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癌患者が悩まされる睡眠障害

何らかの原因で眠れなかったりすぐに目が覚めてしまったりと、本人の生活に支障をきたしている状態を睡眠障害といいます。ここではそんな睡眠障害についてお伝えしていきます。

癌と睡眠障害

個人差はありますが、癌の診断から治療中、治療終了後に至るまで、多くの癌患者さんが「眠れない」「眠りが浅い」といった睡眠障害に悩まされています。

癌の告知、そして転移・再発など、良くない知らせのショックで眠れなくなるのは無理もありません。また、痛みや発熱などといった癌の症状や、薬の副作用で眠れなくなる場合もあります。このように、睡眠障害は癌患者さんであれば誰しも悩まされる問題だと考えてもいいでしょう。

ある研究によると、癌を含む身体疾患を患う患者さんの20~60%が睡眠障害に陥っているそうです。実に5人に1人が不眠に悩んでいることになります。

「少しくらい眠れなくても…」と軽く考える人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。不眠が続けば単にだるさを覚えるだけではなく、認知機能にも影響を及ぼします。その結果、生活の質を低下させることにつながります。

それでは、癌患者さんが睡眠障害から脱するにはどうするべきか、まずはその原因や睡眠障害のタイプについて見ていきましょう。

睡眠障害の原因

癌患者さんの睡眠障害、いわゆる不眠にはいくつのも原因があります。まずはそれを整理してみましょう。

もちろん、複数の原因が重なって睡眠障害を起こしている場合も多いでしょう。

眠れないときは無理をせず、主治医や医療スタッフに相談するべきです。眠れない不安を話すことで気持ちが楽になることもあります。主治医も睡眠障害の原因を探ることで適切に対応することができるでしょう。

睡眠障害のタイプ

睡眠障害にはさまざまなタイプがあります。それは大きく4つに分けられ、なかなか寝付くことができない入眠障害、朝までに何度も目が覚めてしまう中途覚醒、起床時間より2時間以上早く目が覚めてしまう早朝覚醒、睡眠時間は十分でも深く眠った気がしない熟眠障害があります。

癌治療中の睡眠や休息は、身体の状態を良好に保つために重要なことです。ところが睡眠障害をきたすと、頭痛やめまいだけではなく、集中力の低下や苛立ちなど心の症状も出現します。

自分では気づかないうちに睡眠障害を起こしている場合もありますので、このような症状がみられる場合は主治医に相談しましょう。

そのだるさ、睡眠障害かも?

倦怠感、つまりだるさも癌治療中のつらい症状です。抗がん剤や放射線治療の代表的な副作用のひとつに挙げられますが、貧血や低栄養状態、不安やストレスといった精神的な要因でもだるさを覚えます。

睡眠障害もだるさの原因になります。身体を動かすのがつらい、集中力が続かないなどのだるさを感じる場合は、睡眠障害が原因かもしれません。

薬を使わない睡眠障害対策

不眠の治療には薬を使う場合と使わない場合があり、それは癌患者さんも同様です。

薬を使わないとなると、よく眠るためには気持ちをリラックスさせて心身を楽にすることがいちばんでしょう。人それぞれに合った方法があるはずです。それを習慣づけることで眠りの質を高めるようにしてみましょう。

リラックスの方法

普段の生活で気をつけること

寝つきを良くするための生活習慣を整えることも大切です。良く知られているのはカフェインを控えること。夕食後にコーヒーや濃いお茶を飲むことは避けたほうが良いでしょう。

また、適度な運動も寝つきを良くしてくれます。散歩などで身体を動かしたり、ストレッチをしたりするのもおすすめです。

寝る時間は早すぎても遅すぎてもいけないといわれています。寝室の照明も自分が心地よく感じる程度に調節してください。

薬を使った睡眠障害治療

どうしてもうまく眠れず心身の症状が続く場合には、睡眠導入剤や抗不安薬を使用することもあります。睡眠薬の常習性を心配する人も多いようですが、主治医の指示に従って使用すれば大丈夫です。

睡眠導入剤にはいくつか種類があり、入眠障害の場合は効き目が早くて短時間で効果が消失するタイプを使用します。中途覚醒や早期覚醒、熟眠障害の場合には効果が長く続くタイプがあります。

このほか、うつ病など精神的な原因による睡眠障害には抗不安薬を、痛みで眠れない場合は鎮痛剤などを使用します。

上手な薬の使い方

睡眠導入剤を使用する場合は、1回の服用量や服用する時間は必ず医師の指示を守ってください。自分の判断で服用量を調節すると、望んだ効果が期待できないばかりか、思わぬ副作用を起こすこともあります。よく眠れるようになったのか、まだ眠れないのかを主治医にきちんと伝えたうえで、服用量を調節してもらうようにしましょう。

薬についてわからないことや不安なことがあれば、主治医や薬剤師に相談しましょう。

睡眠導入剤を減らしたいとき

「睡眠薬を止めたり減らしたりすると、とたんに眠れなくなる」というのは、睡眠障害を患う人の多くが抱えている悩みです。長く悩んでいるうちに、依存症になってしまったのではないかと心配してしまうこともあるでしょう。これは癌患者さんに限らず、ほかの原因による睡眠障害でも同様です。

もちろん、睡眠導入薬に頼らず眠れるにこしたことはありません。薬を減らすのは医師の判断が大前提ですが、そのうえでどのように考えるべきかをお伝えします。

昼間の調子が良ければOK

睡眠導入薬に頼らずに済むというのは睡眠障害が改善したということです。薬を使わない睡眠障害対策として挙げたとおり、どんな手段でも効果があるならそれでいいのです。

ここで考えたいのが、どういう状態になれば睡眠障害を克服したと判断すべきかということです。朝までぐっする眠れるようになれれば…そう考える人が多いかもしれませんが、少し違います。朝まで一度も目覚めることなく熟睡できるというのは、それほどいません。夜中に目覚めることがあっても、気にせず元気に過ごしている人はいくらでもいます。

昼間の眠気や倦怠感、気持ちのイライラなどがない状態が2~3カ月以上続くようであれば、睡眠障害を脱したと考えてもよいでしょう。要するに、昼間の調子が良ければ基本的にOKなのです。

一時的に眠れなくなっても大丈夫

睡眠導入薬を少し減らしただけで眠れなくなるのはよくあることです。それを依存ではないと断言することはできませんが、薬を減らしたという不安が睡眠障害を助長させている場合が非常に多いのです。つまり、依存ではなく心理的な問題です。

不安な状態であれば眠れないのは当然で、薬を減らしたばかりのときは一時的に眠れないのが当たり前だと考えましょう。とくに近年多く使用されているタイプの睡眠導入薬であれば、数日のうちに睡眠が安定してくると考えられます。

ゆっくり薬を減らす

睡眠導入薬を上手に減らすコツは「ゆっくり減らすこと」です。なるべく早く減らしたい気持ちはわかりますが、急に減らすと睡眠障害を悪化させるばかりか、本当に依存を起こす原因にもなります。

そうしたトラブルを避けるためには、少しずつ薬を減らすのがもっとも確実です。いったん薬を減らしたら、その量を少なくとも2~4週間は続けましょう。上記のとおり、薬を減らせば一時的に眠れなくなることは多くありますが、その状態をクリアしてから次の減量にチャレンジしていけば失敗は少ないと思われます。

少しの睡眠導入薬なら続けるほうがよい場合も

睡眠導入薬を上手く減らすことができたとしても、最後の段階、たとえば1/4錠がどうしても止められない場合があります。それくらいの量だと薬の意味があまりないとしても、です。それこそ依存に近い状態かもしれません。

そんな場合は、無理に止めようとしないほうがいいこともあります。絶対に止めようと気負って考えすぎることも睡眠障害を誘発する原因です。枕元に薬を置いておいて、眠れなかったら飲めばいいと軽く考えていれば、不思議と眠れることも多いものです。

完全に薬を止められなくても、上記のとおり昼間の調子が良ければOKなのです。癌以外にうつ病などメンタルの病気や生活習慣病を患っているなど、ぐっすり眠って体調を整えることが特に重要な場合は無理に薬を減らさないほうがよいでしょう。

眠れなくても無理をしない

眠れないというのは誰しも不安です。何とか眠ろうとするあまり、逆に目がさえて逆に眠れなくなることもあります。眠れないときは無理をせず、一度ベッドから離れましょう。何かリラックスできる方法を試しつつ、眠気が訪れるのを待つのも一手です。

いろいろな方法を試しても、睡眠導入剤を使用しても睡眠障害が良くならない場合は、もしかすると癌治療の影響があるかもしれません。だとすれば患者さんだけで対応するのは困難です。1人で抱え込まず、主治医や医療スタッフに相談しましょう。