群馬県立がんセンターでは、各診療ガイドラインに則った標準的な癌治療を実施しています。さまざまな診療科や関連部門との連携による合同カンファレンスで治療方針を検討し、全国レベルでの臨床研究事業にも積極的にデータを提供。この方針が新たな癌治療の知見として患者さんに還元されることになります。
治療は手術に加えて放射線治療や化学療法を組み合わせた集学的治療や、身体的負担の少ない低侵襲手術や複数の診療科が合同で取り組む拡大手術など、患者さん一人ひとりに合った最善の治療の選択を心がけています。消化器外科ではダヴィンチによるロボット支援手術も導入しました。
また、腫瘍内科部門においても各診療科と連携した包括的な癌治療を行なっています。臓器ごとの診療科では治療が困難な他臓器にわたる癌や原発が不明な癌にも対応可能です。
群馬県立がんセンターは「がんゲノム医療連携病院」でもあり、国立がん研究センターと連携しています。治療法の確立していない癌や標準治療が困難な癌などは遺伝子検査などを実施して正確な診断や適切な治療の選択につなげ、国立がん研究センターにそうした患者さんを紹介する事例も実際に出てきています。
群馬県立がんセンターのがん治療実績
群馬県立がんセンターの公式ホームページによると、2019年の手術実績は食道癌が53件、胃癌が80件、大腸癌が269件となっています。
同じく放射線治療は630件に上り、乳腺や泌尿器系、頭頸部、肺の癌が上位を占めています。
群馬県立がんセンターのがん治療方法
放射線
治療
進化した強度変調放射線治療で高い治療効果を実現
放射線治療は手術や化学療法に比べて副作用が少ないことに加え、近年は急速に治療装置や技術が進歩していることから多くの癌において飛躍的に治療成績が向上しました。群馬県立がんセンターではこうした放射線治療の進歩に対応し、患者さん一人ひとりに合った、そして高い治療効果と低リスクを実現する治療を目指しています。
癌の種類や状態によっては手術や化学療法と組み合わせた放射線治療を行なっており、地域の医療機関からの紹介患者さんも受け入れています。
対応している放射線治療は大きく外部照射と小線源治療に分けられます。外部照射は3次元原体照射をはじめ強度変調放射線治療や定位放射線治療を実施。小線源治療は婦人科の癌や前立腺癌、甲状腺癌、転移性の骨癌などに対応しています。
強度変調放射線治療は、放射線を遮断する金属製の仕切りを治療中に細かく移動させ、放射線の強さを調整しながら治療を行なう高度な技術です。この技術によって、癌の病巣が複雑な形状であっても正常な組織を避けながら放射線を照射できるので、副作用を軽減できるというメリットがあります。群馬県立がんセンターではこの強度変調放射線治療を進化させた強度変調回転照射(VMAT)という新たな照射法を導入しており、従来よりも高精度な治療計画の立案と治療時間の短縮を可能としています。
群馬県立がんセンターの施術について
放射線施術までの流れ
群馬県立がんセンターは、以下のような流れで放射線治療を行なっています。
1.診察
放射線治療担当医師による診察を行ない、患者さんの全身状態や画像検査データなどを考慮して治療方針を決定していきます。
2.治療計画
まずは治療計画用CT撮影を実施し、治療範囲の画像データを確認します。頭頸部など動きのある部位の場合は、治療時に動いてしまわないようプラスチック製の固定具を作製します。
次に、画像データをもとに治療範囲や照射線量を定めた治療計画をコンピューター解析で作成します。照射位置を決める装置を別途使用して、治療計画をもとに照射範囲を示すマークを皮膚につけます。
3.治療
治療前にCTやレントゲン撮影を行なって治療位置のずれがないか確認した上で、皮膚のマークに合わせて的確な放射線照射を行ないます。治療は週5回、連日実施されますが、全体の治療回数は癌の種類や患者さんの状態によって大きく変わります。
照射時間は約10~15分程度ですが、初回は照射位置の確認のため20分程度の時間を要します。
4.経過観察
放射線治療の期間中は、最低でも週1回の担当医師による診察を受けることになります。治療終了後も定期的な診察が必要です。