大腸癌は、進行するとリンパ節、肝臓、肺、腹膜などへ転移することがあります。特に肝臓や肺への転移は大腸癌で比較的みられやすく、転移の有無や転移先、病変の数、切除できるかどうかによって治療方針が大きく変わります。
大腸癌の治療方法には、内視鏡治療、手術、薬物療法、分子標的薬、免疫療法、放射線治療、緩和ケアなどがあります。ただし、すべての治療が誰にでも同じように行われるわけではありません。早期大腸癌では内視鏡治療や手術で根治を目指せる場合がありますが、遠隔転移がある大腸癌では、転移巣を切除できるかどうか、薬物療法で病状をコントロールできるかどうかが重要になります。
このページでは、大腸癌が転移しやすい部位、ステージ別の治療方針、転移した場合に検討される治療方法について整理します。
大腸癌が転移した場合、まず確認されるのは「転移した病変を手術で切除できるかどうか」です。大腸癌は、遠隔転移がある場合でも、原発巣と転移巣を切除できると判断されれば、手術を含めた治療が検討されることがあります。
一方で、転移が広範囲に及んでいる場合や、全身状態から手術が難しい場合は、薬物療法を中心に治療を進めることがあります。薬物療法によってがんの進行を抑えたり、病変が小さくなった場合には、改めて手術が検討されるケースもあります。
また、痛み、出血、腸閉塞、呼吸苦などの症状がある場合には、症状を和らげる目的で手術、放射線治療、薬物療法、緩和ケアを組み合わせることもあります。
大腸癌は、リンパの流れや血液の流れに乗って他の臓器へ広がることがあります。代表的な転移先は、リンパ節、肝臓、肺、腹膜です。進行状況によっては、骨や脳などに転移することもあります。
大腸の周囲にはリンパ管やリンパ節があり、がん細胞がリンパの流れに乗ってリンパ節へ広がることがあります。リンパ節転移の有無は、ステージ分類や治療方針を決めるうえで重要な情報です。
リンパ節転移がある場合でも、手術で原発巣と周囲のリンパ節を切除できることがあります。手術後には、再発リスクを下げる目的で薬物療法が検討される場合があります。
大腸からの血液は門脈を通って肝臓へ流れるため、大腸癌は肝臓へ転移しやすいがんのひとつです。肝転移は初期には自覚症状が出にくく、画像検査や血液検査で見つかることがあります。
肝転移の治療では、転移巣を切除できるかどうかが大きな判断材料になります。切除可能と判断されれば、肝切除が検討されることがあります。切除が難しい場合でも、薬物療法によって病変を小さくできれば、後から手術が検討されることもあります。
また、病変の位置や数、肝臓に残せる機能に応じて、ラジオ波焼灼療法、マイクロ波凝固療法、薬物療法などが検討される場合もあります。
大腸癌は肺へ転移することもあります。肺転移も初期には症状が出にくく、定期検査のCTなどで見つかることがあります。
肺転移でも、病変の数が限られていて切除できると判断される場合には、手術が検討されることがあります。切除が難しい場合や複数の転移がある場合は、薬物療法が中心となることがあります。
また、症状緩和や局所制御を目的として放射線治療が検討される場合もあります。
大腸癌が腸の壁を越えて進行すると、がん細胞が腹腔内に散らばり、腹膜に広がることがあります。これを腹膜播種、または腹膜転移といいます。
腹膜播種は画像検査で見つけにくいこともあり、腹水、腸閉塞、腹部膨満感、しこり、腹痛などをきっかけに疑われる場合があります。
腹膜播種がある場合、薬物療法が中心となることがあります。腸閉塞や強い症状がある場合には、症状を和らげる目的で手術や処置が検討されることもあります。
大腸癌では頻度は高くありませんが、骨や脳へ転移することもあります。骨転移では痛み、骨折、しびれ、麻痺などが起こる場合があります。脳転移では頭痛、吐き気、ふらつき、麻痺、けいれん、言葉が出にくいなどの症状がみられることがあります。
骨転移や脳転移では、症状の緩和や神経症状の予防を目的として、放射線治療、薬物療法、手術、緩和ケアなどが検討されます。急な麻痺、強い頭痛、意識障害、けいれんなどがある場合は、早急に医療機関へ相談することが大切です。
大腸癌の治療は、ステージによって大きく変わります。ステージは、がんの深さ、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無などをもとに分類されます。
ステージ0や一部のステージIでは、がんが比較的浅い範囲にとどまっているため、内視鏡治療が検討されることがあります。内視鏡治療で取り切れると判断される場合には、体への負担を抑えた治療が可能です。
ただし、内視鏡治療後の病理検査で、リンパ節転移のリスクが高いと判断された場合には、追加で手術が検討されることがあります。
ステージIIでは、がんが大腸の壁の深い部分まで進んでいるものの、リンパ節転移や遠隔転移が確認されていない状態です。治療の中心は手術です。
手術後に再発リスクが高いと判断される場合には、術後補助化学療法が検討されることがあります。
ステージIIIは、リンパ節転移がある状態です。治療の中心は手術で、手術後には再発リスクを下げる目的で薬物療法が検討されることが一般的です。
直腸癌の場合は、がんの位置や進行度によって、手術前に放射線治療や薬物療法を組み合わせることがあります。
ステージIVは、肝臓、肺、腹膜など遠くの臓器に転移がある状態です。治療方針は、転移巣を切除できるかどうかによって大きく分かれます。
原発巣と転移巣の両方を切除できる場合には、手術を含めた治療が検討されます。切除が難しい場合は、薬物療法を中心に病気の進行を抑える治療が行われることがあります。
また、腸閉塞、出血、痛みなどの症状がある場合は、症状を和らげるために手術、放射線治療、緩和ケアなどが組み合わされることもあります。
内視鏡治療は、主に早期大腸癌で検討される治療方法です。肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内側から病変を切除します。
代表的な方法には、ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などがあります。開腹手術と比べて体への負担を抑えられる一方で、出血や穿孔などのリスクもあります。
大腸癌の治療では、がんを切除できる場合、手術が重要な選択肢になります。結腸癌では、がんのある腸管と周囲のリンパ節を切除します。直腸癌では、がんの位置によって肛門を残せるかどうか、人工肛門が必要になるかどうかが変わります。
手術方法には、開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術などがあります。どの方法が適しているかは、がんの位置、進行度、患者の体の状態、医療機関の体制によって異なります。
薬物療法は、抗がん薬や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを用いる治療です。手術後の再発リスクを下げる目的で行われる場合もあれば、切除不能な進行・再発大腸癌に対して、病気の進行を抑える目的で行われる場合もあります。
薬物療法の内容は、がんの状態だけでなく、遺伝子検査の結果によっても変わります。大腸癌では、RAS、BRAF、MSI、HER2などの情報を確認し、使用できる薬剤や治療方針を検討することがあります。
細胞障害性抗がん薬は、がん細胞の増殖を抑える薬です。大腸癌では、複数の薬剤を組み合わせて使用することがあります。副作用として、吐き気、下痢、倦怠感、しびれ、口内炎、白血球減少、肝機能や腎機能への影響などが起こることがあります。
分子標的薬は、がん細胞の増殖や血管新生などに関わる特定の分子を標的にする薬です。大腸癌では、RASやBRAFなどの遺伝子変異の有無によって、使える薬剤が変わることがあります。
そのため、転移・再発大腸癌の治療では、遺伝子検査の結果を踏まえて治療方針を考えることが重要です。
免疫療法は、免疫の働きを利用してがん細胞を攻撃する治療です。大腸癌では、すべての患者に免疫療法が適しているわけではありません。MSI-HighやdMMRといった特徴がある場合に、免疫チェックポイント阻害薬が検討されることがあります。
一方で、自由診療として行われる免疫療法の中には、大腸癌に対する有効性や安全性が十分に確認されていないものもあります。治療を検討する場合は、標準治療との関係、費用、期待できる効果、リスクについて主治医に確認することが大切です。
大腸癌に対する放射線治療は、直腸癌の治療や、再発・転移による症状緩和を目的として行われることがあります。特に直腸癌では、手術前後に薬物療法と組み合わせて放射線治療が検討される場合があります。
また、骨転移による痛み、脳転移による症状、局所再発による痛みや出血などに対して、症状を和らげる目的で放射線治療が行われることもあります。
緩和ケアは、治療をあきらめた段階で始めるものではありません。がんによる痛み、吐き気、食欲不振、息苦しさ、不安、気分の落ち込み、生活上の困りごとなどを和らげるために、診断時から必要に応じて取り入れられるケアです。
転移した大腸癌では、治療そのものと並行して、症状を抑え、生活の質を保つことも重要になります。
| 転移先 | 主に検討される治療 | 治療方針の考え方 |
|---|---|---|
| リンパ節 | 手術、薬物療法 | 原発巣と周囲リンパ節を切除し、再発リスクに応じて術後補助化学療法を検討します。 |
| 肝臓 | 肝切除、薬物療法、焼灼療法など | 切除可能かどうかが重要です。切除困難な場合でも、薬物療法後に手術が検討されることがあります。 |
| 肺 | 手術、薬物療法、放射線治療など | 病変の数や位置、全身状態を踏まえて、切除や薬物療法を検討します。 |
| 腹膜 | 薬物療法、症状緩和目的の手術・処置、緩和ケア | 腹水や腸閉塞などの症状に注意しながら、全身治療と症状緩和を組み合わせます。 |
| 骨・脳 | 放射線治療、薬物療法、手術、緩和ケア | 痛みや神経症状を抑えることが重要です。急な麻痺や意識障害がある場合は早急な対応が必要です。 |
転移・再発大腸癌では、薬物療法を選ぶために遺伝子検査が行われることがあります。大腸癌では、RAS、BRAF、MSI、HER2などの遺伝子や分子の状態を確認し、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の適応を検討します。
たとえば、RAS遺伝子に変異があるかどうかによって、抗EGFR抗体薬の使用可否が変わることがあります。また、MSI-HighやdMMRが確認された場合には、免疫チェックポイント阻害薬が治療選択肢になることがあります。
がん遺伝子パネル検査は、標準治療後や今後の治療選択を考える場面で検討されることがあります。検査のタイミングや対象となるかどうかは、主治医やがんゲノム医療に対応する医療機関で確認しましょう。
転移した大腸癌の治療方針は、切除できるかどうか、薬物療法の選択肢があるか、遺伝子検査の結果をどう活かすかによって変わります。そのため、治療方針に迷う場合や、提示された治療以外の選択肢を知りたい場合には、セカンドオピニオンを活用することも選択肢です。
セカンドオピニオンを受ける際は、診療情報提供書、画像データ、血液検査結果、病理検査結果、これまでの治療内容が分かる資料を準備しておくと相談が進めやすくなります。
大腸癌は早期には自覚症状が少ないことがあります。そのため、症状が出てから受診するだけでなく、定期的な検診を受けることが大切です。
大腸癌の発生には、喫煙、飲酒、肥満、食生活、運動不足などが関係するとされています。生活習慣を見直すことで、がんのリスク低減につながる可能性があります。
以下のような症状が続く場合は、大腸癌以外の病気でも起こることがありますが、自己判断せず医療機関へ相談しましょう。
大腸癌が疑われる場合や検診で異常があった場合には、便潜血検査、大腸内視鏡検査、CT検査、注腸造影検査、病理検査などが行われます。大腸内視鏡検査では、病変を直接観察し、必要に応じて組織を採取して詳しく調べることがあります。
大腸癌の治療後は、排便習慣の変化、下痢、便秘、便失禁、人工肛門、薬物療法の副作用など、生活面での課題が生じることがあります。治療後の生活を支えるためには、医師だけでなく、看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなどに相談することも大切です。
大腸や直腸の手術後は、便の回数が増える、便が漏れやすい、便秘になりやすいなどの変化が起こることがあります。時間の経過とともに落ち着くこともありますが、生活に支障がある場合は我慢せず相談しましょう。
直腸癌などで人工肛門が必要になる場合があります。人工肛門に対して不安を感じる人は少なくありませんが、装具の使い方や皮膚ケア、外出時の工夫を知ることで、日常生活を送りやすくなることがあります。
がん治療では、治療費、通院、休職、仕事との両立などの不安が出てくることがあります。高額療養費制度、傷病手当金、介護休業、がん相談支援センターなど、利用できる制度や相談先を早めに確認しておきましょう。
大腸癌の転移が見つかると、「もう治療できないのではないか」と不安になる方も少なくありません。しかし、転移がある場合でも、切除が検討されるケースや、薬物療法で病状をコントロールしながら治療を続けるケースがあります。
大切なのは、転移先、切除の可否、遺伝子検査の結果、体の状態、治療の目的を整理したうえで、自分に合う治療方針を主治医と相談することです。必要に応じて、転移癌の治療に対応する医療機関や、がん診療連携拠点病院、がんゲノム医療に対応する医療機関へ相談することも検討しましょう。