が小さく散らばっているためにCT検査や超音波検査では見つけることができません。また散らばってしまっているために切除などの局所療法も難しくなります。
HER2とは細胞の増殖に関係するタンパク質のことで、正常な細胞にもわずかに存在し細胞の増殖を調節する役割を果たしていると考えられますが、これが過剰に活発化すると細胞増殖がコントロール不能となり癌細胞となります。HER2型乳がんは、このHER2を過剰に持っているタイプの乳がんで、女性ホルモンによる増殖という通常の乳がんが持つ特徴を持っていません。かつてHER2型乳がんは難治性の乳がんとされていましたが、現在ではHER2を標的とした分子標的薬の登場により治療成績が改善されつつあります。
がんの進行の程度を示す数値で、ステージとも呼ばれています。病期はがんの種類によっても異なりますが、多くは0期からⅣ期に分類されます。国際対がん連合(UICC)によって制定されたTNM分類という方法がもっとも広く用いられており、腫瘍の大きさや広がりを示すT因子、リンパ節転移の程度を示すN因子、遠隔転移の有無を示すM因子を組み合わせて病期を決定します。この病期の分類は患者さんの予後を想定し、治療方針を決定していくうえで非常に重要な指標となります。
抗がん剤の一種ですが、従来の抗がん剤が増殖スピードの速い正常細胞と癌細胞の両方に作用し殺傷するのに対し、分子標的薬は癌の増殖に関係する特定の分子のみを標的としてその増殖を抑制する点に違いがあります。つまり副作用の少ない薬であるため、現在研究開発されている抗がん剤の多くはこちらの分子標的薬です。
細胞の成熟度を表す指標。人の細胞はもともと1個の受精卵から始まり、細胞分裂を繰り返しながらそれぞれ必要とする機能や形態を持った細胞へと成長しその役割を果たすようになります。この成長過程が「分化」であり、正常な細胞は分化度が高い=成熟度が高いのですが、癌細胞は正常に分化しないあるいは逆行していくことさえあるため、分化度が低い=未熟な細胞が多く見られます。このため、分化度を調べることで癌の悪性度を判断することができます。
公益財団法人日本医療機能評価機構による第三者評価を受け、一定の水準を満たした病院を病院機能評価認定病院といいます。認定病院は、地域医療に貢献し、信頼性が高く納得の得られる医療サービスを提供するために日常的に努力している病院だとされます。
標準治療とは、ある病気に対して効果や安全性が確立されており、広く普及している治療法のことです。その効果や安全性は科学的な臨床試験によって多数の症例で証明され、医師からも広く支持されています。がんの場合は手術、化学療法、放射線療法が標準治療とされます。
抗がん剤を1種類だけではなく、複数の種類を同時または順番に用いる治療のこと。長所の異なる複数の抗がん剤を組み合わせることで、治療効果を高められます。1種類の抗がん剤を大量に投与すると副作用も大きくなる可能性が高く、抗がん剤に対する耐性が現れる場合もありますが、併用療法によって副作用を分散させることで強い副作用を伴う抗がん剤でも使用できるようになりました。複数の抗がん剤を使用するので、費用がかさむのはデメリットといえるかもしれません。また、投与量や投与回数も慎重に決定する必要があります。
ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(Positron Emission Tomography)の略で、日本語では「陽電子放射断層撮影」というがんの画像検査の一種です。がん細胞は増殖のために大量のエネルギーを必要としますが、その源は血液中のブドウ糖です。血液中のブドウ糖はがん細胞に集中するという性質を利用し、ブドウ糖に放射性物質を結合させた薬剤を投与してがん細胞に目印をつけ、それを撮影するのがPET検査のしくみです。短時間で全身のがんを調べることができます。
扁平上皮とは体の表面や食道など空洞になっている臓器の内側の粘膜組織のことで、そこに発生するのが扁平上皮癌です。その中でも皮膚に発生する癌は「有棘細胞がん」と呼ばれます。食道がんの多くは扁平上皮癌、また子宮頸がんや肺がんなどもそのほとんどが扁平上皮癌といわれています。
定義としては終末期の患者さんの症状緩和を目指し、人生の終わりにおける精神的な要求に応えることに着目した医療のことを指しますが、現在では末期のがん患者さんを主体とした心身の苦痛緩和に焦点を当てた治療とケアを行なう病棟をホスピスと呼んでいます。緩和ケア病棟も同じような意味合いで捉えられていますが、ホスピスのほうが終末期の色合いをより濃く受け取られる場合が多いようです。また、自宅において末期がんの苦痛や不安を和らげるケアを受けることを「在宅ホスピス」と呼ぶケースもあります。
リズムを刻む「メトロノーム」のように、低用量の抗がん剤を頻繁に投与する治療法。最大耐用量を間隔をあけて投与する通常の化学療法と比べて副作用が軽く腫瘍の増殖をコントロールできると考えられています。ただしその分効果もマイルドで癌細胞への殺傷能力は弱いため、補助的な治療法として選択されることがほとんどです。
免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞ががん細胞を攻撃するメカニズムを正常に作動させる薬剤です。免疫細胞の1つであるT細胞の表面には、異物への攻撃をストップさせる命令を受けるためのアンテナがあります。がん細胞はT細胞のアンテナに対して攻撃中止のシグナルを発信し、T細胞の働きを止めることができます。このしくみを免疫チェックポイントといいます。免疫チェックポイント阻害薬はT細胞のアンテナに作用し、がん細胞への攻撃にブレーキがかかるのを防ぐのです。
免疫チェックポイント阻害薬の種類によって、効果があるがんの種類は変わります。また、複数の免疫チェックポイント阻害薬や従来の細胞傷害性抗がん剤を組み合わせて使用する場合もあります。
患者自身が持つ免疫力を高めることで癌細胞を攻撃・排除させる治療法。たとえば樹状細胞ワクチン療法やペプチドワクチン療法などがあり、患者自身の免疫細胞を採取・活性化させてから体内に戻すことで癌細胞を攻撃させます。他の癌治療に比べて副作用が少なく、従来の治療と併用することも可能というメリットがあります。近年、外科療法・化学療法・放射線療法の3大がん治療に次ぐ「第4のがん治療」として注目を集めています。
「Unio Internationalis Contra Cancrum」の略で、日本語では「国際対がん連合」。1933年に設立された民間組織で、世界中に広がる癌克服を目標として癌研究や癌に関する知識の普及、国際的統計の作成などさまざまな活動を行っています。とくにUICCが作成した癌のステージ分類「TNM分類」が有名。スイスのジュネーブに本部を置き、世界155か国で成る800の団体が参加しています。
予後とは病気やその治療についての今後の見通しのことで、予後因子とはその判断材料のことを言います。主に癌に使用される言葉で、因子(判断材料)の中には癌の発生部位、リンパ節や他の臓器への転移の有無、合併症の有無、年齢なども含まれます。
がん細胞を死滅させるため、体外から皮膚を通して高エネルギーのエックス線や電子線を照射する放射線治療装置がリニアックです。日本語では「直線加速器」といい、荷電粒子を一直線上で加速させて発生した放射線をがん細胞に照射します。この放射線は、レントゲンやCTなどの画像検査で用いられる放射線よりもはるかに高いエネルギーです。
原発巣にいた癌細胞が周囲のリンパ管まで浸潤し、リンパの流れに乗って体の各部にあるリンパ節にたどり着いて増殖するタイプのがん転移のことです。まずは原発巣に近いリンパ節に、ついでさらに遠くにあるリンパ節へと広がっていきます。
癌の切除手術の際に、癌周辺のリンパ節も一緒に切除することです。がんの転移経路の1つはリンパ液の流れに乗って移動するという「リンパ行性転移」で、その場合一定のリンパ節経路をたどって移動していくため、がんが転移している可能性のあるリンパ節を予測することができます。そのような転移が予測されるリンパ節も切除することで、癌の再発や転移を防止します。
今までに患者さんに使われたことのない薬、もしくはその病気に対して使われたことのない薬の効果や安全性を調べて実用化するために、実際に患者さんの治療に使用してデータを集めるのが臨床試験です。その中でも厚生労働省の承認を目的にしたものを「治験」といいます。
癌の進行度を表す病気分類の1つで、生検や画像検査により得られた情報を基に治療前に判断するものです。これに対して「病理病期」とは手術により切除した病変を詳しく調べて判断するもので、臨床病期と異なる病期になることもあります。また放射線治療や化学療法を行ってから外科手術により病変を採取・検査した場合には、「治療後病理病期」と呼ばれて通常の病理病期とは区別されます。
薬物療法を行なう際の用量や用法、期間が明記された治療計画のこと。レジメンにはそれぞれの抗がん剤の特徴に合わせて薬を溶かす溶液の状態や投与スピード、投与の順番などが決められ、時系列で記載されています。吐き気などの副作用が起こった場合に使用する薬剤や、治療後の休薬期間などもレジメンに盛り込まれます。レジメンによって薬物療法を行なうことで、過剰投与やヒューマンエラーによる事故を防止する効果もあります。