いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

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外陰がんの症状や転移、治療法について

外陰から他の部位に転移したがんや、他の部位から転移した外陰がんについて、特徴や治療方法をまとめました。

外陰がんの症状

外陰がんでは、外陰部にかゆみや痛みが現れたり、押さえると痛みを感じることがあります。また、外陰部に小豆ほどの大きさのしこりができることもあります。

性交時に痛みを感じたり、外陰部から不正出血や異常なおりものが見られることもあります。さらに、外陰部の皮膚に白い斑点が出現したり、ほくろの大きさや色、質感が変化することもあります。

患部の皮膚が引きつれる、しわができるといった変化もみられます。黒色腫の場合には、青黒色や茶色のただれやイボのような病変が現れることもあります。

外陰がんは、赤みやかゆみを伴うことが多いため、腟炎やナプキン・下着によるかぶれと間違われることがあり、発見が遅れるケースもあります。症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。

がんが進行すると、しこりやただれた部分から水っぽい分泌物が出たり、出血することもあります。大陰唇や小陰唇、クリトリス(陰核)などにも病変が広がる可能性があります。

さらに、腟や尿道、肛門などに浸潤し、リンパ節へ転移するリスクもあります。

外陰がんの治療法

外陰がんの治療方法は、がんのステージや症状に応じて、外科手術、放射線治療、化学療法を組み合わせる方法が取られます。

治療の中心は手術であり、外陰部を切除してがんを取り除きます。手術には、レーザー手術、広範囲局所切除術、根治的局所切除術、超音波外科用吸引(CUSA)などの方法があります。

局所治療には、免疫応答調整薬(例:イミキモドクリームなど)を患部に塗布する方法もあり、症状の緩和が期待されています。なお、これらは抗がん剤ではなく、免疫療法薬に分類されます。

放射線治療では、高エネルギーのX線を用いてがん細胞を死滅させます。治療には体外から照射する外照射療法と、ワイヤーやカテーテルに放射性物質を入れてがん組織内部から攻撃する内照射療法があります。

これらの治療法は、手術と組み合わせる場合もあれば、患者の状態やがんの進行度によっては放射線治療や化学療法のみで根治を目指す場合もあります。

外陰がんの転移・再発

外陰がんが鼠径(そけい)リンパ節に転移すると、リンパ液の流れに乗ってがん細胞が広がることがあります。この場合、鼠径部や骨盤のリンパ節に転移しやすくなります。

がんが外陰部以外の部位に転移した場合には、陰核や骨盤内臓器を含めた「骨盤内臓摘出術」により摘出する必要が生じることもあります。

再発については、初回手術後も2年から5年程度、長期間にわたり経過観察が必要です。一度がんを切除した後は、再発する確率は比較的低く、仮に再発しても局所にとどまることが多いとされています。

再発時にがんが広がっている場合は、外陰部全体を切除する手術が行われますが、小規模な再発であれば再発部分のみを切除する方法が取られます。

外陰がんのステージ分類

病期 説明
ⅠA期 がんが外陰または会陰に限局し、最大径2cm以下、間質浸潤の深さが1mm以下で、リンパ節転移がない場合
ⅠB期 がんが外陰または会陰に限局し、最大径2cmを超えるか、間質浸潤の深さが1mmを超えるもの。リンパ節転移がない場合
Ⅱ期 隣接する組織(尿道下1/3、腟下1/3、肛門)に浸潤しているが、リンパ節転移はない場合
ⅢA期 5mm以上のリンパ節転移が1個、または5mm未満のリンパ節転移が1~2個認められる場合
ⅢB期 5mm以上のリンパ節転移が2個以上、または5mm未満のリンパ節転移が3個以上ある場合
ⅢC期 被膜外浸潤を伴うリンパ節転移が認められる場合
ⅣA期 上部尿道、腟粘膜、膀胱粘膜、直腸粘膜、骨盤骨への浸潤がある場合、または潰瘍を形成した鼠径リンパ節転移が認められる場合
ⅣB期 骨盤リンパ節や遠隔臓器への転移が認められる場合

ステージの分類方法

日本産科婦人科学会によると、2021年時点では「FIGO2021手術進行期分類」が使用されています。上記の表はこれに基づいて整理したものです。

ステージ分類は、がんの広がり具合、浸潤の深さ、遠隔転移の有無など、総合的な所見によって判断されます。

【PDF】参照元:日本産科婦人科学会/日本産科婦人科学会雑誌第73巻第6号

ステージで異なる治療方針

外陰がんでは、腫瘍の浸潤具合や大きさによって治療方針が選ばれます。根治を目指す場合、外科手術による病巣と鼠径リンパ節の切除が第一選択となります。

ただし、手術は合併症を引き起こすリスクがあるため、患者一人ひとりの進行度や年齢、生活の質などを考慮し、放射線治療や薬物療法を含めた総合的な治療計画が立てられます。

手術

手術には、レーザー照射で細胞内の水分を気化させる「レーザー蒸散術」、腫瘍周囲の正常組織を含めて切除する「局所切除術」、外陰全体の皮膚を切除する「単純外陰切除術」などがあります。

放射線治療

放射線治療は体外から照射する「外部照射」が主流ですが、腫瘍の状態に応じて、組織内に放射性物質を直接挿入する「組織内照射」と組み合わせる場合もあります。

投薬治療

薬物療法については、対象となる患者数が少ないため、標準的な化学療法の治療計画は確立されていません。ただし、局所進行した外陰がんに対して、術前に放射線治療と併用して化学療法を行い、腫瘍を縮小させた上で根治手術を目指す方法が注目されています。

また、近年では免疫チェックポイント阻害薬(PD-1/PD-L1抗体)を使った治療の臨床試験も進められていますが、2025年時点ではまだ標準治療とはなっていません。

外陰がんや治療法に対する研究・論文

ウイルス由来の外陰がんにオプジーボが有効となる可能性

2015年10月から2018年5月の期間において、外陰扁平上皮がんや頭頸部扁平上皮がん、メルケル細胞がん、子宮頸がんなどヒトパピローマウイルスやポリオーマウイルスなどのウイルス由来の癌や腫瘍に対して、PD-1抗体ニボルマブ「オプジーボ」が有効であるか検証する臨床試験(第1/2相試験)が実施されました。

そもそも人の免疫機能は体外から侵入した異物や体内の異常に対して攻撃を行いますが、癌は人の免疫細胞の攻撃を回避する特性を備えています。一方、免疫チェックポイント阻害薬として知られるオプジーボは、その癌の免疫回避機能を無効化する医薬品として考えられており、オプジーボを使用して免疫機能の正常な動作をサポートしてやることで、免疫細胞が癌細胞を攻撃できるようになります。

本試験では外陰がんを含めて、ヒトパピローマウイルス(HPV)などのウイルスが発癌に関わっている癌腫の患者に対して、オプジーボを使用することでどのような効果や安全性に対する評価が得られるかという分析・検証を目的として実施されました。

参照元:オンコロ|ウイルス関連腫瘍(胃がん、上咽頭がん、子宮頸がん、膣又は外陰がん、メルケル細胞がん) オプジーボの第1/2相試験

外陰がんに対して「テクネフチン酸キット」が適応拡大承認を取得

2023年3月27日、PDRファーマ株式会社は外陰がんや子宮頸がん・子宮体がん、甲状腺がんを除く頭頸部がんにおいて、「センチネルリンパ節の同定およびリンパシンチグラフィ」を効能・効果とする「テクネフチン酸キット」の適応拡大の承認を取得したと発表しました。

テクネフチン酸キットに含まれるフィチン酸テクネチウムは、患者体内のカルシウムイオンとの結合によりキレート化合物を形成し、コロイド化することが特性です。テクネフチン酸キットはフィチン酸テクネチウム注射液の調整に用いる凍結乾燥注射剤であり、画像診断装置と併用することでセンチネルリンパ節を特定することが可能です。

センチネルリンパ節は外陰がんや子宮頸がんなどで原発巣に最も近いリンパ節であり、癌細胞が転移する際に最初に到達するリンパ節です。そのため、センチネルリンパ節の腫瘍細胞の有無を調べることで、リンパ節郭清の要不要を検証できることがポイントとなります。

リンパ節郭清は患者の術後の生活にも影響する治療であり、もしセンチネルリンパ節に腫瘍細胞がないと認められれば、外陰がん患者でリンパ節郭清を省略できるとされています。

参照元:オンコロ|センチネルリンパ節の同定およびリンパシンチグラフィに用いるテクネフチン酸キット、子宮頸がんなどで適応拡大を取得

外陰がんの外科治療(手術)と再建術についての課題

2023年3月3日、国立がん研究センター希少がんセンターは「外陰・腟がんの手術について」というテーマでオンラインセミナーを開催しました。

前提として、外陰がんや膣がんは女性の外陰部に発生すると同時に、発症率が100万人あたり5~10人と希少であること。また治療法としては手術による腫瘍の切除が原則となっており、大半の患者が手術を受けることもポイントです。

一方、外陰部の病巣や周辺組織、鼠径リンパ節などの切除は術後の患者のQOLに影響することもあり、国立がん研究センター希少がんセンター/中央病院では手術による治療効果の追求と同時に、形成外科的アプローチによる外陰部再建術についても積極的に取り組んでいます。

なお、外陰部の傷などは排泄物による感染リスクを高める上、股関節の可動性に関しても重要な課題があるため、再建術では合併症予防といったリスク管理も徹底しなければなりません。

参照元:がんナビ|国立がん研究センター・希少がんセミナー2023より 6 外陰・腟がんの手術と再建術

外陰部病変に局所外用薬「イミキモド」が手術と同様の有効性を持つ?

2022年4月、オーストリアのグラーツ医科大学のGerda Trutnovsky博士らによる研究チームが「The Lancet誌」において、外陰がんの前がん病変である外陰部高悪性扁平上皮内病変(vHSILs)の一次治療として局所外用薬「イミキモド」を使用することで、手術と同様の治療効果を得られたという臨床研究の結果を発表しました。

vHSILsはそもそもヒトパピローマウイルス(HPV)によって発生する前がん病変であり、HPV由来の癌として知られる外陰がんや子宮頸がんなどの早期治療では見逃すことができない疾患です。

本研究ではオーストリアのvHSILs患者110人を対象として、自己管理下でイミキモドを使用する群と、手術を受ける群に分け、それぞれの効果を比較検証しました。

結論として、イミキモド群では治療開始から6ヶ月後の完全奏効率が80%となり、一方の手術介入(1回)では79%と、ほぼ同等のデータが得られたそうです。

この結果は外陰がんなどの患者にとって、治療の選択肢を広げられる可能性を示唆しています。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|局所外用薬イミキモドは、HPV関連の外陰部病変に対して手術同様に有効

外陰がん患者の肛門転移リスクを低減できる可能性

2021年10月、アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究者による大規模第3相試験の結果が発表され、肛門がんの前がん病変の治療によって肛門がんのリスクを大きく低減できたというデータが示されました。

これはHIVに感染した患者4,446人を対象とするランダム化臨床試験(ANCHOR試験:Anal Cancer/HSIL Outcomes Research)として実施され、肛門へ発生した高度扁平上皮内病変(HSIL)を除去することにより、その後に肛門がんへ進行するリスクを有意に減少できたというものです。

また、本研究はHIV感染者が試験対象になりましたが、これは前がん病変の治療によって肛門がんリスクを下げられることを示唆しており、結果的に外陰がんや子宮頸がんといった肛門がんに近い場所へ発生する腫瘍などにおいても肛門がん予防の取り組みが可能であるという可能性につながっています。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|前がん病変治療でHIV感染者の肛門がんリスクが大幅に低減

癌予防の啓蒙は家族内のHPVワクチン接種の話し合いで重要

2018年にアメリカの疾病管理予防センター(CDC)や大統領府がん諮問委員会などがまとめた新規研究の結論として、ヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチン接種を予定している9~12歳の小児と保護者がワクチン接種や病気について話し合う際、癌の予防につながると強調することで、最も小児や保護者に対する説得効果が生まれるというデータが得られました。

HPV感染は外陰がんを含めてさまざまな癌のリスク因子として知られており、アンケート調査の結果、多種多様な保護者や家庭環境において等しく、小児のワクチン接種のモチベーションを高める上で、「癌の予防につながる」と伝えられることが最善の動機に結びついたとのことです。

もちろん、実際に小児科医や大人が児童や思春期の患者と向き合う上で、十分な信頼関係が構築されていることも必要ですが、このような調査結果は伝え方やメッセージの内容に関して考えるきっかけの1つとなるでしょう。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|がん予防というメッセージは、保護者とのHPVワクチン接種に関する話し合いにとって重要である