地域癌診療の中核で、総合的な治療が受けられる千葉大学医学部附属病院
明治7年に「共立病院」として創設された千葉大学医学部附属病院。時代とともに、公立千葉病院、県立千葉医学校附属病院と変革を重ねた後、昭和24年の千葉大学発足に伴い現在の名称に改称されました。
創設以来150年近くに渡って地域医療に貢献してきた千葉大学医学部附属病院。今日でも多くの患者さんに安全かつ高水準な医療を提供することを目指すとともに、次世代の医療界を担う人材の育成にも努めています。
宇野隆先生は千葉大学医学部を卒業後、国立国際医療センター放射線科勤務を経て、現在は母校である千葉大学医学部の放射線科教授を務めています。先進的な治療機器を使いこなすだけではなく、より高度な治療法の開発を目指し、日常の診療での経験を治療装置にフィードバックしていくという高い志を抱くドクターです。
教授となった今でも治療の第一線に立ち、放射線治療を通じて患者さん一人ひとりの違いを感じ取っているという宇野先生。大学病院の放射線科として、患者さんによる標準治療の向き不向きも追求していくべきだと語ります。そして多くの専門職や各診療科との連携を通じ、個別性が高く高品質と低侵襲を両立させた治療の提供を目指しています。
以前より、癌診に注力してきた千葉大学医学部附属病院。2008年には厚生労働省より地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、県内や近隣地域の癌診療の中核を担う存在となりました。
がん治療の基本である手術療法をはじめ、放射線治療、化学療法などさまざまな治療法に対応。充実した設備と技術力により、安心して受けられるがん診療を目指しています。
千葉大学医学部附属病院では先進的な高精度放射線治療装置を駆使し、さまざまな専門職から構成される医療チームが放射線治療を提供します。治療は患者さん一人ひとりに合わせた個別性の高いプランで、高精度かつ身体的負担の少ない治療方法を心がけています。
放射線治療の対象となるのは、主に全身のさまざまながん。治癒を目的とした根治的照射をはじめ、長期生存・延命を目的とした放射線治療、がんの症状を和らげて生活の質を保つ緩和的照射まで幅広く対応します。
外部照射
外部照射では画像誘導機能を搭載した放射線治療装置を完備し、強度変調放射線治療や体幹部定位放射線治療、呼吸同期照射など高精度な放射線治療を実施しています。
日本臨床腫瘍グループなど全国規模で行なわれている他施設共同研究にも積極的に参加しており、より高度な放射線治療の開発にも貢献してきました。
前立腺がんの放射線治療を受ける患者さんには、必要に応じて膀胱や直腸など周辺臓器へのダメージを軽減するための金属マーカーやハイドロゲルスペーサー留置にも対応します。
また、同院では2021年10月からMRIリニアック(MRIイメージガイド下放射線治療装置)によるMR画像誘導即時適応放射線治療がスタートする予定です。
小線源治療
小線源治療では、子宮頸がんに対して専用のアプリケーターを用いた腔内照射や組織内併用腔内照射を実施しています。治療にあたってはMRIによる3次元ガイドの画像誘導を行ない、精度の高い小線源治療を実現します。
アイソトープ治療
アイソトープ治療とは、甲状腺組織がヨウ素を取り込む性質を利用し、放射線を放出するヨウ素を内服して甲状腺の内部から放射線を照射する治療法です。甲状腺がんの場合は131Iと呼ばれるヨウ素を内服します。
また、骨に集積する放射性物質であるラジウム233を投与し、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんに放射線を照射するアイソトープ治療にも対応します。
千葉大学医学部附属病院の腫瘍内科では、さまざまながんに対する化学療法(抗がん剤治療)や分子標的治療、免疫チェックポイント阻害治療などの薬物療法を行なっており、必要に応じて手術や放射線治療などを組み合わせた集学的治療にも対応してきました。
難易度の高い薬物療法でも通院治療が可能な診療体制を確立しており、安全性を保ちながらも可能な限り自宅で過ごせるような療養環境づくりを心がけます。
同科では臓器を特定した診療を行なわないため、2種類以上のがんを合併しているケースや、希少がんと呼ばれるまれな悪性腫瘍にも対応可能です。
基本的にはがん症例全般が対象で、とくに原発不明がんや性腺外胚細胞腫、軟部肉腫などに対しては、腫瘍内科ならではの専門性を活かした診療が受けられます。肺がんや胸腺腫瘍など呼吸器系がんの患者さんも多く、治験や臨床試験への取り組みも通じて先進的な治療を提供しています。
治療にあたっては、専門の医療スタッフがさまざまな診療科と連携し、医学的根拠に基づく質の高いがん診療を展開しているようです。
一般の医療機関や診療科では対応が困難な症例も数多く受け入れていますが、その専門性の高さゆえに情報が極めて重要です。
千葉大学医学部附属病院では内視鏡下手術支援ロボットを導入しており、ロボット支援手術に精通した医師による前立腺がん手術を2012年から行なっています。
ロボット支援手術は、医師が患者さんから離れた場所のコンソールで3Dカメラを見ながらロボットアームに手先の動きを伝え、遠隔的に手術操作を行なうシステム。医師の手先の動きが振動や手ぶれのないロボットアームの繊細な動きに変換されるので、これまで人の手では難しかった身体の奥深い部分の手術も容易となっています。
開腹手術のように皮膚を大きく切開する必要もなく、ロボットアームを挿入する数カ所の穴を開けるだけなので、傷口も小さく出血量も少なく済みます。手術後の回復も早まり、早期の社会復帰も可能となるでしょう。
このように患者さんにとってメリットの多いロボット支援手術ですが、同院では前立腺がんのほか、子宮がんなどの婦人科がん、肝胆膵系のがん、食道がん、胃がん、直腸がんなどに対してもロボット支援手術を実施し、その有効性の臨床研究に力を入れています。
このほか、小さいサイズの腎臓がんに対するロボット支援下腎部分切除術や、膀胱がんに対するロボット支援下膀胱全摘除術も手がけており、膀胱がん手術に伴う尿路変更術では自排尿型新膀胱増設術にも対応可能です。
呼吸器外科では身体的な負担を軽減するため、以前から胸腔鏡手術を積極的に実施していましたが、2014年からは肺がんや縦隔腫瘍に対してロボット支援手術を導入しています。
千葉大学医学部附属病院では、癌に対する幅広い治療を手掛けています。この項目では、転移した癌に対しても用いられる治療法のひとつ「IVR」について解説します。
IVRとは「Interventional Radiology(インターベンショナルラジオロジー)」という治療法の略称。日本では「画像下治療」や「血管内治療」とも呼ばれています。
IVRは、CTなどの画像診断機器で体の状態を確認しながら、カテーテルなどの細い医療器具を血管に通し、病変部に薬剤を注入したり病巣を破壊したりする治療法です。手術とは異なり、体を大きく切開する必要がないため、患者さんの心身への負担が小さいというメリットがあります。
IVRの技術は、がんの診断や治療にも大いに役立てられています。例えば、「動注化学療法」がそのひとつ。画像診断機器で体内の様子を確認しながら病巣部までカテーテルを通し、病巣部に直接抗がん剤を届ける治療法です。
治療は、身体の表面に穴を開け、カテーテルなどの医療器具を挿入することで行われます。傷は数mm程度のごく小さなものであるため、治療終了後に縫合する必要はありません。
余計な部分を傷つけることがなく、傷跡を残す心配もほとんどないIVRは、患者の心身に負担の少ない、優しい治療法だと言えるでしょう。
IVRは、癌を含むさまざまな病気やケガに対して適用される治療法です。しかし、実際にどの治療法が選択されるかは患者の状態によって異なるため、一概に語ることはできません。ここでは、IVRによる治療が選択されることがある癌の一例について解説します。
肝臓癌
肝臓に発生する癌のことを肝癌や肝臓癌と呼びます。肝臓そのものから発生する原発性肝癌のほか、身体の他の部位に発生した癌が肝臓に転移したもの(転移性肝癌、続発性肝癌)もまた、肝臓癌のひとつです。
肝臓癌に対するIVR治療では、病変部に繋がる血管を人為的に詰まらせ、栄養の供給を絶つことで癌を破壊する「動脈塞栓術」や、高い周波数の電磁派であるラジオ波を用いて病変部を破壊する「ラジオ波焼灼療法」などが用いられます。
例えば、肝臓がんの治療は、がん病巣を手術で切り取るのが基本です。しかし、ラジオ波焼灼療法を適切に行うことのできる状態の肝臓がんの場合には、(1)体を切らない、(2)局所麻酔で可能、(3)治療時間も1~2時間程度で体の負担が少ない、(4)針を抜いた後も縫わなくてよい、(5)入院期間も数日程度―といった利点があるにもかかわらず、手術と同じくらいの治療成績が得られます。
引用元:「がん診療のさまざまな場面で活躍するIVR」日本IVR学会
http://www.jsir.or.jp/shimin/cancer_ivr/
骨転移
体の一部にできた癌が血流に乗り、骨に転移することを「骨転移」と呼びます。骨転移はさまざまな癌で起こる可能性がありますが、特に乳癌や肺癌、前立腺癌などでは比較的起こりやすい転移です。
癌が骨に転移すると、骨が弱ってつらい痛みを生じることがあります。IVR治療では、がん細胞を破壊したり骨に特殊な樹脂(骨セメント)を注入して補強。痛みを和らげ、患者さんの生活の質を上げる効果が期待できます。
癌緩和医療において重要な柱である疼痛コントロールにおいても IVR は有用である.具体的には骨転移に対する RFA,疼痛を伴う椎体転移に対する椎体形成術(経皮的骨セメント注入)といったものが挙げられる.
引用元:「がん治療におけるIVR」新槇 剛(静岡県立静岡がんセンターIVR科部長)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/73/1/73_56/_pdf/-char/ja
千葉大学医学部附属病院でIVR治療を受ける流れについてまとめました。
担当医からIVRについての説明を受けます。治療当日は専用のベッドで横になり、心電図モニターや血圧計などを装着。身体の状態を確認します。
消毒・麻酔ののち、足の付け根などからカテーテルなどを挿入。治療中は安全のため、動くことはできません。
治療後は安静にし、止血を行います。
初診時のルールは診療科によって異なりますが、多くの科は予約制です。予約制の科を受診する際は、各科の外来に直接電話で連絡し、予約を取りましょう。
各診療科の予約の可否は、病院ホームページの 「診療科・部門のご案内」 ページで確認できます。各診療科名をクリックし、電話番号をチェックしましょう。
また、初診の際は、基本的に主治医からの紹介状が必要です。紹介状を持っていない場合は、保険外併用療養費制度に基づく特別料金として別途11,000円が必要となるため注意してください。なお、特別料金を支払えば必ず受診が可能というわけではありません。
初診の際は紹介状のほか、保険証、お薬手帳、これまでの診療情報を持参しましょう。
《予約方法》
電話:診療科による(診療科一覧:https://www.ho.chiba-u.ac.jp/hosp/section/)
予約受付:平日14:00~16:00(診療科によって異なる場合があります)
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千葉大学医学部附属病院 | |
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診療科目 | 血液内科、腫瘍内科、放射線科など35科 |
診療時間 | 9:00~17:00 |
休診日 | 土曜日・日曜日・祝日・年末年始(12月29日から翌年1月3日まで) |
所在地 | 千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-1 |
電話番号 | 043-222-7171 |
ベッド数 | 850床 |
年間治療患者数 | 不明 *参考:新外来患者数43,228人 外来紹介患者数19,817人 新入院患者数20,140人(2018年度実績) |
対応可能な治療方法 | 手術治療、放射線治療(ガンマナイフ等)、アイソトープ治療など |
設備 | CT、3テスラMRI 、PET-CT、リニアックなど |
URL | https://www.ho.chiba-u.ac.jp/ |