いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

いちから分かる癌転移の治療方法ガイド » 癌治療のメリット・デメリット » ペプチドワクチン療法

ペプチドワクチン療法

このページでは、癌治療の免疫療法「ペプチドワクチン療法」について分かりやすくまとめています。

ペプチドワクチン療法とは?

T細胞の癌への攻撃力を増強する免疫療法

ペプチドワクチン療法は免疫療法の1つとされています。大まかなシステムとしては、癌細胞が細胞表面に特異的に持っているタンパク質「ペプチド」を使ってワクチンを作成し、それを患者に投与することで癌情報を免疫細胞へ提供して、免疫細胞が癌を攻撃しやすくするようにサポートするといった仕組みです。[注1]

ペプチドワクチン療法は医学的に承認されていない?

2022年2月9日時点で、癌の免疫療法として国内で医学的に有効性が認められているものは、「免疫チェックポイント阻害薬」を使った治療法や「エフェクターT細胞療法」といった治療法だけとされています。つまり、それ以外の免疫療法については医学的根拠にもとづいた有効性が明確に承認されておらず、ペプチドワクチン療法もまだ認可が下りていません。[注2][注3]

従来の免疫療法とペプチドワクチン療法との違い

癌による免疫阻害を防ぐ従来の免疫療法

すでに有効性を認められている免疫療法は、基本的に「T細胞」へ関連しているものです。

T細胞は白血球の一種。癌細胞を攻撃する特性を持っており、通常は体内に生じた癌細胞を退治して癌の発症や増殖を抑えています。しかし、一方でT細胞は免疫の暴走を防ぐために「PD-1」受容体というタンパク質を持っており、この受容体が働くとT細胞は攻撃性を失ってしまいます。

さて、癌細胞はこの性質を悪用して、PD-1受容体へ作用する物質を分泌し、T細胞の攻撃性を弱体化させてしまうことがポイントです。そしてその結果、癌細胞があってもT細胞が働かず、癌が増大していくことになります。

従来の免疫療法では、癌細胞がPD-1受容体へ働きかけないように邪魔をする「免疫チェックポイント阻害薬」を使って、T細胞の機能を取り戻すことが中心となります。あるいは、患者の体から採取したT細胞を人工的に強化して体内へ戻すエフェクターT細胞療法が保険適用です。[注1]

免疫療法の副作用・対策

免疫療法では従来の抗がん剤のような副作用はないとされる一方、全身に様々な副作用が生じるリスクもあり、個体差が大きい点も問題です。そのため、副作用への備えを十分に整えられる医療機関で治療を受けなければなりません。[注2]

あらかじめ癌細胞をターゲティングするペプチドワクチン療法

ペプチドワクチン療法は癌細胞の表面にある特別なタンパク質(ペプチド)を採取し、それをもとにして作ったワクチンを患者へ投与することで、癌の情報をT細胞などの免疫細胞へ提供するのが特徴です。

つまり、最初から狙うべき癌細胞をT細胞へ教え込むことで、より明確に攻撃力を発揮させるという仕組みです。[注1]

ペプチドワクチン療法が疑問視されてきた理由

ペプチドワクチンによってT細胞へ癌の情報を伝えて強化したとしても、癌にPD-1受容体を誤作動させられればT細胞は働きを止めるため、結局はワクチンの効果も期待できません。そのため、ペプチドワクチン療法は明確な有効性が認められないとされてきました。

ペプチドワクチンの将来性

近畿大学と東京大学医科学研究所の臨床試験によって、一部の癌に対してペプチドワクチン療法の有効性が報告されました。

この結果、全ての癌に対してではないものの、特定の癌に対してペプチドワクチン療法が効果的かもしれないと考えられており、今後改めて保険承認されることが期待されています。[注1]

参考サイト